キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
甲斐の選挙にかける想いを聞いた影人達。そんな彼女の気持ちの強さにこころが自信を喪失してしまった時、2人はうたの連絡を受けてはなみちタウンの出張所に向かう事になる。
「お疲れ様です」
「来たぞ」
「あ、こころに影人く……って影人君大丈夫!?」
すると影人はその姿を出張所でで迎えたうた達に見られた瞬間に驚かれて心配されてしまう。何しろ、彼は先程までこころに傘を貸して尚且つ自分は道路側を歩いていた影響で両側の肩がびしょ濡れ状態であった。
そのためその姿を見た瞬間に田中が急いでタオルを用意すると影人に手渡す。
「影人君、これをお使いください」
「ああ、ありがとうございます。田中さん」
「それとこころさんにはこちらを」
「すみません、わざわざありがとうございます」
それから田中はすぐに出張所の中にあった貸し出し用の傘を取ってくるとそれをこころに手渡す。これで影人がこれ以上こころに傘を貸してびしょ濡れ状態になる事は無さそうだった。
「それで、私達に見せたい物というのは……」
「ああ、それなんだけどね」
それから2人は出張所の居間に案内されるとそこには机の上に山積みされたキュアキュンキュンとキュアソウルビート宛のファンからの手紙が丁寧な状態で山積みにされていた。
「これはキュアキュンキュン宛てッティン!」
「こっちはキュアソウルビート宛てですね」
「両方ともザックリ500通あるリン!」
そのファンレターの枚数にこころは驚いたように目を丸くすると2人は驚きの声を上げる。
「500通って、そんなに!?」
「こんなにも来てたのか」
「読んだら2人とも元気出るよ!」
「うん!絶対!」
それは影人達が学校に居残りすると言って、彼等がいなくなった後にうた達はビラ配りをやり切った後。いつもの件で家に帰らないといけなかったレイを除く4人は頑張る2人を励ますために出張所にいた田中、カッティン、ザックリン達と共に仕分けをやったのだ。
「それで連絡をくれたんですね!」
「俺も貰って大丈夫だったのか?」
「良いよ良いよ!影人だって凄い頑張ってるんだから!」
「遠慮なんて必要無いわ」
それから2人はうた達に後押しされた事もあって早速送られてきたファンレターを開封する事に。
「“キュアキュンキュン大好き。毎日応援してるよ”。……嬉しいな」
「皆俺達の活動を応援してくれる。そう思えるだけで何だか心の中が温かくなるよな」
こころは先程の甲斐とのやり取りですっかり自信を無くしていたのだが、こうして送ってくれた応援のメッセージを読んで元気が湧き上がってきていた。影人もそんなこころを微笑ましい顔つきで見守る。
「応援は素敵だよね!……こころが言ってたみたいに!」
「応援してもらえると力が出る!」
「それに、こころを見ていて思った。応援する方もキラキラしてるって!」
「だからアイドルプリキュア研究会は凄っごく素敵だよ!」
そして、うた達も頑張るこころへと応援の言葉を次々と送っていく。彼女はそれを受けて胸の中にどんどん力が湧き上がってくるのを感じ取った。
「こころ、俺達は皆頑張るこころを応援してる。だから、負けるな」
「ありがとうございます……」
最後に影人がそっと背中に手を置くとこころの胸に湧き上がった温かさが更に強くなるのを感じ取った。そして、同時にこころの中にある気持ちが浮かび上がってくる。
「そうか……応援で力を……。それが、今の私にできる事!」
「(こころ、やっと元気が戻ってきたな。……それに、こころなりの考えも浮かんできたみたいだ)」
影人はこころの気持ちが立ち直ってくれたという事に安堵の顔つきを浮かべる。すると影人の体にちょっとした寒気が走ってしまう。
「ッ!?」
「影人、どうしたの?」
「いや、別に何でもない。ちょっと寒気が走っただけだから」
「えっ……?」
影人の言葉を聞いて心配してきためろんが困惑した顔を見せる。今現在、出張所の中は外で雨が降ってる事もあって暖房を付けて暖かめにしていた。それなのにいきなり寒気がしてしまったという事は。
めろんの胸に嫌な予感がしてしまう。そして、それを感じた影人はめろんへとある事を話した。
「大丈夫だ。俺はこころの応援者だし、そんな事にはならないようにする」
「で、でも……」
影人はあくまでいつも通りの様子を貫くとめろんはそれ以上影人に何かを言う事はできず。ただ黙っているしかできなかった。
それから翌日の朝、この日は土曜日である。ただ、影人は目を開けた瞬間に体の倦怠感と熱っぽさを感じていた。
「ッ……マジか……やっぱこうなっちゃったか……」
同時に影人はベッドから起き上がるだけで頭にクラクラとした感覚を感じてしまう。
「今日は休みだからこころと打ち合わせするって決めてたのに……情けねぇ……」
原因は恐らく昨日の大雨だ。あの状況で傘をこころに貸して尚且つ歩道の外側を常に歩き続けた結果、影人は両方の肩を長時間に渡って濡らしてしまう。そして、その影響もあって体が冷えてこのような結果になったのだ。
「お兄ちゃん、今日起きるの遅……って、大丈夫!?顔赤いしおでこが熱い」
「大丈夫だよ夢乃、このくら……」
「大丈夫なわけ無いでしょ!?ベッドで早く横になる!もう、これであの時に続いて2回目じゃん!良い加減学習してよ!」
夢乃は何となく状況が前に熱を出した時と同じだと予想すると急いで影人を寝かせてマスクを取ってくると影人に着けさせつつ自分も装着。それから頭を冷やすなどと世話をする。
「夢乃、ごめん……」
「お兄ちゃん、幾らこころ先輩が風邪ひくのダメだからって自分が雨に当たり続けるなんて自分から熱を出しに行ってるような物じゃん!それでこころ先輩がどれだけ罪悪感を感じるかわかってるの!?」
11月の雨は気温の低下もあって冷たい。それなのに雨に濡れた状態で長時間放置していれば当然風邪はひくし熱も出てしまう。
「ああ……悪い」
「私に謝るよりこころ先輩に謝って!どっちにしても今日は家で安静にしてて。絶対だよ!」
その後、影人は検査キットで体を検査。その結果病気では無くただの熱だと証明されたのだが、当然この状況でこころとの打ち合わせは不可能だ。そのためこころとの会議はキャンセルせざるを得ず、1人部屋で寝込む事になってしまう。
『そんな事があって。こころ先輩すみません!』
「そ、そんな。夢乃ちゃんは謝らないでください!それもこれも私が昨日傘を忘れてしまったせいなんですから!」
こころは夢乃からの電話を受けると顔を真っ青に青ざめさせて慌てて影人のお見舞いに行こうとした。ただ、それは影人が拒否してしまう。理由は生徒会選挙で忙しいこころに無駄な時間を使って欲しくないという事で。こころはそれを受け、ひとまずは生徒会選挙に必要な準備をできる限り済ませてから見舞いに行く事になった。
「(カゲ君……そういえば前の時も雨の中プリルンのカメラを探しに行ったうた先輩を迎えに行って……。もう、他人のために自分を犠牲にし過ぎですよ!)」
こころは少しでも早く選挙の準備を済ませて影人に会いに行くと決めるとこの日は影人に言われた通り、選挙の準備を急いで進めていく。
そんなわけで影人が風邪をひいてしまい、こころが生徒会選挙の準備に勤しんでいる頃。
音崎家では社長室でハジメはいつも通り社長としての仕事をしていた。今は社員からの報告を受けた所である。
「失礼します」
「ああ」
それから社長室を出たサウンドプロダクションの社員を見送った彼は席に戻るとある事を考えていた。
それは突如として態度を軟化させた自分の一人息子……レイについてである。
「(……レイ、ここ一週間のあの態度。一体どうしたんだ)」
何しろ、先週辺りまで自分に対して喧嘩腰やら反抗的な目線を向け続けてきたレイが急に態度を軟化させてきたのだ。ハジメからしてみればあまりにも唐突かつ衝撃的な事過ぎて脳内の処理が追いついてないのである。
「凛が亡くなってここ数年間。ずっと私に敵対心を向けてきたというのにいきなり普通の親子みたいな接し方をしてきて。何故だ……。私のやり方に納得行って無かったのではないのか」
ハジメの混乱っぷりは前に夢乃に打ち負かされたあの時を遥かに超えており、レイがまた罠か何かを仕掛けているのでは無いのかと思わず勘繰ってしまう程である。
「失礼します」
「レイか。入っても構わないよ」
そんな時に噂をしていたレイがやってくると社長室の扉が開いて入ってきた。
「社長、指示された報告書。完成しました」
「ああ、目を通しておく」
ハジメはレイの様子を目で追うと彼はあくまで自然体で動いており、少なくとも自分に対して抱いていたはずの嫌悪感のような物は一切感じられなかった。
「……レイ。少し聞きたいことがある」
「はい?何でしょう」
レイは社長であるハジメにそう言われて彼の方を向く。勿論、ハジメへの敵対心等は一切無い自然体だ。
「レイ、ここ最近何故私への敵対心が無い」
「ッ……」
するとレイはハジメにそう問われて肩が少しだけ強張るのを感じた。そして、ぎこちないながらもハジメへと答えを返す。
「そ、そうですか?俺は普通に接してるだけで……」
「(やはり変だ。まず間違い無く何かを隠してる)」
レイのぎこちない対応を見てハジメは自分に向けている感情を隠しているのだと察した。同時にこれはレイが自分に勝つために何かをやろうとする前段階だと読む。
「レイ、君が何を考えたとしても。私には全て手に取るようにわかる。まぁ、感情を表に出さないように努力するのは結構な事だがな」
「えっ……」
レイはハジメからの話を聞いて困惑したような顔を向ける。それはハジメに自分の気持ちを見抜かれたからでは無い。むしろ、その逆。
「(父さん……やっぱ今までの事があるしメチャクチャ警戒してる。これは父さんがわかるのはまだまだ先か)」
レイとしては前にも説明した通り、ハジメとの和解を望んでいる。しかし、当然ながら急に態度を軟化させた息子を見た父親の反応は鈍く。的外れな事まで言い出す始末だ。これでは分かり合うのはまだまだ先と言えるだろう。
「社長。仕事に支障が出ますので一旦その話は後回しにしましょう」
「な!?」
「失礼しますね」
ハジメはまさかレイから反発されるどころか仕事に集中できない所を指摘されるとは思っておらず。思わず変な声が出てしまう。
「(な、何がどうなってる……レイは私に敵対心を抱いているんじゃなかったのか?)」
レイが去った後、ハジメの脳内は突如として普通の社員として自分を諭した彼の態度の意図を探ろうと考える。しかし、レイは自分に対して敵対的という前提条件があるせいでその予想はことごとく脳内で否定されてしまう。
「ッ……まさか、レイは私とちゃんと向き合おうとしているのか?……いや、そんなはずは無い。あんなにも私を嫌っていたレイだぞ。あり得ない」
普段は自分の言動によって相手の心を動かし、その動いた先の感情を先回りして予想。その更に上を行く言葉を繰り出す事で相手を支配し、叩きのめしてきたハジメにとって今のレイの考え方はイレギュラーその物だった。
だからこそ彼の思考を考える事ができず、対応がとことん後手に回ってしまっている。
「……だがもしレイが私の事を理解しようとしてくれているのだとしたら……私は、あの事を話しても良いのか?」
するとハジメは気になる事を言い出した。それは生前の凛に対して打ち明ける事ができなかった彼しか知り得ない話であり、それをレイに明かす事ができるかもしれないと考える。
「いや、ダメだ。レイにこの話をした所で……あの子が今更凛の死を受け入れるはずがない」
ハジメはこの期に及んで悩み、葛藤すると社長室の中で一人で胸の中に秘めた気持ちを隠しては頭を抱えてしまうのだった。
その頃、レイは社員が働いているオフィスに行くと彼も一人の社員として作業をする。そこに姫野がコッソリと話しかけた。
「レイさん、ここ最近の社長の事……何かご存知ですか?」
「ああ、社長のアレ?」
姫野はハジメの変わりようが気になっていたようで。普段は威圧的なハジメが今は牙が抜かれたように大人しくしている。そのため、姫野だけで無く他の社員達も気になった様子であった。
「……ただ俺は普通に接しようとしているだけですよ」
「普通に接する……」
姫野はレイが何かハジメに仕掛けたのだと考えていたが、案外あっさりとした理由に困惑してしまう。
「まぁ、今までの俺の態度を見たら何か仕掛けようとしてるかもって思うのも仕方ないですよ」
「それはそうかもしれませんけど……」
姫野としてはハジメの事を恨んでいるレイの方から歩み寄ろうとしてくれているのだからハジメも素直になれば良いのにと考えていた。
「姫野さん達にはいつもご迷惑をおかけしてすみません。いつか父さんと和解できるその時まで……また問題を増やしてしまうかもしれませんがよろしくお願いします」
「ええ。私も、ここで働く皆さんも。お二人の仲が戻ってくれる事を願ってますよ」
レイはそれか、改めて姫野に自分達のせいで迷惑をかける事を謝罪。姫野はそれに頷くと自分や他の社員達は2人の仲が戻ってくれる事を望んでいる気持ちを示す事になるのだった。
また次回もお楽しみに。