キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
レイがハジメと割とマジな喧嘩をして飛び出してしまったのと時を同じくして。はなみちタウンの出張所では前日に話が挙がっていたななのフランス移住の件を話し合う事になった。
「以上が、昨日蒼風さんから受けた話の全容ですね」
「なるほど、そんな事が……」
今は丁度この出張所に住んでいる田中、カッティン、ザックリンに影人達が事情を話した所である。ちなみに、レイや姫野は先程の事務所での件があるためここにはおらず。夢乃に関しては今日は友達と遊びに行っている。
そして、事前にななの件で話を通していた影人達は田中へと事情を説明。その話を理解した田中はいきなりある事を言い出す。
「もしななさんがフランスにいる事を決めたら……キュアウインク、アイドルプリキュアを卒業という事でしょうか」
「リィイイン!?」
「「「「「卒業(プリ)(メロ)(ッティン)!?」」」」」
「まぁ、海外に1人だけ行くって事はそうなってしまうよな……」
もし仮になながフランスに行くような事になってしまえば当然彼女はアイドルプリキュアの活動を継続するのは不可能になる。そしてそれはつまりキュアウインクはアイドルプリキュアを卒業する事を意味するだろう。
その言葉を聞いたうた、こころ、メロロン、カッティン、ザックリンは驚きの声を上げる。中でもザックリンへのダメージは特に大きく。他の誰よりもななの、キュアウインクの卒業が心に深い傷を負わせる程の衝撃だった。
影人もななの海外移住の件が出た段階でこうなる事を覚悟はしていたが……やはり本当にそうなってしまう事は辛い所なのは変わらない。ただ、この完全な悲しいムードの中で1人だけ状況を上手く理解できていない者がいた。勿論プリルンである。
「……卒業って何プリ?」
「おーい、何でそれがわからないかなぁ……」
影人は今の状況なら悲しむ状況だと察せられるはずなのに何故かこんな時も平常運転状態のプリルンはいつもの知識不足による疑問符を投げかけてしまう。それを見たメロロンは慌ててプリルンへと補足説明を入れた。
「アイドルプリキュアを辞めちゃうって事メロ!」
「プリィイイッ!?」
「プリルン……流石に今のは空気を読めって。まったく」
影人がこんな時もいつも通りの様子を見せるプリルンに呆れているとうたやこころはザックリンの未だに現実を受け入れられないような声を聞いて思わずその方を向く。
「リィイイン……あ、あ、有り得ねぇリン……推しが、ザックリ卒業するなんて……俺から推しを取ったら……何にも残んねぇだリィイイン!!」
ザックリンはそのまま自身の前にあるテーブルへと顔を落とす形で泣き始める。これも仕方のない事だろう。何しろ、ザックリンをチョッキリ団から改心させるキッカケを作ったのは他でも無いキュアウインク。
そして本人はその件以降アイドルプリキュアの中でウインクを推してきていた。そのウインクが卒業してしまうというのは彼にとってこれ以上無いくらいのダメージになってしまう。
「ザックリン……」
影人達その場の面々は推しがいなくなってしまう現実を目の前に泣くザックリンをいたたまれない顔つきで見守るしか無かった。
「こうなったら……フランスに行って、止めてくるんだリィン!」
「へ?」
するとザックリンは暫く泣いてから多少落ち着いた所で立ち上がる。そして、推しがアイドルプリキュアを辞めてしまう前に自分が直接説得するという事まで言い出した。
ただ、流石にそれはライン越え行為であるために影人は慌てて止めようと考える。するとそのタイミングで動こうとしたザックリンを隣にいたカッティンが引き止めた。
「ザックリン、落ち着くッティン!」
「無理ィイイン!」
「ザックリン。カッティンの言う通りだ。まずは一旦落ち着いてくれ」
影人はカッティンが一度止めてくれた事に感謝しつつザックリンに改めて話しかける。
「そんな事言っても無理な物は……」
「そもそも、もし仮に蒼風さんの選択でアイドルプリキュアを卒業するのなら……俺達にそれを止める権利は無い」
ザックリンは影人からそう言われてどうにか踏み止まるものの、それでもウインクがアイドルプリキュアからいなくなるかもしれない不安が消えるわけでは無い。
「卒業なんかじゃ無いよ……」
「「えっ?」」
「ななちゃんは、アイドルプリキュアのメンバーなんだもん。離れてたって……」
すると、うたはウインクの卒業の話に対してウインクがアイドルプリキュアの活動に関われなくなってもそれは卒業では無いという。そして、うたにとってそれはアイドルプリキュアとして繋がった絆のリボンは離れ離れになっても切れないという事を言いたいわけだ。
「リィイイイイ!!」
「(そうは言っても、蒼風さんが抜けると言い出したら……それ以上俺達にはどうする事もできないんだよな)」
影人はうたの発言に対して、彼女もまたウインクことななが遠くに行ってしまうという話を前に悲しさや寂しさを必死に紛らわせようとしているのだと察する。するとザックリンはまた悲しい感情のせいで泣き出してしまう。
こうして、出張所内に悲しい空気が漂うとキュアウインクの卒業という話をするのがやりづらくなるのだった。
場面が変わり、はなみちタウンにある噴水広場。そこにはハジメと喧嘩して飛び出してしまったレイがいた。
「はぁ……つい飛び出しちゃったけど……。何で父さんの事になるとこんなにも感情的になってしまうんだ」
レイは自分の父親であるハジメの事は自分が成長して会社を継ぐ上で超えるべき存在だと認識しており、普段からそのつもりで接するようにしている。だが、彼と一対一で話すとどうしても過去の事を思い出して感情的になってしまう。
「結局俺は……とっくに過去の出来事に囚われたまま変われてないんだよな」
レイはそう呟くと悔しい気持ちでいっぱいになる。以前球技大会をした際に元々の夢だったバスケに関してはちゃんとケジメを着けられたと思っており、実際それ以降はバスケに関しては変にやりたい気持ちがぶり返す事は無くなった。
だが、あくまで振り切れたのはバスケに関しての事だけ。幼い頃に父親に対して抱いてしまった憎しみの感情というのは中々消し去る事はできない。それどころか、事あるごとに何度も何度も思い出してしまう。
「……こんな姿、ななに見せたら何て言われるか。情けない彼氏だよ……」
「……へぇ、君。思ったより良い闇を見せてくれるじゃん」
レイがそんな風に言っていると突如として彼の後ろに影がいた。それは勿論、チョッキリ団のアジトから出撃してきていたジョギである。
「なっ!?お前は……ジョギ!」
「こんにちわ。キュアウインクの彼氏さん」
「ッ……こんな時にまで」
レイは厄介なタイミングで一番来て欲しくない男が来てしまったと考えた。何しろ、今は出張所若しくはフランスにいるせいで近くにはプリキュアのメンバーが誰1人いない。その上で戦えない自分の元に来てしまったわけだ。
「まぁまぁ、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。僕が興味あるのは……君から発せられる強力な闇だけだからさ」
「やっぱり俺狙いかよ。で、俺をダークランダーにするのか?」
「ふふっ、普通ならね。……だけど、君の持ってる凄まじい闇に免じてチャンスをあげよう」
「は?」
レイはジョギが自分をダークランダーにしに来たと予想して警戒する中でジョギの方はそれとは別でレイに用事があるらしい。
「君の出してるその凄まじい闇……それだけの闇があれば僕のようにチョッキリ団の幹部になれる。君にとって目の上のたんこぶと言える君の父親を叩きのめす事だってできるよ?」
「ッ……つまり、俺にチョッキリ団に入れと?」
「有り体に言えばそうなるかな〜。ほら、そろそろうちの団員にも強力なメンバーが来てほしいからね」
何しろ、チョッキリーヌもスラッシューもジョギからして見れば使い物にならないと思ってさえいる程だ。仮に100歩譲ってチョッキリーヌはまだ大丈夫としてもスラッシューは完全にプリキュア側に絆されてアウトコースである。
そう考えるとジョギが他にも強力な味方が欲しいと考えるのも至極当然と言えるわけだ。
「そんな要求、俺が呑むと思ってるのか?悪いけど、俺は確かに父さんの事が憎い。でも、だからってお前らの仲間になりたいって思う程までは堕ちて無いんだよ」
「あーらら、そっか。それは残念だね」
ただ、レイは闇こそ放出してもジョギの誘いに乗るほどまでには追い詰められてないために彼の誘いをしっかりと拒絶。彼の心の強さを見せつけた。
「じゃあ、仕方ない。僕は僕のやるべき事をやるかな」
「ッ……やっぱり見逃してはくれないよな」
「当たり前だよ?だってそんなに良い闇を見せてくれてるんだからさ」
レイはジョギの誘いをキッパリと断った所までは良かったが、だからと言ってジョギへの対抗策があるわけでは無い。
そしてジョギは容赦無く真っ暗闇を出してしまったレイをターゲットに定め、そのままの流れでダークランダーを召喚するための掛け声を言い放った。
「光の中にも闇がある。君の闇を……見せてごらん」
「うわぁあああっ!」
ジョギが指を鳴らすと同時にレイの胸から心の闇を現す漆黒のリボンが飛び出してしまう。ジョギの言葉を拒否できてもこればかりはどうしようも無い。
「綺麗だね……呑まれると良い」
すかさずジョギがそう告げると結ばれていたリボンは勝手に解かれてしまい、レイの体がリボンから発生した闇のエネルギーで包まれていく。それからジョギは赤い色の水晶を出すと二つを合わせて地面に叩きつける。
「さぁ、おいで!ダークランダー!」
「ダークランダー!」
これによりダークランダーが召喚。その姿はかつてレイが抱いていた夢であるバスケットの選手をモチーフにしており、ダークランダーは人間型。手にバスケットボールを武器として持つ形を取る。
そして、ダークランダーが出現するという事はプリルンのセンサーも反応してしまうわけで。
「ブルっと来たプリ!?」
「「ええっ!?」」
「ま、まさかこんな時にダークランダーメロ!?」
「くっ……皆、蒼風さんについての話は後回しだ。今は5人でどうにかするよ」
影人達は早速出現したダークランダーに対応するため、この場にいないななを除く5人で現場に移動。そこにはジョギとダークランダーが揃っていた。
「ダークランダー!」
「お、早速邪魔が入ったか。それにしてもいつも駆けつけてくるのが早いよね」
影人達が現場に到着するとジョギの方も彼等の到着を確認し、その到着までの早さに少し面倒そうな顔を見せる。
「ッ、今回はジョギか」
「プリ!?」
影人が今日の担当がジョギであると確認しているとプリルンがいきなり驚いたような声を上げる。その声に他の面々が注目するとダークランダーの素体がレイであると伝えた。
「どうしたの?」
「レイが、レイがダークランダーにされてるプリ!!」
「そんな……」
「こんな事、ななになんて言えば良いのメロ……」
レイがダークランダーの素体にされてしまった事で影人達の中に動揺が広がるとうたがジョギの方へと声を上げる。
「カズマさん!どうしてこんな酷い事を……」
「だーかーら、君達ちょっと馴れ馴れし過ぎるよ?やれ、ダークランダー!」
ジョギはレイを素体にしただけで無く容赦無くそのダークランダーに攻撃を指示。そうなると影人達もそれを迎え撃たざるを得なくなる。
「仕方ない……やるしか無いぞ」
「うん。行こう!」
こうして5人はレイを助けるべくプリキュアへと変身。その姿を変えていった。ただし、今回はななを除いた5人バージョンという事でどうしても変身の形は変わる。
例えばライトアップの際、6人変身では5つの変身バンクを使っていたのがウインクが抜けるので4つの変身バンクの物に。ドレスチェンジの掛け声の時は2人で画面を折半する形となったりと全員での変身と比べての差異が発生する事になる。
「「「「「プリキュア!ライトアップ!」」」」」
「「キラキラ!ドレスチェンジ!」」
「「キラキラ!ショータイム!」」
「キラキラ!ソウルリンク!」
「「「「「YEAH♪」」」」」
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」
「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」
「キミと輝く、ハートの鼓動!繋がる魂、キュアソウルビート!」
こうして、アイドルプリキュアの五人は変身を完了して降り立つ……のだが。やはりフルメンバーが揃ってないため今回はチーム名の名乗りは無しだった。
まだウインクが抜ける事が決定しておらず。名乗りのフォーメーション等の変更が入る前なのでこればかりは仕方ない。また、変身完了に合わせる形でキッスが早速投げキッスを使用。
「お願い、チュッ!ハートガーデン!」
これによりハートガーデンを展開するとダークランダーごと自分達をその中に移動させる。その中で5人はジョギやダークランダーと対峙するのだった。
また次回もお楽しみに。