キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
うたが影人達に背中を押される形でアイドルを目指すと宣言した翌日。影人達と学校に登校するうたを見た影人達は唖然としていた。
「う、う、うた先輩!?そのマスクどうしたんですか!?」
「まさか、うたちゃんが風邪を……」
「そうじゃなくてね……えっと」
うたは前日に社長から言われた通りにマスク姿で登校しており、その姿を見た影人達はまさかのうたが風邪を引いたと推測。ただ、うたは風邪をひいたわけでは無く……それを否定すると補足説明した。
「なるほど、喉を酷使しないようにするためのか」
「確かに、いつものうた先輩と比べてかなり大人しいですもんね」
影人達はうたの事情を把握すると彼女が何故マスクをしているのか。そして、妙に彼女のテンションが低い事もそれなら説明が付くと納得できた。
「ひとまず、マスクをしているのは良いとして」
「社長さんの言う事も理解はできますけど……」
「うん。うたちゃんはそれで良いの?」
影人、なな、こころの3人はマスクをする理由その物に納得こそできるものの……そこにうたの意思が無いと考えて心配そうにする。そして、肝心のうたとしては不本意そうながらもこの状況を受け入れてはいた。
「うん……不安ではあるけど、咲良うたとしてアイドルをやるって決めたんだもん。社長さんの言う通りにするよ!」
「うーん、確かにその意気込みは良いと思うんだけどな……」
すると、マスクをする事の義務化と勝手に歌を歌う事ができないという事態を受け止めて意気込むうた。しかし、それを見ていた影人は別の意味で心配しているようである。
「にゃ〜お」
「あ、猫さん可愛いプリ!」
その瞬間、近くの家の塀の上に茶トラ模様の猫が伸びをしているのを発見したプリルン。彼女がその声を上げるとうたもすかさず反応した。
「本当だ!子猫しましま可愛い〜♪」
「あ、咲良今歌ったら……」
うたが条件反射とばかりに歌い始めてしまうと影人がつい数分前のうたの発言を思い出して慌てて止めようとするが、それよりも早く影人達のすぐ近くに両腕をバッテンにクロスさせた社長が姿を現す。
「NO〜!」
「「「「うわあっ!?」」」」
しかも、何故か社長は赤い車に乗った状態で影人達の歩く歩道の所にまで来ていたのでつい数秒前までいなかったのにその場所へといきなり出てきた形となる。
そんな事もあって影人、うた、なな、こころが驚いてしまう中、社長は更にうたへと詰め寄りつつ指摘を入れる。
「歌はNOですよ、うたさん!」
「社長さん!?」
「この人が例の社長さんか……」
影人は初めて会った社長の姿を確認するとその間に彼はうたへの指摘を続ける。
「やはりビューティフルな歌声、素晴らしいですよ?……しかぁし!歌は
NO!ですよ?」
「あの、社長さん」
「む、君は……」
「咲良さんの友達です」
うたへと歌う事を改めて禁じる社長へと影人は疑問を感じたのか、折角ならそれを聞いておくべきだと問いかけた。
「うたさんの友達ですか。それで何の話ですか?」
「えっと、歌を禁止って言いましたけど。流石に学校の授業の歌は良いですよね?」
「まぁ、そのくらいならOKとしましょう。授業は大事ですからね。……ただし、それ以外の場面での歌は許しませんよ?」
影人の機転で一応音楽の授業等、必要不可欠な場面での声出し程度は許してもらえる事になった。流石にそうしないと音楽の授業で歌えないなんて成績を貰う上で致命的過ぎるからである。
「配慮、ありがとうございます」
「いえいえ。それではそろそろ失礼しますね?改めて、うたさん。今は我慢してください」
「は、はい……」
うたは申し訳なさそうな様子で頭を下げると社長は秘書と思われる人物に運転してもらう形でその場を去っていった。
「影人君、ありがと……」
「いや、でもあくまで今のは必要最低限を保証してもらっただけだしな」
「それに、普段から嬉しかった事とかをアドリブで歌にしちゃううたちゃんにとって……」
「はい。今の状態って結構辛いと思いますよ?」
うたは今現在、普段何気なくやってるアドリブで歌う歌を全面禁止されている状況で。ちょっとでも油断して歌えば今みたいに社長が話しかけてくるかもしれないのだ。そう考えると割と由々しい事態である。
「ど、どうにか抑えられるように頑張ってみる」
「抑えられる物なら良いんだけどな……」
うたはこれ以上社長に言われないように我慢する事を第一に考えようとするが、影人はそんなうたに不安そうな様子だった。そもそも人間の癖というのは他人から言われてすぐにどうにかできる物では無い。
特にうたのアドリブの歌なんてその場でうたが感じ取った気持ちに呼応して脳内に浮かんできた歌詞を歌うという条件反射に近い物なので、気持ちが高まったらもう止めようが無いのである。
それを意識的に抑えるのをうたができるのかという点において影人は心配していた。
「ひとまずレイにもこの事は言っておくか。今回みたいに何も知らない状態でいきなり社長さんがツッコミに来たらビックリするだろ」
「え?でも毎回のようにツッコミに来るなんてあるのでしょうか?」
「……何となくだけど俺はそんな気がする」
「えぇ……」
影人は完全に勘ではあったが、あの社長はうたが何かをやる度に指摘をするために来そうだと予想。そのため、ひとまずうたがアウト行為をしたら必ず来る前提で動くべきだと話す事になる。
それはさておき、この日の夕方。うたははなみちタウンの商店街に来ており、そんな彼女の元に1人の少女が近づいてきた。
「あ、うた先輩!」
「えっ、夢乃ちゃん!?何で……」
「私も丁度食料品の買い出しですよ」
どうやらこの日、偶々黒霧家での買い出し担当は夢乃だったらしく。彼女がうたを見つけたために声をかけてきたのだ。
「あ、でも確か偶に会ってたよね」
「はい!それとうた先輩、スカウトされたんですって?」
「うん!確か夢乃ちゃんもだよね」
「そうなんです!それにしても事務所からスカウトされるなんて……やっぱりうた先輩の歌は凄かったって事ですよね!」
うたと夢乃は2人とも事務所の方から直接スカウトが入った者同士。会話が弾んでおり、その中でうたの声が不自然に小さい事に夢乃は勘づく。
「あれ?そう言えば、うた先輩ってそんなに静かでしたっけ?」
「えっ?し、静か?」
「はい。いつもならもっと大きな声で話してるかな〜って」
「あはは……やっぱりそう思っちゃうかな……」
うたは苦笑いしつつどうにか歌ったり大声を出せないのを誤魔化そうとする。ただし、夢乃は既に影人の方からうたが今大声を出せない事自体は聞いており。マスクについての指摘を最初にしなかったのもそういう理由だ。
「(なるほど、確かにお兄ちゃんの言う通り。うた先輩は今大きな声とかを出せないのか。……でもうた先輩、風邪とは違って出そうと思ったら出せる状態なだけにやりづらそう)」
「あ、ほら。お店が見えてきたよ」
「はい!」
夢乃はうたの事を気の毒に思いつつもプロを目指すためなら仕方のない事だと考えて切り替える。それから2人で喉を酷使しない程度の普通の会話をしつつ買い物をする事に。そして、買い物の終わり際。八百屋のおばちゃんから話しかけられた。
「2人共。お使い、ご苦労様。これ、サービスしておくよ!」
「「わぁ……」」
どうやら、2人が家の手伝いでお使いに来ていたという事もあってみかんを一つずつサービスされる事に。すると、うたは嬉しさが頂点に達したのか……。
「みかん美味しいぞありがと〜♪」
「あっ……」
「NO〜!!」
いつもの如く普通に歌ってしまうとまたもや社長からの指摘を受けてしまう。夢乃もそれに気がつきこそしたが、止める事はできずと言った所で。
「うえっ!?」
「歌はNO!」
「この人が例の社長さん……中々癖が強そうだなぁ……」
夢乃が唖然とした様子で社長を見ていると彼はうたへと再度念押しする形で指摘を入れた。
「うたさん、あなたの歌はいつか……世界中のハートを照らし出す。だから……時が来るまでは大切に喉を守っていてほしいのです」
「……は、はい」
社長の言う事に完全にタジタジな様子のうた。それを見た夢乃は自分にはどうしようもできない問題だとわかっていたが、今のままでは不味いという直感がしていた。
「(うた先輩……将来のためとはいえ、歌を徹底的に封印されるなんて……。でも、こんなに我慢してたら。きっと、どこかで暴発しちゃうかもしれない)」
夢乃はそう考えているとうたは社長に言われて辛そうにしつつも自分がアイドルになるためだと言い聞かせるかのようにどうにか気持ちを抑えるのだった。
場面が変わり、更に数日後の昼休み。そこにいつものご飯を食べる場所に影人達が揃っていたのだが……。
「NO〜……歌はNO……NO……」
「まさかここまでの事態になるとはな」
そこにはまたデフォルメで魂が抜けた状態のうたが座り込んでおり……今回は小さな魂が幾つも幾つもうたから排出されているようだった。
「うた、大丈夫プリ?」
「やつれましたね……」
「これは何回社長さんにNOされたんだ?」
うたは社長からのNO宣告を受け過ぎて完全にダウンしてしまっており……。相当精神的なダメージが溜まっているようだった。
「おーい、咲良さん。返事できるか?」
「NO……NO……」
「ダメだこれ。完全に屍になってる」
うたの姿はデフォルメとはいえ、体から半分色が抜けてしまっており……このままではいつ倒れてしまってもおかしく無い程だった。
「そんなに辛いなら今すぐ歌えば良いのメロ」
「いけません……うたはNO……」
社長に歌を抑制され続けた結果、社長の言葉はうたの口癖になってしまう程で。最早一種の洗脳教育を受けてしまったような状態なのだろう。
「これがあの社長の洗脳教育……もう考え方が社長さんのそれだよ。その内脳がやられ過ぎてどこかの自称神の社長みたくゲームオーバーしたりしないよな?」
「そんな事になったら咲良さんはコンテニューできないけどな?」
「影人、レイ。何を言ってるプリ?」
「「何でもねーよ」」
一応補足しておくと、その自称神には回数制限付きのコンテニューがあるのでライフが続く限りは復活ができる。ただ、うたにはそんなゲームみたいな能力は無いのでどうしようもできない。
「こころちゃん!」
「あっ、みこと先輩!」
「坂上さんに新橋さんも」
すると、そんな影人達の元に影人達2年組のクラスメイトである東中、坂上、新橋の女子トリオがやってくると真剣な顔つきで影人達へとある話を持ち込むのだった。
〜おまけ茶番 否定され過ぎた結果〜
うたが完全に魂が抜け切る前。この日の朝は珍しくうた、なな、レイのトリオで登校していた。
「うぅ……社長さんからNOを受け過ぎて……このままじゃ……」
「ま、まぁあれだけ否定されたら落ち込んじゃうよね」
ここまででうたは思わず歌うを繰り返した結果、社長からNOされまくって脳内にその言葉が刷り込まれている。しかも、その際に“歌はNO!”と言われているためにこじつけではあるが……“うたはNO!”と。うた自身を否定されているようにも感じてしまうのだ。
「多分言い回し的に“うたはNO”みたいに咲良さん本人が否定されてるように聞こえちゃうのもダメージが大きい理由なんだろうな」
「NO……NO……このままじゃダメだよね……。あはは……」
すると、レイがうたの方を向くと黒い姿をした小さめなサイズの妖精のような存在がうたの周囲に多数いるのが見えてしまう。
「ダメ……」
「ダメダメ!」
「ダメダメ!」
「へ……?ダメダメ?」
レイは慌てて目を擦るとその“ダメダメ”という存在はいなくなっており。彼は唖然とする。
「なぁ、なな。そこに今ダメダメって鳴く妖精っぽいのいなかったか?」
「え?そうかな……?」
「プリルン、そんなの見えないプリ」
「メロロンも見えてないのメロ」
どうやらななやうたの鞄の所にいるプリルンやメロロンもそのダメダメと鳴く妖精には気がついてない様子であり……レイは余計に首を傾げていた。
「おいおい、俺も幻覚を見るようになったか?」
「うーん。あ、ほら。ここにあと1人来てくれたら……」
「先輩方ー!おはようございます!」
「こころも来たか」
そこにこころも合流。するとレイの耳に先程聞こえた“ダメダメ”と鳴く妖精の声が多数聞こえてくる。
『ダメダメ〜ッ!』
「また聞こえてきたんだが!?おい、本当にいないんだよな!?」
「レイ先輩、いきなりどうしたんですか」
「何だかさっきから変な声が聞こえるって言ってるプリ」
レイがまたツッコミを入れる中でこころが状況を理解すると彼女はピンと来たようで。
「あーなるほど、レイ先輩。それはきっとラスボスをやらせてもらえる予兆だと思いますよ?何の映画かまでは言いませんが……」
「ラスボスって何だよ!?というか、俺は映画には出ないんだが!?」
「いやいや、十分ラスボスの声やれますよ先輩。ほら、ただの石をキラキラと明るい石に変える能力持ちの人間になれる妖精が自分の守りたい少女のために不思議な庭を……」
「こころストップ!それ以上言うな!ガチで色々アウト案件だから!?」
レイはどうにか翌年のプリキュア映画のラスボスのイメージを刷り込もうとするこころを止めているとななは苦笑い。
「お前ら良いのか?そんな事したら自分らに帰ってくるぞ!?」
「何を言ってるのメロ……?メロロン達、翌年の映画は次のプリキュアがメインだけど、メロロン達にもちゃんと出番があるのメロ」
「プリ!プリルン、もう一回映画に出たいプリ!」
すると、プリルンやメロロンはやる気満々な様子でレイは説得が不可能だと考える。
「ダメだコイツら、客演とはいえ映画に出る気満々だわ!?」
「レイ君、完全にブレーキ役をしようと頑張ってるね。こういう時は影人君だけど……何でまだ来ないのかな?」
ななは何故かこの騒動になっても入ってこない影人の事を気にしていたが、一方でその影人はというと……。
「な、何故だ……レイ達が目の前にいるのに……ここに謎の壁が……。ま、まさかこれがテレビの敵キャラが映画に入れないという謎の越えられない壁なのか!?」
どうやら何故かいきなり現れた謎の空間の壁に阻まれてこのやり取りに入る事ができず。同時に影人(の中の人)は来年のプリキュア映画への出演を逃してしまうのだった。
今回はここまでです。
一応補足しますが、最後のおまけ茶番は本編とは何の関係も無いただのネタです。ちなみに、何故レイがこの茶番に参加できて影人が参加できなかったかはもうあの映画を観た皆さんならわかると思いますので敢えて言及はしません。
それではまた次回も楽しみにしてください。