キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
キュアソウルから変身解除した影人。そして、それに合わせて変身解除したうた達。
「皆、俺のせいで色々と迷惑をかけて本当にごめん。こころにアイドルプリキュアがバレた件も、それで気持ちが荒れた件も、……それにブレイクとして洗脳された件も」
影人の声色は今にも重い責任感に押し潰されてしまいそうだった。今回の事件の大半の原因は自分にある。
「それとプリルン」
「プリ?」
「……あの時プリルンに当たってごめんなさい。プリルンが悪いって言う以前に自分の事を全く見れてなかった。人の事言えない状態なのにプリルンに当たり散らしてしまった」
「プリ!?影人は悪く無いプリ……こころを誘ったのはプリルンが」
影人の顔は俯いていた。その気持ちは今にも張り裂けそうで、自分のやらかした失敗の数を鑑みればうた達は自分の事を友達として見なくなってしまう。
影人にはそれが耐えられなかった。……少し前の影人であるのならきっと今日この場面で仮に友達がいなくなったとしても最悪気にしていなかったのかもしれない。そう考えるとやはりうた達との出会いは確実に影人を変えていた。
「俺は……もう咲良さん達の前に顔を見せて良いような状態じゃ無い。勿論、夢乃にも散々迷惑かけた。友達でいるのはもう……」
影人がそう言いかけて口籠もる。自分はまた取り返しのつかない発言をしようとしているのでは無いのか。その気持ちが浮かんできたのだ。それでも、彼は言わないといけない。だが、口は動いてくれなかった。
「そんな顔じゃダメなんだよ〜♪心も泣いちゃうよ〜♪カゲ君♪笑顔♪皆許してるから〜♪」
そんな風に歌ったのはこころだった。うたはそんなこころを見て歌を取られたとガーンとなったが、こころは影人の前に出ると真剣な瞳で真っ直ぐ見つめる。
「カゲ先輩。ちょっと気にしすぎですよ。それで私達がカゲ先輩の元を離れる〜だとか思ってませんか?」
「でも、実際にそれをされても文句なんて……」
「……カゲ先輩、そんな事をあまり言い続けるなら本当に嫌いになりますよ?」
影人は目を見開くと顔を上げた。……ようやく彼はこころや他の面々の目線に気づくとその場にいた全員が影人の事をちゃんと見ていたのだ。
「あ……あぁ……」
影人は崩れ落ちるとそのまま泣き始める。影人はこころの一件からここまでずっと凄まじい量の負の感情を溜め込んできた。それは今にも暴発しそうだったが、ようやくそれを吐き出せるだけの場所に吐き出せたのだ。
「カゲ先輩、泣くのは良いですよ。ただ、ずっとそんな顔は禁止です。……私達皆、カゲ先輩の笑顔を待ってるんですから」
それから影人は流れていた涙を拭くと立ち上がってその場にいる一人一人の大切な友達の顔を見ていくと笑顔を作った。その顔は無理矢理作った引き笑いに近く、口角を無理矢理上げているせいでプルプルと震えている。ただ、今はこうでもしないとまた自分のせいにしてしまいそうだった。
「……ぷっ。あははっ!」
「レイ君!?」
「影人君の気持ちを……」
「……いや、もう大丈夫だろ。それはそうとお前引き笑い本当に下手だな。口角震えてるぞ?」
「う、煩せぇ。俺だって必死に笑顔になってんだよ……」
「はいはい。……改めてお帰り。アイドルプリキュア・黒霧影人」
レイが影人の前に拳を出すと影人は拳を突き合わせる。その光景にもう影人は大丈夫になったのだとうたやななも感じた。
「プリ、プリルンは……」
「いや、もうこの話は終わりにしようか。お互いに責任感じてるって事でもう区切り。今度から気をつけよう」
「プリ!」
プリルンが頷くと影人の頭の上に抱きつく形で乗った。そんなプリルンを見て影人はプリルンが自分を怖がるような事態にならずに安心した形である。
「……そう言えば、前々から影人君の輝きって別の方向性って言われてたけど」
「あっ、それにブローチも田中さんがプリルンがこころに渡した分で最後って言ったよね」
「あー、アレは俺が洗脳されてブレイクに乗っ取られた時に使ってたやつだな。こころは見たと思うけど、俺がキュンキュンのライブ技を受けて元に戻った時に一緒に変わってた」
「でもそれと影人君の輝きの話って繋がるのかな?」
「……影人の持ってる力は多分こうだと思うよ」
するとレイが既に理解していた影人の持っている輝きについての詳細な説明を始めた。
「影人の力は、他の人の輝きを受けてそれを喰らう事で完成するって言えば良いのかな」
「「「「輝きを……喰らう?」」」」
「わけがわからないプリ」
「平たく言ったら周りが輝いて、それを凌駕する形で自分の輝きを出している感じ。近くに眩い光があったらその強い輝きを超えて自分を主張しようと輝きを放つんだ。だから自分一人で輝く咲良さん達と違って、悪く言えば周り頼みとも取れる」
思えば、影人が輝いているタイミングはほぼ毎回周りにそれだけ輝く人間がいた。
「あっ、そう言えばブレイクが使っていた技の中に私の攻撃を吸収する物がありましたね」
「さっきのバリアによる吸収もそうだったしね」
「……なるほど、それが俺の力って事か」
影人は少し考え込む。確かに今の力は十分強力だとは思っている。ただ、それは逆に言えばあくまで周りの光を頼っているだけだと。
「俺は他人の力が無いと輝けないのか」
「それでもさ。私は凄いと思うよ」
「咲良さん……」
「だってそれは影人君の立派な個性だし、キラッキランラン〜って感じだよ」
その言葉を聞いて影人は納得したように口に微笑を浮かべる。すると彼等の近くで倒れていた夢乃の顔が少し動くのが見えた。
「う、うーん……」
「ッ!夢乃!大丈夫か!?」
影人が夢乃に近寄ると彼女の上半身を抱き起こす。夢乃は薄らと目を開けるとボーッとした意識だったが、彼女はいなくなって心配していた兄である影人を見て目を見開く。
「お兄ちゃん……本物、だよね?」
「ああ。夢乃、無事でよかっ……」
その瞬間、夢乃は影人へと飛びつくとそのまま押し倒した。影人が夢乃に抗議しようとすると彼女は目を涙を浮かべているのが見える。
「何が無事で良かったなの……心配してたのはこっちだよ?私、お兄ちゃんが何も言わずに急にいなくなったから……。怖かったんだよ?せめて何か言ってよ……。私、不安で不安で仕方なかった。……うわぁああっ!」
夢乃は影人の胸に顔を埋めると泣きじゃくる。影人は夢乃にもこんなに心配をかけてしまっていたという事実に申し訳なさが浮かんでいた。
「そうか。……ごめんな、夢乃。何も言わずにいなくなって……。もう勝手にいなくなる事はしない」
「ホント……?約束して……いなくなるにしてもちゃんと言ってからいなくなるって」
夢乃が影人へと涙でぐちゃぐちゃになった瞳を影人へと向ける。そのハイライトのキラキラは黒から再び白に戻りつつあったが、未だに不安なのかまだ不完全だった。
「わかった。……指切りした上で約束だ」
それから影人が夢乃への謝罪も終わらせるとそれを受けた夢乃は立ち上がるとうた達の方を向く。
「あの、先輩方。……兄を助けていただき、ありがとうございました」
「え?」
「……何となくですけど、兄を助けてくださったのは先輩方ですよね?なので、お礼ぐらい言わせてください」
「そんな、気にしなくて良いのに」
「私は気にするんです。……その、兄がこれからも迷惑をかけるかもしれませんが……真面目で大切な私の自慢の兄です。……兄の事をよろしくお願いします」
夢乃はペコリと頭を下げる。兄の友人の前でここまでやるというのは夢乃も大概兄と同じ真面目な少女という事だろう。そして彼女のハイライトの色はちゃんとこの時点で白に戻っていた。
「それでは、これ以上は邪魔になるので失礼します」
「えっ、夢乃ちゃんも来れば良いのに……」
「いえ、兄はまだやることがありそうなので」
それからチラッとこころの方を向いた夢乃。それから彼女は一人背中を向けて去っていく事になる。
「夢乃ちゃん、本当に影人君の妹なんだね……」
「ああ、俺の自慢の妹だよ」
するとレイがパンパンと手を叩くと一同へと呼びかけた。あまり大人数で長々とここにいるのもダメだと思ったからである。
「はいはい、無事に影人も夢乃ちゃんも救えたし。これでもう一安心だな。……じゃあ咲良さん、蒼風さん、プリルン、俺達は行こうか」
「えっ!?何で私達だけ!?」
「プリルンもプリ?」
「……グリッターで駄弁っている最中なら兎も角、街中でこれ以上大人数でここにいるのも勿体無い。……済ませないといけない事もあるしな」
「えー?だったら皆で移動しようよ。影人君とこころも一緒に行くべきでしょ」
「……うたちゃん、その……。そっとしてあげよ?」
ななもレイの意図を察したのかそう言ってうたの肩を押す形でそのまま二人揃ってその場からいなくなる。そんな風にうた、なな、レイ、プリルンがいなくなって取り残された影人とこころ。
「……こころ」
「はい?」
「二人でこの後行きたい場所がある。付き合ってくれる?」
「……わかりました」
影人はうた達がいなくなったのを見てから二人で移動すると“はなみちタウン”の高台にやってきた。そこに着くと影人は未だに咲いているハートの木を見てそれが気になるが、それとは別の用事のために一旦頭から忘れる。
「それで、私をここに連れてきて何の話ですか?」
「……こころ。俺はこころの事が好きだ」
「ッ……それってどういう意味でですか?」
こころは頬が赤くなると影人へと聞き返す。一口に好きと言ってもその種類は色々あるからである。
「その……異性として」
「ッ!?か、カゲ先輩。それって本当ですか」
「じゃなかったら皆の前で言ってる」
こころがふと影人の方を向くと彼も顔が赤くなっているのが見えた。こころは自分が本気で好かれていると自覚すると恥ずかしさで更に顔が熱くなるのを感じる。
「そ、そうですか……」
「こころは……どう思ってるんだ?」
影人はこころの気持ちへと踏み込んだ。自分がこうやってちゃんと告白した以上、遅かれ早かれ返事は欲しかった。そのために恥ずかしさもありながら彼女へと問いかける。
「私は……カゲ先輩が……い、異性として……その……す……き……です」
こころも恥ずかしさを押し殺すようにしてそう細々と言う。ただ、影人はちゃんと彼女の言葉を聞いて受け止めていた。
「そっか」
「……でも、私はまだカゲ先輩とはお付き合いできないって思ってます」
こころは顔を赤くしながらも申し訳なさそうな顔つきで影人を見る。そんな彼女の瞳には迷いが見えた。
「……私は先輩が好きで、大好きで……。アイドルプリキュアになれた今なら胸を張って言えるかなって思ったんですけど、やっぱり先輩は凄いです。追いついたと思ったのに、またすぐに引き離されてしまいました」
こころが言っているのはキュアソウルの話だろう。こころの中では変身前の影人とキュンキュンの力が互角ぐらいだと思っているようで、影人がキュアソウルになった影響で自分はまだ相応しく無いと思ってしまったのだ。
「俺は気にして無いよ。……こころにはこころの魅力があるし。俺はどんなこころも受け止めるって約束する」
「それでも、私は納得できないんです。私はアイドルプリキュアとしても、先輩の隣に立つ人間としてもまだまだで……」
すると影人はそんな風に自分を責めるこころを見て見ていられないと思ったのかこころの言葉を遮るように話した。
「だったら、俺もこころとお付き合いする資格は無い」
「えっ!?……そんな、先輩は何も悪くなんか……」
「俺はあれだけ自分を慕ってくれたこころの気持ちを全然理解してなかった。……大好きな人なのに、こころが苦しんでいる間、俺はこころに何もできなかった」
「……そんな事ありません。足りないのは私の方で先輩は……」
「だからさ、こころ。……俺達はちゃんと相手と向き合う必要がある。こころは俺に追いつくため、俺はこころの気持ちや考えを理解するため。……改めて言わせて。こころ、俺はこころの事が好きだ。もし、こころが自分の力が足りないって感じる以外に嫌な理由が無いのなら……俺とお付き合いしてください」
そう言って影人はこころへと手を差し出すとこころはポンと顔が真っ赤になる。そしてこころは影人の手を取るべきか迷った。今の自分なんかに影人と付き合う資格なんて無い。その気持ちがどうしても邪魔して素直な気持ちが出ないのだ。
「……スーッ……ふぅ……。わかりました。私もカゲ先輩の事が好きです。……私、先輩の隣に並んでも大丈夫と思えるまで沢山頑張りますから」
こころは深呼吸をするとこの期に及んで自分の気持ちに蓋をしても辛いだけと判断。彼女は影人からの言葉を受け入れた。そして、こころは影人の手を取るとその瞬間、影人の懐に入ってすかさず背伸びして影人の頬にキスをした。
「……先輩、これが私の初めてです。初めてを私から取ったんですからちゃんと責任を持って最後まで面倒を見てくださいよ」
「……ああ」
こうして、影人とこころはお互いが承認した上でお付き合いする事になった。それから影人はこころを抱き寄せると今度は影人が僅かにしゃがんでこころのおでこ辺りの髪を退かして優しくキスをする。そんな二人はハートの木の前でこの行為をしているだけあってハートの木が二人を結んだような、そんな風に見えるのであった。
はい、と言うわけで影人とこころがお付き合いする事になりました。……作品的には約50話行かないくらい投稿しているものの、まだこれでアニメ7話分しか経ってないので稀に見ないほどのスピードお付き合いになってますね。……その辺りは私自身もよくわかっているのでそこはご容赦を。
まぁその分ここからは二人のお付き合い光景も描けるのでその辺りを楽しみにしてください。次回からはまた本編に戻りますのでまた次回も楽しみにしてください。