キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人の家に泊まりに来たこころ。そして、その影人がお風呂に入っている間に影人の母親である理沙と一対一で話す事になった。
「まずはこころちゃん、改めてだけど。影人と仲良くしてくれてありがとうね」
「いえ、私の方こそ何から何までありがとうございます……」
すると、こころは少し緊張したような顔つきで理沙と会話をする。何しろ、先程まで理沙が自分の事を揶揄ってくる事ばかり言ってきていたので何を言われるか身構えて余計に緊張してしまっていた。
「……さっきは色々と揶揄っちゃってごめんね」
「えっ……」
「私も揶揄うのを楽しんじゃった所があったけど、それと同じくらい。影人の隣にいるのがあなたで良かったって思えたの」
理沙はまずこころを過剰に揶揄った事を謝罪。それから彼女は優しい顔つきとこころを安心させるような包容力を見せる。
「そうなんですか?」
「うん。この家に住んでる私の家族も皆んな同じ事を思ってる。こころちゃんが影人の彼女でいてくれて良かったってさ」
「あはは……だからちょっと揶揄ったみたいな感じですか?」
「そうそう」
「もう、でも限度を考えてくださいよ……」
こころはジト目を向けつつもひとまずは理沙の事を信じる事にした。それはさておき、理沙はこころにばかり話させたのは不公平だと思ったのか。自分の事を話し始める。
「でも、羨ましいな」
「え?」
「……私はこころちゃんの年頃の時は好きだと思った人相手にアタックとかできなかったから」
理沙は過去の後悔……魁斗への気持ちをちゃんと伝えなかったせいで友達に彼を横から奪われてしまった事を話す。ただ、この話は既に何度も描写した事なのでここでは割愛してこころが話を聞いた所までスキップしよう。
「……そんな事があったんですね」
「うん……。だから好きに一直線なこころちゃんが私はちょっと羨ましい」
理沙は高校生で魁斗に惚れた時……自分の気持ちを伝える覚悟が持てなかった。その当時の魁斗がちゃんと理沙と付き合う事ができたかは別として、理沙はその時に一度悔しい想いをしたからこそ……こうして影人相手に素直な気持ちを出せるこころが羨ましいのだと言える。
「……私も、今の理沙さんは見てて羨ましいですよ」
「えっ?」
「だって、理沙さん。凄くキラキラしてて私も見てて心キュンキュンするんです」
「そうかな?」
「理沙さん、凄腕のエステシャンだって聞きました。私のお母さんも受けて凄く気持ち良かったって言ってましたし。それに、こうしてお話できた事も嬉しいんですよ。カゲ君の言った通りのとてもキラキラした人でしたし。私も理沙さんみたいなキラキラした人になりたいです!」
こころは純粋な気持ちで理沙の事を尊敬の目で見ていた。勿論それは1人の大人としてこころが将来目指すべき場所だと思えたからだ。
「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいわ。……だけど、そんな私にもダメな部分もあるわよ」
「それって?」
すると理沙はこころに褒められて照れくさくしつつも自分という人間はこころが思ってる程尊敬できる人では無いと返す。
「例えば、傷ついた影人の事をちゃんと見てあげられなかった所とかね」
「ッ……」
「だって、本当なら昔芸能界に挑んで折れてしまった影人の心のケアは親である私達がするべきだった事。なのに私達は……」
それは実際その通りだろう。影人が幼い頃に芸能界で心を壊した後、彼の心のケアをやるべきだったのは両親である魁斗と理沙だった。しかし、2人とも仕事が忙しく。彼と向き合えるだけの時間が十分に確保できなかった。
「結局、影人がギリギリで踏み止まれたのは夢乃が側で支えてくれたから。……そこから立ち直る所まで行けたのはこころちゃんのお陰。私も、魁斗も……あなたには感謝してもしきれない」
「なっ、そ、そんな。理沙さん。そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ」
理沙はこころ相手にいきなり頭を下げて感謝の気持ちを伝えると当のこころはそこまで感謝される事では無いとばかりに慌てて謙遜する。
「それに、カゲ君を助けようと思えたのは私が幼い頃に会った時にカゲ君に助けられたからであって。そこまで大それた考えは無くて……」
「それでも、あなたという人が影人のお嫁さんになってくれるのなら私達はこれ以上無いくらい幸せな事だから」
「理沙さん……」
こころは知らない間に影人の両親からの好感度が上がっている事に驚きや困惑が混ざりつつも、それだけ自分が影人やその両親にも与えた影響が大きいのだと自覚。同時に自分ができることは大好きな影人の隣に寄り添う事なのであると考える。
「こころちゃん。私も魁斗もあなたの事は凄く信頼してるし、影人を助けてくれた恩もある。だから……親として無責任かもしれないけど、影人の事を支えてください。お願いします」
「……はい。私だってこれ以上カゲ君が目の前で辛い想いをしてるのを見たくありません。ですから、何があってもカゲ君の事を助けるつもりです」
それから2人はお互いの意思を確認すると頷き合う。こころと理沙の間に大きな信頼が出来上がった瞬間だった。
「こころ、上がったぞ」
「あ、カゲ君が風呂から上がりましたね」
そのタイミングで風呂から上がった影人が次に入る人である夢乃へと声をかけてから自分の部屋でやるべき事を終えつつこころを呼びに来る。そのため、こころは影人の元に行くために理沙へと挨拶をした。
「理沙さん、お話していただきありがとうございました。またお話したいです」
「ええ、またいつでも待ってるわよ」
こうして、こころは影人に連れられる形で部屋を移動。今度こそ影人の部屋に入った2人は影人のベッドの上で隣り合わせで座った。勿論その仲の良さを示すかのように2人の隙間はほぼゼロである。
「こころ、お風呂の入り心地はどうだった?」
「凄く気持ち良かったですよ。それに、カゲ君の家にお泊まりに来れて凄く心キュンキュンしてます」
まずはこの家での過ごし心地を確認する影人にこころは微笑みつつ対応。そんな彼女の答えにこの家での時間を堪能してくれてる事を実感した影人は安堵の表情を浮かべた。
「そっか。それなら良かった……」
「じゃあ、早速色々とお話ししましょう」
「ああ」
それから2人は学校ではできないような話をする。特にこころが気になったのは影人が声優を目指す上でやっているトレーニングとかだった。
「カゲ君、夏休みに茅原さんから指導を受けてから練習とかも頑張ってるんですよね」
「そうだな。とは言ってもアレ以降茅原さんとは会えて無いけどな。彼女も色々忙しい身だし」
ここ最近の茅原の出演作は50年以上続いている特撮作品のアニメで赤いてんとう虫をモチーフにした戦士が幼い頃から大好きなナイスバディの若い女性教師である。
しかもその女性教師はあまりのガチ勢っぷりにプロレスを習い、自らが制作した戦闘用スーツに着替えた上で街に現れた強盗団をボコボコにした上でその戦士の台詞を叫んだとか。
「えっと、その作品は仮面……なんたらでしたっけ」
「ああ、厳密には茅原さん演じるキャラはその仮面……では無い番外戦士みたいな人だけどな」
そんな茅原の最新出演作の情報は一旦置いておくとして。改めて影人のやってる練習の話へ。
「っと、話が逸れたけど。茅原さんに期待されてる事を言われて。俺は今やれる事をやってる。ま、とは言っても今やれるのは基本的な発生や滑舌。あとはアクセントとかも直してるかな」
「アクセント?」
「そうそう。俺達は何気なく話してる言葉だけど、実際は地方ごとでアクセントやらが違う場合があるんだよ」
これは実際その通りだ。何なら、テレビのニュースキャスターとかはニュースを読み上げる際に標準アクセントと呼ばれる日本全国で共通して使うアクセントを使用している。
そしてこれを覚えるのがかなり大変なのだ。特に地方ごとの訛りを普段の喋り方に入れてしまっている人はその訛りで慣れてる分余計に修正が厳しいと言える。
「俺も最初はビックリしたよ。自分の担当する役の心情理解や滑舌良くハッキリと伝わる言葉で話さないといけないくらいは覚悟してたけど、まさかアクセントまで直さないといけないとか」
「でも、カゲ君の事ですし少しずつでも練習は進んでいるんですよね?」
「ああ。全部は流石にまだ無理だけどある程度なら普段の喋りと区別できるようになった」
影人が取り組んでいるのはまだ本格的な指導が無くてもどうにかできる事ばかり。理由として挙げられるのは下手な事をして間違ったやり方で覚えてしまうとその矯正で更に時間を取られてしまう。
だから本格的にやるのは講師の人の元について正しい練習方法を教わった物のみに限られる。例えばアクセントはアクセント辞典を使えば正しい物がわかるし、滑舌も外郎売のような簡易的な滑舌トレーニングだったらネットにあるものを利用する事ができる。
また、発声練習も迷惑をかけないように時間を作って進めていた。後は本を読むなどしてその登場人物の心情の変化を読み解く事もやっている。
「カゲ君、もうそんなにも練習してたんですか。……その、無理だけは絶対しないでくださいね?」
「ああ、そこは大丈夫だ。喉のコンディションとかもちゃんとケアしてる。今無茶をして致命的な事になったら将来に響く。そんな事態は困るしな」
こころは影人の様子から今の彼は無茶をせずに自分のできる範囲内で頑張っているのだと感じた。
「こころは将来の事は考えてるか?」
「私ですか?……そんなのアイドルプリキュア恒久無限推しってやつです!」
「何だその何処ぞの究極のアイドルのファンが持ってそうな団扇に書かれた言葉は」
影人はこころの言い出した聞き覚えのあり過ぎる言葉に呆れ顔を見せる。それから一度溜め息を吐いて別の質問を投げた。
「なら質問を変えるぞ。……こころには将来の夢ってあるか?」
「将来の夢……うーん。前の時はダンサーって考えていたんですけど最近ちょっと迷ってて」
こころは元々ダンサーになる事を考えており、実際そう話している。しかし、今のこころはダンサーが夢かと問われても違う気がするようだった。
「できれば、アイドルプリキュアの魅力を沢山伝えられる人になりたいです」
「……それならインフルエンサーとか配信者か?まぁリスクはかなり伴っちゃうけど」
確かに今挙げた二つの仕事はヒットすれば多くの人に注目してもらえるし、目標であるアイドルプリキュアの魅力を伝えられる人も達成する。
ただし、当然それは現実的に趣味と実益を兼ねられるとは言い難い。少なくともそれを目指して断念してる人なんてこの世界に無数にいる。
「ま、最後に決めるのはこころだから俺はこころの意見を尊重する。だけど、そういう伝え方もあるよってだけ頭に入れてもらえたらと思うかな」
「はい!私の夢……いつか明確に持てるようにしたいですね!」
そんな風に影人とこころはそれなりに長い時間話を続けた。それこそ時間を忘れてしまいそうなくらいに。それからこころは影人へとある質問を投げかけた。
「あの、カゲ君は……私と一緒になれて幸せですか?」
この質問をしたこころは少しだけ不安そうな顔になる。彼女としてはお付き合いを始めてから約半年間。ずっと自分を手元に置いてくれた影人に対して感謝の気持ちと伝える事。そして改めて彼の気持ちを確認するための意味を込めた物である。
そして当然ながら、この質問に対する影人の答えも最初から決まっていた。
「当たり前だろ。むしろ、感謝しないといけないのは俺の方だ」
すると影人は隣に座っているこころに対して両手を広げつつ正面からそっと抱きしめた。
「ッ!!」
こころはほんのり顔を赤くしつつも満更でも無いのか。周りに誰もいない事も相まってその抱擁を受け入れる。
「初めてこの街を訪れたあの時……こころが声をかけてくれなかったらどうなっていたか……。あの日からずっと、俺に向き合ってくれてありがとう」
「もう、カゲ君って。普段は頼り甲斐があるのにこういう時は甘えん坊なんですから」
「べ、別に良いだろ。それだけこころを信頼してるんだから」
2人は少しの間抱き合っていると影人は続けてこころへと頼むように言い出した。
「そうだこころ……。後ろからこころの事……抱いても良いか?」
「後ろから……わかりました。他でも無いカゲ君からの頼みですしね」
こころは影人からの頼みを受け入れると影人の腕の中で反転。影人がこころを膝の上に乗せた上でそっと抱きしめる状態になった。
「どうですか?改めて後ろから抱いてみた感じは」
「ああ、凄く良い。こころの一回り小さい体をしっかり抱きしめられている感じがして……」
尚、影人はこの時間違ってでもこころの胸を触らないように注意を払う。何しろ、恋人とはいえ胸を無許可で勝手に触るのはセクハラ問題になりかねない。こころも影人相手ならちゃんと聞けば許可を出しそうだが今回は無しだ。
「そっか……それなら良かったです。私の抱き心地が良くて……」
「こころも何かしてほしい事があったら言ってくれれば良いからな」
「うーん、そうですね。……でしたら、今日は私と同じベッドで添い寝してほしいです」
すると、影人からの質問に対してこころがお願いしたのは同じベッドでの添い寝である。そして、この2人にとって添い寝をする事自体初めてでは無い。なのであっさりとそれは了承された。
「添い寝か、わかった。じゃあ今日も同じ布団の中で一緒に寝ようか」
「はい!」
こうして、影人とこころは寝る時間になると同じ布団に入った。そして、その状態でお互いに向き合う。
「それじゃあ、お休みなさい」
「ああ、お休み」
そのまま2人はごく自然な形で唇同士を合わせるとお休みのキスを交わしてから手を繋いで眠りに着く。深夜の影人の部屋に小さく聞こえる2人の優しい息遣い。
そんな2人の見せる表情は幸せそうであり、彼等は夢の中でも一緒に楽しい時間を過ごすのだった。
今回も読んでいただきありがとうございます。今回タイトルに健全なという言葉が付いてますが……一応R18に抵触しそうな事は書いていないはずです。もしそういう所を気づかずに書いてしまっていたらまた感想欄で言ってもらえるとありがたいです。
それではまた次回も楽しみにしてください。