キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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プリルンと一緒にプリキュア探し!

可愛らしいぬいぐるみは影人やうたの前に姿を現すとフワフワと浮かび上がった。

 

「嘘!?喋って動いてフワフワしてる!?」

 

「この子絶対この世界の生物じゃないだろ。声は可愛いし妖精さんか?」

 

影人がこのぬいぐるみの正体について予想する中、ぬいぐるみは可愛らしい声で話を始めた。

 

「プリルンはプリルンプリ!」

 

「プリルン……プリ?」

 

「名前プリ!プリルンプリ!」

 

「あー、そういう事。その話し方だとプリルンって名前か」

 

「そうプリ!」

 

影人がぬいぐるみことプリルンの話し方の法則にいち早く気がつくとプリルンは影人の予想が合ってることを教える。

 

「なるほどね!名前はプリルンって言うんだ!」

 

「よろしくプリ!」

 

「私は咲良うた、よろしくね!」

 

そう言ってうたは手を差し出すとプリルンはその指先に小さな手を添える形で握手する。すると二人は影人の方を見た。

 

「……あれ?俺も言わないとダメ?」

 

「当たり前でしょ。初めて会った人には挨拶!」

 

「……どう見ても人外だけどな?そのプリルンって子は。……俺は黒霧影人。よろしく」

 

影人は二人に促されて仕方なくぶっきらぼうに挨拶をするとプリルンは若干頬を膨らませる。

 

「プリ〜。何で影人はそんなに嫌そうプリ?」

 

「別に……嫌では無いよ」

 

「影人君、あんまり人前で話すのが得意じゃないから……。だからわかってあげてね、プリルン」

 

「わかったプリ!」

 

そんな風に勝手に人見知りみたいな感じに認定されて影人は苛立つが、ひとまず話が進まないので諦める事にした。そして、ようやく我に帰ったうたがツッコミを入れる。

 

「……じゃなくて何!?何でここにいるの!?」

 

「我に帰るの遅いなぁ。で、プリルンだっけ?君はここにどうやって来たの?」

 

うたが慌てる中、影人は割とプリルンの謎設定に慣れたような感じで対応していた。

 

「プリ!プリルンはキラキランドを救ってくれる人をドンブラコ〜って探しに来たプリ!」

 

「……は?ドンブラコ〜って、桃太郎じゃないんだから。それとも何?本当に川を下って来たのか?」

 

「影人君、それがね……」

 

影人があり得ないみたいな顔をしながらそう言うとうたが先程影人と会う前にプリルンが出てくるまでの経緯を話す。どうやらプリルンは元々桃の中に入った状態で川を下っていた所、きゅーたろうの散歩をしていたうたがその桃を発見。川からその桃を抱えて出した所、プリルンが中から出てきたらしい。

 

「……うん、あのな?色々と非現実的な事が起きすぎだろ。それで?プリルン。話の続きをしてくれ」

 

「プリ!それで、プリルンは人探しをしていたプリ。でも探している人はもう見つかったプリ!うたプリ!」

 

するとプリルンはうたへと飛びつくと彼女へとキラキラした視線と共に嬉しそうにすり寄る。

 

「え、私!?」

 

「プリ!うたはアイドルプリキュアプリ!」

 

「アイドル……プリキュア?」

 

「まーた訳のわからない単語が出て来たな。プリルン、説明お願い」

 

影人もうたも先程から話されるプリルンの訳のわからない言葉に混乱するばかり。プリルンは影人から投げられたアイドルプリキュアについての説明を始めた。

 

「アイドルプリキュアは、キラキラ〜っと闇を照らす救世主プリ!って、キラキランドの女王様が言ってたプリ!」

 

「結局人づてかよ、その情報……」

 

「へぇ〜。何だかわからないけど凄いね」

 

影人がプリルン自身が元々持っていた情報では無いことに呆れる中、うたもキョトンとしたまま半ば棒読みでアイドルプリキュアについて凄さを口にする。

 

「うたは絶対にアイドルプリキュアプリ!」

 

「……いや、聞いた事無いし。私じゃ無いよ」

 

「だいぶ胡散臭い情報だな。本当にそんな人がいるのかよ」

 

流石にうたもアイドルプリキュアなんて物は知らないし、聞いたことすら無い。また影人もまるで現実味の無いフワフワとした話を信じるつもりはあまり無かった。そんな困惑したような二人を見たプリルンはうたの布団の上で駄々をこねるようにジタバタする。

 

「絶対そうプリ!さっき聞いたうたの歌、凄くキラキラしてたプリ!」

 

「キラキラって……それはまぁそうかもしれないけど〜!」

 

「……やっぱり咲良さんって褒めると結構マジで照れるタイプだな」

 

うたはプリルンに褒められて嬉しそうに照れる中、影人は彼女が割と褒められて増長するタイプであると見抜いていた。

 

「だからうたは、アイドルプリキュアプリ!」

 

「いや、でもやっぱり私じゃないよ。その……何とかランド?」

 

「キラキランドプリ」

 

「それも聞いた事無いし。ふぁあ……」

 

うたはあまりプリルンの言うアイドルプリキュアやキラキランドに馴染みが無いためにベッドへと寝転ぶと興味無さそうに欠伸をするとプリルンが浮かぶ反対の方を向いて寝ようとしてしまう。

 

「他を探した方が良いんじゃないかなぁ……」

 

「プリ!?プリ!じゃあ誰がアイドルプリキュアプリ!?」

 

プリルンはうたの言葉を聞いて部屋の中を暴れるように飛び回る。そのせいで影人はプリルンの暴走飛行の直撃を喰らいそうになったために慌ててしゃがんで回避した。

 

「危ねぇ!?おい、プリルン。暴れるのは良いけど、せめて俺を巻き込むなよ!」

 

そのまま影人は二度目のプリルンの突進を回避するとプリルンは横になっていたうたの頭へと落下して寝てしまったうたはプリルンによって無理矢理起こされてしまう。

 

「痛ったぁ……ん?」

 

「プリルンは……アイドルプリキュアを探さないと……プリ〜」

 

うたが頭を抑えながら起きるとプリルンがうたへと涙目で訴えるような目線をうたへと向けた。

 

「あ、この子泣き落としに入ったぞ」

 

「プリ……」

 

「プリプリ……」

 

影人が二人が向かい合うのを観察する中、プリルンは哀れな小動物のように涙を浮かべた愛くるしい目線でうたへと訴えかける。そんな可哀想なプリルンを見てしまってはうたの良心が痛む。

 

「あ……ダメ、そんな目で見つめられたら……」

 

「プリプリ……」

 

「じゃあ、一緒に探しに行こっか」

 

「プリ!」

 

結局うたはプリルンから向けられた目に負けてプリルンと共にアイドルプリキュアを探す事に。それを聞いた影人は行こうとする。

 

「取り敢えず、話は纏まったみたいだし、俺は帰……」

 

「待って」

 

影人がうたの部屋の扉を開けようとドアノブに手をかけた瞬間、うたに手を掴まれると影人が行こうとするのを止めた。

 

「影人君はこんな可哀想な顔をしたプリルンを見捨てるの……?」

 

「いや、どう見てもここから先に踏み込んだら面倒事になるだろ」

 

影人としてはこれ以上プリルンの影響で起きる面倒事には首を突っ込みたくない。というより、もうこれ以上踏み込んだら色々と取り返しが付かなくなると察していた。

 

「影人君、優しいでしょ……。初めて会った時、あんまり関わりたく無さそうな顔をしていたのにお店にちゃんと来てくれて……」

 

「いや、プリルンを連れてた咲良さんを見たらそりゃあ行かないとダメだと思うでしょ」

 

「ほら、プリルンの事だってさっきちゃんと見てくれてたじゃん」

 

「プリルンは咲良さんが半ば無理矢理預けてきたんだし、そこは面倒を見ないとダメって思うだろ。ついでに言えば、プリルンに関しては割と自由に動いてたし最後なんていなくなったからな?」

 

「私の話を聞くために二時間ぐらい待っててくれたじゃん」

 

「話すために仕方なく待ってたんだよ。というか、じゃなかったらとっくに帰ってるし」

 

うたはどうしても影人にアイドルプリキュア探しを付き合ってもらいたいのか、影人を何とかして引き留めようとする。そこにプリルンも影人への泣き落としをするためにつぶらな瞳を向けた。

 

「プリ……影人はプリルンを見捨てるプリ……?」

 

「………」

 

影人はプリルンのその目に彼の心にある僅かな良心が痛み始める。更にダメ押しとばかりにうたも同じような目を影人へと向けてきた。

 

「影人君、お願い……。この子を助けるためだと思って……」

 

「……あーもう!わかった、わかったから二人揃ってその目で俺を見てくるな!俺が助けを求めて縋ってくるお前達を見捨てるみたいな雰囲気が出るだろ!」

 

影人は仕方ないとばかりに二人のために折れる事にした。そうしないと二人から更に自分が断りづらくなるような行為をされると思ったからである。

 

「くっ……マジで可愛い子からのその目はズルすきるだろ……」

 

「えー?影人君、やっぱり私の事可愛いって思ってくれてるの?」

 

「プリルンも可愛いプリ?」

 

「うるせぇ!増長すんな、あんまりそういう事言うなら今から拒否するからな!」

 

影人は半ばヤケクソと言わんばかりにうたとプリルンのアイドルプリキュア探しに付き合うことにした。それから三人は街に出ると影人はうたから若干距離を取って歩いていく。

 

「ちょっと、影人君。そんなに離れなくても良いでしょ」

 

「いいや、このくらいは離れさせろ。変な事に巻き込まれたくないんだよ」

 

「それは良いけど、周りから見たら変な人が私について来てるみたいに見えるかもよ?」

 

うたに鋭い指摘を喰らった影人。影人は苛立つように顔を歪めながら仕方なくうたへとある程度近づいて二人で同じ事をやっているような位置にまで来た。

 

「く、クソ……何でこんな事に……」

 

「ねえ、プリルン。プリキュアっていうアイドルを探せば良いんだよね?」

 

「だったらスマホで検索するのが早いだろ。というか、それで済むならわざわざ街に来なくて良かった説あるよな?」

 

今現在、二人は割と建物が揃っている街中にまで来ていた。影人とうたがスマホを使って検索する中、プリルンはスマホが気になったのかうたの肩に出てくる。

 

「プリリ?」

 

「プリキュアっと……あれ?」

 

「マジかよ。検索結果無しか……って、おい!」

 

二人のスマホには検索結果無しの画面が出て、影人がうたに話をしようと顔を上げた瞬間。影人の視界にはうたの奥でプリルンが勝手に浮かびながら自撮り写真を撮ろうとしている姿が映った。

 

「ん?」

 

「プリ!プリ!」

 

「「ちょっ!?」」

 

プリルンが手に持った可愛らしい自撮り棒で伸ばした小型カメラを使って写真を何枚も撮る。そんな中、近くを歩いていた女性と手を繋いでいた彼女の子供がプリルンを見て指さしていた。

 

「ママ〜、あれ何?」

 

「うわああっ!」

 

「ごめんね……何でもないんだ〜あはは……」

 

うたがプリルンを捕まえて引き寄せると同時に影人がプリルンを隠すようにうたの前に出ると本来苦手な超不自然な愛想笑いをして誤魔化す。それから二人は道端の建物の影に行くと影人が額に青筋を立てたような状態でプリルンへと笑っているが目が笑ってない顔を向けた。

 

「プ〜リ〜ル〜ン?」

 

「プリ?どうして影人は怒ってるプリ?」

 

「影人君はひとまず落ち着くとして、プリルン。あんまり他の人に見つからない方が良いよ」

 

「どうしてプリ?」

 

「色々と大騒ぎになるからだな。誤魔化せる間は良いかもしれないけど、あんまり度が過ぎると俺達でも庇いきれなくなる。頼むから大人しくしていてくれ」

 

影人はうたの前で怒ると場の空気が悪くなると思って怒るのは取り敢えず自重。ただ、プリルンに言わないといけない事はちゃんと注意する形で戒めた。

 

「わかったプリ!」

 

「ホントにわかったのかよ……」

 

影人は嫌な予感がしていた。プリルンは恐らくこの世界に来てそこまで経ってない。つまり、例えるなら好奇心旺盛で無邪気な子供に対して大人しくしてと言っているような物だ。動く姿が見られたらヤバいという点を鑑みれば子供よりもっとタチが悪い。

 

「取り敢えず、アイドルプリキュアを探すんだし近くに良い場所があるよ」

 

「そうなのか?」

 

それから二人が移動すると“IDOL・STORE”と呼ばれる所謂アイドルグッズの専門店へと入った。

 

「すみませーん!プリキュアっていうアイドル知りませんか?」

 

「ちょ、咲良さん。直接聞くのかよ」

 

「この方が手っ取り早いじゃん」

 

影人は検索しても出てこなかったのなら多分店員に聞いても無駄だと思っていた。つまり、仮に存在していたとしても知名度はかなり低いと踏んだのである。

 

「聞いた事無いですね……」

 

「「そうですか……」」

 

二人が店員に聞いている間プリルンは二人の足元にいたが、プリルンは店のある場所が気になると勝手に浮かび上がって飛んでしまう。

 

「プリ?プリプリプリプリ〜」

 

「「はぁああっ!?」」

 

二人は店の中なので手加減したが、奇声のような慌てた声を上げると急いでプリルンの事を追いかける。そして、二人がプリルンに追いつくとその手にハートの形をしたペンライトを持っていた。

 

「プリ〜!」

 

「だから動き回ったらダメだってば」

 

「……頼むから大人しくしてくれ」

 

二人がプリルンにそう言うものの、プリルン本人はクルリと二人の方を向いてペンライト及びつぶらな瞳を見せる。

 

「プリ〜」

 

「へ?欲しいの?」

 

「プリ〜。これがあれば、アイドルプリキュアが見つかるかもプリ!」

 

「いや、ただプリルンが欲しいだけにしか見えないんだけど……」

 

「お願いプリ!お願いプリ!プリプリプリ!プリプリプリ!」

 

そんな風に懇願するプリルン。うたはそんなプリルンを見て財布を手にするが、彼女はまだ中二。お小遣いにも限界はある。しかもペンライトはそれなりに高かったので躊躇してしまっていた。

 

「くうう……」

 

「ほら、プリルン。これが欲しいんだろ?」

 

そう言って影人は既に購入したプリルンの持っている物と全く同じ物をプリルンへと差し出した。

 

「え!?影人君!?」

 

「プリ〜!ありがとうプリ!!」

 

「どうせ言う事聞かないとコイツまた泣くだろ?そうしたら多分咲良さんなら買う方向に動くと思ったからな。俺のお小遣いなら気にするな。……どうせ欲しい物なんて無いしな……」

 

「でも……」

 

影人はつい先程、グリッターで朝食を食べた際にお小遣いを多少は消費したはず。更に言えばプリルンに付き合うのも嫌々だったのだ。なのにどうしてここまで彼がするのか。うたはどうしても引っかかってしまった。

 

「影人君、私達に嫌々付き合わせたのにどうして……」

 

「別に咲良さんが気にする必要は無いよ。……元々使い道の無かったお金なんだ。誰かの役に立てて良かったと思う」

 

影人はそんな風にどこか寂しそうに言う。正直な所、影人にとっては痛い出費ではあった。むしろ、今まで妹である夢乃を除いては他人のための出費なんて殆どした事無い。それでもうたに払わせるわけにはいかないと影人は率先して出費という痛みを受けた事になる。

 

「影人君……」

 

「さ、俺の事は気にしないでさっさと続きを探すぞ。プリルンが別の物に興味を持ったらまた面倒だからな」

 

影人がさっさと先に行く中、うたは罪悪感に包まれていた。それから二人でアイドルプリキュアに関するCDとかを探す事に。

 

「プ……プ……無いね……」

 

「こっちもダメだ。やっぱりアイドルプリキュアなんて無いんじゃないの?」

 

二人で手分けして探したものの、このお店にはアイドルプリキュア関連のCDは存在しなかった。

 

「って……あれ?プリルンは?」

 

「あ、あそこにヘッドホンをしたぬいぐるみが……」

 

「「んん!?」」

 

二人の視界に映ったのはヘッドホンの試聴コーナーでヘッドホンを耳に当てて楽しそうに先程買ってもらったペンライトを振りながら踊っているぬいぐるみ……プリルンがいた。

 

「あ!ここにあった!私のぬいぐるみ!」

 

うたが慌てて紛失した自分のぬいぐるみを見つけたと言わんばかりの体裁でプリルンを捕まえる。もうこうなると好き放題するプリルンに影人は呆れて物も言えなかった。

 

「はぁ……ダメだこりゃ」

 

「ちょっとプリルン、探す気ある?」

 

「ん?あるプリ!」

 

「見ての通りこの世界を満喫してんな、これ……」

 

それから二人は店の外に出るとアイドルプリキュアが探してもなかなか見つからない事に苦悩する。

 

「ここまで探しても見つからないなんて……」

 

「やっぱり最初からいないんだよ、この世界にアイドルプリキュアなんて物」

 

「諦めるにはまだ早いプリ!絶対にいるプリ!」

 

「あのなぁ……」

 

プリルンが応援する中、影人はもう割と本気でキレそうになっていた。それでも我慢しているのはここで怒ってうたに嫌な思いをさせたく無いという気持ちがまだ残っているからだ。そうでも無ければ我儘なプリルンに付き合うなんてこんな面倒な事、投げ出しているだろう。

 

「ね、そういえばアイドルプリキュアって何なの?」

 

「キラキラ〜っと闇を照らすプリ!」

 

「キラキラ〜っと闇を照らすって、キラッキランランな人の事?」

 

「お前ら、会話が抽象的すぎて俺には理解できないぞ……」

 

影人は二人の使う例えに具体性が無さすぎて困惑していた。このままでは本当に影人は付いていけなくなってしまう。

 

「とにかくキラッキランランな人にどんどん声をかけて行こうか!」

 

「プリ!!」

 

「って、おい!何で……もう良いや。どうにでもなれ……」

 

影人はまたツッコミを入れようとするが、最早言っても無駄だと思うと二人に付き合う事に。それから街にいるうた基準でキラッキランランしていそうな人を探すと片っ端から声をかけていく。

 

「あの!あなた、プリキュアですか?」

 

「ばぶ?」

 

「何?それ」

 

「………」

 

「プリキュアですか?」

 

「何だい?それ?」

 

「………」

 

「プリキュアですか?」

 

「「にゃーお」」

 

「………」

 

それから何人かに声をかけるも、全部相手の人を困惑させるか呑気な猫に鳴かれるだけに終わった。ちなみに影人は完全に呆れてツッコミを入れる気持ちも失せてしまったようで何も声を出さなくなってしまう。

 

それから歩いていくと先程影人がこころと二人で話をしたキッチンカーの近くにまでやってきた。

 

「なかなか見つからないね」

 

「クンクンクン……お腹空いたプリ……」

 

「……え?」

 

「食べたいプリ〜」

 

プリルンはキッチンカーで売っているホットドッグの匂いに釣られてお腹を空かせたのか、うたの腕から乗り出すように手を伸ばしていた。

 

「アレを食べたらきっと、アイドルプリキュアが見つかるプリ〜!」

 

「ええー!?」

 

うたはまたねだってくるプリルンに顔を顰めていると影人はうたとプリルンがやり取りをしている間にホットドッグを手に持って戻ってくる。

 

「ほら。お望みのホットドッグだぞ」

 

「あっ!!影人君、どうしてまた……」

 

「別に……俺も食べたかったから買って来ただけだし。ただ、俺の分も入ってるから食べるなら半分にしろよ。プリルン」

 

そう言いつつも、影人はプリルンの事だから一本丸ごと食べられると予想していた。影人がどうなるかと思ってプリルンにホットドッグを渡すと案の定プリルンは物凄いスピードでホットドッグを食べ始めた。

 

「あーむっ!」

 

そして、そのまま完食。その時間、僅か5秒足らずである。本当にその小さな体のどこにホットドッグが全部入るだけの容量があるのやらと言った所だ。

 

「げふっ……美味しかったプリ!」

 

「あっ!?影人君の分……半分食べるって言ってたのに……」

 

「まぁ、こうなるだろうな」

 

影人のアッサリとした態度にうたの心は更に締め付けられる。すると彼女は影人へとプリルンを渡した。

 

「ちょっと待ってて」

 

「え?」

 

それから二人が四角の石のベンチに座って少し経つ。するとうたがその手に先程影人が持っていたホットドッグと同じ物を二つ手にしていた。

 

「お、咲良さんも買ったんだな……ところで何で二つ?」

 

うたは影人の隣にある四角の石のベンチに座ると手にしていたホットドッグのうち、一個を影人へと差し出す。

 

「はい、影人君もどうぞ!」

 

「……え」

 

影人は困惑したような顔つきになるとうたは影人へと真剣な顔つきを向けたままである。

 

「影人君、食べたかったんでしょ?だからこれ」

 

「でも、咲良さんのお小遣い……」

 

「影人君が出した出費に比べたら大した事無いから!」

 

影人はそう言われては受け取るしか無く、二人でホットドッグを食べ始めた。影人はその最中、うたへと問いかける。

 

「何でこんな事したんだよ……。俺になんて助けられるだけの価値は無いのにさ……」

 

「影人君、流石にちょっとやり過ぎてたから。私だっているのに私にはお金を出させてくれないし、一人で全部その負担を受けてる感じだったから……見捨てられないよ。嫌々で着いてきてくれてるなら……尚更」

 

うたはそんな風に影人に対する不安を口にする。彼女はこのまま影人にだけお金を出させたまま終わったら絶対後悔する……そう思って自分も影人のために何かできないかと思った行動がこれなのだ。

 

「でも、そんな事しなくても俺になんか救われる価値なんて……」

 

「ほら、そういう所。救われる価値が無いって、そんなに優しい心を持ってるのに……。救われる価値が無いなんてそんな事言わないでよ。影人君、さっき自分でキラッキランランしてないって言ってたけど……私に言わせたら影人君も十分キラッキランランしてると思う」

 

「プリ?でも影人からは何もキラキラを感じないプリ」

 

そのタイミングでプリルンの若干無神経な発言が入るが、それでもうたは真剣な顔をして影人を見つめる。

 

「そうかよ……。褒めてくれるのは素直に受け取っておく……。でも、俺には何も期待しない方が良いよ。誰かの光になれないこんな自分に価値があるなんて到底思えないからさ」

 

影人の言葉にうたはやっぱり影人には何かがあるのだと察した。ひとまずこれ以上続けても押し問答になると考えて一旦この話を終わりにするとアイドルプリキュアの事に戻る。

 

「取り敢えず、またアイドルプリキュアを探さないとなぁ……」

 

するとうたの隣。影人のいる方とは反対側に一人の力士が先程のお店のホットドッグやジュースを手に腰掛けていた。

 

「あの、プリキュアですか?」

 

「ん?そうだよ」

 

「違いますよね……え?」

 

「「ええっ!?いたぁああっ!」」

 

力士はうたの質問に頷いた。つまり、プリキュアであると自分で認めたのだ。

 

「……なんかよくわからないけど、いたのか?」

 

影人に関してはここまでの捜索でかなり脳がやられたのか、半ば半分ボケているような状態だった。何にせよ、プリキュアは見つかったのだ。それから一同はプリルンが最初にやってきた川に来るとプリルンは乗ってきた桃を出した。

 

「良かったね、プリルン」

 

「プリ!行ってくるプリ!」

 

それからプリキュア?を名乗った力士とプリルンは桃に入るとまた元来た川を遡るようにしてどこかへと去っていく。ただ、この光景を見た影人とうたの感想。それは……。

 

「「よく入ったな……」」

 

「うた、影人!バイバイプリ〜!」

 

そんな風に手を振って別れるプリルン。そんなプリルンを見送った二人はまた元の生活に戻る事になる。

 

「ごめんね、影人君。こんなに付き合わせて……」

 

「別に……。特に礼もいらねぇよ。……結果的に上手く片付いたんだから良かったんじゃね」

 

ただ、影人の中に引っかかるあることがあった。それは先程の力士。スマホで調べてみた結果、全く同じ顔の人物がヒットしたのだ。なので、恐らく影人はまたプリルンが戻ってくる流れになるだろうと予測。そしてそれは翌日に現実となった。

 

「影人君〜!!」

 

翌日、いつものように朝の道調べをしていたらプリルンを抱えたうたが影人の前に現れる。

 

「ああ、この流れ何となく知ってた……」

 

影人は予想通りとばかりに二人の話を聞く。どうやら昨日の力士は“くりきゅうた”というらしく、それを聞き間違えしたようで。どちらにせよ人違いだった事がわかった。なので今度はうたの方にプリルンが付き合っている形である。

 

「取り敢えず、事情はわかった。じゃ、俺はこれで……」

 

「待って!お願いだから影人君にも付き合って欲しいの〜!」

 

「プリ〜!プリルン達を見捨てないでプリ〜!」

 

「ですよね……」

 

影人はもう抵抗しても無駄だと思ったのか、二人に付き合う事にした。その様子をこころが道端の影から偶々見かけると影人へと声をかけようとする。

 

「あ、影人せんぱ……あれ?」

 

彼女は影人の隣にいる女の子を見て目を見開いた。そして、心に動揺が広がる。

 

「先輩が……知らない女の人と一緒で……あれ?」

 

こころは胸がチクッとするような感覚と共にザワザワと胸がざわめき始めた。そのままこころはその場で気持ちを落ち着けている間に影人達はいなくなってしまう。

 

「先輩……何で」

 

こころは何とか気持ちを落ち着けるものの、影人が知らない女と一緒にいる。しかも女の方は影人へと割と近い距離にいたのでこころの胸のざわめきはどうしても抑えきれないのであった。




また次回もお楽しみに。
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