キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
響カイトの全国ツアーライブのファイナルが翌日に迫った日の夕方。きゅーたろうの散歩をしに家を出たうたはグリッターの近くを訪れたカイトと出くわす事に。
しかも彼はきゅーたろうの散歩に自分も着いていくとまで言い出した。更に影人達も空気を読んで退避し、結局きゅーたろうの散歩は飼い主のうたと通りすがりのレジェンドアイドル・カイトの2人で行く事になるのだった。
「(落ち着け……私……!)」
その後、うた達は海に沈んでいく夕焼けを見る事ができる展望スポットに到着して2人で座って海の方を見ている。その際にうたはすぐ隣にいるレジェンドアイドルに対してどうにか普段通りに接しようとしていた。
しかし、彼女はカイトを前にするとどうしても緊張してしまうのか。やはりぎこちない様子である。そんな時、カイトはある事を言い出した。
「この前さ。俺、砂浜で気を失ってたみたいで」
「(ッ、それって確か……)」
カイトが言い出したのは全国ライブツアーが始まる少し前にうたへと自分の過去の事を話した日の事である。
「その気を失ってる間にうたちゃんがいなくなっててさ。起きたら代わりにキュアアイドルがいたんだ。……不思議だよね、うたちゃんなら俺が気を失った時に見捨てるなんてしなさそうなのに」
「うぇええっ!?あ、あ、キュアアイドルさん!?何でだろ……」
カイトは気絶している間に起きたうたとキュアアイドルの入れ替わり現象が気になったようであり、うたも思わず自分がキュアアイドルだとバレてしまったかと気になった。
「(もしかして、バレちゃった?)」
「ふふっ、面白い出来事だよね」
「(ふぅ、この感じはセーフ……)」
カイトはうたの慌てようを見ながら優しく微笑むとあくまで知らない風を装ってはぐらかす。どうやら今ので完全に確信してしまったらしい。
そんな事も梅雨知らずのうたはカイトの反応からキュアアイドルの正体がバレてないと思い込むと安堵の顔を浮かべた。尚、正体バレはしてるので正直無意味な安堵ではあったが。
すると、その話を終わりにしたカイトは先程まで持っていた紙袋に手を突っ込みながらある物を出し始める。
「あれ、カイトさん。何を出してるんですか?」
「あ、これ?実はさ、ツアーで行った先のお土産を買ってきていてね。うたちゃんにもお裾分けしようかなって」
「わぁ……ありがとうございます!」
カイトが出した物、それは全国ツアーで公演した際に向かった場所のご当地のお土産であった。そしてそのお土産の数々を見たうたは嬉しそうな顔を見せる。
「こんなに沢山……色んな所に行ったんですね!」
「そうだよ。全国各地で公演をしてきたからね。沢山のファンの皆と会う事ができたんだ」
カイトはお土産をうたへと渡しながらふと全国のライブ会場でのライブの景色を改めて思い出す。そして、それらはカイトや会場を訪れたファンの人達にとってかけがえのない時間になっただろう。
するとカイトは忘れない内にとばかりに懐に持っていたチケットをうたへと差し出した。
「あ、そうだ。明日のライブ、良かったら観に来て。お友達も一緒に」
「え……え、ええっ!?」
まさかのカイトが出したのは翌日に控えたファイナルライブのチケットであった。枚数は合計5枚。……つまりは影人、うた、なな、こころ、レイの分だろう。プリメロの分は無かったものの、彼女達は妖精態があるので仮にチケットが無くてもぬいぐるみとして持って行けば手荷物検査に引っかからなければ問題は無い。
どちらかと言えば特筆すべきなのは、カイトのライブのチケットをこのタイミングで入手できる事の方だ。改めて言うまでも無いがカイトはレジェンドアイドルとも呼べる程の有名人。そして、そんな彼のライブともなればチケット争奪戦は厳しい。
しかもこの段階ではリセールも含めてとっくに完売していて入手不可能な物だ。つまりかなりのプレミア品である。
「あ、ありがとうございます!って、この席は……」
「ふふっ、特等席を用意したよ。流石に普通のチケットの中ではになるけど」
更にカイトが持っていたチケット5枚の位置は普通の席の中では割と良い方の場所だった。それだけカイトは影人達を招待したかったという事に他ならない。そして、うたはそんなカイトの気持ちを知るよりも彼のライブに行ける事の方が優先だったのか。
「凄い凄い……キラッキランラン〜♪!」
あくまでライブに行ける事の喜びが前に出てしまっていた。ただ、カイトの方もうたが喜んでいるのならそれで良いわけで。彼もまた自然な話し方でライブの事を語る。
「ふふっ。ツアー最後の公演は、この町でやりたかったんだ。……俺の歌をアイツに届けたくて」
「カズマさんに……ですか?」
うたはカズマの話をし始めたカイトの方へと問いかけると彼は頷いた。そして、正面に広がる海の方を見ながら話す。
「カズマはきっと、この町にいる。でも、俺の想い……伝わるかな?」
すると、カイトでもカズマの事になるとどうしても心につかえがあるせいか、珍しく不安そうな声であった。
「俺は今も親友だと思ってる。だけど、カズマは」
カイトも薄々わかっていた。カズマは自分と道を違えて以降、自分の事を親友では無いと思ってしまっている事を。そんなカイトの不安な様子を見たうたはカイトへとその気持ちを問いかける事にした。
「……カイトさんは、どうしたいですか?」
「え?」
「俺は……」
うたの質問にカイトは考え込んだ。それから時間が経って辺りは暗くなって夜の闇が包み込む。ただ、街中には街灯の灯りがあるのでそこまで暗くはならなかったが。
ただ、結局カイトは先程の答えが出なかったのか。うたと別れて1人で歩きながら彼女に問われた事を改めて考えつつ昔の事を思い出す。
〜回想〜
それは数年前、カイトがカズマと共に受けたオーディションに1人だけ合格してしまった後。彼は自分を合格にした事務所へと向かう所だった。
「カズマ?」
その道の途中、カイトの進む先にカズマがやってくると彼はカイトへと話しかける。
「デビューすんの、断りに行くつもりだろ?」
「ッ……」
カイトはカズマの言葉が図星なのか驚いたような顔を浮かべてしまう。カイトは実際の所、カズマの予想した通りに彼と一緒にデビューできない事を理由に今回の誘いを断ろうとした。
そのためか、そのままカイトはカズマとすれ違う形で黙って通り抜けようとしてすれ違った所でカズマが手を伸ばしつつカイトの肩を掴んだ。
「カイト!」
「ッ、2人でデビューしなきゃ意味が無い!今回はダメでも、2人でデビューする機会を待とう!絶対に夢を掴もう!」
カイトは今までカズマと2人でデビューする事を目標にして頑張ってきた日々を思い出すとここで自分だけ先に行く事はできないと考えていた。そのため、今回の件を断ろうとしたのである。
ただ、カズマの気持ちは違ったようで。彼としては自分のせいでカイトが止まる事こそがあってはならないと思っていた。
「……俺は、お前に立ち止まってほしく無い。俺の見る目は確かだっただろ?」
カズマはまるでカイトの事を見定めるようにチョキの間を通してカイトを見ると自分の見る目に狂いが無かったことを言う。
そしてそれは奇しくもジョギが闇を見極める時と同じようなポーズであった。この事からもカズマが闇堕ちしてジョギへと変わった事がよくわかる。
「何処の空の下にいても、お前の歌。俺は聞いてるからな」
それはさておき、カズマは最後に芸能界へと先に羽ばたくカイトへとエールを送って去ろうとした。そして、それを見たカイトはそんなカズマを慌てて追いかけつつ手を掴む。
「カズマ!」
「……安心しな、すぐ追いつく。先にレジェンドアイドルになって待ってろ」
しかし、カイトの想いも虚しく。カズマはカイトの手を振り切るように行ってしまう。その時、カイトはカズマの手を握っていた自分の手を離してしまった。
〜現在〜
場面は元に戻り、現在。カイトはカズマの手を離してしまったあの時の事を思い出すと自らの手を見る。そして、彼は空を見上げながら改めてカズマの事を考えた。
「(……俺は、どうしたいんだろう)」
カイトの悩みは尽きる事は無く。全国ツアーのファイナルライブ前日だというのに心は晴れなかった。
同時刻、咲良家ではうたがカイトと2人でお熱い時間を過ごしたという事で早速影人、うた、なな、こころ、レイの5人が揃ってビデオ通話していた。勿論プリルンとメロロンはうたの画面に一緒に映っている。
『『『『えええっ!?明日のライブのチケットを貰ったぁあああっ!?』』』』
このビデオ通話は開幕でうたがカイトからチケットを貰ったという話が出てそれに全員が大声を上げてしまった所からスタートする。
『待て待て待て!咲良さん。何かの間違いとかじゃ……』
「いやいや、ここに実物がちゃんとあるよ!ほら!」
影人はうたがカイトのライブチケットというとんでもない物を持ってると聞いて早速大声を上げつつ慌てていた。
『本当だ……こころちゃん』
『ええ、間違いありません!それは本物のチケットです!』
『いや、カイトさん本人から貰ってるんだから偽物なわけないだろ』
こころがうたの現物を見て鑑定した結果、本物だと言い出したのに対してレイは思わずツッコミを入れてしまう。
『チケットは丁度5枚……って事はレイ君も行けるって事?』
『ああ、この通話をする前に今さっき父さんに確認を取った。明日は大丈夫だとさ』
ななはレイも来れる事に嬉しさを露わにするとレイもまた今回のライブを観ることができるそうで。彼もまた嬉しそうだった。
『良かったぁ……』
『ふふっ、それにしてもレイ先輩。前までと比べて声の明るさが全然違いますね。前まではどこか暗い感じがあったのに』
『そうか?』
『こころの言う通り、迷いが吹っ切れた感じがする。ハジメさんとの親子仲が少しずつ戻ってる証拠だよ』
レイはハジメとの関係性を少しずつ昔の方に戻せているという事実に思わず微笑む事になる。それはさておき、話をうたの方に戻した。
『それにしてもうたちゃん……』
『そうですね。カイトさんからわざわざチケットを貰えるなんて……いつの間にそこまでの仲になってたんですか?』
「へ?」
うたは先程までレイの話をしていたのにいきなり自分の方に飛び火してきた事で困惑してしまう。
「ちょっ、私とカイトさんはそんなんじゃ……」
『咲良さん、流石にその言い訳は無理がある。ライブのチケットをわざわざ咲良さんのために残してくれたって事だろ?しかも1階のスタンド席とはいえ最前列のど真ん中』
「あ、そういえば……ッ!!」
うたは影人から指摘を受けてようやくカイトがチケットを渡した事の本当の意味に気がついて顔を赤くしつつ焦り始める。
「うた、メロメロなのメロ〜」
「プリ?うた、顔が赤いプリ」
「私確かあの時は意味に気づかなくて……うわぁああーっ!」
プリルンは相変わらずの鈍さだったが、メロロンの方は完全にうたの心を代弁していた。そして、当のうたはチケットを貰った時にこの意味に気がつけば良かったと後悔してしまう。
『もう今更だな』
『何にせよ、この感じだとまだ他にもありそうですね』
「べ、べ、別に他には何も……」
『ならさプリルン。今お前が持ってるのは何だ?』
うたはこのままだと他の事もこの場で揶揄われると考えてどうにか話題を逸らそうとする。しかし、こういう時に限ってタイミングが悪い何かが起きるもので。
「プリ?これプリ?」
『そうそれ。えっと、“じゃがの月”かぁ。何でそれをプリルンが持ってるのかな?』
「えっ……あ」
『あーっ、それって確か東北とかそっちの方のお菓子じゃないですか!』
『うたちゃんは最近旅行に行ってないし、そっちの方でカイトさんのライブがあった』
『つまりはそういう事か』
影人達はカイトのお土産をプリルンが見せてしまったがためにそのお土産の存在に気がついてしまう。
「ちょっ、プリルン!?」
『メロロン、他には何かあるか?』
「他にもいっぱいあるのメロ。えっと……」
「わーっ!わーっ!わーっ!」
うたはこれ以上ボロを出してたまるかと言わんばかりにメロロンの言葉を叫ぶ形で遮る。しかしそんな事をすれば当然影人達には丸わかりなわけで。
『あー、あからさまに他のお土産とかを隠したな?』
「な、な、何の事かわからない……」
『うーたーせーんーぱーい?この際です。全部洗いざらい話しちゃいましょう!』
「ちょっ、もう尋問する気満々!?」
『明日ライブを観に行くんだから尋問するにしても程々にな?』
影人は完全にうたに問い詰めモードに入ったこころに程々にするように言うが、最早彼女の好奇心は止まらない。
「そ、そうだよ。だからもうこの話は終わ……」
『れるわけないだろ?咲良さん、諦めなって』
うたも必死に追及を避けようとするものの、レイがそうはさせじと追撃。結局そのままうたへの追及タイムに突入してしまう。
『やれやれ、コイツらは』
『まぁまぁ、折角だし私達も聞いておこ?』
『蒼風さんも興味があるのかよ』
尚、この場でブレーキ側に回ったのは影人だけのため中々その追及は止まる事は無く。それから約30分間に渡っての尋問が行われるのだった。
また次回もお楽しみに。