キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人のイベント体験が終わった二日後その影人達は月曜日という事でいつも通り学校にいたのだが……そこでは二日前にいきなり降って湧いたうたのリアルアイドルへの勧誘の話題になっていた。
「まさか俺達がいない間にとんでもない事態になってたとはな」
「ああ。流石これは俺も想定外だぞ」
今現在は昼休みの時間帯であり。影人達はいつも通りのメンバーで昼ご飯を食べていた。尚、今回は珍しくプリルンとメロロンは妖精態の状態でそこにいる。
影人とレイは改めて話を聞くと未だに信じられていない様子であり、それだけリアルアイドルとしての勧誘はうたにとって大きな出来事なのだ。
「偶々グリッターに事務所のマネージャー?的な人がいたんだろ」
「ちなみにどんな人かちゃんと調べたのか?」
リアルアイドルの勧誘とは言ってもピンからキリまである。もし仮に男性が提示した事務所が信用できない運営の元にあるのなら……その勧誘は議論の余地無く断るべきだろう。
「その辺はちゃんと調べてるから大丈夫。どっちかというと問題は……」
「うた先輩の気持ちですよね」
するとその場の視線がうたへと一斉に集まる。ただし、毎度のようにメロロンはプリルンのお世話をしているような状態であり。彼女はたこさんウインナーをプリルンの口元に持って行っていた。
「あーん……う〜ん!美味しいプリ!」
「で、どうするんですか?先輩」
「うーん……」
「あの人、うたの歌にメロメロだったのメロ」
メロロンはそう言って男性の言葉を思い出す。それは、グリッターで勧誘された直後の事。うたが男性からかけられた言葉だ。
〜回想〜
男性は完全にうたの歌に魅了されたのか。彼女の肩に手を置きつつうたの良さを熱弁する。
「あなたは100年に1人の逸材……きっと世界中を虜にできます!それこそ、昭和時代に一世を風靡したUtaKotoneのようにですよ!」
「UtaKotone……確かそれって」
「おお!その2人をご存知でしたか!そう。それは昭和の日本に彗星の如く現れては人々を魅了し、あっという間に消えてしまった伝説のアイドルユニット。名前はUtaKotone!何とも勿体無かったものですよ」
男性の年齢層的には影人達の親世代に該当しそうだったため、恐らくレイの父親であるハジメと同じくUtaKotoneのリアル世代では無いものの……まだその頃はUtaKotoneの特集をテレビとかで組まれていた頃だっただろう。
「あなたには彼女達と同等……いや。きっとそれ以上の才能が眠ってる!それに、あなたのその雰囲気。似てるんですよ!UtaKotoneの片翼、Utakoに!!」
「え?あ……あぁ……そうなんですね」
男性の熱弁にうたは少し気不味そうな顔を浮かべる。何しろ、ここにいない影人を含めたアイドルプリキュアのメンバーは霊体だったとはいえ、Utakoの実物を知っている。だからこそこの苦笑いに繋がったのだろう。
「私の事は気軽に社長さんとお呼びくださいね!」
〜現在〜
結局、その時のうたには具体的な返事を出す事ができず。少しだけ回答までの時間を貰ったものの……やはりそう簡単に答えを出せるものでは無かった。
「でも、私……キュアアイドルで。アイドルプリキュアで……咲良うたはアイドルって……」
「いや、あのな?アイドルプリキュアとリアルアイドルは別物だぞ?」
うたは自分がアイドルプリキュアである事を引き合いに出すといきなり混乱し始める。影人は冷静な様子で指摘するが、それは彼女に届いてないようで。
「ダメだこりゃ。完全に頭の中がぐちゃぐちゃになったやつだな」
「はひゃー……どゆこと?」
どうやら、うたは頭の中がこんがらがった影響で魂が抜けてしまうとそれがデフォルメのエフェクトとして現れてしまう。これではまともに話を進められない。
「ああ!?しっかして、うたちゃん!」
「それにしても、あの社長さん。どこかで見たような……」
こころは首を傾げると考え込む。ただ、うたに勧誘をかけた事務所の社長の名前で検索してみたものの……そこには特に目ぼしい情報なんてものは無く。
残念ながら、正体を掴む事ができなかった。するとそこにプリルンが未だに魂の抜け落ちたうたへと話しかける。
「うた、アイドルになりたいプリ?」
「ッ……私は……」
うたはプリルンから問いかけられて我に帰ると少し前にあった響カイトのライブの事を思い浮かべた。
「この前のカイトさんのライブを観て、やっぱりアイドルって凄いなと思った」
すると、カイトが自身の歌でライブ会場を埋め尽くす程に集まったファンの人々を魅了する様子が鮮明に浮かんでくる。うたが目指すべき場所……目指すべきアイドルというのはああいう存在だろう。
「アイドル・咲良うたになったらもっと沢山の人をキラッキランランにできるのかなって」
「確かに咲良さんなら良い線は行けると思う」
「影人君……」
「少なくとも、こんな俺よりも咲良さんの歌には人を惹きつける才能がある」
うたがカイトがやってのけたライブの事を考えているとそこに影人がうたの才能と彼女が持っている可能性の大きさを話す。そして、それを話すという事は当然リスクも話すという事だ。
「……だけど、アイドルっていうのはやりたいと思って全員がなれる存在じゃないよ。その辺りの覚悟はできてる?」
「そうかもしれない。でも、私は今のキュアアイドルとしてだけじゃなくて。咲良うたとして誰かをキラッキランランにしたい気持ちがあるの」
うたは影人から言われたリスクがわからないわけではない。むしろ、影人だからこそしてくれる話なのはちゃんとわかっていた。その上でうたの瞳には強い覚悟が宿る。
「……それに、私の歌でもっと沢山の人をキラッキランランにできるのなら私は凄く嬉しい。社長さんのお話を聞いて、そう思ったんだ!」
「そうか……もうそれだけの覚悟があるのなら、これ以上迷う必要は無いかな」
「えっ?」
すると、うたは自分を試すような言い回しをしてきた影人があっさりと自分の意見に賛同したことにキョトンとする。そして、ななもそんなうたの手を握ると微笑んだ。
「ふふっ、確かに。私もうたちゃんがそれだけやる気なら、決まりで良いと思う」
「ななちゃんも……」
「一歩踏み出す、Win-Winウインク!」
なながウインクをしながらうたを励ますとそれだけでうたの心に温かさが湧き出てくる。更にそこにこころが声をかけた。
「先輩なら絶対できますよ!」
「タナカーンやヒメーノも応援してたメロ」
「プリ!プリルンも応援するプリ!」
勿論妖精ーズの面々もうたの目指す夢を応援しないなんて事は無い。最後に残っていたレイもだ。
「俺も咲良さんのやりたい事ならそれをサポートするつもり。……まぁ、もし父さんがこの話を聞いたらデビューするならうちの事務所でデビューしろとか言い出すかもしれないけど……」
「その問題、もし起きたら割と洒落にならない気がするんだが」
影人はハジメがこの問題に干渉してきたらうたを勧誘した社長との事やらで色々揉めそうな予感がしてしまう。それはさておき、アイドルプリキュアの関係者はだいたい全員うたの夢を応援する気持ちで一貫しており。それを受けてうた自身も嬉しそうな顔を浮かべた。
「皆……ありがと!……うん!私、アイドルをやりたい!」
「決まりだな。なら早速、その社長さんに話を通さないとか」
うたの気持ちがやりたい方に傾いたという事で次はその社長に話を通さないといけない。
幸いにもその社長さん曰く、今日の放課後にはうたの両親へと話をしに来るという事で。うたはこの日、特に寄り道をする事なく真っ直ぐに家へと帰宅した。
「ただいま!」
うたがお店であるグリッターの扉を開けるとそこには既にうたの両親である和と音が社長と向き合っており、そこに声をかける。
「あ、社長さんもう来てた!」
「おかえりなさい、うたさん。今、ご両親にも安心して頂けますように我が社について説明をしていたんですよ」
和や音は丁度社長からの説明を受けている所であり、社長が経営する事務所が大丈夫な場所である事を伝えようとしている所だった。
社長としてはうたからの良い返事がまだ貰えてないためにまずは外堀を埋める形……つまり、うたに近い人間を落とそうとしていたのである。
ただ、これに関しては結果的に必要無い事ではあった。何しろ、うた自身はこの社長の話を受けるつもりだったのだから。
「え、えーっと。社長さん?お話はわかりましたけど、まずはうたの気持ちですから」
「うたのやりたい事を決めるのはうた自身ですからね。僕達が無理に言うのは……」
和も音もうたの意見を聞かずに自分達だけで勝手に話を進めてしまうというのは良くない事だとわかっていた。そのため、どれだけ社長から話をされたとしてもうたが拒否したらその気持ちを尊重するつもりである。
「……お父さん、お母さん。私ね、アイドルやりたい!」
「「うた……」」
「おぉ!」
すると、そんなやり取りをするうたの両親と社長の所にうた本人がアイドルについてやりたい意思を示す。それを聞いて両親の中に心配の気持ちがあるのか、少し顔つきは不安そうだった。
一方の社長の方はうたがアイドルをやりたいと言ってくれたからか、嬉しそうにする。
「歌って踊って、沢山の人をキラッキランランにする。好きな事が見つかりそうなんだ!」
うたの瞳には未来に向けた希望が宿っており、それが今の彼女を突き動かす力になっていた。そして、彼女がそれだけ強い気持ちを持っているのなら和も音も今までの彼女を見てきた影響もあって反対する理由が無いわけで。
「うた……。そう、うたが決めたのなら応援するわ」
「頑張れよ、うた!」
「ありがとう!お父さん、お母さん!」
うたは両親にアイドルを目指す事を認められて嬉しそうな声を上げる。そして、彼女が持っていた通学用鞄と一緒になっているポシェットに入っていたプリルンとメロロンも目立って動く事はしなかったが嬉しそうだった。
「素晴らしい!この私が必ずやうたさんをトップアイドルにしてみせます!」
「どうぞよろしく……」
社長もうたのやる気に心を打たれたのか、嬉しそうな様子を見せつつ席から立ち上がる。うたもこれからお世話になる社長のためを想ってか。いつものようにアドリブでの歌を歌おうとした。
「NO!NO!NO!」
「えっ!?」
しかし、その瞬間。突如として社長は歌を歌い出したうたの行動を否定すると両腕でバッテンを作ってしまう。うたは社長の地雷を踏んでしまったのかと自分の行動を思い出すが、特に悪い事は何もしていないはずと考える。
「えっと、私……ただ歌っただけで……」
「それがダメなんですよ!」
「歌うのが……ダメ?」
うたは社長から歌うのをダメと言われてキョトンとしてしまう。すると、彼がその理由を説明し始めた。
「良いですか?これからうたさんはプロになるんですよ?LIVEにボイストレーニング。喉を沢山使うのですから、普段はなるべく休ませなければなりません」
「喉を……休ませる」
うたは喉を休ませるべきと言われて唖然としながらもその言葉を繰り返す。ただ、社長の言う事も間違っているわけでは無い。
「来るべき時が来るまで、その喉を潰すわけにはいきません。大声を出す事、歌ったりする事。それら全て禁止です!」
「……えっ?」
声優もそうだが、アイドルという職業も声が出せない状況に陥ってしまうと仕事として成り立たないわけで。そのため、普段は極力無駄な声を出さないという彼のやり方は当然と言えば当然の物なのかもしれない。
「ちょっと失礼しますよ?」
「は、はい……」
その瞬間、社長はどこから持ってきたのか。大量の加湿器をグリッターのカウンター席に並べるとうた自身にはマスクをさせて喉の消費を完全予防する事に。この様子にうたは唖然とした様子を浮かべる。
「ふぅ、これで良し」
「何だか大変な事になりそうな予感メロ」
「ぷ、プリ……」
その日の夜、黒霧家では影人が改めてネットで調べ物をしており、そこに夢乃も入ってくる。
「お兄ちゃん、入るよ」
「ああ、良いよ」
それから夢乃が影人の隣に座るとスマホを覗き込む。そこにはUtaKotoneのKotoneの記事が載っていた。
「………」
「それ、Kotoneさん……ううん。スラッシューの?」
「ああ。事情は前々から調べてはいたけどさ。こうしてみるとスラッシューも辛い思いをしながらここまで生きてきたんだよな」
「……うん。多分だけど、幸せの1番高い所と不幸のどん底の落差は他の誰よりも大きいと思う」
KotoneはUtakoとコンビを組んでいた頃は世間の誰もが注目するトップアイドルだった。……しかし彼女はコンビで無くなって以降、急激に出番を減らすとKotoneの行方不明を持って完全に姿を消してしまう事に。
「ッ……Kotoneさんの気持ちに寄り添う方法。何か無いのかな」
「厳しいな。何度か説得してみたけど……全然効いてないというか。そもそも説得に乗ってくれないというか」
ここまで影人はアイドルプリキュアとしてスラッシューとしてのKotoneを説得しようとしてきた。しかし、それらはどれも良い結果とは言えず。最後はダークイーネに連れ去られる形に落ち着いてしまっている。
「多分だけど、Kotoneさんの気持ちを完全に理解しようと思ったら……それこそUtakoさんにどうにかしてもらうしか無い」
「えっ、でもUtakoさんって……」
夢乃はUtakoに関してはいきなり行方不明になって以降消息を絶ってしまっている事からもう彼女は生きていないと思っていた。ただ、影人は夢乃にある事を話す。
「実はUtakoさんのいる場所を俺達は知ってるんだ。まぁ、そこからこっちに連れてくるのが難しい状態なんだけどな」
「嘘、お兄ちゃん達いつの間に……」
夢乃はアイアイ島に行っていないのもあっていつの間にかUtakoの居場所を掴んでいた影人の言葉に唖然とする。
ただ、Utakoを連れてきたとしても状況をどうにかできるかと言われたらどうしても首を傾げざるを得ないのが現状であるが。
「でも、俺達は説得を続けないといけない。Kotoneさんだって本当はこんな事望んでないはずだ」
影人は何があってもKotoneを助け出す。Utakoと約束した以上はそれを守るために尽力する事を改めて誓うのだった。
また次回もお楽しみに。