キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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未来のライバル達に向けた宣戦布告

ダークランダーの浄化に成功し、スラッシューもダークイーネに連れられて撤退。ダークランダーから救出された白石も影人が改めて説得。その甲斐もあって白石を連れ戻す事に成功。

 

「白石、入る前に怒られる覚悟はしておけよ」

 

「……ああ」

 

影人はレッスンの部屋に入る前に白石へと声をかける。ダークランダーという怪物が出た状態で飛び出してしまった影人もそうなのだが、白石は練習中の態度の悪さに加えて自分に不利になった瞬間に飛び出しているので周りからの心象は最悪に近いだろう。

 

白石も何となくその事は覚悟しているのか。彼は小さく頷くと2人一緒に中に入る。

 

そして、それを見た中西は真っ先に2人へと駆け寄ると鋭い声色で緊急時にこの場にいなかった2人を問い詰める事に。

 

「ッ!!2人共、今までどこに行ってたんですか?」

 

「……ッ、それは」

 

白石はどうやって言い訳するべきか迷った。勿論、トイレにいたと言って誤魔化す事はできる。……しかし、トイレをしていたにしては経過時間が長すぎたせいで絶対に怪しまれてしまう。

 

「……俺が白石を見つけた直後に怪物が現れて。今し方まで逃げ回っていました」

 

「怪物……」

 

それを聞いて中西は影人が嘘を吐いている可能性を脳裏に浮かべる。それは当然の考えだろう。そんなもの、幾ら何でも信憑性が無さすぎる言い訳だからだ。……しかし、中西は知っていた。

 

前日に響カイトのライブで会場に怪物が出たという噂。更にはなみちタウンで度々あった目撃情報。何より、影人の言葉と顔つきは嘘と断定するには説得力があり過ぎたのだ。

 

「……はぁ。わかりました。今回はその話を信じましょう。ですが、それはそうとして白石君。あなたはまずやるべき事がある事……わかってますよね?」

 

「……はい」

 

中西は2人がいなかった事に関してを一旦許すと白石へと先程までの行動を咎めるように問いかける。そして、彼はその事実を受け止めると頷いた。そのまま彼は全員が見渡せる場所に移動するとその目線が自分に向けられるのを感じる。

 

当然それらは白石の今までの行動に対する冷たい目ばかりだった。こればかりは自分の行いが招いた事であると彼自身理解しており、至極当然の流れだと受け入れていた。

 

「……ここに来てからずっと、この体験を楽しみにしていた皆さんの前であのような態度を。そして、心の無い言葉を投げ続けてしまったこと。本当にすみませんでした!」

 

白石は頭を下げるものの、やはり目線は冷たいままだ。これもまた当然の流れだろう。白石は未だに頭を下げていたが、恐らく彼もその事はよくわかっているだろうから余計にその頭を上げづらいのだろう。

 

そのため、影人はこのままではレッスンに支障が出ると思って白石の隣に並ぶと白石のフォローをする事に。

 

「俺の方からもお願いします。勿論、白石のやった事は人としてそう簡単に許されない事だと思います。……それでも、白石にも事情があって。だから、今回の一度きりで構いません。彼を許してあげられませんか?」

 

『ッ……』

 

影人の方からも説得が入って一同はどうするのが正解なのか決めかねて困り果ててしまう。恐らく、白石の事は許せない気持ちが強いのだろうが……先程までずっと作品のために頑張っていた影人からも許してほしいと頼まれている事もあって単純に否定で終わらせる事ができなくなったのだ。

 

「……黒霧君。白石君は本当に反省してるんだよね?」

 

「はい……それは間違いありません」

 

「そっか……」

 

すると、参加者達を代表する形で佐橋が問いかけると影人の方を見ながら白石の反省の本気度を確認。そして、彼女は深呼吸をすると参加者達へと話すように声をかけた。

 

「わかった。私は今回だけとはいえ、白石君の事を受け入れるよ」

 

「ッ……」

 

「皆も良いかな?黒霧君も今回受け入れるだけで良いって言ったんだし。折角なら楽しくやりたいじゃん!」

 

それから佐橋に促される形で他の参加者達も今回限りとはいえ、白石という存在を受け入れる事に。これにより、ようやく今回の体験イベントが先へと進めるようになった。

 

「はい!それじゃあ話も終わった事で次に進むね。練習時間はとっくに過ぎちゃったけど、最後の一回だけ練習をして。その後発表にしましょうか」

 

中西はそんな風にその場を取り仕切ると彼女の指示通りに練習が再開。それから影人達参加者は最後の練習を挟んでからとうとう発表を行う事になる。

 

そして、それは影人と白石の意地のぶつかり合いになったのだが……その決着は着くことは無く。中西は敢えて最後の総評の際にどちらが優れていたという評価を入れなかった。

 

「2人は真っ向からぶつかり合って自分の役としての責任を全うしようとしている感じだったね。でも、だからこそあなた達の演技に甲乙をつけるわけには行かない。あなた達2人がもし、これからもこの道を進むというのなら……お互いに高め合う存在として頑張ってほしいわ」

 

中西がそう言い切った事で2人の対決の行方は引き分けのような形で決着。影人と白石は双方共相手に勝ち切る結果にならなかった事に少し思う所はあったが……落とし所として考えるのならそれが1番揉めない答えではあったというのは何となく2人共わかっていた。

 

「それでは、本日のイベントはこれで終了となります。ご参加いただいた皆様。来ていただきありがとうございました。もし今日のイベントで声優という職業に興味を持っていただいたのでしたら幸いです」

 

その後、今回のイベント内でのアクシデントも無く。そのまま終了の時を迎えた。また、中西の言葉で解散が告げられるとそれぞれが帰り支度をして部屋から出ようとする動きを始めた。

 

「黒霧」

 

「何だ?白石」

 

すると、帰り際に早速白石が話しかけてくると彼は先程までの強気だった態度から一変。落ち着きつつもバツの悪そうな顔で影人へと話しかけていた。

 

「さっきはすまなかったな」

 

「はぁ……。白石、あのな?」

 

「………」

 

「俺もお前の事を完全に許したつもりはない。俺の事を見下してたあの態度。凄くイラってしたし。都合が悪くなったら逃げた所も、それから今そうやって反省してる所もお前の都合でしか無い」

 

「そんなの、俺が1番……」

 

どうやら、周りの空気を壊さないために影人は白石のあの態度を多少我慢している所はあったらしく。イベントが終わった今のタイミングに合わせて本人にぶつけていた。

 

「というか、そもそも俺が大人しくしてたのはあの場の空気を壊さないためだって事くらいわかるだろ?……だから、今度はお前を見下せるくらいには上手くなってやる。それでもし今度も自分の都合で逃げやがったら次は本当にフォローしないからな」

 

「ッ……」

 

それは改めての白石への宣戦布告であり、自分は声優の道を駆け上がるという宣言だった。対して、白石の方も影人に負けっぱなしで終わるのは嫌なのか。

 

「俺を見下せる位置に行く?冗談も程々にしてくれよ?俺はお前にただで負けてやるつもりはねーよ。今度は俺が勝つ」

 

「待ってるぜ。またやろうな?」

 

「ああ」

 

そう言って2人は別れていくと白石はやはりこの場にこれ以上はいづらかったのか。さっさと出ていってしまう。その後に同じチームメイトだった佐橋、立原、加藤が話しかけてきた。

 

「アイツ、やーっと行ってくれた」

 

「すみませんね。ちょっと話してしまって」

 

「いやいや、黒霧君がいなかったら絶対皆許さなかったでしょ?」

 

「でしょうね……」

 

影人は白石がしでかした事の大きさに対して自分が味方するだけでどうにかできるかは懐疑的だった。下手したら白石が受け入れられないかもしれないと思ったのである。

 

「ま、次までに態度が直ってなかったらもう関わらないようにするけどね」

 

「俺もそれが良いと思いますよ。アイツに無理に絡んで色々恨まれるって面倒ですから」

 

「あはは……流石に経験者は言うことが違うわね……」

 

立原が影人の言葉に苦笑いを浮かべているとそこに加藤が少し申し訳なさそうな顔で話しかける。

 

「あ、あの……黒霧君」

 

「加藤さん?」

 

「えと、今日一日。色々助けてくれてありがと」

 

「俺は別に加藤さんに直接何かをしたわけじゃ……」

 

影人は本当に加藤に対して何か特別な事を教えたわけでも、アドバイスをしたわけでも無い。彼女から感謝される理由など無いと思っていた。

 

「白石君の事、解決してくれたのは黒霧君だから。それと、私が下手なせいで迷惑をかけてごめんなさい」

 

「……いや、加藤さんは十分頑張ってた。むしろ、謝らないといけないのは俺の方なのに」

 

「それでも、練習の最後の一回と本番の時は思いっきりやれたのは黒霧君のおかげ。だからありがと」

 

加藤はその性格上、白石のようなタイプは苦手だ。ただ、それをどうにかしたのは紛れもない影人のおかげ。彼女は影人がしてくれた事に感謝の気持ちを伝えたのである。

 

「加藤さんはこれからも声優目指すつもり?」

 

「ッ……うん。私も、今日は全然ダメだったけど。このまま声優を諦めたくない」

 

「そっか。……なら、アイツみたいなタイプ相手でも自分の全力を出せるようにしないとだな」

 

「えっ?」

 

加藤はそう言われてキョトンとしたような顔つきになる。それから影人は今回の加藤の反省点を話す事に。

 

「この業界では自分を主張できない人に居場所は無いんだ。だから、周りの人がどれだけ嫌な人でも変わらず自分の色は出し続けないといけないと思う。まず加藤さんが目指すのはそこな気がするから」

 

「ッ……うん」

 

「って。俺みたいな負け犬の意見なんて参考にならないかもだけど」

 

加藤は影人にそう言われて少し考えると今回の反省点は確かにそこにあると思ったのか。大きく頷いた。

 

最後に今回、影人達のチームメンバーを纏めようと尽力してくれた佐橋が話しかける。

 

「黒霧君、私からもありがとうね」

 

「いえ、俺も白石からあそこまで恨まれてる事をもっと考えるべきでした」

 

「いやいや、あんなの誰にもわからないよ。私だって頑張って説得しようとしたけど全然ダメで。でも、黒霧君がいてくれたおかげでどうにか楽しい思い出には出来たから」

 

「それは良かったです」

 

影人は先程の本番で何だかんだで1番役を楽しんでやっていたのはこの佐橋だと思っている。自分と白石が競り合う間に彼女は本来なら男がやるべき役の魔王役を引き受けて掻き乱してくれた。

 

しかもその間、彼女は楽しみながら演技をやっていたわけで。影人は彼女のような楽しむ気持ちを少し欠いていた所があったというのも考える事ができたのだ。

 

「でも、黒霧君も油断しないでよ?今は私達は黒霧君達には勝てないけど、止まってたらさっさと追い抜いちゃうからね!」

 

「勿論ですよ。佐橋さん達も俺からしたらライバルですから」

 

影人達は今日のチームメンバー達と別れると1人その場に残る。彼女達と一緒に出なかったのは一応サウンドプロダクションにいるであろうレイの元に行く可能性も考えたからである。

 

そんな時、影人の元に来たのは先程自分達よりも一足早く部屋を出たはずの中西であった。彼女は影人へと声をかけるとその近くにまで来る。

 

「影人君、お疲れ様」

 

「お疲れ様です、中西先生」

 

「今日は色々とありがとね」

 

「え?別に俺は……」

 

中西が早速影人へとお礼を言い出した事に彼はキョトンとした顔を浮かた。すると中西は苦笑いしながら指摘してくる。

 

「またまた〜。さっき影人君が白石君の事で色々頑張ってくれたでしょ?」

 

「アレは、半分くらいは俺のせいであんな険悪な空気感ができちゃいましたし……それを自分でどうにか戻しただけですよ?」

 

「そうかもしれないけど、私としてはあなたに助けてもらったら立場だから。お礼くらい言わせて頂戴」

 

中西としては今回の授業の講師は自分で、生徒同士のトラブルは基本的に自分の責任となる。そのため、何としてでも2人の喧嘩を止めたい所があった。

 

しかし、結果的に中西は影人に頼り切る事になってしまい……講師としての役割を果たせなかったと認識していたのだ。

 

「……俺も折角このイベントに参加したのなら楽しみたかったですし。白石がそれを妨害するような感じを出していたので。だからアレは成り行きでしかありません」

 

「そう……」

 

それから中西は少し遠い目を向けていた。そして、かつての自分の話を始める。

 

「黒霧君は凄いよね。あんなにキラキラしたお芝居できるなんてさ」

 

「えっ……別に俺は……」

 

影人はいきなり中西が褒め言葉を言ってきたために唖然とした顔になると彼女の方を向く。

 

「……私さ、この業界を目指して……プロの声優にまで辿り着いて事務所にも入れてもらった所まで行けたんだ」

 

「そういえば、休憩時間中に調べましたけど。中西さんも作品には出ているんですよね」

 

「うん、本当に脇役とかモブキャラばかりだったけどね」

 

どうやら中西も代表作と呼べるような有名どころのキャラは出来なかったものの、モブ等の端役とかはやっていたらしい。

 

「……でも、自分には一線級での活躍はできなかった。だからこうして、講師としてこっちに戻ってきたの」

 

「そう……なんですね」

 

声優も事務所に入れたからと言って仕事が保証されるわけでは無い。むしろそこから僅かな席を他の人と取り合いをして、選ばれなければならないのだ。

 

「黒霧君もこれから声優を目指すんでしょう?」

 

「はい」

 

「だったら、大変だと思うけど頑張ってね。……夢が叶わなかった人達の分まで」

 

中西は自分が成功した側だとは思っていない。それどころか、中途半端な所までしか行けなかった事を悔やんでいる。

 

だからこそ、今は講師として。夢を叶えられなかった自分達の分まで後に続く世代に頑張ってもらいたいのだ。

 

「勿論ですよ。……俺だってあの舞台をそう簡単に諦めたくありませんから」

 

影人は決意を新たにすると中西の言葉に頷く。こうして、この日の新人養成イベントは終了する事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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