キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ソウルビートが自らのライブ技でダークランダーを浄化し、キラルンリボンを確保。更に囚われた白石も救出した。そして、残されたスラッシューは悔しさを滲ませる。
「ッ!まだよ!まだ私は終わってないわ。あなた達3人を先に倒せばそれで……」
「ズキューンバズーカー!」
「ッ!?」
その瞬間、どこからともなく飛んできた音符の紋章が入った白いエネルギー砲がスラッシューへと迫ると彼女はそれに反応して片手で弾き飛ばすとズキューンバズーカーはスラッシューの後方に着弾して爆発。
「お待たせ!」
「何とか終わる前に着けた!」
そこにいたのは少しの休憩を挟んでから向かっていたアイドル、ズキューン、キッスのトリオである。そして、キッスはダークランダーの姿が無いことを確認してから問いかけた。
「こっちのダークランダーは?」
「それならさっきソウルビートが浄化したよ」
ウインクからの言葉を聞いてアイドル達がソウルビートの方を向くと他のメンバーとは違って多少雰囲気が変わっていた彼の姿に思わずズキューンが驚きの声を上げる。
「って、ええっ!?アレがソウルビートなの!?」
「ソウルビートも私達と同じで新しい力に覚醒したんです!」
「なるほど、だからあんなにも凄まじい力を感じるのね」
何にせよ、これでプリキュア側はメンバー5人が全員集合。先程ソウルビートがスラッシュー相手に圧倒していた事も加味するとこれでスラッシューを救出も現実的に思えてきた。
対してスラッシューの方は絶望的状況である。覚醒状態のソウルビート単独に圧倒されていただけでも十分不味い状況だったが、そこにアイドルプリキュアが全員集合してしまったのである。
そのため、折角ダークイーネと連携したというのに敗色濃厚状態に陥る事に。
「くっ……」
「Kotoneさん、もうこんな事は」
「チッ、またしつこく説得しようとして。もう聞くのもうんざりだわ」
スラッシューは毎回毎回こんな話をされていればうんざりしてしまうのも仕方ない事だろう。ただ、ソウルビート達はアイアイ島でUtakoからKotoneを救う事を託されてしまっている。
そのため、折角スラッシューと出会ったのに何も言わない……というわけにはいかないのだ。
「はぁ、要するに私があなた達と話し合ってダークイーネ様の元を離れるって言わない限りはずっと言ってくるわけ?」
「ああ、スラッシューには……Kotoneさんには帰る場所がある。だからチョッキリ団として他の人を傷つけるのはもう終わりにしてくれないか?」
「ふふっ、なるほどねぇ。帰る場所……口から出まかせを言ってまで私を光の世界に戻したいわけ?」
スラッシューは冷たい目線をプリキュア達に向けると闇のオーラを増幅させる。この様子から明らかにスラッシューの心は怒りに染まりつつあった。
「スラッシュー、あなたは1人なんかじゃ」
「いいえ、1人よ。1人じゃなかったとしても隣にいるのはあなた達じゃなくてダークイーネ様。少なくとも、あなた達の元になんて絶対に行かないわ」
スラッシューの意思は固く、前までとは違ってどれだけ彼女に話しかけても記憶のフラッシュバックは起きてくれない。このままではスラッシューの中に存在する自分達への敵対心を強く煽るのみだ。
「どうしよう。このままじゃ、スラッシューを怒らせるだけだよ」
「ええ、スラッシューの纏っている空気感が前までとまるで違う」
「ああ、前までの洗脳とは明らかにタイプが違う。多分だけど、そもそも洗脳を使った相手が違うのかもしれない」
ズキューンとキッスがスラッシューの纏う雰囲気が違う事を指摘するとソウルビートが先程までの会話を総合した予想を話す。
「何をコソコソ話しているのかしら?あんまり変な長話を聞くのは好きじゃないのだけど」
スラッシューがそう言うとソウルビート達はどちらにせよ今はスラッシューと戦うしかないと考える事に。
「皆、スラッシューにライブ技をぶつけよう」
「確かに、その方がスラッシューを助けられる可能性が高くなるはず」
「それなら、まずはスラッシューに隙を作りませんとね!」
プリキュア達はそのままスラッシューの相手をするために構えを取る中、スラッシューは本気でここにいるアイドルプリキュアと戦う必要があると考える。少なくとも、今のソウルビート1人を相手にすると考えても中途半端な力では勝ち目が無いだろう。
『引き際だ。スラッシュー』
「ッ、その声は!?」
「またダークイーネが来たの!?」
するとスラッシューの足元からダークイーネの影が姿を表すとスラッシューへと撤退を促す。勿論スラッシューとしてはこのまま黙って逃げるというのはやりたく無い。そのため、彼女は反論した。
「ダークイーネ様、私はまだ……」
『確かにお前はまだ戦える。だが、ここでお前を失うリスクが大きい以上……妾はお前を戦わせるわけにはいかない』
ソウルビートはスラッシューの事を大切に扱うダークイーネの様子に彼女へと話しかける。
「ダークイーネ、やっぱりお前……スラッシューの。いや、アイドルとしてのKotoneさんのファンになっているんじゃ」
「「「「「えっ?」」」」」
ソウルビートはダークイーネがアイドルとしてのスラッシューのファンのような存在になっているのだと予想。するとダークイーネはあまりアイドルプリキュアとお喋りをするつもりが無いのか、ソウルビートからの問いには答えず。
『……スラッシュー、行くぞ』
「はい……」
スラッシューはアイドルプリキュアに勝てなかった事実を悔しそうにしつつダークイーネの言葉に従うとダークイーネは目を赤黒く発光させる。その直後、ダークイーネとスラッシューはその場から転移するような形で撤退。
プリキュア達は勝利できたものの、今回も結局スラッシューを助ける事はできなかった。最早ここまで来るとスラッシューとダークイーネを物理的に引き剥がすか、ダークイーネのいる本拠地で戦うなりしないとスラッシューを助け出す前に妨害されて逃げられてしまうと思った方が良いだろう。
「スラッシュー、やっぱりダメなのかな」
「……いや、今回は仕方ないよ。スラッシューはやる気になってくれてたし」
「あとはダークイーネの介入さえって所だよね」
ダークイーネのあの様子から察するに、ダークイーネはスラッシューにいなくなられるのを過度に避けようとしている所がある。
「……ダークイーネ、アイツは流石にKotoneさんの素性についてはわかってるはず。さっきは半分冗談でカマをかけたつもりだったけど……」
ソウルビートはダークイーネがスラッシューを推しとして心の支えにしているみたいな言い方をした。勿論冗談でそこまで深い部分まで触れるつもりは無かった……が、もしそれが本当なのだとしたら……。
「もしかするとダークイーネとスラッシューを無理に引き剥がす事ってかなり不味いのかも」
ソウルビートはそんな予感がしつつも、今は確証が無いために一旦置いておく事にした。
それはさておき、スラッシューとダークイーネがいなくなった事でソウルビートがハートガーデンを会場。それとタイミングをほぼ同じくして、倒れていた白石の瞳が僅かに動いた。
「んんっ……」
「ッ、その子……」
「皆、ここからは俺に任せてくれ」
ソウルビートは変身解除すると影人に戻る。そして、白石の事を任せるように言った。
「わかりました。その方はお願いします!」
そして、うた達はこの場の後始末を影人に任せるとその場から去っていく。それから残された影人は倒れていた白石の元に行くと丁度そのタイミングで彼は目を覚ました。
「ッ、ここは……はっ、さっきの女の人は……」
「悪かったな。お前の言うさっきの女の人じゃなくて」
「黒霧……」
白石はいきなり気を失ったかと思ったら目の前に影人が現れて困惑。ただ、すぐに敵対心を露わにすると睨みつけた。
「なぁ、白石。お前も辛い思いをしてきたのならわかるだろ。この世界、自分の実力不足を補うには練習しか無いって」
「ッ、煩い。何だ、一回マグレで俺に勝てたからって……」
「マグレでも何でも勝ちは勝ちだ。……今のお前、超が付くほどダサいぞ」
「なっ……」
影人にそう言われて白石は思わず絶句。そのまま胸に怒りが込み上げてきたが、影人の言う事は何も間違っていない事を白石は自分でよくわかっていた。
「白石、自分の才能の無さを受け入れろ」
「ッ、何を言うかと思ったら……また説教を」
「受け入れたら……どうやってその足りない部分を伸ばすか考えるんだ。やり方を変えても良い。泥臭く努力したって良い。使えるなら他の人が作ってる状況を利用すれば良い。少なくとも、さっきの俺はそうやってお前に勝つというマグレを作り出した」
それを聞いて白石は目を見開く。それから影人はあまり長々と説明をするのも嫌なのか、話を纏める事に。
「それと最後に……俺は白石の事を認めてるし、ライバルとして一緒に頑張りたい。俺からの一方通行の気持ちかもしれないけど、これだけは覚えておいてくれ」
そう言って影人はレッスンの会場に戻ろうとする。それを見た白石は僅かに悔しそうに唇を噛み締めてから影人へと話しかけた。
「おい!」
「……?」
「ッ……黒霧、俺の方こそすまん。あんなに馬鹿にして、あれだけ嫌な事を言って。言い訳にしかならないけど、俺も焦ってたんだ。自業自得とはいえ、周りに置いていかれるのが嫌で。だから変なプライドとか色々拗らせて……」
白石は言いづらいのか。段々と声が小さくなっていく。それを聞いた影人は一度溜め息を吐くと白石へと近づいた。
「言い訳は良い。お前のその変なプライドってやつのせいで迷惑がかかった人達があそこに沢山いる。……まずはその人達にしっかり謝罪するんだ」
「……ああ。そうする」
こうして、影人と白石は完全にでは無いがある程度はお互いに折り合いを付けて和解した。2人はこれ以上レッスン場を空けて心配をかけさせるわけにはいかないためにそちらに向かう事になる。
同時刻、スラッシューを連れ帰ったダークイーネ。その先は光届かない闇の世界。その玉座とも呼べる場所に1人の女性が座っていた。
彼女こそがダークイーネの本体である。ただ、全身はまだ暗いエフェクトがかかっており。まだその全貌は明らかになっていなかった。
そんなダークイーネが統べる闇の世界にて、スラッシューはダークイーネへと平伏。ダークイーネは早速彼女へと話しかけた。
「スラッシュー、弁明はあるか?」
「……ありません。私の計算が甘かっただけの話です」
「………」
ダークイーネとしてはできるのならスラッシューを罰したく無かったのか。迷った様子を見せる。
「スラッシュー、お前はまだ妾の側にいてくれるか?」
「勿論です。あなた様のために、私はアイドルプリキュアを倒して世界を真っ暗闇に染めます」
今までであれば、アイドルプリキュアに色々言われた後はかなり心を乱していたが……今回はそれが無いようで。割と冷静な様子でダークイーネの問いに受け答えする。
「スラッシュー、お前に数日間の謹慎を命じる。それと、妾の力を更に入れよう」
「……はい」
スラッシューはそれを聞いて妥当な判断だと感じる。ここまで大掛かりな作戦。しかも、ダークイーネを巻き込んだ上で失敗してしまったのだ。当然相応のペナルティは課されて当然と思っているくらいである。
すると、ダークイーネはスラッシューが潔く罰を受け入れようとしているのを見て僅かに心を痛めたのか……。改めてスラッシューに問いかける。
「スラッシューよ、妾の元に来た事を後悔していないか?」
「ッ……そんな事はありません!私は、ダークイーネ様のお力になりたい。あなた様に声をかけてもらったあの時からその想いは変わりません」
「……そうか」
ダークイーネはスラッシューからの言葉を聞くと少し前に反応が解除された際の反応を思い出す。
あの時の彼女は闇に染まる恐怖こそ抱いていたものの……ダークイーネに対して裏切ろうという素振りは見せていなかった。あくまでダークイーネの幸せを第一に考えていたのである。
「……お前の本質は、優しいあの時から変わってないのだろうな」
「ダークイーネ様?」
「いや、ただの独り言だ。スラッシュー、謹慎期間中の間の数日間。妾の力に慣れると良い」
するとスラッシューの体が少しだけ宙に浮くとどこからともなく闇の力が結集。スラッシューの体を閉じ込めるとその体を蝕み始めた。
「ああああああ!?ああ、ううっ……くっ。ああああっ!」
その闇の力はスラッシューにとっては強すぎるのか……彼女は苦痛に顔を歪めてしまう。
「……スラッシュー、そなたをこのような目になど遭わせたく無かった。全ては妾の支配に抗おうとする者、アイドルプリキュアを潰せば済む話だ。……こうなれば、チョッキリーヌの最後の働きに期待するとしよう」
ダークイーネはスラッシューが更なる闇に侵される様子を見ながらここにいない最後の幹部、チョッキリーヌの動向を見守る事になる。
そして、闇の中に落ちたスラッシュー……いや。Kotoneは暗い闇の奥底でハイライトが消え、絶望したような死んだ目を浮かべていた。
“誰も私なんか見てくれない。どれだけ努力しても、輝きたくても……あなたみたいには輝けない。……嫌だ、嫌だ……。助けて……Utako……”
Kotoneは意識の奥底で助けを求めて手を伸ばしていたが、そこに来てくれる者は1人もいない。彼女はどうすることもできない現状を呪うように悔しさを噛み締めるのだった。
また次回もお楽しみに。