キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
圧倒的な力でウインクを圧倒するスラッシュー。その頃、マックランダーと対戦するアイドルの方では。
「はあっ!」
「マックランダー!」
アイドルが突き出した拳に対してマックランダーも拳を出して正面から激突。それから四度程拳を突き合わせるとマックランダーが少しずつ押されていく。
「マック……ランダー!」
マックランダーはこれ以上好きにはさせないとばかりに顔のある画面の所からエネルギービームを放つ。
「何の!」
アイドルはそれに合わせて跳び上がるとビームを回避。そのまま落下の勢いを活かしてブローチにタッチ。技を使う。
「アイドルグータッチ!」
アイドルからのグータッチが炸裂するとマックランダーは一気に後ろに押し戻される。
「更に行くよ!」
マックランダーはアイドルへと走り出すと彼女の正面から両腕を振り下ろす。アイドルはそれを真正面から受け止めた。そのままマックランダーはアイドルを押し潰そうとするが、中々押し切れない。
「マックランダー!?」
「ぐうう……夢乃ちゃんを助けるために……私は、負けられない!」
アイドルはマックランダーからの攻撃を無理矢理押し返すとダメ押しとばかりに体勢を崩したマックランダーへと突撃すると蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。
「マック!?」
アイドルは三人の中でアイドルプリキュアとしてのキャリアが長い。それこそ、初期はスラッシューより格下とは言えカッティーやザックリーのマックランダーと真っ向からやり合った事もある。つまり、他の二人と比べて単純な力では上回っているのだ。
そして今回のマックランダーが仕掛けているのはそんなアイドルが得意な純粋な力比べ。そうなればアイドルは一人でもマックランダー相手に十二分に戦える。
「良し、このまま一気に助け出す!」
アイドルは決めるチャンスと考えてすかさず浄化技を使うための領域を展開する。
「クライマックスは私!盛り上がって行くよー!」
マックランダーは成す術無く席へと強制着席させられるとアイドルが流れた音楽に合わせて歌い始める。
♪決め歌 笑顔のユニゾン♪
「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪……プリキュア!アイドルスマイリング!」
アイドルはいつものようにライブを終えると最後にハート型のエネルギーをマックランダーへとぶつける。これによってマックランダーは浄化される……はずだった。
「マック……ラン……ダー」
「えっ!?」
アイドルは浄化したはずのマックランダーが薄らと溶けていくのを見て驚きを隠せなかった。まるでホログラムが消え去るように。
「何で、浄化できたはずなのに……」
その瞬間、いきなりマックランダーが後ろに現れると拳を振り上げる。アイドルは慌ててそれを回避すると拳が直撃して地面が抉れた。
「もしかして、浄化できて無いの!?」
「マックランダー!」
アイドルが目の前にいるマックランダーを見据えるといきなりマックランダーが声を上げる。すると自身の周囲にマックランダーが何体も召喚されていく。この異常事態にアイドルは混乱した。
「マックランダーが増えてる!?でも、素体の夢乃ちゃんは一人だけ……スラッシューが他にも呼んだなんてあり得ないし……」
今回出てきているのはスラッシューただ一人。それに今の所だが一人の敵幹部が呼び出せるマックランダーは一度に一体だけ。仮にカッティーやザックリーも来たのならブレイクを入れて四体分は出せるが、今目の前にいるマックランダーは合計六体。つまり幾らなんでも多すぎる。
「ッ……」
するとマックランダーがアイドルを包囲して先程と同じようにエネルギービームを放つ。
「「「「「「マックランダー!」」」」」」
「ッ!?きゃああっ!?」
マックランダーからのビームを喰らってダメージを受けるアイドル。だが、この時また彼女は違和感を感じた。
「あ、あれ……。全部の攻撃を受けたのに、ダメージの感覚があるのは右から受けた物だけ……。もしかして、本物以外は全部映像って事!?」
今回のマックランダーの特殊能力は自身の姿を投影する事によるアバターの作成らしい。これにより擬似的な影分身を発動しているのである。そして、それは飛び道具及び盾が使えない純粋なパワーファイターのアイドルとは滅法相性の悪い相手だった。
「マックランダー!」
「ッ!」
アイドルはどうにかして本物を見極めようとするものの、まるで見分けなんて付かない。
「どうしよう、こんな時にウインクかキュンキュンがいてくれたら……ううん。そんな事考えたらダメ。二人共頑張ってるんだから……私がやらないと……」
アイドルがそんな風に頬を二回叩いて気合いを入れているといきなりアイドルの近くに悲鳴と共に何かが飛んできた。
「きゃああああっ!?」
“ボン”という音と共に叩きつけられたそれはもう既に傷だらけで今にも気絶しそうなくらいに弱ったウインクであった。
「ウインク!?そんな……」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ウインクが息をどうにかして整えようとする間、アイドルが痛々しい姿になったウインクを見て悔しさが込み上げる。するとその直後にスラッシューが降り立った。
「……やっぱりこんな物ですわね。もうキュアウインクとの勝負は着きました。次はあなたよ?キュアアイドル」
「スラッシュー……」
「マックランダー、キュアアイドルの足止めご苦労様よ。次はそこに倒れて弱ったキュアウインクを好きにして良いから今度はその子が邪魔をしないように相手しておいで」
「ッ!?」
アイドルはスラッシューからの言葉に目を見開く。このままマックランダーにウインクを攻撃させたらまず間違い無くウインクはやられる。ウインクは変身解除に至ってないのでまだ戦闘は可能だが、体力は殆ど残っていないのだ。
「……スラッシュー。私があなたとマックランダーの相手する代わりに約束して!」
「ほう?」
「今倒れてるウインクに手は出さないって」
「それはあなた一人に二人がかりでも良いって事かしら?止めた方が得だと思うわよ?」
アイドルは唇を噛み締める。確かにスラッシューの言うことは間違ってない。マックランダーだけでさえ自分はあんなに苦戦していたのだ。スラッシューも入ったら勝ち目なんて無い。それでも、それでもアイドルには譲れない気持ちがあった。
「……確かに、止めた方が私も良いと思う。でも、ウインクをこれ以上傷つけさせるなんて……。私はもっと嫌だ!」
それは恐怖に震えるアイドルの精一杯の自分への鼓舞だった。そんな彼女の心を読み取ったのかウインクは細々とアイドルへと声をかける。
「アイドル、私は平気だから……ううっ……。一人で背負わないで……」
しかし、ウインクにそう言われてもアイドルの決意は変わらない。そんな彼女を見たスラッシューはある指示を出した。
「そう。それがあなたの覚悟ということね。良いわ。マックランダー、その子を好きにして良いとは言ったけど、あくまでその子への自分からの手出しは無しよ。その子が何かをしたらそれに対応しなさい」
つまり、スラッシューはマックランダーからのウインクへの攻撃を禁止。正当防衛行為のみを認めた。その優しさにアイドルは目を見開く。
「どうして……」
「勘違いしない事ね。あくまで私がやりたいのはあなた達の抵抗を正面から全てへし折った上で闇に葬って光を消し去る事。それが達成できるのなら過程はどうなっても構わないのですわ」
「スラッシュー、ありがと。私達の我儘聞いてくれて。でも、絶対に負けないから!」
アイドルはそう言ってスラッシュー相手に構える。そんな彼女を見たスラッシューはニッと笑みを浮かべると再度自らの体にオーラを発生。それと同時にイントロが流れ始める。
「これは……」
「キュアウインクも味わった私の歌よ。あなたは何分保つかしらね」
それからアイドルと歌を口ずさみながらのスラッシューが激突。そんな中、レイとプリルンがウインクの側に来ると彼女を心配する。
「ウインク、大丈夫か?」
「ウインク、大丈夫プリ……?」
「うん……体中が痛いけどまだ大丈夫だよ……でも、アイドルは……」
ウインクが俯くと自分の力の無さに悔しさを感じる。レイはそんなウインクを励ますように声をかけた。
「大丈夫だ、アイドルならきっと何とかしてくれる。それに、ウインクにはウインクの今やれる事がある。俺が出来る限りのサポートをするから」
「うん……アイドル、もう一回……勇気の出るおまじない、するよ」
ウインクは片目でウインクをすると体力が戻らない不完全な状態でマックランダーと向き合う。マックランダーはそんなウインクを見て臨戦体勢に入ったのか、再度ホログラム式影分身による人数増加を行った。
「はぁ……はぁ……レイ君、サポートお願い……」
「ああ。任せろ」
「プリ、頑張るプリ。ウインク」
「うん!」
アイドルとウインクが相手を入れ替えて仕切り直すそんな中、時間は少し遡る。
「カゲ君」
キュンキュンはブレイクと共にある程度距離が離れた場所に辿り着くと向き合う。
「来い、キュアキュンキュン」
「カゲ君、胸を借ります。それと、私に力を分けて!」
それから二人は走っていくと拳と拳をぶつける。それによって衝撃波が駆け抜けるが、やはりパワーはブレイクが上だ。
「ッ……」
キュンキュンは力比べによる押し合いは不味いと一瞬で判断すると距離を取る。ブレイクはそんなキュンキュンへと距離を詰めてラッシュを繰り出す。
「やっぱり、カゲ君の動きがベースなら……避けられる!」
キュンキュンは影人と初めて出会ったあの時の動きを思い出し、それと合わせて再会したあの日から観察してきた彼の動きの癖をしっかり研究していた。だからこそ彼女はわかる。影人の動き方のパターンが。
「……む」
キュンキュンはパワーこそ無いが、ダンスで鍛えてきた運動能力と体力による機動力での勝負なら三人の中で一番戦えると自信があった。
現に彼女はプリキュアになりたてで経験値は一番浅いが、それを補うかのように影人の事を知っている事による直感と反応でブレイクからの攻めを流せているのだ。
「でも、守ってばかりじゃ勝てません……。だから!」
ブレイクがローキックによる足払いを仕掛けた瞬間にキュンキュンは後方に宙返りする形で距離を取るとブローチをタッチする。
「キュンキュンレーザー!」
キュンキュンから放たれたレーザービームがブレイクへと降り注ぐ。キュンキュンのプランとしてはまず相手からの攻撃は影人を知ってる事による回避を重ねて隙を作る。そのタイミングでキュンキュンレーザーによる遠距離からの攻撃で少しずつ弱らせていき、最後に歌による浄化技で決め切るというものだった。
「(正直、カゲ君を傷つけるのは嫌だけど……助けられないのはもっと嫌だから。少し我慢してて、カゲ君)」
「……無駄だ」
キュンキュンは断腸の思いでブレイクへとビームを次々と放つ。だが、ブレイクが手を翳すとその瞬間何かの闇のエネルギーが正面に展開。それがキュンキュンレーザーを飲み込んで消し去ってしまう。
「えっ!?」
「俺の闇は光を喰らう事で更に力を増す。……キュアキュンキュン、お前の光……喰らうぞ」
ブレイクが走り出すとキュンキュンへと拳を繰り出す。動揺したキュンキュンはブレイクの接近を許すと腹を殴られてしまう。
「あ……がはっ!?」
そのまま吹き飛ばされて叩きつけられるキュンキュン。彼女も何とか持ち直すと立ち上がる。
「強い、でもカゲ君を助けるために私は負けられません!」
キュンキュンはレーザーではまた吸収されると判断して今度は自分から接近。攻撃をしてくるブレイクに対して打ち合いを挑んだ。
「はぁああっ!」
キュンキュンは単純なパワー勝負ではブレイクに勝てないのはさっきのでわかっているため、今度はダンスで鍛えたステップワークと素早い動きでブレイクからの反撃のチャンスを無くすぐらいのスピードでの激しい攻めを仕掛ける。
「速攻か……。だが、甘い!」
するとブレイクはキュンキュンからの攻撃のタイミングをわかっているかのように彼の顔面に左からの拳が迫る直前にキュンキュンの手を受け止めてしまう。
「ッ!?……どうして」
「お前に俺の攻撃がわかるなら、その逆もあるという事に思い至らないのか?……毎日一緒にいればこころの攻撃も読め……ッ!?」
そこまで言ったところでブレイクは口籠もる。そして、その言葉にキュンキュンの心に一筋の光が差し込んだ。
「やっぱり……カゲ君の心は完全には飲まれてないんですね!」
「何の話だ、俺はカゲ君なんて言葉を言う女、知らないぞ」
「嘘を吐かないでください!今だって性別を女だって特定してるじゃないですか!カゲ君、私です!こころです!」
キュンキュンがそう言ってブレイクへと声をかける。この至近距離で自分が精一杯話しかければ説得できるとキュンキュンの心に希望の二文字が湧き出てきた。
「ふざけるな、俺はブレイクだ……。あまり俺を舐めるな!」
「うっ!?」
その瞬間、キュンキュンの胸ぐらがブレイクによって掴まれるとブレイクが目を光らせる。するとキュンキュンの体から光が吸われ始めた。
「何……これ、力が吸われる……」
「言ったはずだ。俺はお前の光を喰らう。それにより、俺の力は更に上に登っていくと!」
「あ……ああっ!?」
キュンキュンの体からどんどん力が抜けていく。キュンキュンはブレイクへの反撃ができなくなっていくのだ。
「カゲ君、カゲ君……止めて、私。こんなカゲ君なんて望んで無いよ」
キュンキュンが必死に説得の言葉をかけるがブレイクの心は揺るがない。キュンキュンの光はジワジワと減っていく。それと同時にプリキュアとしての力を維持できなくなっているのかチカチカと衣装が点滅を始めた。
「心、メラメラ……」
「ッ!?」
キュンキュンの言葉を聞いてブレイクは彼女を掴んでいた手を離してしまう。するとキュンキュンは自らの光を殆ど取られたせいで痛みこそ無いが、体に力が入らなくなっていた。それでも彼女はブレイクの脚を掴みながら彼を支えにしながら立ち上がる。
「カゲ君が教えてくれたこの言葉。私、今でも覚えてますよ。それから私はメラメラを言い換える形でキュンキュンって言葉を使うようになって。それから私にとっての憧れはカゲ君ただ一人なんですよ」
その言葉を聞いてブレイクは苛立つようにキュンキュンの頬をビンタしてしまう。
「ッ!?嘘を吐くな!……お前にとっての憧れはアイドルプリキュアだろ……俺なんか、俺なんか眼中にすら無いのに」
「違います!私、カゲ君の事が私の眼中に無いなんて事……久しぶりに会えたあの日から一度もありません!」
「……は?」
ブレイクは脳にバグが生まれたかのように思考が上手く纏まってくれない。そんな中、キュンキュンはブレイクに叩かれて僅かに赤くなった頬の痛さを我慢してブレイクの目を見る。
「私にとっての一番の憧れは初めて会えたあの日からずっとカゲ君です。アイドルプリキュアになりたかったのも、カゲ君の隣にいたかっただけなんです!でも、ずっとカゲ君は私の先を走ってて。あの時心が折れてしまったのは……それが理由なんです!」
「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなぁああっ!?俺は、俺はブレイクだ。もうお前なんかと一緒になんて居られないんだよ!」
ブレイクはキュンキュンから吸収したエネルギーを右腕に集約。それをキュンキュンへと叩きつけると彼女は悲鳴を上げて吹き飛ばされると近くの壁に激突。そのまま崩れ落ちると変身解除してこころの姿になってしまう。
「あ……ううっ……」
こころの体は傷だらけになっており、光も吸われたせいですぐの再変身もできなくなっていた。
「ざけんな、俺の心を弄んでおいて……今更俺に憧れていた?……だったら俺は……俺は」
ブレイクの心は揺れていた。目の前にいるこころにトドメを刺すべきタイミングなのになかなかそれができなかったのだ。それはブレイクの心と影人の心が複雑に混ざって出たり入ったりしているからこその挙動である。
「カゲ君、私……大好きなんですよ?こんな風になっても、私はカゲ君を嫌いになんかなったりしませんよ?」
「……黙れ、黙れ黙れ!俺の頭に余計な事を吹き込むな。俺はブレイクだ、キュアキュンキュン。お前を潰す命令を遂行する!」
ブレイクがトドメを刺すための小さめなエネルギーボールを作るとそれを生身のこころへと容赦無く放とうとする。
「消えろ……消えろキュアキュンキュン!」
こころは影人にこれだけ語りかけてそれでもトドメを刺されるなら仕方ないと目を瞑ったその瞬間だった。彼の左手が自分の右腕を掴んで攻撃を止めさせたのは。
「……え?」
「止めろ……俺がしたいのは……俺がしたいのはこんな事じゃない!」
するとバイオレットカラーになっていた彼の左の瞳が影人の色である暗めの青になっていた。
「カゲ……君?」
ブレイクの中に強制的に沈められた黒霧影人の心はこの時、再びしっかりと目覚めたのである。
また次回もお楽しみに。