キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ハジメを素体にしたダークランダーに大苦戦するプリキュア達。アイドルは状況を打開するためにもう一度スラッシューを説得しようとするが、ダークランダーの妨害によってこれも失敗してしまう。
絶体絶命のアイドルプリキュアだったが、そんな時に声が聞こえるとその方向にはこの場にいないはずのキュンキュンとレイがハートガーデンの中に駆けつけていたのだった。
「何!?キュアキュンキュンは兎も角、あの男は何故ここにいる……」
「2人共、どうしてここに?」
「実は……先程レイ先輩から連絡が来て。先輩方が戦ってる話を聞いて駆けつけたんです」
「レイ君、キュンキュンを呼んじゃったんだ……」
当初、キュンキュンを呼ばない指示を出したのはレイだった。ただ、最終的に呼ぶ事になってしまったという事で彼の方にキュンキュンを呼んだ事に対する説明を求める視線が飛ぶ。
「まずキュンキュンを呼んでしまった事に関してはすまん。さっき俺が父さんを止めたくてハートガーデンに入ろうとしたんだけど、プリキュアと一緒じゃないと入れない事に気がついて。その段階でハートガーデンに入ってなかったのがキュンキュンしかいなかったんだ」
「って事はレイがここに来るために呼ばないといけなかったって事?」
「簡潔に言ったらそうなるな」
レイはハジメを救うためには彼が素体となったダークランダーと接触しないといけない。ただそうなると、まずはハートガーデンに入らなければならず。ハートガーデンに入るための条件であるプリキュアと一緒にいる事をクリアするためにキュンキュンを呼ばざるを得なかったのだ。
「さっきあんな事を言った手前、約束を俺から破る事になったのは申し訳ない」
レイは選挙活動の準備で忙しいキュンキュンことこころを自分から呼ばないという話にしておいたのにも関わらず、結果的に彼女を呼ぶ事になってしまった形となったのを謝罪。それに対してウインクは笑顔で許す事にした。
「そんなに謝らなくても大丈夫だよ。むしろキュンキュンが来てくれなかったら私達、きっとやられちゃってたし」
「確かに……ウインクの言う通りよ」
レイの謝罪に対してウインクがそれを受け入れると同じくキッスもレイの行動を肯定する。
何しろ、レイがキュンキュンを連れてここに来てくれたおかげで今戦っている4人が即全滅するのは避けられた形である。結果的にレイの行動は間違ってなかったという事だ。
「うん!キュンキュンも来てくれてありがとう!」
「ここから反撃開始だよ!」
アイドルやズキューンもキュンキュンの参戦や彼女を呼ぶ判断を下したレイに感謝の気持ちを浮かべる。対してスラッシューはキュンキュンの参戦には多少驚いたものの、先程までの戦況やレイの発言を加味してまだ自分の優勢は崩れていないと考えていた。
「確かにキュアキュンキュンの参戦でアイドルプリキュアが持ち直したのは認めるわ。でも、ダークランダーは健在。あなた1人の加勢であのダークランダー相手に勝てるとでも思ってるわけ?」
「「「「ッ………」」」」
スラッシューはあくまで冷静に先程までの戦いの経緯をキュンキュンに説明するような形で自分達圧倒的優勢という事を誇示。彼女1人入った所で逆転の目など無いと言う。
そして、スラッシューの言った事が誇張でも何でもないという事を示すようにアイドル達4人は悔しそうな顔を浮かべた。
「それに、アイドルプリキュアでは無いあなたがダークランダーを説得するですって?そんな物不可能よ」
「ダークランダー!」
続けてスラッシューはレイの方を向きつつ彼の言葉ではダークランダーには届かないと告げる。それはその通りだろう。事実、ダークランダーをアイドルプリキュア以外の者が説得するというのは困難を極める。
「それでも俺はやる。やってみせる」
「じゃあ、試してみるかしら?」
スラッシューはレイではダークランダーの説得は不可能だと高を括るとわざとダークランダーに声掛けができるように彼の前を開けた。
「レイ先輩……」
「ああ、もしヤバかったらカバーを頼む」
スラッシューが会話のチャンスを与えたという事でレイもこのチャンス。逃す事は無く前に出ていく。それから早速ダークランダーの内部にいるであろうハジメへと話しかけた。
「ダーク」
「父さん、俺の事わかるか?」
「ラン!」
「ッ……ふぅ」
レイが最初の声かけをするとダークランダーは睨みつけるようにレイを見る。その圧にレイは僅かに押されつつもダークランダーが動かなかった事で息を吐きつつ話を続ける。
「俺さ、ずっと父さんの事を嫌ってた。父さんと母さんが俺の事で喧嘩するようになって。不仲になっている2人の事をただ黙って見ているだけしかできなくて。今でもあの時無理にでも間に入っていれば止められたのかもってさ」
レイはここ数年間、ハジメに言えていなかった彼に対する本当の気持ちを話す。ダークランダーの方はそれを聞いても特に大きな反応を示す事は無い。ただ、それでもレイは話を続けていく。ハジメの心を取り戻すためにも。
「だけど、あの時の俺にはそれが出来なかった。2人が喧嘩してる時は何が何だかわからない所もあったし、母さんが亡くなってからは父さんに対して感情的になっていたから」
「クラァ」
するとダークランダーは今のレイの話に対して怒りの感情を向けたからか。その眼光が更に鋭くなる。
「でも、今は違う。俺は、父さんとちゃんと話がしたい。ずっと話すのを避けてきてしまった分。父さんの意見をちゃんと聞けなかった分の話をしたいんだ。もう俺はあの時みたいに何も話を聞かずに一方的に父さんが悪いなんて言わないから……。だから、もうこんな事は止めてくれ!」
レイの必死の訴えに対してダークランダーは少しの間、動きを止めていた。しかし、その闇は止まるどころか更に増すとレイへとゆっくりと歩み寄り始める。
「ッ!?レイ君!!」
「レイ先輩、ここは私が……」
「待ってくれキュンキュン。まだ、まだ待っててほしい」
それを見たウインクは不安から思わず声を上げると同時にキュンキュンがレイを守るためにダークランダーに向かおうとした。
ただ、その直前にレイが彼女の前に手を出す形で止めるともう少し我慢するように言う。そんな中でダークランダーはとうとうレイの前に来てしまった。
「ふふっ、馬鹿な男ね。ダークランダーにそんな説得効くはず無いのにわざわざ自分から攻撃を受けに行くとは」
「ッ、レイ君……」
ウインクはレイの目の前に迫り、明らかに彼に対して敵対心を向けるダークランダーを見て祈るように手を合わせる。そして、ダークランダーはレイを踏み潰そうとして脚を振り上げた。
「ダークラン!」
「「くっ……」」
その瞬間、レイが無惨に踏み潰される所を想像したアイドルプリキュアの5人は思わず目を瞑るか逸らしてしまう。だが、いつまで経ってもダークランダーからレイを踏んだような音が聞こえてこない。その様子に不思議に思った5人は恐る恐る目を開けるとそこに映ったのはダークランダーの脚がレイの頭の上から数センチ手前で止まっている所だった。
「えっ……?」
「ッ、馬鹿な……ダークランダー!そんな奴踏み潰しなさい!」
スラッシューが慌ててダークランダーに指示を出すものの、ダークランダーはそれに全く応える事は無い。それどころかダークランダーは脚を引くと頭を抑え始める。
「クラァアア……」
「ッ!なら、私が潰すまで!」
スラッシューはダークランダーが役に立たないと考えるとそのダークランダーの不調を呼び起こしたレイを攻撃するために飛び出す。
「そんな事させません!」
だが、そのタイミングでレイの近くに立っていたキュンキュンがすかさずカバーに入るとブローチをタッチしつつスラッシューを引きつけるだけ引きつける。
「はぁあああっ!」
「これでどうですか!キュンキュンレーザー!」
その瞬間、キュンキュンはスラッシューを出来る限り自分の側にまで寄らせるとゼロ距離でキュンキュンレーザーを放つ。これにより、スラッシューは後ろに吹っ飛ばされてしまう。
「くっ!?こんな小細工を……」
「スラッシュー、あなたの相手は私がします!」
ここでスラッシューに邪魔をされるとレイがダークランダーの説得をできなくなってしまう。なので、今いる5人の中で体力的に一番余裕のあるキュンキュンがスラッシューを迎え撃った。
その一方でレイの言葉を聞いたダークランダーは先程から頭を抱えたままある事を口ずさむ。
「レ……イ……」
「ッ、父さん!?」
何と、ダークランダーの口から出てきたのは目の前にいるレイの名前。そして、その声質も素体であるハジメの物そっくりだった。これはつまり、ダークランダーの中に囚われているハジメの意識がレイの声で覚醒。彼の事を個別で認識し始めているのである。
「父さん!そんな闇に負けたらダメだ!」
「あ……あ。私はこの程度の闇に負けるわけには……」
するとダークランダーはハジメの言葉でそう言うとどうにか荒れ狂う闘争本能を抑えようとしていた。
「レイ君のお父さん、凄っ……」
「うん、私達プリキュア以外の声掛けが届くなんて」
「まさに子を想う父の気持ち……親子愛の成せる業」
アイドル達もレイからの言葉があったとはいえ、自力でダークランダーの闇を払いのけようとするハジメの強さに驚きの様子を見せた。
対してキュンキュンを相手にしながらこれを見ていたスラッシューは明らかに動揺した顔になる。
「嘘……何で、何でダークランダーが」
「これがレイ先輩とハジメさんの絆……切っても切れない親子の絆なんです!」
「ッ……ふざけないで!絆なんていつか消え去ってしまうの!離れ離れになって、周りから見捨てられて。孤独になって……だからそんな物を信じても無意味なのに」
「そんな事ありませんよ。スラッシュー」
動揺したせいで狼狽えながら後退りするスラッシュー。そして、そんな彼女に優しくキュンキュンは話しかける。
「あなただってUtakoさんとの絆を大切にしているじゃないですか」
「な!?そんな事は……」
スラッシューはキュンキュンからの指摘を否定しようとしたものの、途中で口籠ってしまう。彼女も口では否定しつつもわかっていたのだ。自分がUtakoの事をアイドルプリキュアに話す度に自分の中で彼女との絆が完全に消え去っていないという事を。
「だって、あなたがUtakoさんの事を話す時。いつもUtakoさんが非が無いように自分のせいにして庇ってるじゃないですか。Utakoさんの事がどうでもよかったらそんな話し方にはならないはずですよ」
「ぐ……そんな、私が絆を大切に……うっ」
するとスラッシューの脳裏にまたUtakoとの想い出がフラッシュバックし始める。こうなると彼女はまともに戦う事すらできない。同時にダークランダーもハジメに抵抗されているせいか動きが鈍っていた。
「ダークラ……」
「父さん……」
しかし、ダークランダーの方は闇の力がハジメの抵抗を上回ってしまうと自分をおかしくさせる元凶のレイを今度こそ潰すために拳を振り上げた。
「ダァアアッ!」
「アイドルグータッチ!」
ただ、これだけ時間を稼げばダウンしていた4人も十分休んで体力を回復する事ができていたためにその拳に対してはアイドルがグータッチで対抗しつつ押し返す。
「ンダァア!?」
「やぁああっ!」
ダークランダーが体勢を崩した所にウインクが跳び上がるとその顔面に飛び蹴りを命中させる。
「クラ!?」
そのまま後ろに倒れ込むダークランダー。ただ、ダークランダーも意地を見せるためにすぐに起き上がる。
「ダークラン……」
「「たあっ!」」
「クラ!?」
しかし、その瞬間を狙ってズキューンとキッスが同時に蹴りを命中させる。ダークランダーはそれを防御こそしたものの、その威力は思った以上に効いたのか。そのまま後ろに押し戻されてしまう。
「私達もいるよ!」
「ええ、そして。これで王手です!」
キッスはすかさずリップを口に塗ると投げキッス。それによりハート型のエネルギー弾を放つ。
「チュッ!キッスショック!」
「クラ!?ンダァアアアア!?」
息つく暇の無いアイドルプリキュアの猛攻撃。これによってとうとう追い込まれたダークランダー。同時に体内にいるハジメの抵抗でダークランダーがまともに動けなくなった瞬間をアイドルは見逃さなかった。
「ハジメさん、今助けます!」
アイドルはハジメを救い出すために自らのライブ技を発動。領域を展開した。
「クライマックスは私!盛り上がって行くよー!」
アイドルは同時にライブ空間内で耳にインカムを生成。すかさずダークランダーは技の力によって問答無用で椅子に強制着席させられる。そのままイントロが終わり歌が始まった。
♪決め歌 笑顔のユニゾン Only you ver.♪
「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪……プリキュア!アイドルスマイリング・エコー!」
アイドルは真上に真っ赤なハートのエネルギーを生成。そのままダークランダーへとぶつけられるとその体が一気に浄化されていく。
「「キラッキラッタ〜」」
同時にダークランダーは浄化の際のお決まりの台詞を口にし、素体となったハジメを救出。その後生成されたキラルンリボンをライブをしたアイドルが手にするのだった。
また次回もお楽しみに。