キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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帰らない影人 悲しむ夢乃

影人がスラッシューによって連れ去られた後。うた達は一旦喫茶グリッターに行く事にした。影人を取り返すにしてもその方法を考えないといけない。そうなるとまずはゆっくりできる場所で話をするべきと判断したのだ。

 

「カゲ先輩……きっとスラッシューの言ってる事が本当ならまだ大丈夫なはずです」

 

「でも、どうやって影人君を助けに行こう……」

 

「多分チョッキリ団のアジトに二人共いると思うけど」

 

ただ、うた達はチョッキリ団のアジトの場所なんて物は知らない。となるとこちらから影人を助けるために乗り込むという行為もできないだろう。

 

「……それでも、私がカゲ先輩を助けないと……そうしないと、カゲ先輩がああなってしまった責任は私が……」

 

こころの目には僅かに焦りの感情があった。影人がああなってしまったのは自分のせいだと責任を感じている節があるのだ。こころが思い詰めているのを見てうたやななは彼女の背中に優しく手を置く。

 

「ッ!?先輩……」

 

「焦る気持ちは私達も同じ。でも、それだけじゃ解決しないよ」

 

「ですが、私のせいで……」

 

「こころちゃんだけが悪いわけじゃない。それに私達も影人君を助けたい気持ちは一緒。だって、私達も影人君に助けられてきたんだから」

 

こころは二人の先輩にそう言われて気持ちを落ち着けようとする。そんな中、レイは考えを巡らせていた。

 

「(それにしても、ピカリーネ様は影人の力を輝きのベクトルが違うって言われていたけど……今のアイツは完全に闇の力に染まってる。……何でピカリーネ様は影人のあの力を彼の輝きって言われたんだ?)」

 

今の影人は誰がどう見ても深く濃い闇の中に囚われている。そしてそれは確実に世界に光をもたらす存在とは言えない。レイはピカリーネの意図を理解しようと必死に考えていた。

 

すると誰かが自分達のいる二階へと上がってくる足音が聞こえてくる。その直後、夢乃がうた達の前に顔を見せた。

 

「あ、おはようございます。うた先輩、なな先輩、こころ先輩……と、レイ先輩」

 

「夢乃ちゃん」

 

夢乃はキョロキョロと周りを見るものの、兄の姿が見えない事に疑問符を抱く。

 

「あれ?兄は……お兄ちゃんはいないんですか?」

 

その瞬間、その場の全員がギクリとする。影人は今、闇堕ちしてしまった影響でここにはいない。夢乃は大のブラコン系妹である。影人が何の連絡も無しに帰って来ないとなれば確実に不安になるだろう。

 

「え、え、えっとねぇ……影人君?影人君は……」

 

「影人君は今長めのお手洗いにいるんだ!」

 

「は、はぁ……。そうなんですね」

 

夢乃が困惑した顔つきになる中、一応納得する。しかし、このまま夜までに影人が家に帰らなければ夢乃どころか二人の両親まで不安にさせる。行方不明者として捜索届けを警察に出すかもしれない。

 

「あのね、夢乃ちゃん。影人だけど、今日俺達とお泊まり会をする事になったんだ」

 

「えっ!?お兄ちゃん、そんな連絡一言も……」

 

「ついさっき決まったばかりなんだ。だからご家族の方には夢乃ちゃんの方から伝えてもらいたくて……」

 

夢乃はいつもそういう連絡はまめにしてくれる影人がそんなミスをやるのかと違和感を抱く。すると恐る恐る夢乃はうた達への問いかけた。

 

「……あの、何か私にも話せない何かがあるんですか?」

 

夢乃はそう問いかけた。その瞬間、一同は息を飲むと同時に何も言えなくなってしまう。

 

「夢乃ちゃん、これはその……」

 

誤魔化すのが苦手なうたはアタフタし始め、ななやレイは焦りつつもどうやったら夢乃を誤魔化せるか思案。こころは夢乃を騙す事への後ろめたさがあるのか俯いてしまう。尚、プリルンは今にも何かを言いそうなのだがそれはうたが鼻の部分を残すように口を塞いで必死に止めている状態だ。

 

「すみません、訳あって私も人に言えない秘密があって。ですので、他の人が自分に嘘を吐くとその言葉が嘘だってある程度わかっちゃうんです」

 

その言葉にななは夢乃の事情を知っているために彼女も黙り込んでしまう。

 

「両親には今日兄はお泊りするとはお伝えします。……でも、兄は無事なんですよね?……このまま帰って来ないなんて無いですよね?」

 

夢乃はうた達が自分への隠し事をしていると察すると敢えてそれを聞かない方向にした。ただ、彼女の目はいつもの天真爛漫な笑顔からは程遠い暗いものになってしまう。

 

「大丈夫!影人君は元気いっぱいで……何も、問題なんて……」

 

「………」

 

「(ダメだな。何を言っても嘘だってわかられてる以上、誤魔化すのは夢乃ちゃんにとっても辛いだけだ。でも、そのままプリキュアの件を言うのは……)」

 

「……わかりました。先輩方のお話の邪魔をしてしまいすみません。……失礼します」

 

夢乃はそれ以上の詮索をせずにトボトボと肩を落として去っていく。それを一同はただ見守っているだけしかできなかった。彼女の瞳にある四芒星のハイライトはいつもの白から変色すると薄らと黒い色に変わりつつある。彼女の心がそれほどまでに荒んでいるのだと目に見えてわかるのだ。

 

「……カゲ先輩。どうか無事でいてください」

 

夢乃が去っていくのを見てからこころがそう祈るように呟く事になる。その頃、チョッキリ団アジトではカッティーとザックリーがチョッキリーヌから睨まれる事態になっていた。

 

「アンタ達、今まで何をしてきたんだい?今回で三人目のアイドルプリキュアの誕生を許して……。しかもそいつ相手に完敗だったそうじゃないか?」

 

「で、でもアイツらザックリ言って強すぎと言いますか……」

 

「今度こそそのキュアキュンキュンも含めて倒してみせるのですぞ!」

 

「……くっ。これでアイドルプリキュア側は三人。ますます不味いことになりつつある。このままではいつまで経っても世界の希望をチョッキリと切れないじゃないか」

 

「……何を焦ってるのですか?チョッキリーヌ」

 

「……スラッシューか。上機嫌そうなその感じだと目的の彼は確保したようだね?」

 

「ご明察ですよ」

 

それからスラッシューの後ろから現れた影人改めブレイクはフードを取るとその素顔を三人の前に見せる。

 

「「なっ!?」」

 

「お、お、お前!?」

 

「お邪魔小僧を本当に引き込んだのですぞ!?」

 

「……ザックリー様、カッティー様、俺の名はブレイク。以後、お見知り置きを」

 

ブレイクは影人の時よりも低く無機質な声質で話しており、彼はザックリーやカッティーを様付けして呼んでいた。

 

「けっ、言っておくがお前は新入りなんだ。ザックリ言って余計なこ事はするなよ?」

 

「これからは自分達の指示にも従うのですぞ」

 

「……承知いたしました」

 

ブレイクは真面目に礼をすると一人スラッシューの後ろに下がる。どうやら影人のような真面目さが彼の人格として引き継がれているらしい。そんな彼の謙虚な態度に二人は先程の疑う顔つきから一転。気分を良くしたのか笑みを浮かべた。

 

「へへっ。コイツ、先輩への態度は良いらしいな」

 

「ブレイク、ダークイーネ様のために働くのですぞ」

 

「………」

 

チョッキリーヌはそんな二人の態度に半ば呆れたような顔つきになる。つい先程までブレイクの事を嫌な奴みたいな目で見ていたにも関わらず、割と簡単に彼を受け入れた二人を見てチョロイ部下達だと考えてしまった。

 

「ブレイク、そろそろ行きますわよ。……あなたに仕事と戦い方を教えて差し上げますわ」

 

「はっ」

 

それから二人揃ってチョッキリーヌ達のいる部屋からいなくなる中、チョッキリーヌはため息を吐く。そして、このまま行けばザックリーとカッティーという二人のダメな部下をそのうち立場で抜き去ってしまうと考えるのだった。

 

「……ブレイク、体はどうですか?」

 

「……問題は無い」

 

「そう。なら早速色々と指導してあげるわ。それと、明日にはあなたの初仕事よ。……かつての仲間達にお別れをしてもらうわ」

 

「仲間?……俺に仲間なんていません」

 

「ふふっ。それもそうね。じゃあ、私があなたの上司として手取り足取り教えてあげるから」

 

スラッシューはご機嫌な様子でブレイクと話す。そんな中、ブレイクの内心では違和感が渦巻いていた。

 

「(俺は……一人?こんな暗い場所で……一人?俺の輝きなんて無いのか……?でも、俺なんかに誰かを照らすなんて無理なんだ。できるのは、ただ大人しく誰かの引き立て役になるだけ……)」

 

その迷いがあるからこそ、ブレイクの話し方は影人の時よりも低音かつその口数も少ない。ブレイクの人格の奥底に沈んだ影人の人格は自分の輝きの無さが嫌になっていた。自分には大切な人なんて誰も救えないと。そんな自分の弱さが許せなかった。でも、こうなってしまったら自分なんかにはどうしようもできないと。結局、自分は誰かの影……脇役として埋もれてしまうだけなのだと諦めの気持ちになっていた。

 

それから時間が経ってその日の夜。夢乃は両親に影人が大変な事になっているのを伏せるためにお泊まりをすると話した。

 

「お父さん、お母さん。あの、お兄ちゃん。今日はお泊りしてくるって」

 

「影人がか。そっか……影人もやっと友達と……」

 

「わかったわ、夢乃。……今までずっと一人で苦しんでて、やっと報われたのね」

 

二人は夢乃の言った事を信じて安心した顔つきになる中、夢乃は胸の中のザワザワはとめどなく溢れていく。その間に夢乃の両親が上機嫌になると夢乃はご飯を食べてから一人部屋に入るとベッドの上で蹲る。

 

「お兄ちゃん……」

 

夢乃はこの日、Vtuberとしての配信をする予定だったのだが影人無しではドリーム・アイとしての気持ちを維持できないと判断すると中止の旨をPという自身の投稿をポストをする事で他人と気軽に繋がれる投稿サイトを使って今日の配信は中止にするとドリーム・アイの名義のアカウントに投稿。その少し後に夢乃の体調を心配してくれるリスナー達からのリプが出てくると夢乃はため息を吐く。

 

「……お兄ちゃん」

 

夢乃は不安で不安で仕方なかった。夢乃にとって影人は頼れる兄で、自分を守るために色々とサポートをしてくれる。尊敬する存在だ。自分が配信をできるようにするために沢山の事を勉強して自分にもわかるように噛み砕いて教えてくれる。

 

「お兄ちゃん無しじゃ……私、ドリーム・アイなんて続けられないよ」

 

夢乃がドリーム・アイを続けられているのは影人がやっている彼女への心のケアも割と重要だ。配信中に流れてくるアンチからの酷い言葉に傷ついても兄がいてくれれば耐えられる。それに配信後に影人は夢乃の事をちゃんとメンタルケアしているお陰で夢乃は普通に生活を送ることができているのだ。

 

夢乃はそれから何かをしたいと思う事ができずに眠りに付く事になるのだった。

 

それから翌日の昼前にまで時間は進む。夢乃は未だに帰って来ない影人に不安を募らせると外に出てきていた。

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん……何でまだ帰って来ないの」

 

そんな時だった。夢乃の歩く場所のすぐ近くの建物の屋上に二人の影が現れる。

 

「さてと、ブレイク。私がお手本を見せてあげるわ」

 

それからスラッシューが周りを見渡すと夢乃に目が行く。そしてスラッシューは笑みを浮かべると彼女の放つキラキラをターゲットにした。

 

「ふふっ。良いキラキラを持ってるわ。……あの子にしようかしら」

 

それからスラッシューはカッティーやザックリーがやるように綱引きをする……のでは無く、彼女は手に闇のエネルギーを高めると空間を切り裂くようにして作り出したワームホールへと手を突っ込む。

 

「あなたのキラキラ……頂くわ」

 

「きゃあああっ!?」

 

夢乃はいきなり自身の内部にあるキラキラを鷲掴みにされた挙げ句、それをスラッシューに引き抜かれると引き抜かれたそのキラキラはリボンとしてスラッシューの前に具現化される。

 

「切り捨てスラッシュ!」

 

スラッシューがリボンを真っ二つに切り裂くとここからは他の二人と同様にマックランダーを生み出す手順を踏んだ。

 

「現れるのです、マックランダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしなさい!」

 

「マックランダー!」

 

それによって生み出されたマックランダーはパソコンをモチーフにしつつ頭部にインカム付きのヘッドホンを付けた物だった。

 

「さぁ、ブレイク。やりましょう」

 

スラッシューが生み出したマックランダーの影響で暗くなる世界。それと同時にスラッシューとブレイクはターゲットであるアイドルプリキュアがやってくるのを待つのであった。




また次回もお楽しみに。
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