キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アイドルプリキュア研究会を廃止にする事を宣言した甲斐ちよ。彼女を説得するためにこころは必死にアイドルプリキュア研究会の良さを伝えますが……それでも彼女の答えは変わらなかった。
「応援というのはあくまであなた達が推しのアイドルに届けるだけの物でしかありません。あなた方自身は何の成果を得られるんですか?」
「ッ!さっきから成果成果って。そればっかりじゃない!」
「成果って何の事?」
甲斐の言葉にこころは何も言えなくなってしまうとめろんがこれ以上は聞き捨てならないとばかりに反論。そしてぷりんは首を傾げつつ問いかける。
「例えば運動部なら大会優勝等の成果が得られるでしょう。ですが、あなた達にはその成果がありません。ただ応援をしているだけじゃないですか」
甲斐はあくまでも成果に拘っており、アイドルプリキュア研究会を推しのアイドルに対して応援を送っているだけだと切って捨てる。そしてこうなると最早こころの説得は彼女の耳には届かなくなってしまっていた。
「あ……お、応援は素敵です!心キュンキュンなんです……」
「もう言うことはありませんね。それでは時間も惜しいのでこの辺で終わりましょうか」
「ッ……」
甲斐はアイドルプリキュア研究会の成果が無いとわかった以上はここに長居するのは無意味だと考えてさっさとその場を去ろうとする。こころや会員達はそれを黙って見ているだけしかできなかった。
「それと、私が生徒会長になったら研究会は廃止。これに変わりはありませんわ」
「……甲斐さん」
甲斐は教室の出口付近に移動すると、影人が話しかけた。そのため、甲斐は影人の方を向くともうその手には乗らないとばかりに答えを返す。
「往生際が悪いですよ。この期に及んでまだ何かあるんですか?」
「もうこれ以上甲斐さんの決定は邪魔しない。だけどこれだけは覚えておいてほしいんだ」
影人は実際の活動を見せても説得が不可だった時点で甲斐の気持ちを動かすのは難しいと考えると彼女に言いたい事が残っていたため最後に一言だけ告げる。
「甲斐さんの言う成果は確かに物事の良さを測るために大切な物なのは俺にも理解できる。だけど、目に見える成果にばかり拘り過ぎると大切な物を見落とすよ」
「ッ……失礼します」
「「「失礼します!」」」
それは、影人がかつての自分が犯した失敗を元にした言葉。そして甲斐は影人の言葉にその重みを感じたのか。少しだけ止まったものの、それを振り切るように彼女は挨拶をしつつ取り巻き達と共に外に出ていくのだった。
そして、教室内では重苦しい雰囲気がその場を支配した。理由は当然、研究会の廃止宣言を受けてしまった事である。
「こころちゃん……」
「先輩方すみません……私のせいで。特に、カゲ先輩はあんなに頑張ってくれてたのに私と来たら……」
こころは悔しそうに瞳に涙を浮かべる。そんなこころを励ますためにうた達は話しかけた。
「気にしないでこころ。むしろ、私達だってフォローとかできなかったし」
「ええ。それに、まだあの子が生徒会長になると決まったわけじゃない」
「選挙はまだこれからだよー!」
ぷりんやめろんの言う通り、今は選挙活動期間中。そう考えるとまだ彼女はただの1人の生徒会長候補でしか無い。
「でも、今の所候補はちよちゃん1人。このままじゃ生徒会長になっちゃうよ!?」
「「「「「ええっ!?」」」」」
ただ、一つ問題なのが……今の段階で生徒会長候補として立候補してるのは甲斐ちよだけ。そのためこのまま行けば信任投票となり、恐らく甲斐の普段の行動から彼女が通るのは決定的な流れとなる。
そして、その事をうた達5人は初耳だったのか驚くと影人とレイは少し呆れたような視線を向けた。
「おーい、何で今更それを知るんだよ」
「少し前に担任の富士見先生とかからそういう話があっただろ」
2人の話はさておき、どちらにせよ現状維持だと甲斐が選挙を通過してしまう。
「「あわわわっ……」」
「どうしたら……」
うたやぷりんが慌てたような声を上げる中、ななが考え込む。それからめろんはある事を思いついた。
「そうだわ、あの子以外に選挙に候補が出れば……!」
「はいはーい、じゃあ私が……」
めろんの言う通り、甲斐以外に候補がいるのであれば選挙で戦うという状況ができる。そのためぷりんは早速手を挙げるのだが……。
「「却下だ」」
「ええっ!?何でそんなバッサリと!?」
「当たり前だろ。というか何で良いと思った?」
「ぷりんは確かにビジュは良いから票は取れるかもしれないけど、圧倒的に足りないんだよ。学校のために頑張るって気持ちとその行動が」
男子二人組にあっさりと却下されて唖然とするぷりん。慌てて理由を聞くと影人達は当たり前のようにぷりんの性格やこれまでの行動における欠陥点をぶつけていく。
「そもそもな、三年生は選挙に立候補できない仕組みなんだよ。生徒会長の任期は一年間。来年の今頃はとっくに卒業してるんだからさ」
「うう……そんなぁ……」
「じゃあ私達2年生の誰かが?」
「ちよさんと同じくらい学校のためを思って行動して、尚且つ人望のある人?」
それからその場の一同が考え込んでいると少しずつその目線が影人とレイに向いていく。
「先に言っておく。俺は無理だ」
『ええっ!?』
レイはこの後の流れを察したのか。先手を打って拒否の意思を示した。そのため一同は慌てたような顔を見せる。
「ま、まだ何も……」
「いや、顔に書いてあるんだよ。俺ならやれるかもって」
レイはジト目を向けつつ研究会員達が心の中で思っていそうな事を言う。そして、そのまま溜め息を吐きつつ自分が生徒会長をやれない理由を話した。
「はぁ……。確かに俺は人望とか顔の広さなら勝負できるだろうし、公約考えて実行するという意思の元選挙活動をすれば対抗はできるかもしれない。だけど、俺は親からの縛りがある。少なくとも、生徒会長になった後にそのせいでまともに活動できませんでしたなんてなったらダメだろ」
「そっかぁ……」
「じゃあ影人君はどう。影人君なら親の縛りとか無いんじゃない?」
レイはダメな理由が明確なため彼は無理だとして。それならば影人であればその問題は無いはずとななが問いかける。
「俺か……」
「そうだよ!影人君は目立たないけど皆の事をちゃんとフォローしてくれるし、地味かもしれないけど面倒見は良い方だから皆だって信頼してるはず」
「甲斐さんや音崎君には及ばなかったとしても選挙活動次第で十分ひっくり返す事もできるよ」
東中や他の研究会員達も影人が出る事に関しては止めるどころか後押ししてるのでそれはここまで影人が半年ちょっとで積み上げた物が影響しているのだろう。
「ッ……わかった。できる限り早め……明日までには答えを出す。だけど今は考えさせてくれ」
影人は少し葛藤したものの、研究会を存続させるには甲斐の他に候補が立つしか無いという事。そして周りからある程度信頼されているという意思が示されたために一応一日時間をもらうとして考える事にした。
ただ、影人の声が僅かに震えていたのをこころは見逃しておらず。少し不安そうな目を向ける。
「よーし、影人君が立候補してくれたら皆で支えよう!」
「そうだね!頑張るぞー!」
『おーっ!』
影人の迷いとは別で研究会員達は影人を支える気満々になってしまっており、レイもこの空気を感じたのか影人に話しかけた。
「影人」
「何だ、レイ」
「無理だけはするなよ、さっきもあの子の気持ちを変えるために少しでも粘ってたけど……」
「あのくらいは別に良いよ。ただ、甲斐さんしか選挙に立候補してないのはわかってた事だから気持ちを変えられたら良い程度の認識だし」
影人は先程の時点で甲斐の心をどうにかするのは不可能だと感じており、代わりの案を探している所に自分が生徒会長をやるという話が舞い込んできたわけで。影人としてはそれしか方法が無いのなら受けるつもりだった。
だから周りの人には考える時間と覚悟を決める時間として一日くれるように言ったのだ。それ以上伸ばすと今度は生徒の信頼を得るための選挙活動期間が足りなくなるためである。
「だけど、まだ治ってないんだろ?1人で人前に立つ事への恐怖心」
「ッ……」
影人が今までずっと人前に立てていたのはアイドルプリキュアというグループとして出ていたから。その場にいなくても1人じゃ無いとわかっていたからだ。ただ、今回の生徒会選挙はあくまで個人対個人のぶつかり合い。例え支えてくれる仲間がいたとしても戦うのは黒霧影人という1人の人間としてである。
「それでも、俺がやるしか無いのなら……」
影人は他に手段が無いのならと自分を犠牲にする覚悟を固めているとそんな時にこころはある事を考えつく。
「……あの!ちょっと私、良い事考えついたんでこれで失礼します!」
「えっ!?」
「こ、こころ!?」
こころは急いで研究会の教室に置いてある自分の鞄を回収すると影人の元に来てその手を掴む。
「なっ!?」
「ほら、カゲ君も来てください!」
「いや、何で俺もぉおおおおっ!?」
そのままこころは無理矢理影人を引っ張るとギャグ補正なのか、自分よりも体重があるはずの影人を思いっ切り引っ張っていく。
そして、嵐のように走り去ったこころとそれに巻き込まれた影人に一同は唖然とした顔つきを浮かべる事になるのだった。
「な、何でこころはいきなりあんな……」
「ま、彼女には彼女なりの考えがあるって事だろ。今はそれを尊重しようぜ」
こうして、時間も遅くなってしまったのでこの日の研究会はその流れで解散となりそれぞれが帰宅する事に。一方でこころに無理矢理引っ張られた影人は何故か紫雨家のこころの部屋に連れ込まれていた。
「なぁこころ」
「何でしょうか?」
「どうして俺を家にまで連れ込んだ?」
影人は普通に話がしたいだけなら別に家の中で無くとも喫茶店やら他の場所があると思っていた。それこそうたの家にあるグリッターで問題無いはずである。
「これはうた先輩の家ではできない事ですからね。色々道具が揃ってませんし」
「道具……」
それからこころはどこからか襷に使う布やらペン、大きめな画用紙などの道具を取り出す。それはまるでこれから誰かが選挙に出るための準備をするようだった。
「こころ、もしかして俺を呼んだのって選挙活動を手伝ってくれるとかそういう話?」
「ふふっ、確かに選挙活動のためというのは合ってます。ですが、カゲ君は無理して出なくて大丈夫ですよ」
「ッ!?」
こころは影人に選挙へと出ないように勧告。それを聞いて影人は慌てたような顔に変わる。
「こころ、俺は別に無理して出るわけじゃ」
「嘘吐かないでください。本当は不安で、かなり無理してるんでしょう?そのくらいわかりますよ。どれだけ一緒にいると思ってるんですか」
影人はどうにか誤魔化そうとするが、こころにはお見通しにされてるため、あっさりと彼の誤魔化しは否定されてしまう。
「だけど、それじゃあ選挙はどうするんだよ。このままじゃ……」
「カゲ君にしては察しが悪くありません?……選挙には私が出ます!」
「こころが……出る?」
影人はそれを聞いて脳内が混乱。自分の代わりにこころが出る。そんな話、それこそこころに無理を強いてるのかもしれないと考えて否定の声を上げた。
「待ってくれ、こころ。俺はこころに嫌々出てほしいわけじゃ」
「嫌々じゃありません。私がやりたいんですよ。……今回の件で私達の学校にはまだアイドルプリキュアを推す事の良さがわからない人がいるのもハッキリしましたし、折角なら皆さんに誰かを応援する事の良さを知ってもらうのも良いかなって」
「えぇ……そういう理由?」
「それに、あんまりじゃないですか。カゲ君は周りに無理に期待されて無理矢理出る事になって。そこにカゲ君の気持ちは無いのに」
こころは話の流れがあったとはいえ、このままでは間違いなく影人が周りの空気感に流されて無理矢理選挙に立候補する事になる。
それでは学校のためにも、影人のためにもならない。それなら自分がやる気をもって立候補をすれば何の問題にもならないだろう。
「こころ、ありがと」
「いえいえ!これも研究会を守るためです!その代わりですが、カゲ君にも色々手伝ってもらいますよ!」
「ああ、そのくらいなら俺もできる限りの事はやる。サポートするのは大得意だからな」
こうして、影人とこころは立候補者をこころにした上で翌日からの選挙活動をするための準備を開始する事になる。
「……そういえば、こころ」
「はい?」
「クラスの信任の方は大丈夫なのか?」
「えっと……まぁ大丈夫なはずです!」
「えぇ……」
影人は一応こころ自身のクラスがこころの立候補を許すかどうかの確認をすると彼女は少しだけ冷や汗を浮かべるが、大丈夫だと言い切った。
加えて、影人は以前の球技大会の際にクラスメイトからこころが信頼されたりしてるのはちゃんと見ている。日頃のこころの行いは流石に甲斐程にはならないものの、周りから悪い風には取られていないはずなので大丈夫だと感じたためにそれ以上は言わない事にした。
「それにしてもこころが生徒会長か……ちょっと楽しみだな」
「え?」
「こころって真面目だしやるって決めた事には真剣に取り組むから、こころが学校を良くする姿を想像すると楽しみって事」
「ッ……はい!」
こころは影人に信頼されてるというのを感じ取るとその期待に応えるためにもまずは選挙活動を頑張る事を誓う事になる。
また次回もお楽しみに。