キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
新人養成イベントが完全に終わり、あとは帰るだけとなった影人だが……帰る前にタイミングが揃ったためにレイと会う事になった。
「おー。影人、お疲れ様」
「ああ……まずだな、レイ」
「うん?」
「何で俺のかつての知り合いが。しかもある意味俺にトラウマを植え付けた元凶みたいな奴がいるって教えてくれなかったんだよ」
「あれ?言ってなかったか?」
「お前な……」
影人はここまですっとぼける様子を見せるレイを見て彼がわざと知らせなかった事を察してしまう。
「冗談はさておき。俺も言ったほうが良いかなと迷ってはいたんだ。……ただ、最初からいるってわかってたら何かしら対策しただろ?」
「そりゃあ勿論」
影人はいるとわかっていたら当然のように対策したと返すとレイは予想通りの返事に頷いた。
「まぁ、そうだよな。……だから教えたらダメだと思ったんだよ」
「………」
影人はレイの言い回しにイラッとした感情が湧くが、これもいつもの事だと抑えると続きを問いかける。
「それは俺がイレギュラーな事態に対応してほしかった的なやつか?」
「端的に言うとそうなるかな。ほら、イレギュラーな事なんていつどこで起きるかわからないだろ?」
「そりゃあそうだけどさ……」
影人はこの話を聞いてレイはこの話を影人に持ち込んだ時点で最初から今回のイベントそのものを影人の成長のチャンスとして与えたように思えてきた。そして、同時に今回のイベントに参加した人は自分も含めてレイの手のひらの上で上手く転がされていたのだと感じると影人の背中に悪寒が走る。
「(ほんと、こういう他人を上手く使って自分に思い通りの結果をもたらす辺り……父親にやり方が似てる気がするなぁ)」
影人は流石はあのハジメの息子であると考える事になるのだった。それはさておき、影人はレイに問いかける。
「ちなみに、レイ的には今回の俺の対応はどうだったんだ?」
「影人の対応方法か。……まぁ、上手く対応したと思うぞ?俺にとっても想定外だった白石って奴の恨みもちゃんと解決できたし。何なら、あんなやべーのを呼んじゃったことを後悔してるくらいだ」
「だろーな……」
影人としては白石があそこまでイカレた反応をしてくるとは思っておらず。白石の対応には一苦労だった。しかも何が厄介かと言うと、白石のせいでサウンドプロダクションを志望してくる将来の若手が減ってしまう事だろう。
「折角イベントを行ったとしてもアレじゃあうちに志望してくる人は減っちゃうかもな」
「ほんと、あの野郎自分の都合で引っ掻き回してくれて」
影人はどうにか前向きな言葉で彼と別れる事はできたものの……正直あそこまでやり過ぎな対応をされて内心穏やかでいられるかと言えばそうでも無い。
「最後上手くシメれたと思ったけど……レイ、もし白石がこの事務所の養成所に来るって言い出したらどうする?」
「まぁ、問題ありそうなら落とすしか無いだろうな。今回ので心を入れ替えてくれるのを信じるしか無いよ」
「結局はそれか……」
影人は白石の事は一旦忘れて今日のイベントで楽しかった事を思い出そうとする。そんな時、突如としてレイの元に一本の電話がかかってくる。
「お、電話か」
「差出人は……うん?これは咲良さんか」
そこに書いてあったのはうたの名前であり、彼女が珍しくレイの方に話を投げてきたため2人は揃って珍しがっていた。
うたとレイはそこまで頻繁に連絡を取り合うわけでは無い。むしろ、大体の場合はその2人でやり取りをする際はななやこころとセットの時だ。
「何でこのタイミングで?」
「というか、かなり珍しいよな。咲良さんが直接レイに話を持っていくのって」
「相当な緊急事態か何かでも起きたのかな?ひとまず出てみるか」
それから早速レイはうたからの電話に出るとレイが何かを言う前にうたの焦ったような声が響き渡る。
「もしもし、咲良さん。どうし……」
『ッ!レイ君!!良かった、出てくれて!』
「お、おう。随分と慌てた様子だな。何があった?」
レイはいきなり慌てた声で話しかけてきたうたに面喰らいつつも、まずは話を聞かないと始まらないという事で。早速うたに質問を投げた。
『そ、それが……私。いきなりリアルアイドルの方にスカウトされちゃって!』
「またまた〜。スカウトされたって?中々面白い冗談を……うん?スカウト?」
レイは途中までうたの話を半ば聞き流していたのだが、その際に聞こえたスカウトという単語に僅かに疑問符を感じたのか。影人がまさかの話に思わず聞き返してしまう。
「は?スカウトだと?」
『あ、もしかしてまだ影人君いたりする?だったら一緒に話を聞いて』
「お、おう。で、スカウトされたってどういう事だよ」
『あのね……ついさっきうちの喫茶店に来てくれたお客さんの1人がアイドル事務所の人だったらしくて……。その人から“ウチの事務所に来ないか”って誘われちゃった』
うたの話が終わると影人とレイは思わず顔を見合わせる。そして、うたが芸能事務所に誘われたという話を改めて事実を確認。当然そのような話をいきなり持ち込まれれば2人共驚くわけで。
「「……え?えぇーっ!?」」
それから、詳しい話はまた別のタイミングでするという話にはなったが……その時に既に話を聞いていたなな達も交えてするという事になった。
それはさておき、何故うたがこのような事態になってしまったのか。順を追って確認するとしよう。
〜回想〜
影人を助けるためにダークランダーと戦い、それが終わった後。うた達は影人となく解散し、彼女達はうたの家の近くにある喫茶グリッターに向かった。
そして、先程の女子会の続きとばかりに2階にあるスペースで机を囲んで話をする事に。
「ふんふふふ〜ん」
「うた先輩、上機嫌ですね」
「うん。影人君達を無事に助ける事ができたし、これでもう問題が起きることは……」
うたは上機嫌に鼻歌を歌うとそのような事を口にする。……だが、そんな風にフラグを立ててしまったらそれを回収してしまうのがお約束であるのか。こころが何かを見つけると声を上げる。
「なっ!?これって……」
「どうしたの?こころちゃん」
「皆さん、これを見てください」
早速問いかけられたこころが応える形で手にしたスマホのとある映像を見せる。それは、いつの間にかネットに挙がっていたニュースである。
『驚きのニュースです!」
「うん?」
「これは……」
そして、こころ以外の4人は彼女に促されるまま、ニュースの中身を見て思わず目を見開く。そこに映っていたのは約1週間前にあった響カイトの全国ツアーのファイナルの会場で。その映像には1番映ってほしくなかった存在、ダークランダーがいたからだ。
『レジェンドアイドルである響カイトさんのライブ会場に、突如としてダークランダーと呼ばれる謎のモンスターが現れました』
「ええっ!?」
更に映像が進むとそこに立ち向かうアイドルプリキュアが飛び出す様子が映される事に。
『そして、何と!あの“アイドルプリキュア”が、ダークランダーに立ち向かっている姿が映されました。ただ、残念な事にここで映像は途切れました』
どうやら、昨日の時点での戦いの様子が一部見られてしまったらしい。むしろ、今まであれだけ派手にダークランダーが呼ばれていたのによくバレなかったなと言いたいくらいだ。
『観客や会場への被害が無い事もあり、この映像が本物なのか、注目が集まっています』
それはさておき。ニュースで大々的に報じられてしまっている以上、今回の件は決して他人事ではいられない。
そして、そのような考えに至ったからか。うたが不安そうな顔で反応する。
「どうしよう……色々バレちゃってるよ」
「プリルン、今回はアップリしてないプリ!」
すると、いつもは無断で撮影してアップロードするプリルンさえも慌てた様子で反応。彼女に関しては色々前科があるのでそう言った所で信用されるかは別だろうが……そう言った際にプリルンの頭に変化が何も起こらないという事実が彼女が何もやっていない事への裏付けになった。
もしプリルンがやってて隠しているなら彼女の頭がピカリーネによってモッサモサに変わるだろう。しかし、それが無いという事は本当にやってないという話になる。
「確かに、今回は女王様からのお仕置きが来てませんから。今回に関してはプリルンの言うことは正しいと思います」
「メロロンも流石にこんな事をやらないのメロ」
そして、プリルンに続き、メロロンも今回の件は違うと話す。そして、それもまた正しいからか。メロロンの頭にも女王様からのお仕置きは発生しなかった。
「沢山の人がいたから、撮影されても不思議じゃないよね」
「あっ、もしかすると……つむぐさんかもしれません。ほら!」
そんな時。こころは誰がやったかの心当たりがあるのか。どこからともなく一冊の雑誌を取り出す。そこにあったのは彼女が所属している雑誌。“エンタメブンブン”であった。
「それは、エンタメブンブン!」
「はい、こちらがその記事です」
そこにあったのは前々から貴島が気になって、前に影人も含めて一緒に捜索していたアイドルプリキュアの謎についての記事が載っていた。
「メロ……アイドルプリキュアの謎に迫る記事がぎっしり載ってるメロ」
「“アイドルプリキュアは、ただのアイドルじゃないのかも。エンタメブンブンは取材します”……だって」
そこにはしっかりと貴島の決意表明的な文も入っており……今回の件で絶対にアイドルプリキュアの正体を明らかにするという意気込みに燃えているようだった。
「つむぐ、頑張るプリ!」
「頑張りすぎると正体がバレちゃうよ!」
「プリ!?それは……困るプリ」
プリルンはいつものマイペースな様子を見せるとこころが慌てて反論。それを聞いてプリルンは正体バレは流石に不味いと言わんばかりの様子を見せる。
「ダークランダーやチョッキリ団の事がもっと知られたら大変なのメロ」
「きっと、皆不安になっちゃうよね……」
そしてアイドルプリキュアの正体がバレてしまう事と同じくらい、チョッキリ団やダークランダーの事がバレてしまうのも不味い。
ただでさえダークランダーは人々の闇を吸収して強くなるのだ。そして、人々の中に不安が慢性的に高まる事態になってしまえばその結果……闇が増える事を望むチョッキリ団側からすれば闇を増やしたい放題のやりたい放題だろう。
なな達4人の中にも不安な気持ちが募ってしまう中、そこで歌を歌い始めたのはうただ。
「未来キラキラだいじょぶ♪何とかなるよね♪ゼッタイ!だいじょぶ!」
「だいじょぶ!」
彼女はこんな時でも笑顔を忘れたらダメだと言わんばかりに歌を歌い、その歌に合わせてなな達の不安な顔も笑顔へと変わっていく。
そして、その歌声はグリッターの1階にまで届いており。バイトをしていた田中や姫野はうたの方に気がついて上の階を気にした。
「うたさん、また歌ってますね」
「彼女と言えば歌というのは、もう我々もすっかり慣れた事ですし……」
「そうですね、特段変わった事ではありませんか」
田中と姫野もこの半年ちょっとでうたの事をかなり理解できるようになった。出会った頃ならいきなり歌い出すその行動に驚いたものの、今はいつもの事であると割り切る事ができる。
「キラキラは終わらない♪」
それはさておき、うたの歌が下の階に聞こえているという事は田中や姫野以外の一般人にも丸聞こえであるという事。そして、その歌を聴いた1人の男性がその歌に反応する。
「……ん?この歌……なんてアメイジングな歌声……!」
どうやら、この男性はグリッターを初めて訪れたようで。常連であれば知っているはずのうたが時折歌うという行動をとるのを知らなさそうだった。
そして、その男性はうたの歌に何か惹かれる物を感じたのか。思わずこの歌声の主が誰なのかを問いかける。
「歌っているのは誰ですか!?」
「……うん?今誰か呼ばなかった?」
「えっと……あ、下からこっちを見てる人がいますね」
すると、うた達は割とすぐに自分達へと声をかけてきた男性の存在を認識。早速彼の呼びかけに応えるためにうたが2階のスペースから姿を見せると自分が歌を歌った張本人だと伝える。
「はいはーい、私でーす!」
「あなたですか!是非、うちの事務所からアイドルデビューしてください!」
その瞬間、男性が言い出したのはまさかのリアルアイドルとしてデビューして欲しいというスカウトの話であった。そして、当然のようにそんな事を想定してなかったうたは唖然とする。
「……えっ?あの人、アイドルデビューって言った?聞き間違いじゃないよね?」
「プリ?プリルンはちゃんとアイドルデビューって聞こえたプリ」
「メロロンもちゃんと聞こえてるのメロ」
「先輩、私達も……」
「うん、しっかり聞こえてるよ」
うたは今の男性の話を聞いて最初はそれを信じる事ができなかった。しかし、なな達も同じ話を聞いたのであればそれはうたの聞き間違いとは言えなくなってしまう。それから数秒後、うたが取った行動というのが……。
「アイドル……デビュー!?」
男性から持ちかけられた衝撃の話に思わず大きな声を出して驚く事なのであった。
突如として降って湧いたうたのリアルアイドルとしてのデビューの話。そしてこの話が挙がってから少しして。
サウンドプロダクションでのイベントを終えた影人やレイの元にこの話が投げられる事になるのだった。
また次回もお楽しみに。