キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
キュンキュンきいが影人に託される形で更なる力に覚醒。それに対抗する形でダークランダーもチョッキリーヌの応援に応えつつ更なる闇の力を呼び覚ます。
それでもキュンキュンの想いの力はダークランダーを上回り、浄化に成功すると甲斐を救出。ハートガーデンも解除されて元の体育館に戻ってきた。
「ッ……また負けた……」
チョッキリーヌはダークランダーがパワーアップし、プリキュアの覚醒相手にある程度良い勝負をしていために今度こそ勝てると思っていた。……しかし、現実はそう上手くは行かず。結局は負けて浄化の憂き目に遭ってしまう。
そして、ここまでずっとチョッキリーヌは煮湯を飲まされ続けたせいか、彼女自身の中にアイドルプリキュアへの負の感情は高まりつつあった。
「アイドル……プリキュア!」
チョッキリーヌは悔しさを噛み締めたように呟く形でそう言うとダークランダーがやられた以上は闇を作り出す事もできずに撤退。プリキュア達はチョッキリーヌが撤退するまで警戒を続けていたが、彼女がいなくなった事で安心すると変身解除した。
「もう大丈夫そうだね」
「カゲ君、体の方は大丈夫ですか?」
「ああ、こころが浄化技を使った時に周囲に発生したキラキラを浴びたおかげで怪我とかは無くなったよ」
プリキュアのダメージは自分の意思で変身解除すれば大体の場合消え去るが、影人は半ば強制的な変身解除だったので先程まで衣服も含めて傷が残ってしまっていた。
しかし、その傷もキュンキュンが使った浄化技によって消失。戦う前の状態にはなっていたので結果的にプラマイゼロという感じだった。その代わり影人の体力までは回復してないので選挙活動が今日で終わる以上、暫くは安静にする事が望ましいだろう。
「そうだ、ちよ先輩!」
それから影人達はステージの上で倒れていた甲斐を見ると彼女はゆっくりと目を覚ます。
「う……ううっ……私、何を……」
「ちよ先輩、大丈夫ですか?」
「紫雨さん……どうして私はここに……それに他の皆さんは」
甲斐は起き上がると何故か体育館のフロアに誰もいない事や生徒達の座っていた椅子がバラバラと散らかされているのを見て困惑する。
「えっと、実は先程ちょっとした地震があって。ちよ先輩はそのせいで気を失ってたんです」
「えっ!?じ、地震!?」
「大丈夫ですよ。震度はそう大した物じゃなかったので……」
「一応念のため全員で揺れが収まった後に避難したんだ。まぁ、大した震度じゃないからすぐに戻ってくると思う」
こころはダークランダー出現の件は一応地震という事で甲斐には誤魔化すと彼女も混乱していた事や意識がまだ少しボーッとしていたのもあって信じてくれた。
影人もこころの意見に便乗する形で肯定。それから甲斐はうた達4人の方を見ると同じように地震が起きたとして頷く様子が見えたために彼女は余計にこの事に納得する。
「あの、選挙はどうなるか聞いてたりします?」
「選挙は……」
すると、そのタイミングで体育館の扉が開くと点呼の際にいなかった影人達を心配した教師達が入ってきた。
「皆、大丈夫か!?」
「富士見先生……」
「全部で7人……良し。ひとまず、全員無事か」
どうやら、今回の件で体育館から避難を確認できていなかった影人達が全員揃っていた事が決め手となり騒ぎは一旦終結。
その後、肝心の生徒会選挙自体は安全確認の後に時間を後ろ倒しして続行する事が決定。少しして体育館内に生徒が戻ってくると選挙の最終演説が行われる事になった。
勿論散らばっていた椅子は全部戻した上で生徒達はそこに全員着席。事件が起きる直前部分からの再開であるため、まずはこころの演説を最初からやり直す形で始まった。
『改めて聞いてください。心キュンキュンな学校を作るため。生徒会長に相応しいのは……』
こころは先程言えなかった演説の話をするためにある事を言いかける。すると、そんなこころを応援するように体育館から声が上がった。
「紫雨さんだよ!」
「頑張れーっ!」
『……いえ。甲斐ちよ先輩です!』
『えっ!?』
突如として最終演説の中で自分よりも甲斐の事を生徒会長に相応しいと言い出したこころに体育館中は動揺に包まれる。当然ながら、うた達も驚きの声を上げていた。
「はぁ……。やっぱりうちの彼女は、自分で誰かを引っ張るよりも……隣で誰かを応援する事の方が向いてるって事か」
一方の影人は先程の演説の冒頭の言葉を聞いた時点で何となく自分よりも甲斐を優先する事は予測できていたのか。苦笑いしたような様子でこころの行動を見ていた。
「「「な、何で!?」」」
「こ、こころ。どういう事!?」
「どうしていきなり……」
「しっ!今は大人しく様子を見ようぜ」
うた、なな、東中の3人やぷりん、めろんが驚いたような様子を見せるとレイはこころなりに何か考えがあると予想。うた達には様子を見守るように促す。
そんな中で甲斐は慌てて席から立ち上がるといきなりとんでもない事を言い出したこころへと問い詰める。
「どうして……紫雨さんも生徒会長になるために頑張っていたはずなのに。だって、あんなにも学校の事を……」
その言葉は、甲斐がこころの事を生徒会長候補として学校のために色々と政策を考えて出していた場面を見て彼女の事を認めていたからこそ出た物だった。
だからこそ、こころになら負けても仕方ないとさえ思っていたのである。そのため、こころがいきなり生徒会長候補を辞退するような事を言い出して余計に困惑したのだ。
『私がアイドルプリキュアを応援したくなるのは……アイドルプリキュア全員が素敵だから。前に進む姿がキラキラ輝いてるからです!それと同じように輝いているのが、ちよ先輩です!』
こころはそう言って甲斐へと視線を向けると彼女は未だに困惑としたような顔つきで状況を受け止めきれていなさそうな様子だった。そこにこころが更に甲斐の良い所を挙げていく。
『ちよ先輩は学校の事を沢山考えていて。生徒皆の事を心から想っている。優しい人です!そんな姿を見て、私……心キュンキュンしてます!』
「ッ……紫雨さん……」
甲斐はこころに自分の良い所を沢山言ってもらっただけでなく。生徒会長として活動する自分を応援すると宣言されて胸の中が温かくなるのを感じ取っていた。
そして、甲斐はこの温かさこそが前に話した時からずっとわからなかった誰かを応援する事の良さなのだと実感する。
『だから、ごめんなさい!私は立候補を辞めて、ちよ先輩を応援します』
「それがこころのやりたい事か……。なら、俺はそれに従うだけだ」
こころは自分の意思で立候補を取り下げる事を表明。普通ならいきなりこんな事をして許される物では無いだろう。しかし、影人は自分だけでもこころの意思を尊重するために拍手をする。
するとその直後に影人と同じ気持ちの人達がいたのか、周囲からの拍手の音が鳴り響く。
「こころちゃんだって優しいね」
「うん!」
「ふふっ。こころらしい選択ね」
「今のこころを見てると、私も心キュンキュンだよ!」
どうやら、こころの選択は他の生徒達に認めてもらえたのか。幸いにも彼女の勝手な辞退を咎める者は誰1人として現れなかった。そして、こころに託してもらった甲斐は少し恥ずかしそうに頬を赤らめつつも彼女の分まで生徒会長として頑張りたい気持ちが湧き上がってくる事になる。
「紫雨さん……その、ありがとう」
「いえいえ!生徒会長として頑張ってください!私、応援しますから!」
その後、こころが生徒会長候補から降りた事で選挙その物は当初の予定通りの信任投票となり。結果的に甲斐が全校生徒から信任される形で当選した。
「こころ、お疲れ様」
「その……カゲ君。ごめんなさい!」
昼休み、影人達はいつものようにアイドルプリキュア研究会の日であるためにその教室に集まるとまずはこころが影人へと頭を下げつつ謝罪する事に。
「ッ、それは生徒会長候補からいきなり降りた事に関してか?」
「は、はい」
「ま、アレに関しては俺も色々と言いたい事はあるけど……でもそれ以前に生徒会長を目指す事を決めたのはこころだ。そのこころにやらせる選択をしておいた俺が何かを言える立場では無いよ」
影人はこころの決定した事であるため、それ以上無理に追及するつもりは無く。その決定を尊重する事に決めていた。勿論影人だけでは無く、他の皆もそうである。
それはさておき……今回の生徒会選挙の結果を受け、早速その結果が反映されると生徒会選挙のポスターが貼られている掲示板では甲斐のポスターに当選の印である赤いペーパーフラワーが付けられる事に。
これにより、今回の選挙の勝者かつ次期生徒会長が甲斐ちよである事が示される事になる。
「ちよちゃんが生徒会長になったって事は……研究会は無くなっちゃうよね……」
「ああっ!?そう言えばそうだったぁあっ!?」
そして、それは同時にアイドルプリキュア研究会は廃止の運命を辿る事を意味するわけで。東中は最早どうしようもない現実に諦めたような顔つきになっていた。うたもそれを聞いてようやく甲斐が当選する事の意味を思い出す。
「大丈夫です!その時は……アイドルプリキュア研究会2を作りましょう!」
「えぇ!?」
「アイドルプリキュア研究会……2?」
そんな時だった。こころが代わりの案だと言わんばかりにアイドルプリキュア研究会を名前を変えて立ち上げ直せば良いと言い出す。そしてそんな彼女の天才的(?)な案にうた達は希望を取り戻した。
「「それ良い!」」
「その手があったね!」
だが、そんな事ができたら最初から選挙に対抗馬として出馬する前に影人やレイが思いついて助言するはずだ。当然ながらそのような事は通るわけがない。
「いや、何でだよ。ダメだって。まずそもそも作ろうとした時点で生徒会長から承認されないんから作られる事は無いって」
『ガーン……』
影人のツッコミでアイドルプリキュア研究会が2として生まれ変わる事は絶望的であることを思い知らされたうた達。するとそこに教室の扉が開け放たれて1人の女子生徒が声を上げた。
「……その必要はありませんわ」
「ッ、ちよ先輩!」
そこにいたのは生徒選挙に勝利し、晴れて生徒会長になった甲斐であった。彼女は選挙の際に自身のサポート役としていっしょに行動していた生徒達と共にやってくる事に。
「……あなた達の言う応援の成果がわかりましたわ」
「え」
「紫雨さんの応援で心が元気になって……学校のためにもっと頑張ろうと思いましたの!」
甲斐はこころのおかげで応援する事で何を得られるのかを理解した。それは応援する者自身には何の成果が無くとも、応援される側には大きな力を与えてもらえるという点である。
「だから私も応援しますわ!アイドルプリキュア研究会を!」
そして、甲斐は取り巻きの少年少女達と共にキラキライトを取り出すとそれぞれの色を発光させてノリノリにポーズを取った。
「本当ですか!?」
「やったぁ!」
「ちなみに私が特に好きなのは……」
甲斐がそう言い出した所でお昼休みの放送が流れ始める。その声は影人達のクラスメイトで放送委員会の新野が発した物であった。
『お昼の放送一曲目は、新生徒会長の甲斐ちよさんからのリクエスト……キュアキュンキュンの“ココロレボリューション”です!』
「ッ……!先輩、キュアキュンキュン推しなんですか!?」
「ええ。あの子は紫雨さんみたいにとっても真面目で努力家なのだと分かりますわ。気づきませんでしたか?初めて彼女が動画としてアップロードされたに時とこの前のライブ映像。二つを擦り合わせると動きがかなり良くなってるんですわ」
そしてそれはつまり、日々の努力の積み重ねが成果として実を結んでいる。甲斐が伝えたいのはそういう事なのだろう。
「日々努力し、それをライブという成果として見せる。私はそんな彼女の姿に惹かれましたのよ」
「わぁ……」
こころは自身の成長を甲斐がわかってくれた事が嬉しいのか。顔つきがとても嬉しそうな物に変わる。
「ちよ先輩がアイドルプリキュア研究会を好きになってくれて……私、凄く心キュンキュンしてます!」
『イェーイ!』
こうして、アイドルプリキュア研究会は甲斐の決定によって存続する事が決められた。つまり、これからもアイドルプリキュアを推すこの活動を続けて良いという事である。
そして、甲斐は研究会の続行を認めた所で盛り上がる研究会員を他所にこっそりと影人の方に話しかけた。
「それと、黒霧君。あなたが教えようとしてくれたのはこの事だったんですね」
「ああ。応援される側になるとわかるだろ?アイドルプリキュア研究会がある事の良さが」
「ええ。先程も話しましたが、研究会はこれからも活動する事を認めますわ。……それと、偶に私も来て宜しいでしょうか」
「勿論。いつでも待ってるよ」
すると甲斐は頬がほんの僅かに赤くなるとそれから一瞬だけ首を横に振って呟く。
「雨の日の事と言い、私の事を説得しようとした事と言い……紫雨さんがあなたの事を好きになった理由。今なら何となくわかるかもしれません」
「甲斐さん?」
「いえ、何でもありませんわ。紫雨さんの事、大切にしてくださいね」
甲斐がそう言うと影人は思わず首を傾げてしまう。同時に甲斐は高鳴る心臓の鼓動を振り切ると影人とこころの関係値を前にあっさりと散ってしまった儚い影人への想いを胸にしまう事にするのだった。
また次回もお楽しみに。