キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人が参加するイベントにて、中西の指示により参加者は2つのチームに分けられた。その際に1人ずつ自己紹介の挨拶をする事に。この時点で影人を含めた4人が挨拶を終えると最後に残っていた白石が挨拶をするわけだが。
「……白石光輝、特技は……言うほどの事じゃ無い」
「……って、もう終わり!?白石君、もうちょっと何か……」
白石は見るからに面倒そうな様子で挨拶をすると最低限自分の名前を名乗るだけでそれ以外に何も言わない様子から思わず佐橋が声を上げる。
「えっと、せめて他に何か無いかな?ほら、私達今回はチームだし……」
「チーム……はっ、俺は馴れ合いに来たんじゃないんだよ。この業界、競争が当たり前なんだ。わざわざ他の人のための事なんてするかよ」
「ッ……」
白石はどうにか場を保たせようとしていた佐橋に冷たく当たると彼女も絶句してしまう。それに見かねた影人が流石に口を出すことに。
「待てよ白石、さっき中西先生から言われただろ?今日はあくまで楽しむための物だって」
「はっ、お前……やっぱり昔と比べて堕ちたよなぁ。必死に足掻いて努力してるお前の姿を見ていた方が俺は優劣感に浸れて良かったのによ」
影人はそれを聞いて先程感じた自分の予想が正しい事を理解すると同時に当時の事を嫌でも思い出させられてしまう。
「……白石、昔の事と今の事は何も関係……」
「あるさ、大アリだよ。というか、そもそもお前だって何で俺が今ここにいるかって思ってるだろ?」
「そりゃあな。……あんなに俺よりも輝いてて先にあの世界に行ったんだ。ここにいる理由が気にならないわけが無いだろ」
影人にそう言われて白石は一瞬だけ笑みを浮かべた後に影人へと苛立ったような鋭い目線を向ける。
「お前にはわからんだろうな?簡単に心が折れてあの世界から逃げたお前なんかには」
「ッ……」
白石はまるで影人を挑発するように言うと影人はそれに動揺こそしたものの、挑発自体には乗らずにあくまで冷静に白石に対応しようとする。そして、そのバチバチな様子に女子3人組は完全に萎縮してしまっていた。
「白石、俺のいない所で何があったかは知らない。だけど、ここにいるのはその事と無関係な人ばかりだ。……あまり関係ない人に八つ当たりするなよ?」
「はっ、俺に手も足も出なかったお前が説教かよ。……調子に乗るな」
その言葉を最後に白石は影人から目線を逸らしてしまう。そして、影人はそんな彼の様子にため息を吐いた。
「はぁ……マジ最悪」
「えっと……黒霧君はあの白石君と知り合いなの?」
「ッ……はい。幼い頃に色々あって」
影人が白石が自分を完全に敵対視する中で佐橋からの質問に答えを返す。ただ、正直な所影人はここまで彼から悪印象を持たれているとは思っていなかった。
何しろ、幼い頃に同じ芸能界の養成所にいた際は特段彼と大きな喧嘩をした事は無い。何なら、事務所での練習の際に偶に一緒ではあったものの……喋った事すら殆どなく。そのため影人視点だと自分は特に白石に対して恨まれてしまうような何かをしていないと思っていた。
「でも、あそこまで敵対されるとは思ってなかったですよ。アイツ、何でいきなり俺の事を」
影人は幼い頃は自分の事なんて眼中にすら無かったはずの白石がこんな年齢になっていきなり自分へと敵対心全開になったのかわけがわからない様子だった。
「黒霧君……で良いかな。あの子……本当に大丈夫なのよね?」
「私……あの人怖いです……」
立原や加藤の2人も白石があそこまで危険な人間だとは知らなかったがために不安そうな様子を見せる。何しろ、自分達はあの白石とチームを組まないといけない。そのため、不安になるのも仕方ないだろう。
「すみません、俺のせいで……」
「ううん、黒霧君はそんなに気にしなくて大丈夫よ」
「そうね。私が出来る限り上手い事間に入れるようにするわ。黒霧君もあんまり彼と関われないでしょ」
影人は自分がいるせいで白石の暴走にチームメイトの3人を巻き込んでいる事を気にしたが、彼女達は影人へと大丈夫と返す事で彼を少しでも安心させようとする。
「わざわざありがとうございます……」
影人は他のチームメイト。しかも女性を巻き込む事を気にする中、未だにこの気不味い空気感を作り出している張本人……白石は影人へと敵対心を向けつつふて腐れていた。
それはさておき、中西は自己紹介がひと段落したと考えて次の指示を行う事に。
「それじゃあ自己紹介が終わったし、次はチーム毎で絆を深めるためのゲームをしようか」
「ゲーム……」
中西は影人達のチームがチーム仲が最悪だとわかっている状態でチームが協力しないとできないゲームをする事にした。
「はい、じゃあこのボールを使ってね」
中西がそれぞれのチームに一つずつバレーボールを渡すと早速ゲームのルール説明を行う事に。
「このゲームはボールをチーム内で円陣を組んで下手投げで投げてパスしてもらうんだけど。その際にパスを投げる相手の名前を言いながら投げてほしいんだ。それで、名前を呼ばれた方はそのボールを投げてくれた相手の名前を言いながらキャッチするの」
要するに仲間の名前を沢山呼ぶ事で双方のチームの結束力を強めようという話だろう。
「あ、あの。すみません……そのやり方だとボールを投げる相手に偏りが出ませんか?」
すると加藤が緊張しながらだったものの、このままゲームをやった所で仲の良い相手同士にしか投げる事が無く。結果的にゲームの意味が無くなるのではないかと不安な様子を見せていた。
それを聞いて中西はまるで加藤の質問を待っていたかのように微笑みを浮かべると頷く。
「ふふっ、そうね。確かに今のルールだけだとボールを投げる相手を自分達で選べてしまうわ。……だから、ここで追加ルール。ボールを投げる際に全員に対して最低でも4回以上、必ずパスを出す事」
それはつまり、パスを全員に対して均等に出させるための物だった。もしこれが無いと加藤の言うようにパスに偏りができてしまうのが明らかである。
「チッ……」
「(コイツもコイツで何でそんなにあからさまな反応をするかな……)」
その話を聞いて白石は苛立ったように舌打ちし、影人はそんな白石の態度に困り果てていた。
「それと、同じ人に対して2回連続でパスを出すのも禁止します。もしこれらのルールを破ったらその人にはこの後指定するレッスンにおいて10分間見学のペナルティを与えます。制限時間は10分。この間に先程の条件を満たしてくださいね。それではスタート」
そんな風に中西からの指示が入ると影人達は円陣から少し距離を取ってパスを出す事にした。
「面倒な……しかもペナルティが指定するレッスンを見学だから……」
白石としてはここでペナルティの内容が提示されるまでは最悪ペナルティを喰らったとしても他の4人とパスを投げ合うという遊びに近い練習を受けたくなんてなかったのだ。
しかし、今提示された白石からのペナルティは指定されたレッスンの見学。だから何のレッスンを見学扱いにさせられるかはわからないわけで。
「(この辺も中西先生が上手く捌いたって感じだよな。もしただ見学しろというだけなら白石も自分からペナルティを受けに行っただろうし。指定のレッスンだから白石も何のレッスンにされるかわからない以上、真面目にやるしか無い)」
それから5人は1人辺り、最低でも4人にパスをしないといけないためか。すぐに佐橋が声をかける。
「じゃあ投げるよ〜!黒霧君!」
「佐橋さん!」
影人は言われた通りに自分へとパスを出してくれた相手である佐橋の名前を呼びつつボールをキャッチ。そして次のパス相手を探すと加藤が緊張からか、ガタガタと体を震わせていた。
「加藤さん」
「へ?ふぁ、ふぁい!?」
加藤は影人に呼ばれて慌てて身構えるとパスを待った。しかし、影人はこのタイミングではまだ投げておらず。彼女へと声をかけるのみだった。
「リラックスだよリラックス。楽しもう楽しもう!」
「ッ、でも……」
加藤はチラッと白石を見ると影人の言葉に苛立ったような顔つきであり、その目線が加藤の方を向いた。
「ひっ……」
「白石の事なんて気にしなくて良いよ。加藤さんはまずリラックスしてパスを受けよう」
「ッ!黒霧お前……」
白石は今すぐにでも影人へと詰め寄りたかったが、先程中西からのペナルティの件があるので下手に動き出す事ができない。ルール違反は勿論だが、今の話の流れからして他人への妨害もペナルティ化されると思ったからだ。
「加藤ちゃん、深呼吸して」
「大丈夫、黒霧君も加藤ちゃんがちゃんとレッスンを楽しめるように言ってくれてるから」
「はい……すぅ……ふぅ……」
「行くよ」
佐橋や立原も加藤をフォローするように言うと加藤はゆっくりと深呼吸。そして、影人は彼女がリラックスしたタイミングを見計らうと早速手にしたボールを投げる。
「加藤さん!」
「く、黒霧君!……ほっ……」
加藤は影人から投げられた優しいパスをキャッチ。彼女は安心したように息を吐いた。
「良いよ良いよ。加藤ちゃん!」
「……ッ!し、白石君!」
「チッ……加藤さん」
加藤は白石へとパスを出すと少しだけ飛距離が足りなかったのか、彼は一歩前に出ながらキャッチ。そして影人へと睨みつけるような目線を一瞬だけ向ける。
「(クソが……あの野郎、余計な事までしやがって。そもそもこんな練習に何の意味がある。少しでも上手くならないといけないこんな時に……黒霧の野郎、許さない……!)」
白石は視線を佐橋の方に向けると佐橋は自分にパスが来ると思って身構えた。対して影人の方は白石が佐橋へとパスをすると思ったのか……体の力を抜いてリラックスしていた。
「(俺に恥をかかせた事、後悔させてやる)」
その瞬間、白石はいきなり佐橋から影人の方を向くと下手投げ……というよりは下から影人の方に強めにスローイングするかのようにパスを出す。しかも、パスを出した際に呼ぶ名前を意図的に遅くするべくワンテンポ遅らせた上で名前を言った。……まるで名前を呼び忘れ、それに後から気がついたような形で。
「やべっ、黒霧!」
「……白石」
ただ、影人はそんな白石からの横暴なパスをあっさりとキャッチしてしまう。しかも、白石の名前を呼びながら完璧な形で。
「(な!?何で今ので反応できるんだよ……このクソが……)」
「(はぁ……不意を突いたのに何でキャッチできるんだって顔してるな。そのくらい余裕だって。そもそもお前が俺に対して意地悪なフェイントパスを出すのも予想できるっての)」
影人はこの場で白石を責めても良かったが、今は制限時間がある上に先程の加藤への会話で時間を取られた事もあって敢えて今の事は不問にした。正直これ以上白石とのやり取りで時間を潰されるのは勿体無いのである。
「立原さん!」
「ん、黒霧君!」
そこからは特に何事も無く影人達は名前を呼び合いながらパスを出していく。とは言え、白石は他の4人に度合いの差はあれどもそこまで良いパスを出しておらず。
加藤へのパスは彼女がキャッチミスをしてしまう程だった。ただし、先程のルールに際してパスミスやキャッチミスがペナルティになるとは言われてないのでここは特にルールに触れる話にはならない。
「はい、そろそろ時間ね。皆、自分のチームメイトの名前も呼び慣れてきたかな」
「(やはり今回の狙いはチームメイトとのコミュニケーション目的の練習か。パスを出すにしてもキャッチするにしても相手の名前を呼ぶ事を前提として考えてるし……)」
中西の狙いが何となく読めた所で彼女は次の練習に取り組ませるためにボールを回収する。それから鞄の中にある何かを探し始めた。
「それにしても、黒霧君って意外と女の子と話慣れてるね」
「……別に、普段から女子と話してるから慣れてるだけですよ」
「ふーん……やっぱり黒霧君の気遣いができる所がモテるんだと思うよ」
「ッ!?さ、佐橋さん……」
佐橋はニヤニヤとした顔を浮かべつつ完全に影人を揶揄うような顔を浮かべていた。佐橋は影人が彼女持ちであると見抜いており、影人の気遣いができる性格を誉める。
「私も、黒霧君のそういう所好感度高めかな。加藤ちゃんのフォローもありがたかったしね。多分加藤ちゃんも声に出さないだけで黒霧君にフォローしてもらえたのは嬉しかったと思うよ」
すると今度は立原がそっと話しかけてくる。このゲームの中で影人は完全に女性陣の心を掴んでおり、彼女達との間に確かな信頼も生まれつつあった。もう1人の男である白石が彼女達の中で評判が悪くなっているというのもあるだろうが、影人がフォローしてくれるおかげで緊張しがちな加藤が参加しやすくなっているのは間違いないだろう。
「はぁ……白石君も黒霧君みたいに話しやすかったら助かるんだけど……」
「すみません……俺がアイツに恨まれてるばかりに」
「大丈夫だよ。もう慣れた所もあるし、それにさっきも言ったけど白石君の件で黒霧君が気に病む必要は無いから」
佐橋と立原は影人へと優しく話しかけると彼女達は大人と高校生という肩書きで来ている以上、影人よりは年上だ。そのため、彼女達にも責任感があった。
「それに黒霧君って多分中学生でしょ?」
「え?は、はい」
「だったら、そういうトラブル系は私達に任せて。少しでも黒霧君に負担が行かないようにするから」
「そうそう。黒霧君も楽しまないと損だよ」
「……はい」
そうこうしている内に前の方で何かを探していた中西は物を出し終わったのか。自身の前にあるテーブルに何かの冊子を置いていた。
「これで良し……それじゃあ次のレッスン、台本読みをしよっか」
中西はそう言いつつ微笑むと一冊の冊子を手にする。ここからが今回の体験においての本題と言えるレッスンになるだろう。影人はその覚悟を固めつつ話を聞くのだった。
また次回もお楽しみに。