キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ななの母親である睦美の件での仲直りや夢乃の新しいやりたい事であるファッションモデルの夢を叶えるための道に進展が起きた日。そんな日の夜。
「……って感じだ」
『なるほど、つまり夢乃ちゃんはまりあさん達に無事認められたんだな』
「ああ。まだ正式なオーディションはやらないといけないけど、もう殆ど合格みたいな物にはなっているんだと」
この日家に帰った影人はレイへと電話をする形で事後報告をしていた。この辺りに関しては本来なら影人のやるべき事では無い。ただ、今回に関しては影人以外に報告ができる人がいなかった。
そのため、影人は今回の話し合いの際に話された事に関してをこうしてレイを経由する形で共有しないといけなかったのだ。
『それにしても凄いよな』
「え?」
『夢乃ちゃんだよ。あっさりプロの人3人を魅了したって事だろ?』
「……ああ。そうだな」
影人はレイにそう言われて内心複雑なのか、少しだけ返事に溜めがあった。そして、それは影人が夢乃に何かを思っていそうである。
『あれ、影人。珍しく嫉妬してたりする?』
「いや、何でだよ」
『だって今、不自然なくらい返事に間があったじゃん』
影人は何でもお見通しなレイにため息を吐きつつも彼の言葉は間違ってないのか。肯定の返事を返す。
「はぁ……。まぁ、夢乃に嫉妬してないかって言われたら嫉妬してるよ。……アイツは昔からずっと才能のある側だったからな」
『あー』
影人は幼い頃に自分の才能が足りずに苦労したという部分もあった。ただ、夢乃の方は自分の教えがあったとはいえ才能面で苦労するという事が殆ど無く。
だからこそ影人は夢乃に対して嫉妬に近い感情を持ってしまっていた所もあった。今までは自分の中に余裕が無かったことや、夢乃が必死だった事もあって心の中で夢乃への嫉妬があってもそれを表面化させる事は無かったのだが……レイに言われて今回初めてそれを話したのである。
「本当に夢乃は凄いよ。教えた事を何でも吸収するし、一度大失敗した俺と違って成功しかしてないし」
『……でも、だからこそ心配なんだろ?夢乃ちゃんはその失敗をしてないんだから』
「………」
影人にはレイの言う通り大きな懸念もあった。それが今も話の中に出た失敗経験の無さだ。夢乃はドリーム・アイとして影人や周りのサポート込みとはいえ大成功を収めた。しかもその時、彼女は特段大きな挫折を経験したという事も無い。
これが彼女の中では大きな自信となっているだろうし、ファッションモデルを同時並行でやりたいと言い出したのもそういう成功経験も一枚噛んでいるだろう。……だが、同時に挫折経験が無いという事はその苦しみを味わう時の苦痛も大きくなる。
「正直、夢乃にはずっと成功し続けてほしい。俺も夢乃に嫉妬してる感情がありながらも支え続けてきたのはそういう理由。……だけど、夢乃がファッションモデルなんてやり出したら」
『お前な、それはちょっと心配しすぎだろ』
「そんな事言ったってファッションモデルってなると俺がフォローし切れないというか……」
『だーかーら、そういう所が過保護なんだよ。もう少し信じてあげる事はできないのかって話』
「うっ……」
レイは夢乃が自分の意思でやり始める事にしたファッションモデルの方にまで変に影人が口出しをするのは流石に過保護が過ぎると言わんばかりであり、そこまでせずとも良いのではないのかと話す。
「過保護な事くらいわかってるよ。だけど、夢乃が挫折して苦しむ所なんて…….」
『はぁ……。夢乃ちゃんもそのくらい乗り越えられると思うんだけどな。もしどうしても1人でどうにも出来なさそうなら助けるくらいが良いんじゃないか?』
「う……それもそうか」
2人はそんな形で夢乃に対する話を終えると続けてレイが次の話題を切り出した。
『あ、そうだ影人。お前に一つお知らせだ』
「……お知らせ?」
影人はレイがいきなり言い出したお知らせという物が気になったのか、疑問符を浮かべる。すると彼は話を続けた。
『というよりはうちの父さんからの提案にはなるんだけどな。……今度サウンドプロダクションの方で声優の新人を発見して養成するのためのイベントが開かれるんだよ』
「え、でもそれって前に俺が体験したやつとは何が違うんだ」
影人は以前茅原に指導してもらった事務所の声優養成機関でのレッスンを思い出すと首を傾げる。
『ああ、この前のは既に養成所に所属している人達を対象としたレッスンだ。だから前に参加していた人達は全員がある程度養成所での経験を積んでいる事になる』
「ああ、確かにこの前の時はプロが現場とかでやるような実践的な物が多かったよな」
『そうそう。……だけど今回はまだ養成所に所属する前。これから養成所に所属する事を考えている人達に向けての体験会みたいな物になるのかな』
影人はレイの説明を聞いて納得したような様子となる。今回は今の影人のように養成所に入る前の段階の人達を対象として声優の仕事やレッスンなどを知ってもらいたいという所謂新人発掘の要素が強い物と言えるだろう。
「わかった。そのレッスン、参加希望でお願いしても良いか?」
『そう言うと思ったぜ。日付は来週の土曜日。参加する時の持ち物は特に指定は無いけど、筆記用具と水くらいはあった方が良いかもな』
「メモするための物と喉の方をケアするための水か。わかった」
こうして、影人は翌週の土曜にサウンドプロダクションで行われる新人養成イベントに参加する事が決定。影人はそれを楽しみにしようと考えつつレイとの電話を終える事になる。
「ふぅ、レイへの報告も終わったし次は……」
影人は電話のために部屋のベッドに腰掛けていたのだが、彼は早速立ち上がると自室から出て夢乃の部屋に移動。その扉をノックする事に。
「夢乃、大丈夫か?」
「ん、良いよ〜」
夢乃に許可を受けて扉を開くとそこにはベッドの上で座っている夢乃とその近くに仲良さげにいる二匹の妖精……プリルンとメロロンがいた。
「プリ?影人が戻ってきたプリ!」
「レイへの電話、お疲れ様なのメロ」
「ああ、やっと終わったって感じだよ。たださ……何で今日お前らがここにいるんだよ!?」
影人は何故か夢乃の部屋にいるプリルンとメロロンを見て思わず声を上げてしまう。そんな様子に2人はキョトンとしていた。
「偶には影人の家で遊びたいプリ!」
「メロロンはねえたまの願いであるなら影人の家に喜んで行くのメロ。むしろ、メロロンの方から行きたいとさえ思ってたのメロ」
影人は思わず2人の意見に唖然としてしまう。実はこの2人、影人達がまりあ達との対面が終わって家に帰ったのとタイミングと同時に玄関の所にいたのだ。
しかも目立たないように田中ぷりん、田中めろんとしての姿である。要するに、今回の訪問は影人達にとっては全くの想定外だったのだ。
「それにしても2人がタイミング良く私達の家の前にいるなんてビックリだよね」
「うーん。多分元々ここに来るつもりだった気がするのは気のせいかな」
尚、実際の所はプリルンもメロロンも今日は影人の家に来たかったようで。主にメロロンが行こうと言い出したための行動であった。
「まぁ偶には良いけどせめて事前連絡くらいは寄越してくれよ。いきなり来ても対応できないかもなのにさ」
「う〜ん?ごめんプリ!」
「今度から気をつけるのメロ!」
「お前らそれ反省してない言い方だからな?」
プリルンとメロロンはちょっとだけ考えてから可愛く謝ると影人は2人に反省の色が見られずに思わずツッコミを入れる。
「でも、お父さんやお母さんはこれから帰ってくるし……あんまり騒いだらダメだからね」
「プリ!」
「気をつけるのメロ」
「不安だな……」
影人はもうプリルンとメロロンのお泊まりに関しては仕方がないとして。せめて2人が何の騒ぎも起こさない事を願うしか無かった。
「そうだ、プリルン、メロロン。咲良さんに連絡は入れたのか?」
「プリ?そうプリ!うたに影人の家に泊まる事言っておかないとプリ」
「おーい、まだ言ってなかったのかよ」
プリルンはそう言いつつ手にキラッキランリボンバトンを取り出すとメロロンもそれに合わせて同じくキラッキランリボンバトンを出す。
「プリ!」
「メロ!」
2人は自身の首と髪留めにあるリボンをバトンに装填。その姿を人間態である田中ぷりんと田中めろんへと変えた。
「えっと、うたうた……」
「お姉様、ここです」
「あ、あった!」
何故ここで2人がわざわざ人間態になったのか。それはサイズ感的に2人がそれぞれ持っているスマホを扱いにくいからである。
「送信っと!」
「これで大丈夫ですね」
こうして、プリルンとメロロンの2人は影人達の家にまたお泊りをする事をうたに通達。同時刻、彼女はそれなりに遅い時間になってるのに2人が中々帰って来なかった影響で慌てて探しまくっていたのだが、ようやくその連絡を確認する事になる。
それはさておき。影人と夢乃は夜ご飯の時間になると両親と共にご飯を食べ、それから影人の方の部屋にプリメロを含めた4人で集まっていた。
「プリ〜!何か楽しい事をしたいプリ!」
「ボードゲームか何か無いメロ?」
「ボードゲームか……。ボードゲームは探さないと無いかも」
勿論4人で遊ぶためにボードゲームがあるのならそれが一番……なのだが、残念ながら今すぐに出せるわけでは無い。プリルンとメロロンが前もって来ることを言っていたら探す時間くらいは取れたかもしれないが、今回は唐突なパターンだったので準備ができなかったのだ。
「それならトランプでもしない?折角プリちゃんやメロちゃんが来てくれたんだし、何もしないのは勿体無いよ」
「確かにそれもそうか。トランプならすぐに出せるしな」
影人は早速トランプを出すと何のゲームをするか考える。とはいえ、プリルンがいる事を考えるとそこまで難しい事はできない。なので簡単にできる遊びのババ抜きから始める事にした。
それから約一時間後。何故か影人はかなりの精神的ダメージを受けて項垂れていた。
「な、何だよこれ……運の偏りが酷すぎる」
「あはは……」
「影人、何でそんなに落ち込んでるプリ?」
「ねえたま、そっとしてあげるのメロ……」
今現在、影人達はババ抜きを既に5回程やったのだが……全て影人の全敗だった。しかも心理戦が一番苦手そうなプリルンはその全てで2位以内に入っている。
つまり、最後の一騎打ちに参加していないのだ。そのため、影人はあまりの運の偏りに頭を抱えてしまう。
「何でこんなにも不運なんだよ!?しかも俺の所に来たババは一回も移動してくれてないんだが!?俺の事大好きかよ!」
「まぁまぁ、ほら。逆に考えてよお兄ちゃん。切り札は常にお兄ちゃんの所に行くって事だから……」
「今ぐらい来てほしくなんかねぇよ!?というか、その台詞は何処ぞのハーフボイルドな私立探偵の台詞なんだが!?」
影人が声を荒げているとどうにか落ち着くために一旦深呼吸。それから彼は他の3人に提案した。
「すぅ……ふぅ。なぁ、3人とも。あと1回戦ったら別のトランプのゲームをやろう」
「あー、お兄ちゃん負けっぱなしで終わりたく無いからってもう一回だけやろうとしてる」
「最後の一回で勝ち逃げするつもりメロ?」
ただ、影人の狙いが丸わかりだったこともあって夢乃やメロロンは影人へとジト目を向ける。
「そ、そ、そ、そんなわけねーだろ!」
「図星プリ〜!」
「やかましいわっ!」
影人はどうにかそれを誤魔化そうとするものの、プリルンにまで追い討ちをかけられたために思わずどこぞの天然ネコに弄ばれた後のどこぞの黒猫みたいな反応を見せた。それから影人達はトランプを使ったゲームを楽しむ事になる。
「やった!また私の勝ち!」
「あー、惜しい!後ちょっとだったのに!」
「ば、馬鹿な……また最下位だ……と!?」
「あはは、これで何敗目かな?」
「もう数えてねーよ。てか、どれだけ運悪いんだちくしょう……」
尚、ゲームを変えれば勝てると思っていた影人だったが……残念ながら彼はそのあとに行ったゲームにおいて全敗を喫する事になるのだった。
「っと、そろそろ寝る時間だな」
「本当だね。じゃあそろそろ終わりにしよっか」
「えー!?もっとやりたいよ」
「お姉様、そろそろ寝ないとダメですよ」
そしてとうとう寝る時間になってしまうと夢乃は自分の部屋に帰り、影人は電気を消すとベッドで横になりつつその右側にプリルンやメロロンが一緒に寝る事に。
「メロロン、ほら。俺の手を貸すから」
「ありがとメロ……」
影人は以前一緒に寝る際に首元にメロロンの耳が置かれて窒息しかけた事もあって、それ以降は一緒に寝る際に自分の手を貸す形で彼女の要望に応えていた。
「プリ。影人と寝るのも良いプリ!」
「あんまり夜更かししたら明日起きれなくなるぞ」
「わかってるプリ」
そして、影人はプリルンやメロロンがしっかり寝たことを確認したからまるで彼女達の親のようにそっと自分が入っている毛布を2人にもかけてあげる。
「ほんと、世話の焼ける奴らだよ」
それから3人は程なくして寝息を立てながらグッスリと寝る事になる。その際の3人の顔はとても幸せそうであり、特にメロロンは影人と隣で寝られる幸せを堪能するのだった。
また次回もお楽しみに。