キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
なながフランスから帰ってきた翌日。影人達はいつも通りに学校に登校して過ごす事になった。
結局、ななにフランス移住の話を持ち出した睦美はななの強い想いを尊重してレイとのお付き合いを優先させるように後押ししたようで。
「なな先輩、こっちに残ることが正式に決まって良かったです」
「ああ、それにレイの方も少しずつハジメさんとの接し方を変えるんだとさ。このまま両方共良い方に向かってほしいものだ」
影人とこころは昼休み、廊下を移動しながらななのフランス移住の話がどうにか解決し、レイもまた父親との接し方を変えられるように努力を始める事を決めた事を言及した。
それから時間が経ってこの日の放課後。影人達はいつものようにアイドルプリキュア研究会があるという事で今回は影人が1人で活動拠点としている教室に到着した。
「さーて、今日も研究会を頑張るぞっと」
「あ、影人君も丁度来たんだ」
するとそこにいたのは影人のクラスメイトである東中みことだ。東中は同じく研究会員であるためにこの教室に来ていたのだが、影人のクラスメイトという事もあって今や影人ともそこそこ話せる仲である。
勿論こころという恋人のいる影人は下手に踏み込む事は避けていたため一定の距離感こそあるが、あくまでそれは友達としての範囲内。だから彼女に苦手意識があるわけではない。
「東中さん。さっきぶり」
「まぁ、私達クラスメイトだからね。それはそうとして、今日うたちゃん達はちょっと遅れるんだよね?」
「ああ、掃除の方が長引いてるっぽいしな」
この日、運悪くうた達の掃除当番の場所で丁度通りかかりの先生が資料を落としてしまったらしく。それを拾う手伝いをしていたら掃除そのものが遅くなってしまったようだ。
「なら早速入ろっか」
「そうだね!」
それから2人が教室に入ると他の研究会員との挨拶を済ませる。そこに研究会会長であるこころもやってきた。
「あ、カゲ先輩!みこと先輩!」
「こころちゃん!」
「こころも来てたか」
そのままこころも会話に混ざるとまず最初に話を持ち込んだのは東中であった。
「あ、そうだ影人君にこころちゃん!これ見た?」
「「……うん?」」
東中が勧めてきたのはアイドルプリキュアとドリーム・アイによるコラボレーション。アカペラのMVであった。
「ああ、確か今日更新されたんだよな」
「そうそう!私この動画を見るまでアカペラの事はあまりよく分かってなかったけど、音楽無しでもこんなに綺麗な音色を出せるんだって初めて知ったよ!」
「はい!何度聞いても心がキュンキュンしますね!」
東中はアイドルプリキュアとドリーム・アイという二大大型新人枠のコラボレーションに早速どハマりしたようで。実際ネットでも7人でのアカペラは多くの人から好評を得ていた。
「特にキュアアイドルが珍しく低音を歌ってるのがとっても新鮮で!」
「わかります!いつも高音で元気いっぱい歌うアイドルが今回のコラボでは打って変わって低音を歌ってるのが痺れますよね!」
「あはは、今回のコラボアカペラでも結構それは話題だよな」
何しろいつものキュアアイドルの歌う雰囲気と今回の歌う雰囲気ではまるで別人と思える程の違いがある。そのため、今回のアカペラでは普段のキュアアイドルとはまた違う彼女の歌というのを感じられだろう。
「っと、そろそろ時間ですね。皆さん、研究会を始めましょう!」
そうこうしている間に部活を始める時間になったため、早速こころは他の研究会員のメンバー達に声をかけていった。その後、部活始めの挨拶を済ませてから早速いつも通りライブ鑑賞フェーズとなる。
勿論鑑賞のためにいつものネットに挙がっているライブ映像を使う……のだが、サウンドプロダクションのレイ経由でサンプルを貰っているという名目で今の段階では他の人達は絶対に観ることができないパシフィコ横浜でのライブ映像を使っていた。
「それにしてもレイ先輩がこんなプレミア映像を持ってたなんて」
「アイドルプリキュアはサウンドプロダクション所属扱いになってるからな。この映像を手に入れるためにレイも結構骨を折ってくれたんだし、間違ってでも撮影してネットに挙げるなよ?」
影人はそう言って近くにいる田中姉妹へと念押しするように言う。それを受けて2人は冷や汗をかくと慌てて影人から目を逸らした。
「べ、別に私達そんな事しないし〜?ね、めろん」
「は、はい。絶対にそんな事しません」
影人はそう言われたものの、前々からの動画を無断でネットにアップし続けているこの2人にこういった面での信頼など全くしておらず。2人もそれについてはよくわかっているのか……影人の怒りの込もった目線にどうにか平静さを保っていた。
尚、実はこのライブ映像を使うようになってからぷりんがネットに動画をアップリしようとしているのを影人が目撃。その時はギリギリでネットへのアップを防ぐ事ができたのだが……現行犯でやってる所を見られた以上はぷりんも弁明できず。大人しく影人からの説教を受けることになっていた。
「たくっ、あんな事は二度とごめんだからな?それにレイにも迷惑かかるから絶対やるなよ」
「は、はい……」
影人からの更なる念押しにシュンとした顔を見せるぷりん。ひとまずそれはさておくとして。
影人達は早速ライブ映像を流し始める。最初は勿論キュアアイドルの代名詞とも言える曲の“笑顔のユニゾン”だ。
〜挿入歌 笑顔のユニゾン〜
『キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!』
「「「「「「ゼッタイ!」」」」」」
『アイドル!』
「「「「「「アイドル!」」」」」」
『ドキドキが止まら……』
今回も研究会の会員達がキラキライトを両手に持ってライブ映像を観ながら教室の中に響き渡らせる。そんないつも通りの研究会。だが、突如としてその教室の扉が思い切り開けられると慌てた様子でうたとなながやってくる。
「こころ大変!!」
「一緒に来て!」
2人の顔つきはかなり焦っており、それだけ相当な事件が起きたのだと察せられた。
「お二人共、落ち着いてください」
「今回は何があったんだよ」
影人はうただけならいつもの彼女の過剰反応な可能性が高かったが、ななも焦ってるとなると流石に真面目な事だと予想。それから影人、こころの2人に加えてぷりんとめろんも行くことになった。
「東中さん、少しの間部活をお願いしても良い?」
「う、うん……ここは任せて」
影人とこころが抜ける事で会長と副会長がいなくなるので代理として東中に仕切りを頼むと早速影人達6人が移動していく。それから一同が到着したのは放課後という事で生徒が帰る姿がまばらに見える校門だった。
「ここは校門か。2人共、何があったんだ」
「えっと、口で説明するよりも見てもらった方が早いかな……」
「そんなに複雑でヤバい事なのか」
影人は目を細めるとそこまで言うのならかなり大変な事が起きているのだろうと考えた。
それから影人達は目的の場所に到着。そのまま彼等はうたやななに促されるままに草むらからそっと様子を伺った。
そして、そんな彼等の視線の先にあったのは校門の近くにできた人だまりである。その人だまりの真っ只中、1人の少女が自分を取り囲むようにできている人だまりへと真剣な様子で話をしていた。
「より良い学校で、より良い勉強を。この度生徒会長に立候補しました!甲斐ちよですわ!」
そこにいたのは黒髪の少女であり、前髪は分けられて癖毛なのは少しだけカールがかかっていた。そして、その長い髪は黄色いリボンで束ねられてポニーテールとなっている。
加えて右肩から襷掛けした緑の襷には彼女の名前である“甲斐ちよ”と書かれており、話し方がお嬢様口調なのも相まって真面目そうな印象を与えていた。
「あれを見てると選挙の演説っぽく感じるな……っと、そういえば今日から今年の生徒会選挙の演説期間だったか」
「生徒会選挙って何?」
「凄く簡単に言ったら生徒会という学校を良くするためのグループのリーダー……生徒会長を決めるための物だな。アイドルプリキュアで言ったらセンターを決めるのに近い」
「なるほど、わかったよ!」
相変わらずぷりんは知識の無さで影人を困らせたが、影人ももうここまで来るとそういうのにも慣れたのか……。手慣れた様子でぷりんへと説明を入れた。
尚、もっと詳しく説明をすると。まず生徒会長というのが学校に所属する全校生徒の代表と呼べるべき存在であり、センターがアイドルグループの顔なら生徒会長は学校の顔と言っても過言では無い。その生徒会長が誰が務めるのが良いのかを投票で決めるための行事だ。
そして、生徒会長というのは学校をより良くするためにイベントや活動をする組織である生徒会の頂点に立つ存在。そのため、当然ながら他の生徒から信頼されて人望もある人間が務めないといけない。だからこそ生徒会長を目指す候補者達は1人でも多くの生徒に信頼し、任してもらえるようにこうして校門付近で演説を行う。
それから選挙期間を経ての選挙の投票日に全校生徒の投票がされ、より多くの生徒に信頼された者が生徒会長となるのだ。
「それにしてもあの人は誰かしら?」
「甲斐ちよさん。俺達とは別のクラスだけど、同じ2年生だ」
そんな時、影人達の聞き覚えのする声が聞こえると6人はその方を向く。そこにいたのはいつの間にかこの場所に来ていたレイであった。
「レイ君!?」
「どうしてここに?」
「お前らがこうやって草むらを影にしてコソコソ聞き耳立ててるからだろ。というか、俺から言わせたら別に話を聞くだけならこんなにも隠れる必要は無いだろ」
それは実際そうである。影人達は草むらからそっと顔を出してコッソリと様子を伺っていたのだが、彼女の演説が聴きたいのであれば堂々と立ち止まって話を聞いている群衆に混ざれば良いのだ。
「べ、別に良いじゃん!この方がスパイっぽくてカッコいいし……」
「お前らは別にどこかのスパイってわけじゃないけどな?」
レイが辛辣に切って捨てる中、いつの間にか話が大脱線してしまったのでひとまずは軌道修正をすると共に甲斐の話を聞くことになった。
「っと。色々とズレちゃいましたけど、あのちよ先輩がどうかしたんですか?」
「えっと、まずは話を聞いてて」
結局影人達はその場から甲斐の演説を聞くことになり、早速聞き耳を立てる。すると、流石は生徒会長を目指すだけあるのか彼女の掲げる理念は立派な物ばかりだった。
「今の所は普通だけど……」
「ううん、問題はこの後だよ」
影人は至って普通の演説だったために特に気にする必要は無いと考える。だが、影人達にとっては次の発言こそが彼等にとって聞き捨てならない物になってしまう。
「
「なるほどなるほど、アイドルプリキュア研究会の廃止……うん?」
「へっ?」
影人は甲斐の言ったことをもう一回繰り返して口にする事でその意味を脳内に浸透させると思わず首を傾げる。そして、めろんも思わずキャラが壊れて変な声が出てしまった。そしてそうなると当然ぷりんはそれ以上の反応を示してしまう。
「あ、アイドルプリキュア研究会廃止!?」
「あー……ちよさんって真面目な所あるからなぁ……。これは言い出したら反対しても聞かないやつだ」
ぷりんの驚きに加えてレイは甲斐の事を見知ったような様子であり、彼女ならそういう事をやりかねないと納得できるところはある様子だった。
そして、この話を初めて聞いたこころはあまりの衝撃に口元が“あわわわっ”とした形で震え始める。何しろ、それは折角自分が入学と同時に新しく立ち上げた思い入れの深い部活のような場所だ。
そのせいでこころは思わず驚きと共に叫び声を上げてしまう事になるのだった。
「うぇえええっ!?」
突如として訪れてしまったアイドルプリキュア研究会の存続の危機。果たして、影人達はこの危機を乗り切る事ができるのだろうか……?
〜おまけ しるく体操〜
影人達が研究会の危機を知った頃。研究会ではこころに託された東中が仕切る形で活動を継続。ひとまず今日の分のライブシーン鑑賞会を終えると東中はある事を言い出した。
「折角だからアイドルプリキュアのダンスの振り付けを覚えるのはどうかな?」
「おお!それ良い!」
「みことちゃん、ナイスアイデア!」
東中が提案したのはダンスの振り付けを覚えるという物だった。ただ、こころがいないのでそれを全体の活動として入れるかはまた別問題だが。
ただ、今回に限って言えばそのこころから代理を任されているので彼女が帰ってくるまでの間に準備運動くらいは済ませられるという事で。
「皆、体が当たらない位置には行けた?」
「うん!」
「こっちもオッケーだよ!」
東中達は丁度ライブ鑑賞の影響で教室の中にある机がある程度後ろに移動されているのを利用してスペースを確保すると早速東中が声をかける。
「それじゃあ、しるく体操やるよ〜!」
『しるく体操?』
「これねー、実はネットの方にやり方が挙がってて。25年くらい前の有名女優さんが演技をやる前に体をリラックスさせるための体操としてやってたんだ」
それは以前シルキーアイスのCMについて言及した際に東中に声がよく似ているという女優が撮影前にリラックスするためにやっていた体操であった。
「腕を伸ばして〜!」
「えっと、こうかな?」
「そうそう。じゃあ次は反対も伸ば〜す!」
東中がリードをする形で体操をすると研究会の人達は体の力が抜けてリラックスしたような感覚になっていく。
「優雅にターン!最後に、スマイル!」
『スマイル!……わぁ!』
最後にスマイルまで済ませると研究会の会員達は体に入っていた余計な力が抜けるとダンスの練習をする上で必要なリラックスした状態を作り出す事に成功する。
「これがしるく体操って言うのか!」
「うん。それで、調べたら第二や第三とかもあるって!」
「あははっ、それなんだかラジオ体操みたいじゃん!」
こうして、研究会の中ではこの日を境にしるく体操がちょっとしたブームを起こすのだった。尚、勿論この場にいなかった影人達にも即共有されて彼等も実際に試す事になる。
また次回もお楽しみに。