キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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立ち直る心 彼女の溜め込まれた気持ち

東中にこころの家を教えられてからうた、ななはプリルンと共に彼女の自宅にやってきていた。するとそこにレイもやってくる。

 

「えっと、ここだね」

 

「よ、二人共どうしたんだ?」

 

「レイ君……どうしてここに?」

 

「俺も東中さんに教えてもらってね。……俺もアイツと約束したからな。紫雨さんの気持ちを取り戻すって」

 

レイも影人との約束を果たすためにここに来ている。今の影人には彼女をどうにかする事はできないからだ。

 

「うん。じゃあ、早速チャイムを」

 

うたはこころの家のチャイムを鳴らすと中から彼女の祖母である西村恵子が出てきた。

 

「あら、その制服はここちゃんのお友達かしら?」

 

「はい、こころちゃんに用事があって」

 

「そうなのね。でもごめんなさい。ここちゃん、さっきダンスの練習のために行っちゃって」

 

その言葉を聞いて一同は愕然としてしまう。こころがダンスの練習をする詳しい場所に関しては影人しか知らない。

 

「ひとまずは折角来てくれたんだし上がって待ってて」

 

「ありがとうございます、お邪魔します」

 

「「お邪魔します」」

 

それから三人はこころの家に上がるとプリルンも一応うたの背中にくっつく形で中に入っていく。それから三人は客間と呼べる和室に案内された。

 

「お茶とお菓子を持ってくるからね」

 

「あ、お構い無く!」

 

なながそう言って恵子へと返すとふと三人の視線が部屋の一角にある写真立ての中に移る。そこには写真の中に笑顔を浮かべてピースサインを向ける男性がいた。その隣にはこころやその母親とのスリーショットも存在する。写真の中のこころは今よりももっと幼い印象であるため、過去の物だろう。

 

「……ここちゃんのお父さん、聞いたかしら?ここちゃんが小さい時に亡くなったの」

 

「えっ!?」

 

「そうだったんですね……」

 

「ダンス、小さい時からやってるんですね」

 

写真の中にある幼いこころが、踊る姿を見てダンスをやり始めたのは幼い頃なのだと察したレイがそう聞く。

 

「ええ、……ここちゃんがダンスを始めたのはね。小さい時に出会った男の子……今は同じ学校に通ってるんだけど、名前は黒霧影人君。その子の影響なの」

 

「影人君が……こころちゃんにダンスの楽しさを教えたんですね」

 

「ええ、ここちゃんは影人君に出会えてとても幸せそうだった。多分、あの子の初恋の子ね。今も彼の事ばかり考えているもの」

 

「やっぱり、こころちゃんは影人君の事を……」

 

「大好きだと思うわ。あ、そうそう。ここちゃんは最近ハマっている物があるの。えっと、確か……」

 

恵子はそう言って考え始める。うたは彼女が何を言いたいのか何となく察すると声を上げた。

 

「あっ、もしかしてキュアアイドルですか!?」

 

「そうそう。それと、キュアウインクもね。すっごく楽しそうなのよ!……二人のダンスをできるようにしてるのは、影人君に少しでも追いつきたいからだって」

 

「それって本人がそう言ってたんですか?」

 

「……私の勘よ。ここちゃんは大好きのためなら何でも一直線でストイックだから」

 

恵子の言葉を聞いて三人は確かに今、こころを慰めるために影人がどんな言葉をかけてもそれは本人にとっては逆効果になりかねないと感じ取っていた。すると恵子は更にこころの話を続ける事になる。

 

「……私は学校にこんなに素敵な先輩がいて安心だわ」

 

「それってどう言う事ですか?」

 

レイは先輩関連で何か悪い事があったのかと身構えるが、恵子の話したい事はレイが思っていたような内容では無かった。

 

「……ここちゃんは昔から何でも一人で我慢しちゃう子だから」

 

ただ、こころはやはりどれだけ自分の嫌な事だったとしても何でも我慢して溜め込みがちなのだという事実を三人は受け止める。

 

となると、影人の件でやはりこころは我慢して一人で溜め込んでいる可能性が高い。そう三人は思ってしまった。そして我慢して溜め込んできたからこそ、影人がこころの出している彼へのSOSを受け取りづらい状況を作っている可能性もレイの脳裏に浮かぶ事になる。

 

同時刻。こころは一人でダンスを踊るものの、やはり心は乱れているせいでそれが動きにも直結。こころにとって満足のいくダンスからどんどん遠ざかるのを感じていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

こころは胸の苦しさが顔に出ており、それのせいで呼吸もおかしくなってくる。するとガクリと膝が沈んでしまうとその場に倒れてしまう。

 

「(おかしい……。踊っても、踊っても、踊っても……頭から離れない。二人の事も……カゲ君の事も!)」

 

こころは荒くなった息を整える中、胸が更に締め付けられるような感覚も感じるとまずは一度荒くなってしまった呼吸を戻す事にした。このままでは踊り出した瞬間に呼吸困難で倒れかねない。どれだけ忘れるために踊りたくても命に関わるようなラインは超えていけないと考えて何とか座り込む所にまで体勢を戻すと苦しくなった息を整える。

 

「はぁ……はぁ……忘れなきゃ、忘れなきゃ、忘れなきゃ……こんな私は、カゲ君の隣になんていちゃいけない。アイドルプリキュアだって……今の私には無理なのに」

 

するとこころの胸の中にキュアアイドルの歌詞が浮かんで来ると彼女は無意識に口ずさみ始める。

 

「キミのハートにとびっきり♪……」

 

そこまで歌った所でこころは目を見開いて止める。アイドルプリキュアはもう目指さないと、憧れにするのなんてやったらダメだと彼女は考えて口籠もってしまうのだ。

 

「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪……」

 

するとそこに自分が歌った歌と同じ歌を歌いながらやってくる三つの影。そこにいたのはこころの家にいたはずのうた、なな、レイだった。

 

「うた先輩、なな先輩、プリルン……と、あと……」

 

「影人の友達の音崎レイだよ。初めまして、紫雨さん」

 

「はい……。初めまして、レイ先輩」

 

こころはそんな三人とプリルンの方を向くとなながまずは優しく話を始める事に。

 

「こころちゃんが心配で待ってられなくて、こころちゃんのおばあさんに聞いて来ちゃったの」

 

「そうですか……待たせてすみません。それと……見てしまったんですね。私が踊る所」

 

こころが暗い声色でそう呟くとうた、なな、プリルンは暗い顔つきでそれを受け止める。レイも真剣な目を向けた。

 

「……プリキュアになんてなれないって、心キュンキュンしてないって……。さよならしたのに、忘れられないんです!」

 

こころはまるで行き場の無くなった自分への悔しさや怒りをぶつけるようにそう言う中、プリルンがいても経ってもいられずに彼女へ飛びついた。

 

「プリ〜!」

 

プリルンが今にも泣きそうな顔つきでこころの胸に飛び込むと抱きつく中、こころはそんなプリルンを同じように泣きそうになりながら優しく抱きしめる。

 

「……大好きで、憧れでも……叶えられないなら……忘れたいのに」

 

こころは一筋の涙を落とす中、レイはそんなこころへと一度深呼吸してから声をかけた。

 

「紫雨さん、どうしてそうやって逃げるの?」

 

「ッ……」

 

「できないって、自分なんか頑張っても無理だって……紫雨さんの気持ちはそんな物なのか?」

 

「レイ先輩にはわかりませんよ!目の前に自分なんかには超えられない壁ができて、どうしても無理だって悟った人の気持ちなんて」

 

するとレイの脳裏にとある光景が浮かぶ。彼はその光景を押し退けるように彼女へと話しかけた。

 

「ああ、俺にはわからない。でも、紫雨さんの影人への気持ちはそんな簡単に諦められるような事なのか?」

 

「ッ!?」

 

レイはあくまで冷静にこころへと話しかける。ここで自分が感情的になるのが一番最悪だとわかっているからだ。

 

「紫雨さん、ずっと頑張ってきたんだろ?アイツのために……アイドルプリキュアだってそのために頑張ってなろうと努力したんだろ?」

 

「……当たり前じゃないですか、でも私なんかには……」

 

「そんな事誰が決めたんだよ。紫雨さんが勝手に折れて諦めてるだけだ。……そんな紫雨さんを、アイツが望むと思ってるのかよ!だったら、毎日毎日朝練に付き合ってた影人が……馬鹿みたいに思えるだろ」

 

レイの言葉は確かに今の弱り切ったこころ相手に鞭を打つような厳しい口調だった。それでも、レイはそんな彼女のためにいつも朝早くから付き合っている影人の努力を無駄になんてしたくなかったのだ。

 

「アイドルプリキュアの肩書きなんてどうでも良いんだよ。アイツはきっと、頑張ってさえいるならどんな紫雨さんでも受け止めてくれる。それでもしアイツが紫雨さんを蔑ろにしたら俺がぶん殴ってやる。……だから、自分に自信を無くすのだけは止めろ」

 

レイにそう言われてこころはそれでも迷う。影人相手にそんな自分の弱さなんて見せて良いのか、自分は結局初めて会ったあの時から何も変われてない。そんな弱い自分なんて影人に見せられないと考えているのだ。

 

ただ、こころの気持ちは先程からグチャグチャになってるのか、涙がとめどなく溢れて止まらない。そのため泣いている所を見せたく無いと強がる。

 

「私、泣いてません……私、弱ってなんか……いません。カゲ先輩と付き合えなくても……仕方な……い……ううっ……」

 

こころは泣きながらも必死にその自分を隠そうとする。これもこころの悪い癖だ。自分の本音を無理に抑えようとしている。そんな彼女を見てうたとななはレイが打った分の鞭の代わりとして彼女に近づくと優しい言葉をかけた。

 

「こころちゃん、我慢しなくて……良いんだよ」

 

「ッ……そんなの、そんなのダメに……決まって……ひぐっ……」

 

こころは欠壊していく涙の堰を止めようとしてももう止まる物では無い。それだけ我慢し続けた証拠なのだから。

 

「泣きたい時は泣いて良いんだよ」

 

「うん。きっと辛くなっちゃうから。心に蓋をしたら、きっと影人君も心配しちゃうよ」

 

「うぅ……うぁああああっ!」

 

それからこころの我慢は限界を超えたのか、その場に彼女の泣く声がこだます。長々と溜め続けた気持ちをようやくぶつけられたのだ。

 

「レイ君、どうしてあんな事を……」

 

「別に。発破かけた方が気持ちを出しやすいって思っただけ。それに、きっと二人なら俺が傷つけた分もちゃんとフォローしてくれると思ったから」

 

レイはそこまで計算した上で先程の傷口に塩を塗るようなキツイ言葉をかけたのだ。……彼は知っている。甘やかしてばかりだとこころは強くなれないと。ここで一度厳しい現実と向き合えないようならどの道またどこかで折れてしまうと感じたからこそ、後のフォロー役を二人に任せたのだ。二人の性格を把握して信じているからこそやれた手法である。

 

「……レイ君は、そうやって見ると不器用すぎるくらいに優しいんだね」

 

「別に、俺は優しくなんかねーよ。てか、優しい奴ならあんなキツイ言葉を傷ついてる相手にかけないだろ」

 

レイは淡々と返す中、それでもななはそんなレイの言葉の奥はこころを立ち直らせるためにどうすれば上手く行くのか考えた上での発想なのだろうと感じるのだった。

 

それから暫くして。こころは一通り泣いて涙も止まるとプリルンへと話しかける。

 

「ありがとうプリルン」

 

「プリ!」

 

「ありがとうございました!気持ちが何だかスッキリしました!」

 

こころの顔つきは嫌なものを全部吐き出した後のように晴れやかな物になっていた。するとうたはそんなこころの手を取る。

 

「ううん。こころちゃんはきっと……ううん。ゼッタイ♪アイドル♪」

 

うたが歌を歌い続ける中、プリルンはこころの肩に乗り、ななもこころの逆の手を握る。

 

「ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪」

 

そのままうたとななの二人に引っ張られたこころは建物の影になっていた場所から夕日が照らす明るい場所へと飛び出した。それは、こころの気持ちが暗い影の中から明るい外に出られたという彼女の心境を示しているのだろう。

 

「先輩、突然歌うの……ズルいです」

 

「そう?」

 

「普通歌いませんよ」

 

「ああ。普通なら歌わない」

 

「あ!レイ君まで……」

 

「でも、咲良うたって子に常識は通用しないって思った方がこの後友達でいる時楽だぞ?」

 

「友達……」

 

レイにそう言われてななはクスリと笑う中、うたはこころの前に出るとニッと笑って自分の事を話す。

 

「えへへっ、歌いたい時に歌う!それが咲良うたです!」

 

「そうだね!それがうたちゃんだもんね!」

 

「プリ!」

 

周りの明るさに釣られてこころも思わずクスッと笑うと嫌な気持ちは完全に吹き飛んでいた。それから彼女は一人家に帰ると父の遺影の前で手を合わせる。

 

「(……私、心に蓋をしてたのかな)」

 

そして、それから自分の部屋の押し入れにしまっていたアイドルプリキュアのグッズを再度出すとそれをまた部屋に飾る。

 

「もう自分の気持ちに蓋なんてしない。……カゲ君への気持ちも、もっと出しても良いのかな」

 

そんな風にまた影人へと話しかけれるという気持ちに心を躍らせる彼女であった。

 

時刻は少し遡る。夕方になってベンチで寝てしまっていた影人は目を覚ますと日が沈みかけているのを確認。

 

「ん……俺、いつの間にか寝て……」

 

「あ、おはよう。影人君」

 

「天城さん……って、ああっ!」

 

「ふふっ。随分と長く寝てましたね」

 

「すみません、天城さん。こんな事に付き合わせてしまって」

 

「ううん。むしろ、私が待ってたのはこの前助けてもらった恩を返してるだけだから。気にしなくて良いよ」

 

「でも、折角の休日なのに」

 

影人が申し訳無さそうにする中、長々と待たされる形となった天城は特に怒る様子も無く影人へと優しく接した。

 

「……影人君の悩み、ちゃんと解決すると良いね。じゃあ、影人君も帰らないとだろうし。私はそろそろ行くね」

 

影人は去っていく天城を見ながら自分の胸の中に謎の違和感を感じていた。彼女の前で何故か自分は警戒を解いて寝てしまった。本来なら一日二日でこの警戒が消える事は無いはず。しかも、寝ている時に感じていた物は本来なら不快に感じるようなザワザワとした感じなのに……何故か、何故か自分に馴染んでしまった。

 

「……俺の体、どうなってんだ」

 

影人はそんな風に呟くとひとまずは目の前のこころの事だと気持ちを切り替える。自分は彼女が立ち直るまでちゃんと待たなければならない。自分の作ったミスの責任はちゃんと自分で償おうと考えながらその場を後にするのだった。

 

すると木の影からそんな彼をスラッシューは笑みを浮かべながら見つめる。

 

「影人君、やっぱりあの寝顔も可愛かったですね。流石、私の同類だわ……ふふっ。あの子の中の力も受け入れてくれそうな感じはしたし、そのうちこれも渡してあげないとですね」

 

スラッシューは手にした一つの黒いカラーリングの四芒星の形……つまりキラキラマークの形をしたブローチを手にする。構造的にはアイドルハートブローチをキラキラマークの形にしたというイメージに近い。

 

ただ、その色合いは黒を基調としているだけあって不気味さが出てきているが。

 

「あの子ならきっと世界を真っ暗闇に染めるための役に立ちますからね。ね、ダークイーネ様」

 

その言葉を最後にスラッシューの姿は消失。果たして、彼女が影人に対してやろうとしている事とは……。




今回でこころが立ち直り最後にまたスラッシューが出てきましたが、わかりやすいかもですがこのタイミングであるキャラのCVを公開しますね。

天城切音……CV:藤本侑里さん

このCVを見て察しの良い方は“あっ”ってなるかもですが、一応読者にわかりやすくするために敢えてここで公開しておきます。この危険な状況が果たしてどう転んでいくか。また次回も楽しみにしてください。
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