キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ジョギがダークランダーを呼び出してしまう少し前。会場内では響カイトのライブが始まっており、早速カイトが登場。同時に会場からは歓声が響き渡る。
「カイトさーん!」
「凄い凄い!」
「心、キュンキュンでーす!」
うた達女子組が手にキラキライトと応援用の団扇を持ちながら笑顔になっていると影人も温かい気持ちでライブを観ていた。
「登場しただけでこの熱気……カイトさんの凄さがビリビリ伝わって心メラメラしてくる」
そんな時、レイはライブに集中しようとする直前で僅かに嫌な予感を感じつつあった。
「(確かにカイトさんのライブは凄い。それこそ、この場にいる人全員を照らせるだけの光がカイトさんにはある。……だけど何でだ?嫌な予感がする)」
ただ、何も起きる前から嫌な予感なんて感じてはいられない。そのため、今は目の前で行われているライブに気持ちを向ける事にした。
「皆キラキラプリ!」
「メロ!」
うたのポシェットに2人揃って入っているプリルンとメロロンも最前席である影響でステージの様子はよく見えており、彼女達もまたライブを楽しむ人々のキラキラやライブを楽しむという気持ちでワクワクが止まらなかった。
「こんな大きな会場で、こんなに沢山のファンがいて。カイトさん、本当に凄い!キラッキランラン〜♪」
それからライブは数曲が進んでのMCタイム。カイトは会場に来てくれている観客達へと呼びかけていた。
「皆!ありがとう!……次の曲は、ずっと大切に歌ってきた曲で。自分自身の思い出と凄く重なるんだ」
カイトはそう言いつつ、その言葉通りに大切に想い続けてきた親友。カズマとの思い出を脳裏に浮かべると改めて曲のタイトルを口にする。
「……心を込めて、歌います。“キミからのEcho”!」
しかし、その瞬間だった。突如として空が暗闇に染まるとダークランダーの叫び声が響き渡る。
「ダークランダー!」
「ッ、まさか今の声は!?」
「ブルっと来たプリ!?」
同時にプリルンの暗闇センサーが反応。そして、誕生したダークランダーは飛び上がると会場のドームの壁を軽々と飛び越えた上でステージの上に降り立ってしまう。
「ダァク、ランダーッ!」
「ッ!?」
ダークランダーはかけていたタオルを手にするとそれを頭の上でブンブンと振り回す。そして、当然ながらダークランダーを目の当たりにした人々は慌てて逃げ惑った。
『うわぁああああっ!?』
先程までカイトのライブによって笑顔を見せていた人々の顔は一瞬で恐怖に染まると出口に殺到。勿論出口は限られた場所にしか無いのでそこで渋滞が起きてしまう。それが人々のパニックを後押ししてしまっていた。
「ッ……こんな時にまた……」
「これ、ダークランダーの直接的な被害よりも人々が押し合う事での二次被害の方がヤバいぞ……」
レイの危惧は最もだ。こういう人が沢山集まっている場所での災害や強盗等。人々が恐怖を感じるタイプのパニックで一番危険なのはその出来事その物よりも逃げるために焦る人々による二次被害だ。
パニック状態において人間というのはその心理上、他人や周りを気にする余裕が無くなってしまうもので。それはつまり、周りの事など一切考えずに人々が自分が助かろうと焦って動く事に繋がる。
そうなれば当然周りを押し除けてでも自分が助かる人も増えてしまうため、その押し合いに呑まれた人が人の群れに押し潰されて亡くなるという事例も多々あるわけだ。
現に、かの歌姫が歌って敵と戦うアニメとかでも触れば生身の人間が灰となって即死する存在から逃れるために二次被害が発生。それで多くの人が亡くなるという事態も発生している。
「だったら、周りの目がこっちを向いてない今。この場所で変身するよ」
「ッ、でもそれじゃあ……」
「ああ、バレるリスクもあるな。だけど、今はそんな事よりも速攻でダークランダーをハートガーデン送りにするしかこの場を収める手立てはない」
下手に正体バレを気にして人々のパニックの元であるダークランダーがいる状態が継続すれば、その間はずっとそのパニック状態も継続する。二次被害を抑えるというのならスピードを重視して今ここで変身。その不安の元を取り除くしか無い。
「そうですね、恐らくこうなった以上、一旦避難は最後まで行うはずです。カゲ君の意見に賭けましょう」
「わかった!」
「レイ君は出来る限り皆を落ち着かせてくれる?」
「ああ。多分俺1人だと焼石に水だけど、やらないよりはマシなはずだ」
影人の意見に全員が賛成すると6人は変身するためにアイテムを構える。その頃、記者席の方では。
「これは大事件です……!」
その場にいた殆どの記者達が避難をする中でただ1人、未だにカメラを片手にダークランダーを撮影しようとする者がいた。それは、エンタメブンブンの記者……貴島つむぐである。
普通ならパニックになる所を彼女だけはブレずに撮ろうとしているのは記者としてのプロ意識や前に彼女がクラヤミンダーにされた事で心に多少の耐性ができているのかもしれない。
思えば夢乃も怪物化を多々経験しているためか、彼女も幼い年齢ながら怪物が目の前にいてもある程度は冷静さを保てている所がある。それらの事例から、一度アイドルプリキュアに救われると精神的に強くなりやすいのだろう。
「(あれは、つむぐさん!?あの人はパニックになってないけど、今ならダークランダーの方しか見てない)」
影人はそんな貴島を遠くから視認するものの、今この瞬間ならダークランダーにターゲットにされるまでの間はそこ以外に意識が割かれることは無いと判断した。
「私、カイトさんもカイトさんの大切な人達も守りたい!」
「「「「(うん)(はい)(プリ)(メロ)!」」」」
「気持ちは十分か。行くぞ」
こうして六人はカイトのライブを守るためにプリキュアへと変身。その姿を変えていった。今回はプリルンとメロロンは妖精態からのスタートである。
「「「「「「プリキュア!ライトアップ!」」」」」」
「「「キラキラ!ドレスチェンジ!」」」
「「キラキラ!ショータイム!」」
「キラキラ!ソウルリンク!」
「「「「「「YEAH♪」」」」」」
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」
「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」
「キミと輝く、ハートの鼓動!繋がる魂、キュアソウルビート!」
「「「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」」」
こうして、アイドルプリキュアの六人は変身を完了。最後にチーム名を名乗り終わって降り立つと人々はプリキュアの変身は見ておらず。貴島もダークランダーに気を取られて彼女達が変身した事には気が付かなかった。
「ダークランダー!」
「ダークランダー!アイツ、捕まえちゃってよ!」
するとダークランダーの後を追ってきたジョギはダークランダーにカイトを捕まえるように指示を出す。そのため、ダークランダーは早速手にしたタオルを振り回しながら彼を捕まえようと走る。
「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ!」
「ッ!?」
カイトは迫り来るダークランダーに恐怖を感じてしまう中、変身を完了させたプリキュアの6人は急いでダークランダーの前に飛び出してカイトを背にしつつ並び立つ。
「ッ!?アイドルプリキュア……?」
「ダークランダー……」
「一体、何が……ッ!」
カイトはアイドルプリキュアがダークランダーに立ち向かおうとする姿に一瞬困惑する。だが、彼の脳裏に浮かんだのはこれまで度々自分が見てきたプリキュアと怪物が対峙する光景であった。
「まさか、俺が見てきたのはやっぱり……」
「ッ、どうしてアイドルプリキュアが……。それに、ダークランダーって何?」
カイトが困惑する中でその光景を記者席の方から全て見ていた貴島はその困惑度合いが彼以上に大きい様子である。彼女が困惑するのも無理はない。何しろ、カイトとは違って貴島の方は怪物と対峙するアイドルプリキュアを見るのは今回が初めてなのだから。
そして、カイトや貴島の困惑が収まるよりも早く。会場の二次被害を少しでも抑えるためにキッスは急いで投げキッスを使用。
「お願い、チュッ!ハートガーデン!」
キッスの力でハートガーデンが展開するとダークランダーごと自分達をその中に移動させていく。
そして、同時にハートガーデンの効果範囲外にいた貴島視点だと急にアイドルプリキュアやダークランダー達が消失したように映るわけで。
「ッ!?き、消えた?アイドルプリキュアやあの怪物だけじゃなくて、響カイトも……。一体、何がどうなってるの?」
そして、ハートガーデンの中に移動したアイドルプリキュアの6人とダークランダーは早速交戦を開始。最初に仕掛けたのはダークランダーだ。
「ダァクランダァッ!」
「ッ、来るぞ!」
ダークランダーからのタオルによる鞭攻撃をプリキュア達は回避。その衝撃波に彼女達の後ろにいたカイトは困惑しながらも思わず飛ばされそうになってしまう。
「ッ!?」
「しまっ!カイトさんも巻き込んでたのか!?」
ソウルビートは自分達の近くにいすぎたせいで非戦闘員であるカイトまでハートガーデンの効果範囲内に巻き込んでいた事に動揺の声を上げる。その間にダークランダーの攻撃を回避したプリキュア達の中でウインクとキュンキュンが飛び出す。
「行きます!」
「はあっ!」
2人が次々とダークランダーへの攻撃のために前に出るとそれを見たダークランダーは彼女達を迎え撃つべく手にした団扇を振るう形で攻撃。
「ダーク、ラン!ラン!」
「「うわぁああああっ!?」」
2人はバラバラのタイミングで前に出てしまったという事もあってダークランダーの団扇に返り討ちにされてしまう。そのまま2人が吹き飛ばされるとそれと入れ替わる形でズキューンとキッスがダークランダーへと真上から同時攻撃を仕掛けた。
「「はぁああああ!」」
「ダーク!ラァアアン!」
対してダークランダーは手にしたタオルを真上でグルグルとヘリコプターのローターのように高速回転。そのせいで実質的に2人は自らダークランダーの攻撃に突っ込んでしまう形となって揃ってタオルの餌食となってしまった。
「「きゃあああああ!?」」
ここまでで既に4人がダークランダーの強力な攻撃を前にたった一撃で大きなダメージを負うと吹っ飛ばされて地面に叩きつけられてしまう。
そんな彼女達を見たソウルビートは今回のダークランダーの強さを認識する。
「ッ、今回のダークランダー、また今まで以上に強い個体か……」
「それでも、私達が止めなきゃ!」
アイドルは他の4人がやられとしても自分だけでもどうにかダークランダーを止めるために飛び出しつつ駆ける。
「はぁあああああ!」
「ンンン……ダァアアッ!」
アイドルはウインク達4人を返り討ちにしたら後なら、精神的にも肉体的にも油断して隙ができると考えて走り込みつつ突撃。しかし、ダークランダーはアイドルの突撃にもすかさず反応すると手にした団扇を振るってアイドルを薙ぎ払ってしまう。
「ッ……うわぁああああ!?」
「くっ、アイドルもか…….」
アイドルは呆気なく吹っ飛ばされるとそのまま地面に激突。するとジョギはプリキュア達が5人倒れたのを見てすかさず当初の目的であるカイトを狙う事にした。
「ふふっ、ダークランダー。そろそろ目的を果たそうか。ターゲットはそこにいるレジェンドアイドルだ」
「ッ!?」
「ダークランダー!」
その瞬間、ダークランダーは手にしたタオルを使ってカイトを拘束しようとする。それを見たソウルビートはすかさず反応して動き出した。
「ッ!させるかよ!」
「ふふっ、ああ。お前の事だからそう反応すると思ったよ」
「な!?」
ジョギはソウルビートが反応して動くのも想定済みなのか。ソウルビートがカイトを庇うように彼の前に立った瞬間を狙ってダークランダーのターゲットを変更させる。
「ダークランダー、ターゲット変更だよ」
「ダークランダー!」
その瞬間、ジョギはソウルビートがカイトの身代わりになるような形で彼の前に立ったのを利用。ダークランダーもジョギの意思を感じ取ってソウルビートの体をタオルで雁字搦めにしてしまう。
「なっ!?」
「さぁ、振り回せ!」
「ダーク……ランランランラン!」
そのままソウルビートは為す術無くダークランダーに振り回されまくるとその体が宙を舞う。
「うわぁああああ!?」
ダークランダーは容赦や手加減等一切無しで振り回す過程でソウルビートを周囲の障害物や地面にぶつけまくると彼の体に確実に大きなダメージを蓄積させていく。
「あははっ!さぁ、恐怖のジェットコースターも終わりだ。叩きつけろ!」
「ダークランダー!」
「ぐあああああ!?」
そのままソウルビートも振り回しまくったスピードを利用されて地上に叩きつけられると凄まじいダメージと共に倒れてしまう。
「く……ううっ」
こうして、アイドルプリキュアの6人は戦いの始まりから僅か数分の内に全員が決して少なくないダメージを受けてしまうのだった。
また次回もお楽しみに。