キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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サバカレー作りと黒霧事変

影人達が荷物を置いてから暫くして。彼ら五人の姿は今現在街中にあった。これは今日の夜ご飯の買い出しをするためである。

 

「夕ご飯は私達でカレーを作ろう!」

 

「良いね!」

 

「はい!」

 

「まぁその方が楽しいか」

 

「お、珍しく影人が乗り気だね」

 

五人が雑談を話しながら歩く中、話題は今から作るカレーの事になる。切り出したのはこころだ。

 

「皆さんはどんなカレーが好きですか?」

 

「ポークカレー!」

 

「俺はシーフードかな」

 

「いやいや、ビーフカレーも捨てがたいだろ」

 

うたがポーク、影人がビーフ、レイがシーフードと次々と自分の好みのカレーを話していく。

 

「私はサバカレーかな」

 

「えっ!?サバって魚のですか!?」

 

「うん、美味しいよ」

 

「ああ、確かに食べた事があるがアレも美味しいな」

 

「でしょ?」

 

ななの好きなカレーはサバカレーと聞いてこころが驚く中、レイはサバカレーは前に食べた事があるらしい。そのため、その味を知っているようだった。するとななが何かに気付いたのか足を止めた。

 

「あれ?」

 

「「「「ん?」」」」

 

四人もななが足を止めたのを見て振り向くとなながある方向を見ていた。改めてその視線の先に目を移すとそこには手に持っていた風船を離してしまって泣いている少女がいる。

 

「ひぐっ……ぐすっ……」

 

そんな中、少女の前に伸びてくる手。そこにいたのは“はなみちタウン”のマスコットキャラである“はなみぃちゃん”であった。はなみぃちゃんは胴体に桜の花びらが描かれたリスのようなキャラクターであり、手には新しい風船がある。

 

「ふわぁあっ!」

 

少女がはなみぃちゃんから風船を受け取っており、その顔は先程までの悲しい物から一気に笑顔に変わっていた。

 

「はなみぃちゃん……」

 

「?お好きなんですか?」

 

「うん……。私も小さい頃に風船を貰って嬉しかったなぁ」

 

それはななにとって幼い頃の大切な思い出だったに違いないだろう。恐らく、その当時からずっとはなみぃちゃんが好きなキャラとしてななの中に根付いているぐらいには彼女にとって大切な思い出だ。

 

「ゔっ!?」

 

「こころ!?」

 

「なな先輩が可愛すぎて心キュンキュンしてます!」

 

「ふえっ!?」

 

こころの唐突なキュンキュン発言に困惑するなな。影人も顔を赤くしたこころを見て心を撃ち抜かれたのか、全員に気づかれないように胸を抑えていた。

 

「(ヤベェ、こころが可愛すぎて俺もキュンキュンするだろうが……)」

 

「影人……バレないようにやってるつもりなんだろうが、バレバレだからな?」

 

レイからの指摘が入り、一度その話題は終わりという事になると買い物を済ませる事に。それからグリッターに戻ったうた達は咲良家の居住区に移動すると五人でサバカレー作りを楽しむ事に。

 

「おお、良い匂いだな」

 

「サバカレーってこんな感じなんだね!」

 

「くぅう……」

 

するとこころが凄く何かを言いたそうな顔つきになるともう我慢し切れないのかある事を言い出した。

 

「こころ?」

 

「懐かしいなぁ……。昔の事で初めてのお使いをした時に冷蔵庫の中に無くなったにんじんを買いに行ったんですけど、その時も作ったのはカレーだったんです」

 

「って事は色々と思い出の料理なんだね」

 

「はい。……その後にカレーをお母さんが作って、家族で食べる時気づいたんです。ご飯は笑顔なんだなって……」

 

「……あれ?」

 

影人はそんな中、こころの話の雲行きが僅かに怪しくなるのを感じた。というより、その姿に別の姿が重なって見えたのである。

 

「食べたカレーの味はとても格別で……本当に、デリシャスマイルコメ〜って感じで……」

 

「待て待て待て待て待て!」

 

「どうかしましたか?」

 

こころが話を止めると影人は色々とツッコミを入れたそうな感じだった。ただ、こころは特に気にしてないのかキョトンとしている。

 

「あのな、こころ。それ別のキャラ混ざってない?」

 

「え?格別なカレーを食べてとても幸せ気分になっただけですけど、何かおかしいんですか?」

 

「ッ!?あれ……普通の話し方だ」

 

「おいおい影人、幻聴でも聞こえたんじゃないよな?」

 

レイが若干揶揄い気味にそう言う中、うたやななも影人の変な言葉に首を傾げている状態だった。どうやら影人だけがこころの話し方が違う風に聴こえたらしい。

 

「……な、なんかすまん」

 

影人は恥ずかしさで顔を赤くするとバツの悪そうに謝った。ただ、その時カレーの近くにはカレーの姿をした小さな妖精がフワフワと浮かんでいたのだが、それが影人達に見つかる前に幸せそうな顔で溶け込むようにカレーの中に消えたのは余談である。

 

「ピピピーッ!」

 

それからカレーライスとして準備をすると一同は食卓を囲む。この際、お泊まりメンバーの五人に加えてはもりもいる形だ。うたの両親はまた別でご飯を食べるそうだ。

 

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

 

六人が手を合わせて挨拶をすると早速サバカレーを口にする。その中にはサバカレーでのみ味わえるサバの風味が溶け込んだ美味しいカレーの味だった。

 

「美味ッ!?サバがカレーにめっちゃ合う!!」

 

「美味しすぎて心キュンキュンしてます!」

 

「ななちゃん、美味しいね!」

 

「うん!」

 

「………」

 

「影人、どうした?」

 

影人はサバカレーを食べながら胸の中にポカポカと温かい気持ちが湧き出るのを感じており、そんな彼の顔を見てレイが問いかける。

 

「ご飯ってこんなに美味しいんだな。……家族と食べる時とはまた違う温かみを感じる」

 

「おいおい影人、本当に急にどうした?」

 

すると影人は感動からか、無意識にポロポロと嬉し涙が溢れてきた。影人としては少し前までならこんな光景、想像すらできなかったのにこんなに幸せな気分を味わえる物なのか感傷に浸ると嬉しさが溢れているのだ。

 

「カゲ先輩!?」

 

「あはは、影人君。幸せ過ぎて泣いちゃってるし」

 

「べ、別に泣いてなんかねーよ……」

 

影人が慌てて涙を拭くと平然を装う。それから彼は慌てて話題を変える事にした。

 

「あ、そういえばこころとはもりが初対面って感じじゃ無さそうだが知り合いなのか?」

 

「うん!そうだよ。少し前まで小学校で頼れるしっかり者の先輩だったし、何度もお世話になったんだ〜!」

 

「はい!はもりちゃんの事は何度か小学校の時すれ違いましたし、学年を越えた交流会の時とかでお話しをする機会もあったので」

 

こころは数ヶ月前まで小学生であったというのもあってまだはもりの中に頼れるお姉さん先輩であるというイメージが根深い。今の夢乃のようなポジションにいたのだろう。

 

「……あれ?それなら咲良さんも知っててもおかしく無さそうなものだけど……」

 

それは確かにそうである。はもりの性格からしてそういう学校であったことはちゃんと家族に言いそうなものだ。なのに何故うたはそれを前提で話さなかったのだろうか。

 

「うっ……ちゃ、ちゃんと話は聞いてたよ?でも、どういう感じの雰囲気の子かまでは知らなかったし……何ならアイドルプリ……」

 

「「「うわあっ!」」」

 

うたはまたアイドルプリキュアの正体を知らない一般人であるはもりの前で隠し事を暴露しようとしたために影人、なな、こころが慌てて止める羽目になった。

 

「どうしたの?」

 

「何でも無いよ。……お姉ちゃんも色々と忙しかったからね」

 

はもりが首を傾げる中、レイが何とか最後のフォローを入れてその場は凌がれる事に。

 

「やれやれだな……」

 

影人はうたの正直さには本当に手が負えないと完全に呆れる事になる。その頃、鍋の中に入ったサバカレーのルーの方に近づく小さな影があったが影人達はうたに気を取られた影響で全く気が付かなかった。

 

それから少ししてうたが一杯目を食べ終わるとサバカレーがあまりにも美味しかったためにおかわりをする事に。

 

「サバカレーおかわり♪おー♪」

 

うたが上機嫌で歩きながらクルクル回転して鍋の方へと移動。そんな彼女を見た影人がまた呆れたような顔をする。

 

「咲良さん、上機嫌なのは良いけどまたあまりやらかすのは……ん?」

 

するとうたが歌を歌いながら上機嫌で調理場に行ったはずなのにいきなり歌も止まって声も聞こえなくなったのが気になったのか、影人がそちらの方向に行く。

 

「咲良さん?何をして……」

 

「か、か、影人君!?カレーが空っぽになってるの!!」

 

「はぁ?そんな馬鹿な事があるかよ。俺が全員分を盛った時、まだ鍋の中に半分ぐらいはあっただろ。食べ始めてからおかわりを誰もしてないから残っているのが当たり前……あれ?」

 

影人が鍋を覗いた瞬間、こちらも顔面が凍りつく。そこには半分近くあったはずのカレーが完全に空になっていたのだ。

 

「はあっ!?何で……」

 

影人がすぐに思考を巡らせると割と鍋のすぐ近くにこうなった元凶は座っていた。

 

「ゲフ……お腹いっぱいプリー!」

 

「まさかの!?」

 

「お〜い、プ〜リ〜ル〜ン?これはどういう事かな〜?」

 

影人の瞳から一瞬にしてハイライトが消えると食べ過ぎて膨れた腹が原因なのかその場に座り込んでいる物体へと笑顔を向ける。尚、こうなってもこの事件の元凶ことプリルンは幸せそうな顔をしていた。

 

「プリ?プリルンもカレーの研究プリ〜!」

 

「お〜ま〜え〜なぁ!?」

 

影人が怒り狂った状態でプリルンへと飛びかかろうとした瞬間に背後からレイが影人を羽交締めにすると抑え込む。

 

「まぁまぁ、影人抑えろ抑えろ」

 

「レイ、何故止める!コイツマジでやってるんだからな?学習能力ゼロか?お前は馬鹿なのか?ちゃんと言えば盛ってやるんだから無断で全部食うなよ!」

 

影人が激昂するもレイの力は影人と互角なのか中々影人は拘束を解けない。そんな影人達を見てはもりがまた首を傾げるとななとこころがノーマークになっていたはもりの方を優しくフォローしていた。

 

結局、怒っても食べたカレーは戻ってこないと影人は矛を収める事になる。

 

「取り敢えず片付けは俺がやるからお風呂に順番に入ってきなよ」

 

「えっ?カゲ先輩だけに片付けさせるなんてそんなの申し訳ないです!私も手伝います!」

 

「じゃあ私も……」

 

「はい、咲良さんはストップ。あそこは二人に任せてあげなよ」

 

「うえっ!?」

 

うたが流石に自分がやらないのはダメだと思って片付けをやろうとするが、レイが影人とこころの二人きりを第三者が邪魔するのは良く無いと判断して止めた。

 

「うーん、でもこのまま待つのは勿体無いし、今のうちにお風呂に入っちゃおうか」

 

「ななちゃん、はもりと一緒に入ろ!」

 

「良いよ。じゃあ入ろっか」

 

影人達が片付けしている間、時間を無駄にするのは勿体無いというわけで順番にお風呂に入る事に。

 

それから時間が経って風呂の順番が進む中、うたもなな、はもりの後に入り、今はこころが入っている。そして今はその待ち時間を使ってUNOをやる事になった。

 

「良〜し、UNO!あと一枚で上がりだよ!」

 

うたがそう言って上機嫌になる。ちなみにはもりは風呂の後に折角の同級生の友達が集まっている時間をあまり邪魔をし過ぎるのはダメだと両親に言われて引き取られた。

 

「くっ……このままじゃ先に上がられる」

 

ちなみに影人も残り三枚で数は少ない。ただ、順番と手札の内容的に順調に行けば先に上がるのはうただ。

 

「ごめんね、プリルン」

 

そんな中、うたの次に順番があるななが申し訳なさそうにドロー2を出す。勿論ドローするのは次に順番が来るプリルン……なのだが。

 

「プリ!そうはいかないプリ!」

 

「おっと、危ない危ない。持っててよかった」

 

プリルンとレイもドロー2を持っていたために爆弾が命中せずに回避に成功。順番的に次は影人でドロー2の連鎖で既にドロー枚数は6枚である。

 

「ッ!?」

 

「あ、影人君は流石に持っては……」

 

「済まないな。あるんだなこれが」

 

「……へ?」

 

うたはものの見事に自分以外の全員に嵌められる形でドロー8を喰らってしまう。

 

「嘘ぉ……。折角あと一枚だったのに〜!!」

 

その後、影人が一番に上がると丁度そのタイミングでお手洗いに行きたくなってしまう。

 

「咲良さん、ごめん。ちょっと長い方だけどお手洗い借りるね」

 

「あ、うん!場所は……」

 

それから影人がうたにお手洗いの場所を教わるとその場所に向かう。その帰り道。

 

「それにしても、やっぱり少し前の自分じゃ考えられないな……。女子の家に泊まりだなんて」

 

影人は未だにうたの家にお泊まり会ができるという事実を上手く受け止めきれていなかった。

 

「でも、気持ちの持ち方一つで世界はこんなにも変わるんだな」

 

影人は最初、うた達を受け入れられなかった。それまで出会ってきた他の人と同じように自分に冷たい目を向けてくるのだと。だから拒絶して蓋をして、壁を作った。だが、その壁の向こう側でもこころは、うた達は自分に寄り添おうとしてくれたのだ。

 

「……本当に、この街に来れて良かった」

 

影人がそう思いながらボーッとしつつ歩くと目の前の部屋の扉を開ける。その瞬間、その部屋の中の奥にある扉が開くと鼻歌と共に誰かが出てくるのが見えた。

 

「……は?」

 

「え?」

 

影人はその人物を見て凍りついてしまう。 そこにいたのは普段のツインテールでは無く、降ろされた紫の髪。その髪はお湯を浴びてしっとりと濡れていた。

 

体格は影人よりも小柄でまだ成長途中だったが、ダンスをしている影響で良い意味で程よい肉付きをした体。目の前に見える生脚はツルツルとしており、清潔感があった。そして何より、うた達よりも一回り小さめなサイズだが、二つの胸にある果実。それは成長途中であるためにまだまだそれだけですぐに下衆な視線を集めるような大きさは無いが、それでも今の現状では影人の目は一瞬そこに行ってしまう。

 

「あ……あぁ……」

 

ただ、影人はこの時硬直するのでは無くすぐにでも扉を閉めるべきだった。そうすれば今回のやらかしの言い訳もしやすかっただろう。何しろ、すぐに閉めたから“見ていない”の言い訳も苦しいが成立するからだ。

 

だが、影人は見てしまった。しかも数秒も。こうなるともう見ていないの言い訳は通用しない。目の前に生まれたままの姿で立ち尽くす彼女は顔を恥ずかしさで真っ赤に染めると思わず声を上げてしまった。

 

「い、い、いやぁあああっ!?」

 

結局影人はその後、お泊まり会のために来ていた全員のど真ん中で正座する事に。影人は申し訳なさで俯いており、目の前にいる被害者ことこころは膨れた顔をしつつそっぽを向いている。

 

「静粛に。これから、影人君がこころの風呂上がりを覗いてしまった事についての裁判を執り行います」

 

今回の裁判長として任されたのはうたである。そして、こころの隣には検察官のレイが、影人の隣には弁護士役としてなながいた。

 

「さてと。裁判長、ここにいる変態こと影人はトイレに行くと言って部屋を出てあろう事かこころの風呂上がりのタイミングで丁度その風呂の扉を開けるという暴挙に出ました。……何かしらの厳罰を求めます」

 

レイはそう言いつつ内心では今にも笑いそうなのを堪えていた。まさかあの影人がこんなことをやらかすなんて誰も思ってないからだろう。

 

「正直、影人君はこんな事しないと思ってたんだけどね……」

 

「こころの風呂上がりを見てしまったのは事実だ。……そこは反論の余地は無い」

 

「随分と素直な犯人だね、影人君」

 

うたがそう言うものの、やはり声色はいつもの明るい高音域の口調から影人への軽蔑が少し入った低音域がやや強めな口調に変わっている。

 

「プリ?うたってそんな声も出せたプリ?」

 

「あはは、意外と出そうと思ったら出せるみたい」

 

プリルン相手にはいつも通りの明るめな声を出すうただが、流石の彼女も今回の影人の行為は看過できないだろう。

 

「……カゲ先輩、本当に見たんですよね?」

 

「ああ、嘘を吐いて誤魔化すつもりは無い。……本当に申し訳なかった」

 

影人は言い訳なんて一切しなかった。実際の所、影人はお手洗いからの帰り道でボーッと歩いていた所、うたの部屋に着いたと思って扉を開けた瞬間にこころが何故かタイミング良く風呂から脱衣所に出てしまったのだ。

 

幾ら影人に悪気が無いとは言っても、その前の状況的にトイレに行くフリをして風呂にいるこころを覗こうとしたと言われても文句一つ言えない。

 

「……あの、裁判長」

 

「はい、弁護人?……のななちゃん!」

 

「この部屋から風呂まで普通に歩いて行ったとしてどんなにゆっくり歩いても三分もかからないよね?」

 

「え?まぁそうだね」

 

「影人君がお手洗いに行ってからこころ……ちゃんの悲鳴が聴こえるまでの間に少なくとも五分以上はかかってる。多分直接見に行くならこころちゃんはまだお風呂に入ってて上がってないはず……だよね?」

 

ななの言う事は最もだ。もし仮に影人が直接お手洗いに行くフリをして風呂に行って覗きをしようと画策したとしてもこころは上がった丁度のタイミングで見られたのでタッチの差ですれ違いになった可能性が高い。少なくとも、先にお風呂場に行けばこころはまだ入浴中で脱衣所の扉が開けられる音が浴槽のある風呂の中に聞こえるだけのはずだ。

 

「影人君がやっちゃダメな事をした事には変わらないけど、自分から意図的に覗いたわけでは無いと思うよ」

 

「なるほど……」

 

「だとしても俺が最低行為をしたのは変わらねぇ……。こころ、本当にごめんなさい」

 

影人はそう言って土下座をするような形でこころへと頭を下げる。レイはそんな彼を見て影人が心の底から謝っている事を感じ取った。彼は下手な言い訳を一切せずにこころから課せられるであろう罰を受けようとしている。

 

「……こころ。検察官の俺が弁護をするのは間違ってるけど、俺は影人を信じたい。こころにも見られて許せない気持ちはあると思う。でも、今の影人は打算とかそういうの抜きに本気で謝ってる。……どうにか今回だけでも許してやってくれないか?」

 

レイは本来なら検察官役として影人をイジるつもりだったが、今の影人は見ていられなかったのだろう。

 

「………カゲ先輩」

 

「はい」

 

「私はカゲ先輩がこんな時につまらない嘘を吐く人じゃ無いってわかってます。……冗談とか無しで本気で謝ってくれてるみたいですし、今回の事は水に流します。次から気をつけてください」

 

こころとしても風呂上がりを不意打ちに近い形で見られた事は許せないが、今の誠心誠意謝っている影人をこれ以上責めるのは嫌だったのだろう。

 

「ただ、罰が無いのはダメなので私が許す上での条件を付けます。……これから今回の件に関連して私への罪悪感を抱いたまま接する事を禁止とします。今まで通り、普段通りに話してください。こんな事で私はカゲ先輩と疎遠になんかなりたく無いので」

 

「……こころ、許してくれて……ありがと」

 

「いぇ……。これはカゲ先輩が相手だから付けた条件です。それ以外の男の人がやったら私だって許しませんから」

 

こころが影人から恥ずかしそうに頬を赤くしながらそう返す。何はともあれ、影人は許される事になるとお泊まり会はまた明るい雰囲気を取り戻すのであった。




また次回もお楽しみに。
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