キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
覚醒したキュアウインクの手によってダークランダーが浄化された直後。ウインクの覚醒も時間切れなのか光が消失して元の姿に戻る。
「ふう……」
「ウインク、凄かったよ!」
「ありがと!」
ウインクの元に駆け寄る他のプリキュア達。彼女へと賞賛を贈るズキューンに応えるウインク。同時にハートガーデンが消えるとソウルビートが倒れていたレイを抱えて連れて来る。
「レイも無事そうだ。ちゃんと息はしてる」
「そっか、良かった……」
ウインクはダークランダーにされてしまっていたレイが後遺症も無く無事に済んだ事に安堵の顔つきを見せた。ひとまず、レイが起きるまで近くのベンチで休ませようとした時。そこに田中やカッティン、ザックリンも到着する。
「皆さん、大丈夫でしたか?」
「はい。今回はレイがダークランダーにされましたけど何とか助け出せましたよ」
「レイもダークランダーにされちゃったッティン!?」
「あ、アイツは!間違いねぇ。アイツ、前に俺を襲った奴リン!」
するとザックリンはジョギの方を向くと見覚えがあると言わんばかりに思わず指を差しながら声を上げた。対して、そのジョギはプリキュアの絆を前に苛立ったように呟く。
「切れない絆……そんな物あるはずが無い。いつか必ず……消え去る運命にあるんだ」
ジョギは今回の件で切れたと思っていたアイドルプリキュアの絆が本当は切れていなかった事に忌々しさを感じるとその場で捨て台詞を吐いて撤退。
「カズマさん!?」
「ダークランダーがいなくなった以上はやはり逃げたか」
アイドルとしては可能ならこのままジョギことカズマを説得できれば良かったのだが……流石にそこまでは上手く行かない。ジョギとしてもこの場にいる事にメリットが無くなればいなくなるのも当然である。
「あのジョギって男……どうしてアイドルプリキュアの話を聞かないッティン!」
「恐らく、彼の中に根付いている闇はそれ程までに深いという事でしょう」
「くーっ!俺の事を一回怪物にして!許さねぇリン!」
「ザックリンは一旦落ち着くッティン!?」
田中達妖精組はジョギの事について話をする中、特に彼のせいでザックリンダーにされたザックリンは彼に個人的な恨みのような物を抱いてしまっていた。
そんな彼をカッティンが宥めているとプリキュア達は一旦変身を解除して改めてななのフランス行きについての話をする事に。とは言え、先程のななの話からすぐにフランスに行ってしまうという話は立ち消えになったためにうたはななに抱きついて泣き出してしまう。
「ななちゃん……良かったよぉおお……うわぁああああん!」
「うたちゃん!?」
「咲良さんは感情のぶつけ方がいつも通りだな……」
影人はそんなうたを見て彼女がいつも通りである事に安心感を覚える。そんな時、泣いてしまったうたを見てななは自分の言ったことが原因で彼女を悲しませてしまったために少し申し訳なさそうな顔を見せた。
「ごめんね、心配かけて」
「ビックリしましたよ。てっきりずっとフランスにいるのかと……」
「ああ。これに関しては話を聞いた全員がそう思ってるからな?レイもそうだったし」
ななの唐突なフランス移住の話を聞いた影人達は全員がその話が今すぐに現実になると思っていたわけで。そのため、余計になながいなくなってしまう事への寂しさが爆発してしまった。
その事情を聞いたななはもうこんな勘違いを起こさないようにするためにも改めてフランスでの話の続きをする事に。
「うん……。実はさ。さっき最初に言ったママとピアノをしたいって話。ママに対して伝えたんだけど……」
〜回想〜
ななの言葉に合わせて場面は前日の睦美との会話にまで遡る。実はななが一緒にピアノを弾きたいと彼女に直接言ったあの話には続きがあった。
「ありがとう。ななの気持ちを教えてくれて。……ちょっとの間に、すっかり大人になったのね」
「……あのね。この前友達に聞かれたんだ。“私にとってのアイドルは誰”?って」
それは、少し前に学校の昼休みのタイミングでめろんから問われた質問だった。その時のななは答えを出せず、それ以降彼女は答えを考え続けていたのだ。そのため、ななは大好きな母親の前でそれを言うことに。
「その事を聞かれてからずっと考えていたんだけど……やっぱり、私のアイドルはママ!」
「アイドル?」
「お仕事してるママを見てると、キラキラな気持ちになれるの!小さい頃からずっと、ママは私の憧れで……アイドルなんだ!」
「なな……!」
幼い頃からずっと聴き続け、彼女背中を追い続けていた存在である母親……睦美はななにとって他の誰にも務まることが無い彼女にとってのアイドルそのものだった。
そして、自分の娘からそう言ってもらえた睦美は嬉しさから思わずその顔が笑顔になる。
〜現在〜
それから、ななはピアノ以外にもやりたい事があるという自らの想いを伝えてこの日の朝に帰国を開始。そうしたら偶々家に帰ってきたタイミングでダークランダーが出現。
なながそれを家の中から確認した直後にキッスことメロロンがハートガーデンを展開してしまったためにななは慌てて家から駆け出すと先程の窮地の場面にギリギリで間に合ったのである。
そして、その事情を一通り聞き終わった影人達はそんな彼女の出した答えにまずは反応する。
「アイドルはお母さん……キラッキランラン〜♪」
「私、ジョギの言う通り欲張りなのかな。いつかママとピアノが弾きたいし、皆とも一緒にいたいだなんて……」
「ううん!ななちゃんならできるよ!」
ななは少し迷ったような様子を見せていた。ジョギが先程告げたように自分のやりたい事を全部やるなんて事は欲張りなのかもしれないと。それでも、うたはそんな彼女の不安を払拭するようにその手を両手で掴んで励ます。
「そっか……。うん!私、頑張るね!」
「やっぱりななはキラキラプリ!」
「なな、これからもよろしくメロ」
ななはうたに励まされて自分の胸の中に元気が湧いてくると自分のやりたい事を全てやるという事を改めて決意。そんな彼女がこれからも近くにいてくれる事に安心したのか。なながいなくなる寂しさを特に感じていたメロロンは改めて彼女が近くにいてくれる喜びを噛み締める。
「こちらこそ、よろしくね」
「ふふっ。メロロン、先輩に会えなくなる事を心配してたんですよ」
すると、お互いの気持ちが再確認できた所でまさかのこころが先程のメロロンの心配をななの前で暴露。当然メロロンからしてみればそんな事が知られるのは恥ずかしいので慌てて反応する。
「メロ!?」
「えっ、そうなの!?」
「メロ!?べ、別にそんな事無いのメロ!」
「またまた〜!」
そこからはいつものこころの揶揄いに対してメロロンがツンデレ発言で返すといういつも通りの構図が完成。そこからは暫くの間、2人の言い合いが続いてしまう事になる。
「そんな事無いのメロ!」
「またまた〜!素直じゃないですねぇ!」
「おちょくるのも良い加減にするのメロ!」
「やれやれ……コイツらはいつまでやるつもりなんだ?」
影人はそんないつものループに入った2人に呆れたような目線を向けるとその近くでは田中達もこの状況に安堵の顔つきを見せる。特に、キュアウインクが推しであるザックリンにとっては。
「良かったリン……」
「カッティンもそう思うッティン」
「ええ、アイドルプリキュアは……やはり6人揃ってこそですから」
それから影人達のこの時間は暫く続き、そんな彼等の近くの噴水には虹がかかっていた。
そしてそれは、アイドルプリキュアの絆が切れなかった事を祝福するかのようである。
「……そうだ。影人君、皆。……お願いがあるんだけど」
「「「「「お願い?」」」」」
影人達はななからの突如としたお願いに首を傾げると彼女からの話を聞いて納得。セッティングだけ済ませる形でななとレイを残し、全員がその場からいなくなる事になる。
それから時間が経ち、太陽が傾いて夕日に変わりつつある頃。レイは寝かされた状態でベンチで目を覚ます。
「ッ、くっ……ここは……」
レイは目を覚ました所で少し違和感を感じた。それは体の首より下の部分……体に接触する感覚と自身の顔が置かれている場所では何かが違ったのだ。
「どうなってる?ここって俺が気を失う前までいた広場だよな?何でこんなに柔らか……へっ?」
レイは寝ぼけたような思考でどうにかこの柔らかい感覚の正体を探ろうとする。そして、自身の上に何やら影を感じ取るとどうにか上を向く。そこにいたのは……。
「ふふっ、おはよう。レイ君」
「な……な?えっ?えっ?」
レイはななが自分の上にいる事を知って困惑。そもそも何故彼女がこんな所にいるのか。レイ視点だとまだななが日本に帰国した事を知らない。
「え、えっと……ななが俺に膝枕?そもそもななってフランスにいたはずだよな。じゃあ俺はまだ夢の中にでもいるというのか?」
レイはひとまずもう一度目を閉じて寝ようとする。しかし、それからどれだけ経ってもななの膝枕の感触は変わる事無く。ななからはずっと顔を見られ続けた事もあってその視線に耐えられなくなってしまう。
「ジーッ……」
「ッ!?なな、本当にここにいるのか?」
「うん。それ以外にここにいる理由ある?」
「……それもそうか」
レイは未だになながここにいる事に混乱していたが、まずはこの事実を受け入れるべきと考えて起き上がる。
「なぁ、俺ってダークランダーにされてたんだよな」
「うん。でも、私がフランスから帰ってきてここに来る頃には皆が先に戦ってくれてたよ」
「そっか……じゃあ、夢の中で見たキュアウインクのライブは……」
レイは気を失ってしまう前にハッキリとしていた記憶から今の状況にまで変化した事から自分はダークランダーにされていたのだと推測。そして、気絶している間に夢としてキュアウインクのライブを見ていたらしい。
「そうだよ。夢なんかじゃ無かったって事」
「そっか……じゃあ、ななが助けてくれたのか」
「うん!」
レイはななの隣に行くとそっと頭を撫でつつ彼女に自分を助けてくれたお礼を言う事にした。
「なな、助けてくれてありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
それから2人はベンチに隣同士で座った状態のまま、ななのフランスでの話をする事に。その最中でレイはようやくななが今すぐいなくなるわけではないのだと知る。
「なるほど……沢山のやりたい事か」
「レイ君はどう思う?私の事、欲張りって思っちゃう?」
「いや、むしろその方が良いんじゃないか。少なくとも、他人に縛られて生きるよりは何倍も楽しいし」
レイはななのやりたい事が沢山あるという話を聞いてそれを肯定。ななも安心したような顔を見せる。それからレイは空を見上げると呟いた。
「……そう考えると、俺の人生って……ずっと過去に縛られっぱなしなんだよな……」
「過去に縛られてる……それは、バスケを辞めさせられたから?それとも、何か別の理由があるの?」
ななはレイがそう言う理由が父親やバスケの事にあると考えた。勿論レイにとってはそのどちらも自分を縛っている物だと言える。
だが、それらはあくまで今の悩みとはまた別の問題だ。そのため、レイが答えを返すために色々と話そうとする。
「……別の理由ならある。だけど……」
レイはそこまで言いかけてななに話すのを止めてしまう。まるで、ななには伝えたくないと言わんばかりに。
「レイ君?」
「いや、やっぱり何でもない。わざわざ言う事でも無いしな」
「待って!……それでも、私は聞きたいよ。レイ君の悩みの根底にある問題」
「だが……」
レイはななからの言葉にまた詰まってしまう。何しろ、レイはななにこの事を言うのを躊躇っている節があった。それだけ彼にとってななを巻き込みたく無い気持ちが強いわけである。しかし、だからこそななはレイの彼女として話を聞きたい気持ちが同じように強くなった。
「……レイ君、私は例えどれだけ否定されたとしても教えて欲しい。レイ君の悩みの底にある物。……レイ君の彼女として!」
「ッ……わかった」
こうして、ななは改めてレイに頼み込む。もしここで教えてもらえなければチャンスは無いとばかりに。その熱意に押されたレイはとうとう観念すると彼女に対して自分の過去の話をする事になるのであった。
〜おまけ 蒼風睦美にとってのアイドル〜
ななとレイが話を始めてから更に少し時間が進んで場面が変わり、今はフランスの現地時間の昼頃。ななと睦美の夫でななの父親である一の2人はこの日の朝、日本に帰国。
ただ、仕事の都合でフランスに残らざるを無かったななの母親こと睦美は少し寂しくなったフランスにある自宅でタブレットを使用。ある動画を観ていた。
「アイドルプリキュア……キュアウインクのピアノ?」
それはネットですっかり広まったアイドルプリキュアの曲であり、その中でも睦美が見つけたのは自分の娘であるななが変身したキュアウインクのライブシーンだった。
「ッ……この旋律……ななに似てる?」
『きらめきへ踏み出そう〜♪受け取った勇気つないで♪まばたきの数だけ〜♪五線譜に焼きつけていく♪』
睦美はその動画に映ったキュアウインクがピアノを弾くシーンのみでキュアウインクのピアノがななのピアノに似ていると気がついた。
このように、睦美はあっさりと見抜いたが普通であればピアノの音だけで常人に聞き分けるのはほぼ不可能。
ただ、世界的なプロであり尚且つ普段からななのピアノを毎回のように聴き続けてきた睦美にとってはななのピアノの旋律は彼女の耳に濃く染み付いている。そのため、ななのピアノかどうかを聴き分けるのは造作もないという事だろう。
「ふふっ……ありがとう、なな」
そんな事はさておき、睦美はキュアウインクのライブ映像を観る最中、ふと窓の外に広がるフランスの景色を見て日本に帰ってしまった自分の可愛い娘の事を考える。
「(あの時ななは私の事をアイドルだって言ってくれるけど……私にとってのアイドルはあなたなのよ)」
睦美にとって、ななの弾くピアノは彼女の心に元気をくれる魔法のような物だった。そのため、あの時はななに自分が彼女にとってのアイドルだと言われた時にななへと直接言う事は無かったが……。睦美にとって、ななが自分の事をアイドルであると言ってくれるずっと前から彼女とってのアイドルは他の誰でも無いななだったのだ。
「これからも聴かせてね。あなただけの……なな色の旋律」
睦美は自分にとってのアイドルがまた少し会わない間に成長し、前まで以上に素敵な旋律を聴かせてくれる事を楽しみに思いつつこれからも頑張ろうと思う事になる。
また次回もお楽しみに。