キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
日本時間の土曜日の朝、黒霧家でお泊りをしたこころ。そんな彼女と一緒に寝ていた彼氏の影人は目を覚ます。
「んっ……」
影人が目を開けると目の前には自分と共に添い寝をしたこころが可愛らしい顔付きを見せつつ同じく可愛らしい寝息を立てていた。
「すぅ……すぅ……」
「ッ……」
影人はそんなこころが目の前にいる現状を見て思わず息を呑む。それから手を少しだけ伸ばした所で慌てて引っ込めた。
「(って、危ねぇええっ!?ヤバい、今普通に手を出そうとしてしまった。そのくらい目の前のこころが無防備かつ可愛すぎて……)」
影人はどうにか目の前にいるこころに手を出さないように理性を働かせて抑え込む。もし今下手に手を出せば彼女に嫌われるかもしれないと考えた影人は一旦落ち着くと改めて彼女の寝顔を至近距離から眺める。
「(ヤバいな。もう既に何回も見てるはずなのにこころの寝顔が破壊力あり過ぎて……。こころはあまり良い気分にならないかもしれないけど、今のちょっとだけ幼さが残ってるこの感じも好きなんだよな)」
ただ、本人は周りと比べて自分の体が子供っぽい感じである事に不満を抱いているのか。そういう事を言われると“ムッ”とした顔になる。
「………」
それから少しの間、影人はこころの顔を眺めているが、未だに彼女は目を覚さない。そのため影人もそろそろ起こさないといけない事を何となく感じたものの、それよりももっと彼女の寝顔に触ってみたいという欲が勝ってしまう。
「……流石に胸とかはダメだろうけど、ちょっと頬を触るくらいなら良いよな」
そして、影人はこころを起こしてしまわないようにそっと手を伸ばすと彼女の柔らかそうな頬に振れようとする。その瞬間だった。
「んんっ……。カゲ君、頬っぺたはくすぐったいよ……あれ?」
「あ……」
影人がこころの頬に触れたタイミング。その時にこころは夢の中でも影人に頬を触ってもらっていたのか。夢とリアルの出来事が同時に起きた影響かくすぐったさで目を開けてしまう。そして、そうなると目の前には夢で見ていた物と全く同じような光景が映る事に。
「こ、こころ?その……」
「あの〜カゲ君。私が無防備な時に何しようとしてたんですか?」
「ち、違っ……これはだな……そ、その」
「ジーッ……」
影人は慌てて誤魔化そうとするが、こころからのジト目を受けてしまってはそうする事は最早不可能。そのため諦めて観念する事にした。
「ああもう、こころの頬に触りたかったんだよ。寝てる時にほんの少しだけ……」
「もう、そうしたいなら起きてから言ってくれればゆっくり触らせてあげますよ?」
「うぐっ……それは……その、不意打ちでやって悪かった」
「よろしい」
影人はこころに許してもらった所で良い加減ベッドから出ようとする。その瞬間、こころが声をかけた。
「カゲ君」
「何だ?」
「えと、もう一回キスしても良いですか?」
「ああ、わかった」
それから2人の唇同士が触れ合うと“おはよう”のキスと言わんばかりに慣れた様子で口付けをする。
もうこうなってくると不意打ちでやられない限り、誰もいない場所でのキス程度ではお互いに恥ずかしがる事も無いらしい。
「それじゃあ、俺は先に行くからな」
「はい。私もすぐに行きますね」
それから2人はそれぞれ着替えやら洗顔やらのやるべき事を済ませるとこころは髪を纏めようとする。
「………」
「カゲ君?」
しかし、何故か影人はその作業の様子をジッと見ていたためにこころも流石に気になって問いかける。すると影人が答えを返した。
「いや、いつものツインテールも好きなんだけどさ。髪を下ろしたこころも可愛くて好きだなって……」
「もう、もしかしてカゲ君はツインテールよりも下ろした髪の方が好きだったりします?」
「ッ……それは、そうかも」
どうやら影人的にはツインテールをしたこころよりも髪を下ろしたこころの方が好みではあるらしい。それを聞いたこころは少し迷ってから答えを返す。
「うーん……じゃあ、今度下ろした髪で一日過ごしてみますからその後でまた答えを聞きますね」
「ッ!こころ、ありがと」
「大丈夫ですよ。カゲ君の好みに合わせるくらい、彼女として当然の事ですからね」
それはさておき。影人とこころはそれから居間で影人の両親や夢乃と共に朝食を摂ると食べ終わってから暫くして。とうとうこころが帰る時間になってしまった。
厳密に言うとこの後影人とこころはうた達も含めた上で咲良家で集まる約束をしているため、まだこの後会う事にはなる。ただ、それでも夢乃や魁斗、理沙とは一旦会わなくなるのでお世話になった挨拶をする事に。
「魁斗さん、理沙さん、夢乃ちゃん。この度はお世話になりました」
「ふふっ、良いのよ。こころちゃん。もし良かったら何回泊まりに来てくれてもね」
「まだまだ沢山話したい事はあるしな」
「私もです!」
一応描写が無いだけでこころと夢乃もちゃんも雑談という形で今回のお泊まり会の中でお話はしている。ただ、やはり今回は影人の両親への挨拶が主な名目なので夢乃はまだこころとの会話が不十分なのだろう。
「はい!私も夢乃ちゃんともっと会話したいのでその時はまた一緒に楽しい話をしよ」
「うん!」
こうして、こころは改めての挨拶を済ませるとまずは今日の咲良家での集合に備えて今日のお泊まり会で使った物の片付けをするために彼女は自分の家へと帰る事になるのだった。
そんなこころを見送る影人達。するとこころが見えなくなった所で夢乃が影人に話しかける。
「お兄ちゃんは幸せ者だね。あんなに可愛くて真摯な彼女さんに恵まれてさ」
「ああ、こころはどこに出しても自慢できる彼女だって言い切れる」
「私もこころお義姉ちゃんみたいな素敵な人と結ばれたいなぁ……」
そんな風にこころと出会い、彼女を作った影人へと少し羨むような声で話す夢乃。ただ、影人の答えは少し厳しかった。
「俺は夢乃を中途半端な相手と結ばせるつもりは無いからな」
「あー……やっぱりお兄ちゃんはそういうスタンスは崩さないんだね……」
「当たり前だろ。夢乃に張りつこうとする変な虫がいたら全力で排除するに決まってる。そのくらい夢乃には幸せに……」
「はいはい。でも変に張り切ってやり過ぎないでよ?そうしないとお兄ちゃんを怖がっちゃうかもしれないし」
「む、それもそうか」
影人は夢乃にそう言われて暴走しかけていた気持ちを落ち着かせる。何にせよ、今回の両親への紹介を兼ねたこころとのお泊まり会も無事に終了。結果としても上々という所に終わった。
それから時間が経ってこの日の14時頃。喫茶グリッターのすぐ隣にある咲良家の2階、つまりうたの部屋での事。その部屋に集まった影人、うた、こころ、レイの4人がテーブルを囲んで座りつついつもの楽しい雑談タイムを満喫していた。
この時、4人はテーブルの中央に出されていた皿の上に置いてある煎餅を食べている。勿論妖精状態のプリルンとメロロンも隣り合わせの形で一緒にいるとこの6人でこの場にいないななについての会話をする事になった。
「今頃なな先輩はフランスですね」
「ななちゃんがお土産期待しててだって!楽しみ〜」
「やれやれ、もうお土産の話か。もっとこう、他にもあるだろ?ピアノのコンサートの事とか」
影人は早速お土産の話を始めていたうたへと思わずツッコミを入れるとうたはのんびりとした様子で手に煎餅を持って齧り付く。
「え〜、良いじゃん。影人君も気になるでしょ。はむっ!」
「そりゃあ気にはなるけど……」
「じゃあそのお土産の話題で続けますけど、フランスのお土産って何でしょうか?」
お土産の話題が継続される事がわかったため、こころはうたに続く形でお土産の中身について気になったのか問いかける。
「フランスのお土産か。やはり食べ物系ならマカロンとかマドレーヌ辺りのお菓子か?」
フランスで有名なお土産はお菓子が多い。他を挙げるとフィナンシェ、エクレア、カヌレ等々。そう考えるとお土産にお菓子をチョイスする可能性は高いだろう。
「お菓子以外だと観光地で有名なエッフェル塔もあるのメロ」
「確かにそうですね!エッフェルのグッズとかもあるかもしれません」
エッフェル塔、それはフランスの首都パリに存在する世界的にも有名な観光地だ。そのため、日本で言う所のスカイツリーや富士山等の名所のように色んなグッズが販売されていてもおかしくないだろう。
「なるほど、エッフェル塔のグッズ……だとしたらエッフェル塔饅頭とかあるかな?」
「え、そんなのあります?」
「まず饅頭自体が中国や日本のアジア発祥の物だし。せめてエッフェル塔の刻印が入ったフィナンシェとかのお菓子だろ」
影人とこころが饅頭とエッフェル塔といういかにも非現実的な組み合わせに呆れたような顔を見せる中、未だにうた達マイペース組のペースは止まらない。
「エッフェル塔タコさんウインナーが良いプリ!」
「何でもエッフェル塔を付ければ良いという話じゃありませんよ!?」
プリルンまで自分の欲望を爆発させた事を言い出したためにこころが慌てて急ブレーキをかけようとする。そんな様子を見たレイは更なる追い打ちをかける事にした。
「うーん、それならエッフェル塔から離れてオートヴァッサン・ジェリー・ド・グランディエールグとか?」
「あ、それって確か……」
「蓮爺ちゃんが食べたって言ってた伝説の……」
「もう良いからそのネタは!!これ以上変な要素増やすんじゃねぇよ!!」
まさかのレイが提案したお土産案というのが以前蓮司が伝説の料理としてフランスで食べた“お”で始まり“ぐ”で終わる名前のメニュー。オートヴァッサン・ジェリー・ド・グランディエールグであった。
ただ、影人はその名前を聞くだけで以前あったグリッターの謎メニューを探した際の混沌っぷりがフラッシュバックしてくるのか……。レイへと怒りをぶつけ始める。
「おーおー、影人。そんなに過剰反応してどうしたどうした?」
「お前わざとやってるだろ!そもそもそんな名前の料理聞いた事無いし誰も知らない料理をお土産になんてできないだろうが!というか、お前その件の時いなかっただろ!?」
「えー?そんなのななから聞いてるに決まってるだろ」
「ぐぬぬぬぬ……」
影人の食いつきに軽く流すレイ。影人としてはこんな時までレイに揶揄われてしまったのがかなり悔しかったが、今はこれ以上騒いでも無意味だという事で一旦この話は終わりにする事になるのだった。
〜おまけ 内なる真実の香りな名探偵〜
お泊まり会の夜、影人達が夜ご飯を食べ終わった時。理沙が出したのはケーキの入っているであろうケースだった。
「これは……」
「ふふっ、折角こころちゃんが来てくれてるから魁斗と一緒に買ってきちゃった」
「えっ……あ、ありがとうございます。わざわざ私のために……」
こころはまさか、理沙がケーキ屋に寄って何かを買ってきた事に驚きの顔つきを見せる。
「良いよ良いよ。これから影人のお嫁さんになってくれるって事だし仲良くしたいからね」
「ちょっ、父さん……こんな時までそんな話を……」
影人はまた両親がこころを迎える気満々の発言をした事に恥ずかしさが出てしまう中で早速そのケーキの入ったケースを開けた。
「わぁ……美味しそう!」
「ケーキかと思ったけどエクレアか……確か母さんが好きなんだよな」
「あはは、そこは理沙さんが好きな物なんですね……」
話の流れから今回のお土産はてっきりこころが好きなケーキだと思っていたためにまさかの理沙の好物を買ってきたという事で当のこころは苦笑いする。
「えへへ、美味しそうなエクレアが並んでて我慢できなくって……」
「それにしても良い香りだな……」
影人達は早速箱の中から漂うエクレアの良い匂いに食欲をそそられる事に。すると、こころはふと箱の中から何かが出てくるのが見えた。
「ピピピ〜ッ!」
「あ、なんか前にもいた妖精がいますね」
「お、確かになんかいるな」
「あっ、本当!可愛い〜ッ!」
こころは前にも似たような妖精が見た事があったためこの妖精が美味しい料理のある近くに出てくる物だと何となく察しており、もう驚く事は無く。影人も同様にこの要請が見えるからか……同じく特に大きな反応を示さなかった。
ただ、それ以上に影人達が驚きだったのは理沙もこの妖精が見えるという事実である。
「……んん?母さんもアレが見えるのか?」
「そうね。エクレアの姿に似た小ちゃくて可愛い子が見えるよ」
「うえっ、カゲ君や私なら兎も角何で理沙さんも……」
影人やこころだけが見えているのならプリキュアの変身者は見れるという事で括ることができる……のだが、何故か理沙も見えると言い出した事に2人はかなり困惑している。
「え、えっと……お兄ちゃん達には何が見えてるの?」
「妖精……?そんな子いないんだけどな……」
その証拠に夢乃や魁斗の2人はその妖精……レシピッピが見えていなかったのだ。
「それにしてもこの子、凄く親近感があるのよね。まるで、私そっくりみたいな」
「あー……えっと、そんな気はする」
影人は理沙の意見にどう答えれば良いか少し迷ってから同調する。それは、このレシピッピの声が何となく理沙の声に親近感があったからだろう。
「それにしても、理沙さんも見えるなんて凄いですよね。もしかして特別な才能があったりして……」
「あはは、そんな事は無いわよ。強いて言うなら……私の“きらめき”が示してくれたからかしら」
影人はその言葉を聞いて内心頭を抱えたくなってしまう。要するに、そういう事だろう。
同時に影人やこころの脳内に理沙の声によく似たとあるプリキュアの声が聞こえてくる。
“解き放て!内なる真実の香り!名探偵・キュアエクレール!私の答え、示しましょう!”
「っておい作者!折角誤魔化そうとしてるんだからこんな時に悪ノリすんなって!」
「カゲ君落ち着いてください!気持ちはわかりますが今ここで暴れるのは……」
影人はまさかの理沙の声によく似た声の名探偵の名乗りが聞こえてきてしまった事に思わず何かの作為を感じて声を上げ、こころはそれを慌てて止める。そして理沙は微笑ましい顔でレシピッピと戯れていた。
「ピピピ〜♪」
「この子本当に可愛いわぁ……ほら、魁斗も夢乃もそう思うでしょ?」
「うえっ!?そ、そうだねー……」
「俺はその子よりも理沙の可愛さが優ってあんまり見えないかな……」
尚、夢乃と魁斗には本当にレシピッピの事は見えてないのでどうにか誤魔化すので手一杯に。
こうして、これらの出来事が重なった結果……その場は軽い修羅場のような状況になってしまう。ちなみに魁斗と理沙の買ってきたエクレアはその後、その場が落ち着いてからいただく事になるのだった。
また次回もお楽しみに。