キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人が高熱を出してしまい、こころは家で1人で公約を考え中。そして、レイがハジメとの仲直りのために色々と試していた頃。
チョッキリ団のアジトでは珍しくジョギが1人でのんびりと過ごしていた。その理由はこの日、チョッキリーヌがアジトにいないからである。
「ふふっ、1人だけって気楽で良いねぇ。面倒なチョッキリーヌ先輩は何処かに出かけていない。だから僕の時間を邪魔される事も無いんだから」
ジョギは普段からチョッキリーヌからのダル絡みが面倒に感じる事が多かった。なので、今日のように彼女がいないというのはジョギにとっては天国のような物なのである。
「今日はチョッキリーヌ先輩がいないから当番の事で面倒な話し合いをしなくても良い。偶には1人でゆっくりと休むとしよう」
ジョギは今日は一日中完全な休養日にするつもりだった。何しろ、チョッキリーヌもまた今日一日を休養日として当てている。偶には休みが無いと前のザックリーのように心の弱みをプリキュアからつけ込まれかねない。
そのため、ジョギはどこから持ってきた接続機を持ってくるとテレビに接続。自分の見たいドラマをスマホから送る形で流そうとする。
「さてと、何にしようかな……」
「ジョギ」
「っと、どうしました?スラッシュー様」
すると、ジョギがドラマを選ぼうとしたタイミングでスラッシューが話しかけた。
「珍しくあなた1人だけど、チョッキリーヌは?」
「あの人なら今日一日お休みですよ。なんか、街の方でやりたい事があるって」
「はぁ……多分カッティーやザックリーを探しに行こうとしてるわね」
スラッシューはチョッキリーヌが前々からいなくなってしまったカッティーやザックリーの事を気にしている所を見ており、つい先日は彼等の事を直接見たそうで。
「ジョギ、あの2人は闇に堕ちたんじゃないの?」
「ザックリーの方は僕が闇には堕としましたよ。でも、アイドルプリキュアが助け出してからはどうなったかわかりませんね」
「あなた、わかっててチョッキリーヌに言ってなかったのね」
スラッシューはジョギがアイドルプリキュアに救われたザックリーの事を知っていながらもわざとチョッキリーヌに話していない事を聞き、彼の性格の悪さを再認識する。
「それを言うならスラッシュー様もでしょう?」
「え?」
「あなただってカッティーがアイドルプリキュアに救われた所は見ていたはず。何で知らない風に装ってるんですか?」
スラッシューはジョギからいきなり自分はカッティーが助け出された場面を見ているのにずっと黙っていたみたいな言い回しをされて困惑。そしてジョギは少しだけ考えてから何かを思い出したように声を上げた。
「あー、でも確かそれがあったのはだいぶ前だから……覚えてなくても仕方ありませんか」
「本当に何の話?そもそも私はカッティーが闇に堕ちた所を直接なんて見てないわよ」
ジョギはそれを聞いて笑みを浮かべる。ちなみにスラッシューはこう言っているが、実際はバッチリ見てしまっていた。何なら、はなみちタウンフェスの際にズキューンキッスが初めて姿を現した後にカッティーが変身した強カッティンダーが浄化される所も見ていたはずだ。
「(僕が施した記憶封印。形上だけどまだちゃんと残ってるんだ。ま、アイドルプリキュアの前ではほぼ無意味と化してるけど)」
「ちょっとジョギ、聞いてるの?」
スラッシューが当時の事を思い出せないのはジョギがかけてしまった記憶封印が原因である。アイドルプリキュアと戦う度にスラッシューがKotoneとして活動している事を毎度毎度口にしているから忘れがちだが、記憶封印が入る前のスラッシューとしての活動の記憶はある程度封印が入っているわけで。
だからこそスラッシューはカッティーがダークイーネの力で闇堕ちした事も、そこからアイドルプリキュアによって救われた事も覚えていないのである。
「ま、スラッシュー様はあんまり気にしなくても良い事ですよ。それに、チョッキリーヌ先輩がその2人を仮に探しに行っても会うのは無理だと思いますし」
「……確かにそうね。何もアテが無いのだとしたら私も会うのなんて無理だと思うわ」
「でしょう?」
ジョギは適当にスラッシューを誤魔化すと彼女と共にチョッキリーヌがあの2人に会うのは絶対に不可能であると切って捨てた。
「ま、そんなくだらない理由だったとしてもチョッキリーヌ先輩がここにいないってだけで僕としてはラッキーなんですけどね」
「なるほど、だからあなたは今日ちょっと上機嫌なのね」
「ええ」
それからスラッシューは少しだけ考えるとジョギへとこれから出かける事を言い出す。
「それなら、私も出かけようかしら」
「それは今日の当番をやるって事ですか?」
「そうよ」
「大丈夫なんすか?調子の方はまだ不完全でしょう」
今回はスラッシューが当番をやると聞いてジョギはまた毎度の如く不調気味の彼女に心配の言葉をかける。
「確かに私は最近不調気味だし、不安が無いわけじゃないわ。だけど、私としてもそろそろアイドルプリキュアを倒しておきたいのよ。それに、あなたは今日休むんでしょう?ゆっくりしてなさい」
要するに、部下であるジョギを休ませるために自分から攻撃をかけに行くという事である。それを聞いたジョギは彼女にアイドルプリキュアを攻撃するという確固たる意思があるのならこれ以上止める必要性は無いと考えた。
「なるほど、それならお言葉に甘えさせてもらいますよ」
ジョギはそう言ってスラッシュー出撃に了承し、スラッシューは早速アジトであるバーから出ていく事になる。それを見届けたジョギはほくそ笑んだ。
「ふふっ、律儀な上司様だねぇ。だからあなたは優しさが抜け切らないんですよ。この調子じゃ、また心を乱されて終わるだけかな」
ジョギはこの時点でスラッシューはまた失敗すると予想。少なくともアイドルプリキュア相手に勝つのは不可能であると読んだ。
だが、スラッシューもジョギも知らなかった。影人が高熱で倒れている今日という日は彼女達にとってアイドルプリキュアを打倒する絶好のチャンスの日であるという事を。
それはさておき、スラッシューは街に出る時の服装である天城切音としての姿になると移動を開始。闇を見る事ができる瞳を使って誰よりも強い闇を探す。
「はぁ……。小さな闇はそこら辺に沢山転がってるけど、やはり大きな闇となると中々見つからないわね」
スラッシューは溜め息を吐きつつ歩いていく。ここ最近の彼女はダークランダーにも強弱の個体差が如実に現れている事や闇が深く強い人間程召喚できるダークランダーも比例して強くなる事を実感しており、そんじょそこらに存在する小さな闇程度には興味すら湧かなくなってしまっていた。
「アイドルプリキュアは全部で6人。その中でソウルビートの強さは弱いダークランダー1体分かそれ以上くらいには強い。だから闇が強い人が欲しいけど……」
スラッシューはそれなりに長い時間探したものの、強い闇を持つ者はおらず。一旦捜索を諦める事も脳内に浮かんだ。
「仕方ないわ。別の場所を……うん?」
するとスラッシューの視界に入ったのはサウンドプロダクションであり、その一角から明らかに凄まじい量の闇が出ているのが映った。
「何……あの闇。尋常じゃ無いほどに出ているんだけど……」
どちらにせよこれは大きなチャンスだ。スラッシューはその闇を出す大元を調べるためにサウンドプロダクションに潜入する事になる。
同時刻、その闇の大元……闇を出している人物がいる部屋へと場面が変化。そこは社長室であり、社長室であるという事は該当者は1人しかいない。
「レイ、私は今更お前とちゃんと話す事ができるのか……?こんな事を話した所でまたレイに背かれるだけじゃないのか」
ハジメはかなり悩んだ様子であり、それはレイとちゃんと向き合いたいと願いつつもそれが上手くできない事に対する葛藤だった。
そのタイミングで社長室の扉がノックされるとハジメは気を取り直して入るように言う。そこにいたのは姫野だった。
「どうぞ」
「失礼します」
彼女は資料を抱えており、それを机に置こうとする。そのタイミングでハジメは目を細めた。
「姫野君、その資料は?」
「先程社長が頼まれた……」
「嘘は良くないね、姫野君。……いや、姫野君でも無いただの侵入者さん」
ハジメは目の前にいる姫野の事を偽物と断定すると警戒心を露わにする。同時に姫野は薄らと笑みを浮かべた。
「ええ、よくわかったわね」
その瞬間、姫野は衣装を脱ぎ捨てるとそこにはスラッシューが現れる。どうやら姫野に変装していたらしい。
「どうして私の事がわかったのかしら」
「動きの癖、仕草。それに頼んでも無い資料を持ってくるという不自然な行動まで混ぜてきたからだよ。そんな杜撰なやり方で私を騙せるなんて思わない方が良い」
「なるほどねぇ。その観察眼は認めてあげるわ。……でも、その程度で私相手にどうにかできるなんて考えは持ってないわよね?」
スラッシューは再度確かめる意味を込めてハジメの中の闇を覗き込む。そこにあったのは先程感じた通りの凄まじい量の闇であった。これはレイと仲直りできるかわからない事やここ数年間ずっと1人で抱え込んでいたある秘密を明かす事への不安が募りに募った影響だろう。
それでも今までそういう気持ちを表に出さなかったのはレイがハジメに対して敵対的だったからだ。レイが敵対的だからこそハジメは秘密を話す事ができないと割り切っていられたのかもしれない。
「ふふっ、凄まじいまでの闇の量。ジョギが言うには息子の音崎レイでさえダークランダーにした時はプリキュアを苦戦させたって話だったわね。あなたがダークランダーになればどれほどの強さとなるか」
「ッ……私をあの怪物にするというのか?」
「当然でしょう。私とてもう後が無くなりつつあるの。手段なんて選んでられないわ」
スラッシューはそう言って早速ハジメを闇に堕とすために右手で指を鳴らそうとする。しかしその瞬間、突如としてスラッシューの左手が彼女の意思とは別で動き出すと右手の動きを拒むように掴む。
“ダメ……!お願い、もう止めて……”
「ッ、Kotone。あなたまた……!」
それはスラッシューの中に沈んでいたKotoneの気持ちだった。スラッシューは毎度の如くダークイーネに尽くそうとする自分の邪魔をしてくるKotoneとしての人格にうんざりしており、苛立ったような顔を浮かべる。
「Kotone、良い加減にしなさいよ。何度私の邪魔をすれば」
“私は罪の無い人達が闇に染まるなんてもう沢山なの、ダークイーネ様を助ける手段なんて他に幾らでもあるはずよ。だから……”
「煩い!そもそもこうなったのはあなたのせいだと言うのに!」
“私の……?”
Kotoneの人格は必死にスラッシューの動きを止めようとしたものの、彼女から言われて動揺したような声を見せる。
「当然でしょう?私が生まれたのは元はと言えばあなたの弱い心が原因なの。あなたが自分で闇に染まる事を望んだのに何を今更!」
“だったら、だったら尚更私が終わらせなきゃ。私のせいで死んでしまったUtakoに顔向けできない”
「鬱陶しいわね!ふん!」
Kotoneは必死にスラッシューの意思を抑えようと抵抗するものの、スラッシューは瞳を紫に光らせるとKotoneの体を彼女自身が発生させた闇に侵食させる。
“ああああああ!?”
「ふふっ、今更あなた如きで私が止まるだなんて思い上がらないでほしいわ。そもそも、あなたの中に闇の感情が芽生え続ける限り……それを司る私には絶対に勝てないのよ」
“う、ううっ……”
スラッシューはKotoneの人格の声が苦しみによる呻き声を上げるのを見てこれ以上自分の邪魔はさせないと切って捨てると改めてハジメを見た。
「今のやり取り。UtakoにKotone……まさか、君は」
「あはっ、あなたも私の正体に勘づくのね。ま、あなたが幼い頃くらいにはとっくに過去の人って言われてたかもしれないけど」
ハジメは今のやり取りで何となく目の前にいる人物が自分の幼い頃にテレビで偶に特集を組まれていた伝説のアイドル、UtaKotoneのKotoneであると察する。
「まさか伝説のアイドルと呼ばれていた君がこのような事を」
「お喋りはこの辺にしましょう」
スラッシューはハジメとの会話はこれ以上要らないとばかりに彼の闇を使用する事に。
「あなたの闇……頂くわ」
その言葉と同時にスラッシューがハジメの持っている闇を示す黒いリボンの所に直接ワームホームを生成。そのままリボンを掴むと引き抜いてしまう。
「うわぁああっ!?」
ハジメの持っていた闇の黒いリボンがスラッシューの前に出てくるとそのままスラッシューは闇を解き放つ言葉を言い放つ。
「光を切り捨て、闇へと呑まれなさい」
そのまま黒いリボンが解かれてしまうとハジメは闇の中に力が閉じ込められてしまう。同時にスラッシューはダークランダー召喚用の赤い水晶を持ち、彼女はダークランダーを呼び出す。
「現れるのです、ダークランダー!」
「ダークランダー!」
今回の個体は前にレイが変身したダークランダーと同じように人型であり、普段なら何かしら武装があるのだが……今回のダークランダーにそういう物は見られず。シンプルイズベストとばかりに何も武装を持っていなかった。
これにより、ダークランダーがサウンドプロダクションの外に降り立つと叫び声を上げる事になる。
「ダークランダー!!」
「さて、社長さんのダークランダー。どのくらい強いか見てあげるわ」
スラッシューはダークランダーが叫び声を上げるのを見つつアイドルプリキュアが来るのを待つのだった。
また次回もお楽しみに。