キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
レイとハジメが仲直りし、親子の蟠りは解決。同時に影人も高熱から復帰するととうとう選挙戦もラストスパートへ。こころと甲斐の2人は残り僅かな活動期間で1人でも自分の支持者を増やすために奮闘する。
そして迎えた選挙の投票日。場面はチョッキリ団のアジト。バーのカウンター席に座っていたチョッキリーヌはとある写真を見て溜め息を吐いていた。
「……結局見つからなかった……」
どうやら、ここ数日休んでまで探したカッティン、ザックリンの2人とチョッキリーヌはエンカウントする事はできなかったらしい。一応彼等はアイドルプリキュアのグッズが販売されているプリティストアで働いているため、お店の中に入れば会う事はできたはず……なのだが。
チョッキリーヌがそんなキラキラしたお店に何の用も無く入る事は無いため、結局会う事はできなかったのである。
「それにしても、ハロウィンの時に久しぶりに顔を見れたアイツら。元気そうだったね……」
ちなみに、今チョッキリーヌが見ているのはビリヤードの台を利用して行ったトランプの賭け勝負の時の時間である。今いる面子ではこのような賭け事をやる事は叶わない。そのため、正直な所彼女は当時の時間が恋しく思えてしまう。
「チョッキリーヌ先輩、何見てるんすか」
「ジョギか……。別に、もう叶う事の無い楽しい時間を見て物思いに耽っていただけさ」
すると傷心のチョッキリーヌの元にやってきたジョギはチョッキリーヌの様子が落ち込んでいるのを見て声をかける。それに対してチョッキリーヌは暗い声色で答えを返した。
「なるほどねぇ……っと、チョッキリーヌ先輩。その写真の左側にいるザックリとした奴。良い真っ暗闇を持ってましたから使ってやりましたよ」
「なっ!?まさか、使ったって……ダークランダーにかい!?」
「ええ。まぁ実際はダークランダーとは別の怪物。ザックリンダーとしてですけどね」
チョッキリーヌはこのタイミングでようやくザックリンことザックリーがダークランダーの素体という形で利用された事実を知って動揺。そして、ジョギはその事を悪びれる様子も無くダメ押しの一言を告げる。
「ただ、途中までは上手く行ってたんですけど結局アイドルプリキュア相手に絆されて勝てなくて。本当に使えない役立たずでした」
「ッ……そうか。ザックリーがいつまでも戻らないと思ったらアンタ!」
ジョギがアイドルプリキュア相手に勝てなかったザックリーを馬鹿にしたような対応を見せているとチョッキリーヌは怒りの顔つきでジョギに詰め寄ろうとする。
「おっと。勘違いしないでくださいよ?あくまでザックリー?って奴がダークランダーになったのはあなたが彼の事を追い詰めたからですよ?」
「ぐ‥…」
チョッキリーヌはジョギからの指摘に一切反論できなかった。実際、チョッキリーヌが無理にザックリーを働かせ過ぎた結果……彼がチョッキリ団にいる事に嫌気が差してアイドルプリキュアに絆されてしまったという経緯がある。
そのため、チョッキリーヌはそれを持ち出されてしまうと反論する事はできない立場なのだ。
「ジョギ、アンタは一体何者なんだい?」
「はぁ、今更すか?僕はダークイーネ様イチオシの新人ってだけっすよ。それに、先輩こそ僕の事に構ってばかりで良いんですか?」
「何……」
チョッキリーヌはジョギに底知れない不気味さを感じてしまう。彼についてはスラッシューから聞いているためにある程度知っているはずだった。なのに、今回の言動のせいでまだ何か彼はとんでもない事を隠している予感がしてしまう。
ただ、そんなチョッキリーヌに対してジョギは笑みを浮かべると彼女に問いかけた。そのため、チョッキリーヌは苛立ったような顔つきを見せる。
「何しろ、ここ最近のアイドルプリキュアは次々と新しい力に覚醒しつつある。今のままじゃ、世界を真っ暗闇に染めるどころか……アイドルプリキュアとまともに戦って勝つ事も難しい」
「ぐ……」
「けど、そんな事。ダークイーネ様にとってはただの言い訳に過ぎませんから早くダークイーネ様の期待に応えないと闇に呑まれますよ」
ジョギの挑発的な言動を受けてチョッキリーヌは彼の言う事が事実ながらも、自分を闇に呑まれたカッティー達と同じだと思われては困るからか。ジョギに対して啖呵を切った。
「くっ……余計なお世話だよ!」
「ふふっ、あの人も焦ってるねぇ。だけど、そろそろ決めないと不味いのは事実。次に出る時は確実に仕留める」
チョッキリーヌはジョギとこれ以上話すのを避けるかのようにさっさと出撃してしまう。それを見届けたジョギもまた、自分には後が無いのを悟りつつも今度こそアイドルプリキュアを仕留めるという覚悟を胸に笑みを浮かべるのだった。
場面が映り、影人達の通うはなみち中学校の上空にチョッキリーヌが姿を表す。
「ふん。ジョギと私なら……ダークイーネ様は私を選ぶに決まってるさ!」
チョッキリーヌはジョギからの言葉に対して先程まではどうにか耐えていたが、彼の前からいなくなった事で改めて溜め息を吐くとチョッキリ団に戻って来ないカッティーやザックリーの事を考えてしまう。
「……はぁ。っと、つい勢いで出てしまったが折角だ。真っ暗闇を探すとしようかい」
チョッキリーヌは気を取り直して早速真っ暗闇を見つけようとする。何しろ今自分がいるのは中学校という人が多い場所。そのため当然ながらそこに存在する闇の総量も多くなる。
チョッキリーヌが早速闇を探し始めたのと時を同じくして。その中学校の方では校舎の外に出た生徒達がゾロゾロと体育館に移動していた。
「いよいよ最後の演説だね!こころ」
「ッ……」
改めてだが、この日はとうとう迎えた最終演説の日だ。そのため、生徒達は体育館に向けて移動中。影人達も移動しており、特にこころは緊張した面持ちで歩いていた。
何しろこの演説で全てが決まってしまう。加えて自分の想いが誰かに届かなければそれが得票数というわかりやすい数字で可視化してしまうので余計に緊張してしまうのだ。
「こころ、リラックスだ。肩の力を抜かないと気持ちは伝わらないぞ」
「は、はい……わかってます……」
「……そんなに心配しなくても、こころの気持ちが届いている人はいるよ。ほら」
影人はこころの気持ちを少しでも和ませるために周りを見るように促すと早速こころとすれ違う生徒達の中で彼女を応援しようとする声が聞こえた。
「頑張ってね!紫雨さん!」
「応援してるよ!」
「ッ……!」
こころはそんな生徒達からの応援を受けて嬉しそうな顔を浮かべるとたちまち胸の中に頑張る勇気が湧き上がってくる。
「だろ?こころはもう十分周りから自分のやりたい事を理解してもらってるんだ。だから後は胸の中に秘めた気持ちを全部ぶつければ良いだけ。皆の心をキュンキュンさせたいんだろ?」
「カゲ君……はい!」
最後に影人が話しかけると嬉しそうにこころは返事をする。それにより、彼女は駆け出すと選挙に出る候補としての待機場所に向かって行った。
「行ってきます!」
「頑張れこころーっ!」
「絶対に勝てるよ!」
そんなこころに声をかけるうたやぷりん。勿論彼女達もこころの味方だ。そして、めろんはレイに話しかける。
「レイ、あなたはこころは勝てると思う?」
「うーん……五分五分って所かな。こころが影人のアドバイスで公約を出して、尚且つそれが実現しやすく生徒達に理解される物だったから支持者は増えてるはずだけど。その点は対戦相手である甲斐さんも負けてない」
「でも五分五分って事は前よりも勝てる確率が上がってるって事だよね?」
「ああ。勝負の鍵はこの最終演説でどれだけの人を味方に引き込めるかにかかってる」
レイの見積もりでも勝率が五分五分と言える程に跳ね上がっており、少なくとも前よりも可能性が上がっているのは間違いない。
そんな時。選挙でのこころの相手である甲斐は不安そうな顔を浮かべていた。何しろレイの言う通り、こころは着実に支持者を増やしている。最初の方こそそこまでの脅威にならないと考えていた甲斐も段々と支持者を増やしていく彼女に危機感を募らせてしまう程に。
「頑張ってきたけど、紫雨さんは確実に票を伸ばしてる。……大丈夫からしら」
甲斐の中では不安が渦巻いていた。そして、彼女にはその不安の捌け口が無い。何しろ学校のために尽くしてきた甲斐であるものの、その厳しさもあって彼女には友達と呼べる人はごく少数しかおらず。
その友達にも甲斐が今の悩みを打ち明けられるような相手がいなかったのだ。勿論自分を信頼して支持してくれる人がいるのは確か。しかし、その人達もあくまで選挙をする上で自分を支持してくれているというだけ。
「こんな時、誰かに相談できたら……」
甲斐の不安が高まると同時にその様子を見ていたチョッキリーヌは笑みを浮かべる。
「ふーん、あの女、少しずつだけど闇を溜めてるねぇ。今は選挙とやらのために我慢しているようだけど。……あの子を追ってみるとするかい」
チョッキリーヌは甲斐をターゲットに定めると早速彼女を追いかける形でターゲットに。
少し時間が経って体育館内に全校生徒が入るとそこに設けられた席に座っていく。そして、影人達は席に座りつつ緊張した顔でステージを見ていた。
「大丈夫だよね?」
「何だか緊張してきた」
「私もだよ……」
「お前らが緊張しても何にもならないだろ」
そう言いつつも影人だって緊張している。こころが今置かれている状況というのは昔、自分が1人でステージに立って大失敗してトラウマを生み出したあの時と同じ。決定的に違う点があるとすればこころに多数の支持者がいるという事だ。
しかし、その支持者もこの演説次第では敵に回りかねない。影人はもしこころが失敗して深い傷を負ってしまうようなら自分が全力で彼女を助けようと考える事になる。
『それでは、候補者2名による最終演説を行います。まずは紫雨こころさん。お願いします!』
すると司会の生徒が声をかける形でこころが最終演説をするように言うと早速彼女はステージ上にある候補者用の椅子から立ち上がって演台にまで移動する。
「ッ……」
そして、こころは体育館のフロアから感じる多数の視線に思わず圧倒されそうになる。そんな時、こころの視界に一瞬だけチカチカする光が見えた。それは三年生の列の方に座っているぷりんとめろんの2人がしれっとキラキライトを使う際の物である。
「「頑張れ、こころ」」
勿論そういう行為はあまり良くないので珍しく2人とも一瞬使うだけに留まったが、こころにとってその応援は自分に力をくれる程に大きな物だった。そして、こころは2年生の列にいる影人とも目線を合わせる。
「(こころ、お前ならできる。皆の心に響かせるんだ)」
2人はアイコンタクトを取ると影人が小さく頷く。それを見たこころは胸の奥が温かくなるのを感じた。そして、彼女はその温かさに背中を押されながら早速演説を開始する。
『1年A組の紫雨こころです!私が目指すのは、心キュンキュンな学校です!』
それとタイミングを同じくして。外に来ていたチョッキリーヌが体育館の中に現れると2階の通路の辺りからステージを見やる。
「アレは……プリキュアじゃないか」
『私が立候補したのは、アイドルプリキュア研究会を廃止にしたくなかったからです』
当然プリキュアの正体を知っているチョッキリーヌは演説中のこころを見ながら彼女がキラキラとしている様子を一瞥。それはさておき、チョッキリーヌの狙いは近くに座っている甲斐である。
「ふん、キラキラしちゃって……っと」
「(紫雨さん、凄い人気……。それに、私に無いものを持っていますわ……)」
甲斐はこころが演説を開始したタイミングで体育館が一瞬どよめいたのを見て完全に圧倒されてしまうと更に不安が膨れ上がり、それはチョッキリーヌにも可視化されてしまう。
「ふふっ、私の読み通り。良い不安が溢れ出ているじゃないか」
『研究会では、アイドルプリキュアを応援しています!応援すると、いつも心キュンキュンしてます!だからこそわかるんです。心キュンキュンな学校を作るため、生徒会長に相応しいのはこの……』
しかし、こころはチョッキリーヌの出現に気づいておらず。自分の演説を続けるとある事を言い出そうとした。そのタイミングでチョッキリーヌはステージの上に姿を表す。
『なっ!?』
「その真っ暗闇……いただくよ!」
チョッキリーヌは闇を放出している甲斐にターゲットを決めると早速彼女の胸に秘められた闇を抜き取るために呪文を言いつつ指を鳴らす。
「お前の闇を見せてみな」
「きゃあああっ!?」
その瞬間、甲斐の胸から黒いリボンが生成。それは彼女の心の闇を示しており、同時にチョッキリーヌが何かをしている事と甲斐が叫ぶ様子は周囲からも視認できるために影人達はそれを確認する。
「「ああっ!?」」
「ちよ先輩!?」
「ぐ……ダメだ、こうなったら召喚は止められない」
これにより、影人達はまたチョッキリーヌに大事な場面を邪魔される形となってしまう。そのままチョッキリーヌが召喚の儀式を止める事は無く、召喚を続けた。
「チョッキリ呑まれてしまえ!」
チョッキリーヌがそう言いながらポーズを決めると黒いリボンが解かれて甲斐が闇の中へ。そのままチョッキリーヌは水晶と闇の球体を合わせて地面に叩きつける。
「さぁ来な!ダークランダー!」
「ダークランダー!」
これにより召喚されたダークランダー。今回の個体は近くにある投票箱をモチーフにしつつも肩からは襷をかけて頭の両側には計8門のミサイルの発射口が武装されているようだった。
そして、突然の怪物の出現に辺りは大混乱。折角の最終演説が壊されてしまう事になる。
また次回もお楽しみに。