キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
白石がスラッシューの誘いに乗ってしまう形でダークランダー化。そして、ダークランダーは室内に出現するにはスペースが足りなかったのか。またサウンドプロダクションの外に出てしまう。
そして、着地の際に大きな音を立てた影響か。建物の中にもその地響きが来てしまう。
「きゃっ!?」
「ッ、何!?」
「まさか……」
影人はこの音がダークランダーの物であると薄々察すると他の体験者達の中には恐怖を感じる者もいたようで。特に恐怖に駆られた者はパニックになりかけてしまっていた。
「ダークランダー!」
「不味いな。俺ならすぐに対応できるけど、流石に咲良さん達はいないだろうし。しかも待ってたら被害が広がる。ここはやるしか……」
影人はここでもたついてはダークランダーが闇を吸収する事によるパワーアップをしてしまう。それに、自分が行ければハートガーデンによる隔離も可能となるわけで。
「ッ、黒霧君。何処に行くの?」
「佐橋さん」
ただ、影人がダークランダーのいる方に向かおうとするとそこに佐橋が声をかける。彼女は影人が何処かに行こうとしているのを察知したのか。心配そうな顔を向けてきた。
「多分これってここ最近噂になってる怪物騒ぎだよね?」
「ッ……」
それを聞いて影人は渋い顔を浮かべてしまう。佐橋が言ってる怪物騒ぎとは……この前響カイトがはなみちタウンでのライブを行った際に会場に出現したという話だ。
一応すぐにハートガーデンで隔離はしたものの……流石にはなみちタウンのみならず、外部の街からも多数の人がカイトのライブを観に来ていた。そして、そうなるという事はダークランダーの目撃情報も必然的に増えるわけで。
「恐らくはそうだと思います」
「だったら、黒霧君をそんな危険な所には……」
「ダークランダー!」
佐橋がそう言う間にもダークランダーはもう一度叫び声を上げる。それはまるで、アイドルプリキュアに来ないと暴れるという事を告げるかのようだった。
「ッ……白石がまだ戻ってきてないんです。せめて様子だけでも」
「白石君を……」
佐橋は僅かに顔を曇らせる。やはり、どれだけチームの仲を良くするために間を取り持っていた佐橋でも白石に対して苦手意識が無かったわけではないようだった。
「確かにアイツが悪い雰囲気を作り出した元凶なのは間違いありません。でも、だからってその場所にいるとわかってる人を見捨てるのはできませんから」
影人はそう言って中西の許可を得ずに勝手に飛び出してしまう。中西も影人がこの危険な状況で1人で行くとは思っておらず。彼女もまた反応が遅れてしまった。
「ッ!?仕方ない……。皆さん、案内があるまではここで待機してください!」
中西としては早い事この場にいる全員にここに残るように指示を出せば良かったと後悔。しかし、影人が行ってしまったのは今更どうする事もできない。そのため、ひとまずはこの場を預かる責任者として体験者として来てくれている人達の事は自分が守ると考えるのだった。
一方その頃、サウンドプロダクションの外に影人は到着。そこにはダークランダーがようやく獲物が来たとばかりに影人の方を向いた。更にそのダークランダーの近くには召喚した主であるスラッシューもいる。
「ふふっ、来たわね。黒霧影人君」
「ッ、スラッシュー……なんかまた雰囲気変わった?」
「ええ。ダークイーネ様から更なる力を与えてもらったの。あなた達アイドルプリキュアを確実に闇に葬るためにね」
影人はスラッシューの姿は一緒でも纏う空気がまた一段と闇に染まったと感じて問いかけると彼女は当ててくれたのが嬉しいのか、影人へと微笑みで返す。
「じゃあ聞くけど、あなたが昭和の時代に生きた2人組アイドルのUtaKotoneのKotoneさんって言われたら信じるか?」
「ふふっ、何それ?信じるも何も本人に向かって聞くことでは無いでしょう」
「……なるほど、その記憶は健在って事ですか」
「あははっ。むしろ、私はよく覚えてるわよ。この時代に来た経緯。自信を喪失していたあなたとの出会いにグリッターで働いた日々。カッティーがズキューンキッスに浄化された瞬間も、あなた達に一度敗れたという記憶もしっかりとあるわ」
それを聞いて影人は目を見開く。それはジョギによって洗脳され、欠落していた記憶が全て元通りになった上で闇に染まっている事を意味するからである。
「ダークイーネ様は懐が深いお方ですわ。一度負けてしまった私をもう一度信じてくれているのですから」
「スラッシュー……本当にお前はKotoneさんとしての心を失ったのか……?」
「しつこいわね。私はもうこの世界から要らないって言われて捨てられたの。それにもう私が生きていた時代から随分と時間も経って私みたいな出来損ないを覚えてる奴なんて殆どいない。だからこの世界のために尽くす必要も無いの」
スラッシューの言葉はまるで、自分を受け入れてくれなかった世界への復讐を果たしたいという彼女の強い想いを現してしまっていた。
「もしあなたがそれを邪魔するのなら容赦はしないわ。というより、ダークイーネ様の命令で倒すように言われてるから許してあげるつもりさえ無いけどね?」
「……やれやれ、折角過去の事は思い出してもその捻くれた性格は治ってないのか。Kotoneさん、あなたには大切な相棒がいて。彼女はずっと心配してたんですよ?」
「相棒?相棒と言えばUtakoの事かしら」
「ええ。Utakoさんは昭和の時代にあなたを残してしまった事を後悔していました。……さっき、あなたはこの世界はあなたを捨てたって言いましたよね?」
「ええ、言ったわ」
スラッシューは影人からの説得に対して頷くと影人は更にスラッシューを説得するために話そうとする。
「確かにあなたの生きていた昭和の時代にはもうあなたを必要とする人間なんていないかもしれない。……だけど、世界中のどこかにはあなたを必要とする人間がきっといます!」
影人は可能ならこのままスラッシューを説得するつもりだった。ただ、彼女は影人からの説得に呆れたような顔を見せるとまるで話にならないとばかりに答えを返す。
「いいえ、もういないわ。確かにUtakoはそう思ってくれるかもしれないわ。……でもそれだけよ?それにそんな人をいちいち探すくらいなら世界中を真っ暗闇に染めて構造その物を変えた方が早いわ」
「ッ……」
「さ、早く変身しなさい。あなたを私が叩き潰してあげる。……完膚なきまでにね」
スラッシューは影人を挑発。しかも、彼女の様子から今回は影人のみをターゲットにしているようだった。
「(他の皆を待ってる時間は……もう無さそうだな。それに、そんな事をしていたらダークランダーが更に強くなる。……ここはもうやり合うしか無い)」
影人はやむを得ないとばかりにその手にソウルリンクライトを取り出すと光に包まれて変身を開始する。
「プリキュア!ライトアップ!」
影人がプリキュアリボンをソウルリンクライトに装填。3回タッチしつつライトで円を描く。
「キラキラ!ソウルリンク!YEAH♪」
影人はその姿を順番にプリキュアへと変化させていく。勿論最後は名乗りを行う事に。
「キミと輝く、ハートの鼓動!繋がる魂、キュアソウルビート!」
そんなわけで変身完了して降り立ったソウルビート。ただ、やはり1人だけでの変身なので当然のようにチーム名名乗りは無し。それから彼は早速目の前にいるダークランダーと交戦……する前に。
「頼むぞ。チュッ、ハートガーデン!」
ソウルビートはキッスの力を引き出す形でハートガーデンを展開。これにより、ソウルビートもまたアイドル達とは別の空間内で戦う事になる。
「ダークランダー!」
「っと!」
早速仕掛けてきたのはダークランダー。ダークランダーは今まで待たされていた分と素体の白石が発しているソウルビートこと影人への個人的な恨みもあって待ちきれない様子だったらしく。手にした巨大な剣を振り抜いてソウルビートを潰そうとする。
「危ねぇな。お前、勇者なのに正々堂々の欠片も無いのかよ。……というか、それ以前にコイツはダークランダーだったか」
ソウルビートはダークランダーが不意打ちを仕掛けた事に多少憤りを感じたものの、そもそも相手がダークランダーであった事を思い出すとそういう考えに至るのはごく自然の事だと勝手に納得する。
「あらら?そんなに隙を晒しても良いのかしら?」
「ダーク!」
するとダークランダーは手にした剣を振るうと当たり前のように斬撃波が飛んできた。
「そのくらいわかるし!」
ソウルビートはそれを跳んで回避。しかし、次の瞬間。スラッシューの姿が一瞬ブレたかと思うと一気にソウルビートへと接近。黒い炎を纏わせた拳を繰り出してきた。
「ッ!?」
「遅いわ!」
ソウルビートは流石にスラッシューの介入までは予想できなかったのか。咄嗟に両腕をクロスさせて防御しようとするが、その防御の下側にある腹の辺りを殴られてしまうと打撃による鈍い痛みと熱による痛みでソウルビートは顔を歪めてしまう。
「が……あっ!?」
「はあっ!」
そのままスラッシューは一瞬だけタメを作ってから一気に殴り抜くとソウルビートは堪らず地面に叩きつけられた。
「ぐ……うっ……しまったな。スラッシューの性格上、彼女の参戦は考慮して戦うべきだった」
ソウルビートはスラッシューの本質は自らも前に出る積極タイプである事を思い出すと自分の判断ミスを反省する。しかし、だからといっていつまでも落ち込んでいるわけには行かない。彼は立ち上がると構えを取った。
「ふふっ、流石に今のだけで倒せるとは思わないわ。それに、そうじゃないとへし折り甲斐も無いわよ」
スラッシューはソウルビートにまだ闘志がある事を確認すると嬉しそうに微笑む。
「ダークランダー!」
すると、またダークランダーが手にした剣でソウルビートを斬りつけようと攻め立ててくる。ソウルビートは攻撃を回避こそできるものの、彼の想定以上にダークランダーからの斬撃は早く鋭い。
「ッ、コイツ……反撃の隙が無い」
ダークランダーの攻撃を回避する事だけに専念する事でどうにか耐え忍ぶソウルビート。しかし、何もしなければ徐々に体力が奪われてしまうのみだ。
「ダーク!」
「ここだ!」
ソウルビートはダークランダーが剣を大きく振り上げた一瞬の隙を見逃さずに敢えてダークランダーの懐に入り込む。
「ラ!?」
「ズキューンの力、ソウルビートバズーカー!」
そのままソウルビートはゼロ距離からのズキューンの力によるエネルギー砲を発射。ダークランダーはそれをまともに喰らうと吹き飛ばされた。
「クラァアア!?」
「良し、次は……」
ソウルビートはダークランダーを吹き飛ばしたこの瞬間をスラッシューは狙いに来ると予想。
「ふふっ、良い読みね。でも遅いのよ!」
その瞬間、いつの間にかソウルビートの前にスラッシューが到達。両手に炎のエネルギー弾を生成。そのままそれをソウルビートへと直接ぶつけようとする。
「ッ!?まだだ!」
ソウルビートはそんなスラッシューからの攻撃をどうにか受け止める。そのままスラッシューの火炎弾を素手で強く握るように掴むと身を焼き焦がす熱に晒されるが、ソウルビートはお構い無しに歯を食いしばってスラッシューを見据える。
「ふふっ、私の攻撃を止めた上にわざわざ熱い火炎弾を素手で掴むなんてね」
「ああ、おかげで腕が焼け焦げそうだぜ。……だけどな!」
次の瞬間、ソウルビートは火炎弾を自らの力で握り潰して相殺。スラッシューがそれに驚いている間に彼はスラッシューへと蹴り上げの攻撃を繰り出す。
「はあっ!」
「ッ!?」
スラッシューはどうにか後ろに下がってそれを回避。ソウルビートは今度は自分の番とばかりにすかさず前に出て距離を詰めつつ手にソウルリンクライトを構えるとライトの部分が伸びる形でレーザーサーベルを展開。スラッシューへと振り抜く。
「はあっ!」
「甘い!」
しかし、スラッシューへと繰り出された斬撃は彼女が出した炎の剣で防がれており。攻撃は彼女にまでは届かなかった。
「危なかったわ。少し油断してたわね」
「ッ、これでは届かないか」
ソウルビートは深追いは禁物として後ろに跳び退くと一旦下がりつつ少しだけ距離を取る。対してスラッシューは炎の剣を持ったまま余裕そうな顔で笑みを浮かべる。
「なるほど。少しはやるわね。でも、この状況でダークランダーの浄化なんてできるかしら?」
「(確かにそうだ。スラッシューの相手をしながらダークランダーをやるのはかなりキツい。何ならスラッシューはダークランダーとの連携を前提にしてくる。ダークランダーを倒すにしてもスラッシューが妨害してきたら面倒だしな)」
ソウルビートとしては今のまま二対一の状況が続くのは厳しい。かといってどちらかを各個撃破しようにももう片方が黙ってないだろう。せめてこの場に他の仲間がいてくれたらと考えるが……無い物をねだっても仕方ない。
「どうにか俺1人で打開するしか無いわけか」
「そう言う事よ。ま、せいぜい足掻きなさい」
「言われなくてもお前にあっさりやられるのは俺としてもごめんだからな」
こうして、ソウルビートは仲間が来るまでの間だけでも1人で上手く繋ぐ覚悟を決めた。そして、目の前にいるスラッシューに立ち向かう事になる。
また次回もお楽しみに。