キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
生徒会選挙が無事に終わり、心変わりした甲斐ちよの鶴の一声でアイドルプリキュア研究会も存続が決定。影人達はひとまずの危機を乗り切った。
その数日後である金曜日の放課後。今現在影人達はグリッターの2階にあるスペースに集まってとある動画を視聴している所だ。そこにいるのは影人、うた、なな、こころ、プリルン、メロロンである。
尚、今回もまたレイは家の関係でここには来ておらず。この6人が固まる形でうたのスマホの画面を観ていたのだ。
『いつかまた会えるその時まで〜♪今日の片隅に響かせた僕の鼓動が〜♪』
『レジェンドアイドル、響カイトさんのライブツアー。“空を駆けるメロディー”。全国の響カイトファン、カイ友が大熱狂しています』
そして、6人が観ている動画というのがここ最近全国ライブツアーを行っていたレジェンドアイドル……響カイトの事に関してのニュースである。
そこにあったのはメディア向けの映像としてのライブ映像の一部がダイジェスト的な形でネットニュースとして公開されており、ニュースキャスターの女性がその解説をしていた。
「凄い。カイ友の振ってるペンライトが会場を全部埋め尽くしてる」
「流石はレジェンドアイドル……会場その物がカイトさんを中心に一体化してるって感じ」
動画に映っているライブシーンでは会場のドーム内が全てカイトのイメージカラーの青緑色に輝くペンライトでいっぱいであり、それだけで会場がカイト色一色に染まっている事が確認できる。
「多分このドームの大きさからして会場の規模は私達が前にやったパシフィコ横浜を超えてますね」
「確かにそうメロ……しかも一公演当たりがこれって事は……」
「ああ、レジェンドアイドルの規格外さを思い知らされるよ……」
一応アイドルプリキュアは結成半年で爆発的な人気を得るに至っていたが、響カイトはここまで数年間ずっと積み上げた物がある。そして、今回の全国ツアーが企画され、多数のドームの使用が承認されるレベルなので文字通りアイドルプリキュアのライブとは格が違うと言える。
「キラッキランラン〜♪」
『やわらかな追い風にかさなって♪キミの街まで〜……』
『ツアーもいよいよ大詰め。ファイナルを飾るはなみちスタジアムでのライブが明日に迫ってます』
「っと、そっか。ライブツアーも始まってからそれなりに経つからな。そう考えるとそろそろファイナルになるわけか」
「それにしてもこの街で最後の一回をやるんですね」
「カイトがこの街に来るプリ〜!」
カイトが前にうたと話をした際、その活動方針がかつてすれ違いが原因で別れてしまった友に歌を届かせるためという話をしていた事からライブの最後は自分が元いた街でやりたいと思うのは割と真っ当な理由だろう。
そして、この翌日にはなみちスタジアムでライブをやるという事はカイトは既に会場で色々調整しているのは間違いないと言える。
『ここで、響カイトさんからのコメントをどうぞ!』
すると、影人達が視聴していた動画の方ではライブのちょい見せダイジェスト映像から画面が切り替わるとインタビューを受けるカイトの顔が映し出される。そして、アナウンサーからの質問を受けたカイトはテレビカメラの向こうにいるであろう視聴者に向けてコメントを発表した。
『活動再開してからの初のライブツアー。カイ友のお陰でどの会場も最高に盛り上がる事ができました。明日のライブ、想いを込めて歌います。どうかこの歌が届きますように』
それは、先程も言及したようにカイトがアイドルとしての活動する理由。今になってもずっと想っている者……世界の何処かにいてくれる己の友の事を言っているのだろう。
それと同時刻の街中では。ビルに設置された液晶に流れる同じニュースを見て足を止める人々の中、1人だけ苛立ったように顔を顰める者がいた。
「カイト……今更こんな事を言ったって壊れた関係っていうのは変わらないんだよ」
それは多数の人の中の1人として紛れていたジョギである。一応彼は他の人間から見るとフードを被った陰キャのような人間にも見て取れるため、普通に人混みの中に紛れてさえしまえば顔を見られない限りチョッキリ団として悟られる事は無い。
ついでに彼は用心深く、周りの人間に対して認識阻害の効果もかけているようだった。そのため、バレる危険はほぼゼロと言える。
「……お前が二度とあんな事を言えないようにするためにこのライブ、潰してやるよ」
それはさておき、ジョギの瞳には怒りが込められていると絶対にカイトのライブを潰すという確固たる意思を持っていた。
「ひとまずは、アジトに帰ってどう襲うか決めるとしようか」
ジョギは翌日のライブまで時間がある事を利用してどうカイトのライブをぶち壊すかの算段を考えるためにアジトへと戻る事になる。
その後、場面が戻ってグリッターの2階スペース。そこではニュースを観終わった影人達が早速この街に来ているであろうカイトの話を再開する事に。
「うた!カイトに会えるメロ!」
「久しぶりだもんね!」
「前回会ったのはカイトさんが過去の後悔について話してもらった時だったし、ここ最近はカイトさん自身がずっとライブの事で飛び回ってた事もあって余計に会えてないからな」
ななとメロロンは早速うたへとカイトと会えるという話を出すと少しでもうたがカイトを意識するような形で背中を押そうとする。
「た、確かにそうだけどそんな簡単に会いに行くのって大丈夫なのかな……」
ただ、うたは何かとつけては話題をカイトと直接会う話から逸らそうとしていた。勿論、彼女としてカイトに会える事が嫌なわけでは無い。むしろ、ここ数ヶ月で随分とカイトの事に関して考えるようになった。そのため、可能なら会いたい。会いたい所ではあるのだが……。
「離れていても、いつも想うのはあなたの事……。今すぐあなたの元へ!」
「プリ?」
すると、うたがどうすべきか迷っていると影人達が囲んでいるテーブルの上でメロロンが想い人への感情を高めつつポエムを口ずさんだ。そのまま彼女は舞い踊りながらプリルンに抱きつく。
対して抱きつかれたプリルンの方はメロロンの気持ちが届いていないのか……キョトンとした顔つきで何のことかわかっていなさそうだった。
「プリルンはもう少しメロロンの行動に寄り添ってやろうな?」
「プリ?よくわからないプリ」
「はぁ……。それにしてももうライブツアーも最後か。思えば時間が経つのも早かったな」
影人は一応メロロンの行動にちゃんと気づくようにプリルンに言うが、やはり全くわかっていなさそうだったためにその鈍感さに呆れたように溜め息を吐いてからカイトが戻ってきた事を改めて考える。そんな時、こころがうたへと詰め寄って話しかけた。
「うた先輩、カイトさんと会えるチャンス到来ですよ!先輩も心キュンキュンしてますよね?」
「うえっ!?え、えっとぉ……」
「そうやってモジモジしていないで早く会いに行くメロ」
メロロンもこのチャンスを逃すなと言わんばかりにうたへと行くように促す。しかし、うたはまるで言い訳をするかのようにカイトが忙しいという事を引き合いに出して遠慮してしまう。
「で、でもカイトさん……明日は大事なライブだし」
「確かにそうだけど、このままだとまたカイトさんが他の場所に行くかもしれないよ?」
「うう……だけどあんなにもライブにやる気のカイトさんを観てたら……余計に言いづらい」
うたの言う事にも一理ある。カイトが今回の全国ツアーライブには真剣な様子で臨んでおり、下手に会いに行けばその集中を邪魔してしまうリスクも高い。そのため、影人達もこれ以上は無理に詰める事はできなかった。
「そういえば、さっきのコメントでも気合い入ってる感じでしたもんね……」
「それだけカイトさんが本気でライブに臨んでいるって事か」
影人達がカイトの本気度を感じつつ考えているとうたが珍しく俯いた状態で不安そうな顔を浮かべる。
「うたちゃん、どうしたの?」
「……改めてだけど。カイトさんが歌を届けたいのは昔の親友のカズマさんで。でも、そのカズマさんは……」
「そうだな。恐らくカズマさんはダークイーネによって闇に堕ちて、その成れの果てがあのジョギって奴だ」
カイトはカズマに自らの歌を届けたいと願っているのだが、そのカズマはジョギとして世界を真っ暗闇に染めようとしているわけだ。しかも、カイトはジョギがカズマである事を知らないとはいえそのジョギの手によってダークランダーとされてしまった。
しかもそれ以降も度々説得しようとする度にジョギは反発している所を見ると下手したら彼はもう昔のようには戻らないかもしれない。
「多分スラッシューと同じで自ら闇に身を置きたいと言い続ける限りは俺達の説得は厳しいんだろうな」
「だけど、もしカイトさんが親友のカズマさんが皆に酷い事をしてるなんて知ったら……」
「きっと傷つく……よね」
今はまだジョギがカズマで尚且つ彼が悪い事をしているという事実をカイトが知らない分だけマシではあるが、チョッキリ団の攻撃が激しさを増している以上はバレてしまうのも時間の問題だろう。
それから時間が経ってその日の夕方。影人達は話を終えるとそろそろ自分達の家に帰る時間が迫ってくる。
影人達は咲良家から出るとグリッターの前に集まっていた。そして、うたは影人達の見送りをするついでにきゅーたろうの散歩もするという事で。
うたは早速きゅーたろうの首輪に繋いだリードを手にするといつでも出られるような状態になる。
「ワン!ワン!」
「きゅーちゃん、わかったって!お散歩行くからね!」
「皆で行くプリ!」
きゅーたろうはその際に早く行きたいという意思を伝えるために軽く鳴き声を上げた。それを聞いたうたはもう散歩に行く事をきゅーたろうに伝える。それから影人達もきゅーたろうの散歩に付き合う形で一緒に行こうとした。
そんな時、1人の青年が影人達を見つけると彼の方から声をかけてきた。その青年というのが、影人達も先程動画で観ていた響カイトその人である。
「うたちゃん」
「へ?」
すると影人達は一瞬でアイコンタクトをしてその場から少し離れるとその間にうたが振り返ると帽子や眼鏡で変装したプライベートモードの響カイトに気がつく。
「久しぶり!」
「カイトさん……」
うたは忙しい中でもカイトの方から自分の家の方に訪ねに来てくれたというのがとても嬉しいのか。あっという間に彼女は笑顔になると影人達の方を見る。
「ななちゃ……あれ?え?え?あっ、いた!」
しかし、後ろを見ても先程までいたはずの影人達が何故かいない。そのため、慌てて周りを見渡すとまだ近くにはいたものの……完全にうたとカイトの2人きりの時間を作り出す気満々の様子を見せていた。
「えっ!?ななちゃん!?こころ!?影人君!?何で……」
「何でもクソも無いだろ。折角俺達が気を利かせて2人きりにしてるんだ。ちゃんとカイトさんとの時間を楽しめよ?」
「な!?」
影人は平然とした顔つきで自分達はカイトとの時間を過ごすうたの邪魔をしないようにこの場を離れる事を伝えるとうたはいきなら変化した状況に慌てるが、もう遅い。
「「それじゃあお二人共、ごゆっくり〜」」
「そういう事だ。じゃあな」
「ええ〜っ!?」
影人達は一緒にいたプリメロも連れて行く形で3人揃ってその場から離脱。それぞれの家に帰ってしまう。ちなみにプリメロは一応今はうたの家に住んでいるが、ひとまずはうたの元から離れる事が先決なので一緒にいなくなる事に。
「ワン!」
そして、きゅーたろうも長々と待たされて焦れているのか。先程と同様にそろそろ行きたいという意思を伝えるべく鳴き声を上げる。
「あ、きゅーちゃん!!ごめんごめん」
うたはこれ以上きゅーたろうを待たせるわけにはいかないため、やむを得ず帰っていく影人達を放置すると散歩に行くためにカイトへと断りを入れようとする。
「カイトさんすみません。折角来てもらったのに……私、そろそろきゅーちゃんの散歩に……」
「だったらさ。その散歩、一緒に行っても良いかな?」
「え?ええええっ!?」
うたは言いづらそうにした状態で自分はこれからきゅーたろうの散歩に行く事を告げるとカイトはそれを聞いてまさかの一緒について行く事を宣言。
「で、で、で、でもカイトさん。明日ライブですよね!?」
「ああ、それならリハーサルをバッチリやったし。今日は早めに上がって良いって言われたから」
どうやらこの様子だと翌日のライブに向けて体力を温存してほしいというライブの運営側からの配慮を受けたらしい。なので、カイトは時間がある事も加味して自分が一緒に行く事を伝えたのだ。
「そうなんですね……」
「それに、折角ここで君に会えたんだから一緒にいたいなって。ふふっ」
「ふげえっ!?レジェンドアイドルスマイル……」
そのままうたはカイトからの久々のレジェンドアイドルスマイルの眩しさを受けると彼女はカイトが散歩に参加するのを受け入れる事に。
「それじゃあよろしくお願いします……」
「うん。楽しい時間にしようか」
こうして、2人はきゅーたろうの散歩をするために一緒に街中へと出て歩く事になるのだった。
また次回もお楽しみに。