キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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父親の温もり 影人の温もり

こころにとって、幼い頃だった。こころは何故か体つきが何年か前に戻ると一人、遊園地の中で周りをキョロキョロと見渡す。

 

「こころ」

 

彼女が呼ばれて振り返るとそこにいたのはとっくの前に死別した影響で会えなくなったはずの父親……紫雨信二だった。

 

「お父さん!」

 

こころは嬉しそうに抱きつくと信二はニッコリとこころを温かく抱き返し、優しく頭を撫でる。

 

「寂しい思いをさせてごめんね。もういなくなったりしないよ」

 

「本当?お父さん、ずっと一緒にいられるの?」

 

こころは藁にもすがる思いで父親に問いかける。こころにとって父親は大好きな存在であり、もう二度と別れたく無かった。

 

「ああ。……俺の心は……こころとずっと一緒にいるよ」

 

「……え?お父さんの心って……どういう事?」

 

こころが聞き慣れない単語に首を傾げる。するとこころが抱いていたはずの父親の姿は薄らと消えていく。

 

「ッ!?嫌っ!お父さん、行かないで!ずっと一緒だって……約束したばかりなのに!」

 

こころがそう問いかけるが、父親が消え去るのを止めることはできない。それでも……いなくなる父親の隣にずっといたかった。

 

「ダメッ!お父さん……!お父さん!」

 

「こころ……愛してるよ」

 

次の瞬間、こころの意識は覚醒すると目を開く。すると目の前には寝る前よりも距離が近くなっていた影人が目の前(・・・)にいた。

 

「ッ!?」

 

こころは数秒寝ぼけ眼だったものの、すぐにこの状況を理解して慌てる。確かに自分は寝る前まで自分の布団にいたはずだ。ただ、いつの間にやら影人の布団にまで潜り込んだ事になる。

 

「……んん、こころ……愛してる」

 

「……!!」

 

するとふと影人の寝言が薄らと聞こえるとそれは先程父親が言ってくれた事で、自分を愛してくれてる大切な彼氏からの言葉だった。

 

「そっか……お父さんの言葉ってこういう意味だったんだね」

 

こころは影人を起こさないように小声でそう言う。それからこころは影人の体を近くでまじまじと見始める。

 

「カゲ君って……やっぱり良い体つきしてますね」

 

更にこころは影人が起きてないのを良い事にゆっくりと影人の体や腕を触り始めた。

 

「筋肉もしっかりありますし、胸もガッチリしてて……私よりも丈夫な感じで……」

 

そこまで考えた所でこころは慌てたような顔つきに変わる。こんな事をしていたら昨日影人に裸を見られた際に叫んだ挙句、皆の前で正座させた事との整合性が取れなくなってしまう。いや、不本意に覗かれた自分の時よりもそういう行為を実行する事に対してちゃんとした意思があるという時点で悪質なのはどう考えても自分の方だとこころは理解していた。

 

「うっ……これは研究……そう、これは研究です。私にとって大切な彼氏であるカゲ君の体の研究という事にしましょう」

 

こころは研究という言葉を自分のやってる割と変態な行為を無理矢理正当化するためのこじつけの理由として思い浮かべた。それからこころは正当化が終わったからか、影人の体をまたベタベタと触り始める。……こんな事をしていれば影人も体への感触で気がつくわけで……。

 

「んんっ……さっきからくすぐったい……え?」

 

影人がこころの視線が下に向いていて彼女が自分を見てないタイミングで目を開けてしまうと目の前に彼女の紫の髪が映る。

 

「……あれ?紫の髪……こころは自分の布団にいるはずじゃ……」

 

影人はこころの姿が寝る前まで視線の先にある布団にいたはずと考える。なのにそこに彼女の姿は無い。すると影人の鼻腔をこころの髪に付けてあるトリートメントの良い匂いがくすぐるわけで。

 

「疲れてるのかな?目の前からこころの良い匂いがするなんて……あれ?」

 

ただ、影人が目を開けている間も気がついてないこころはずっと体を触ってるわけで、意識は無理矢理どんどん覚醒していくと影人はふと下へと視界を下す。するとそこには自分の体を興味津々な顔つきで一心不乱に触るこころがいた。

 

「……こころ?」

 

「ッ!?か、カゲ君!?いつの間に起き……むっ!」

 

影人は優しくこころの唇に人差し指を当てると自分の手も動かして唇に人差し指を当てた。

 

「シーッ、経緯はまた聞くけど今は静かにな」

 

「は、はい……その、すみません。カゲ君の体を研究したくて……」

 

苦しい言い訳だった。こころもこんな理由で納得してくれると思ってないのか、気まずそうな顔をしている。先程も書いたが、これでは昨日の夜に自分の裸を見られた事を咎めるなんてできない。

 

当たり前だ、影人に断りなく彼の体を触りまくったのだから。流石に女子にない股間にある物体とかは触ってないが、それでも本人に断ってない時点で幾ら彼女とは言っても悪質極まりないという事実は変わらない。

 

「……今回の件は昨日の件で不満を持ったこころのお返しって事でチャラにしておく。だからあまり気にすんな」

 

「ですが……私は欲に負けて……」

 

「……そんな風に罪悪感を抱いたままだと俺も気分が悪い。そういう言い訳をするなら俺はこころのさっきの行為を許さないよ?普通に接してくれ」

 

「……わかり……ました」

 

影人は未だに固い顔つきをしているこころの頭に優しく手を置くと撫でる。こころはその感触を受けてやっぱり懐かしさを思い出す。それは亡くなった自分の父親の触り方にそっくりだからだ。

 

「……カゲ君の撫で方って私のお父さんに似てますよね」

 

「お父さんはもう亡くなったんだよな……」

 

「はい。……カゲ君といるとお父さんの事を思い出せます」

 

「……辛いだろ、それ」

 

影人はその言葉に罪悪感を覚える。普通に考えて、亡くなった大切な人を何度も思い出して目の前の人がその人で無いと思い至ると余計に辛いのでは無いのかと感じ取った。

 

「いえ、むしろ逆です。……カゲ君といるとお父さんの温もりをずっと覚えていられます」

 

メタ的な話になるが、こことは別の街……七色ヶ丘市に住む黄色い髪をした漫画やヒーロー好きなとある女の子はこころと同じく幼い頃に父親を亡くしている。その後、彼女は自分の名前の由来を思い出す際に父親の温もりをなかなか思い出せていなかった。最終的に思い出すことはできたものの、時が経てばやはりそういう温もりも例外なく忘れてしまうのだ。

 

「……カゲ君と出会えて私は幸せです……。だから、その……」

 

「わかった。俺はこころの隣にいる。流石に俺は完全にお父さんの代わりにはなれないけど、心の穴くらいは埋めてやるから……。あまり我慢するなよ」

 

「はい……」

 

それからいつまでもこのまま寝ているわけにはいかないという事で二人揃って布団から出るとまずは影人が服を持って風呂場の脱衣所に行くと言いつつ部屋の外に移動。こころはその間に着替えを済ませると影人も少しして着替えを済ませて戻ってきた。

 

「じゃあ、いつもの朝練……お願いします」

 

「ああ。行こうか」

 

影人とこころが咲良家の外に出ると準備運動をしていた。するとそのタイミングで三階の窓が開くとそこからプリルンが顔を見せる。

 

「こころ、影人……」

 

「プリルン、おはよう!」

 

「もう起きたのか」

 

「プリ」

 

「あ、ダンスの朝練に一緒に行く?」

 

こころはこのタイミングで起きたプリルンを見てダンスの朝練に行くかと誘う。プリルンはそれを了承するとそのまま外に出て外側から窓を閉めてから降りてくる。

 

「(こころ、上手いな。多分あのままプリルンが家にいたら咲良さん達が起きる前にアレを見つけちゃうかもだし……)」

 

そう考えるとこころのこの発言はある程度はそういう打算もあるのだろう。そんな些細な事はさておき、影人とこころがランニングするのをプリルンが浮かびながら着いていく事になる。

 

「「はっ……はっ……」」

 

堤防沿いの道で二人の息遣いが響く中、前からも二人組の走ってくる男女が現れたためにプリルンはこころの後ろに隠れる。その二人組を見て影人、こころは道の端に一旦避けると朝の挨拶として頭を下げる。向こうもわかっているのか、優しく手を振って応えてくれた。

 

「お友達プリ?」

 

「ううん。偶にすれ違う人達だな」

 

「……ランニングしている人達って皆目標に向かってキラキラしてるよね」

 

こころのそんな言葉に影人は内心で“それはこころもだな”と感じ取るとそれから二人はランニングへと戻る事になる。

 

それから少しして影人達とすれ違った男女が川の流れる橋の上に到達するとそこから登る朝日の美しさに見惚れていた。

 

「朝日が綺麗」

 

「ランニングしながら見る朝日だから余計に綺麗なのかもな」

 

二人は見合って微笑む中、そのタイミングで空中にスラッシューとザックリーが姿を現す。

 

「ったく、とんだ時間外労働だぜ……ザックリ言ってあり得ないし!」

 

「何か言ったかしら?ザックリー」

 

「ヴェッ、マリモ!」

 

ザックリーはチョッキリーヌへと吐いた悪態をスラッシューに咎められてどこぞのオンドゥル語を喋る男のような返しをする中、彼は真面目な話に戻す。

 

「しっかし、真面目な話……こんな朝っぱらから起きてる奴なんかザックリ言っていねぇっすよ」

 

「そこはあなたの腕の見せ所でしょう?」

 

「うっ……それを言われたら弱えぇが……」

 

チョッキリ団がマックランダーを出す際に人間を素体にする事を考えると今は一番出しづらい時間帯に当てはまるだろう。そもそもの話、人間は起きてないのだから。……この辺りは流石に不法侵入して家の中に出てくるということは無いようだ。

 

それかそもそも寝ている人間ではキラキラは出てこないということなのだろう。

 

「あっ、えっ?……いたし」

 

「そうか……しっかり二人いるわね。ザックリー、個別でキラキラを引き抜きなさい」

 

「うーっす」

 

それから二人は眼下にいる男女のキラキラを引き抜くためにザックリーは綱引きを、スラッシューは直接キラキラの力を掴んで引き抜く。

 

「お前のキラキラ」

 

「……頂くわ」

 

「「うわぁああっ!」」

 

すかさず二人は水晶と素体の人間を合わせることでマックランダーを呼び出す。

 

「はい、ザックリ行くぜ!」

 

「切り捨てスラッシュ!」

 

「来い!マックランダー!」

 

「世界中をクラクラの真っ暗闇にしなさい!」

 

これにより、マックランダーが二体召喚される。その姿はトレーニングウェアを着込んだマックランダーであり、先程の二人に起因する姿と言えるだろう。

 

「「マックランダー!」」

 

マックランダーは誕生するとその瞬間走りながら周囲にある街灯やら街路樹やらを粉砕し、地面のアスファルトを踏み砕きながら進む。

 

「ッ!?ブルっと来たプリ!」

 

そして、マックランダーが出たとなればプリルンはその存在を探知する。影人とこころがそれを聞いたそのタイミングで影人が何かに気がつくとこころを押し倒す。

 

「危ない!」

 

その直後、マックランダーが二人の真横を二体続けて走り抜ける。影人はこころへと手を伸ばした。

 

「急に押してすまない。大丈夫か?」

 

「ええ……。おかげで助かりました。それにしてもこんな朝早くから出るなんて……」

 

「多分、さっきすれ違ったあの二人だ。パッと見た特徴的にそれが一番近い」

 

「……カゲ君、追いかけるよ!」

 

「ああ」

 

それから二人はブローチを手にするとその姿をアイドルプリキュアへと変えるために変身を開始する。

 

「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」

 

「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」

 

「キミと昂る、ハートの情熱。高鳴る魂、キュアソウル!」

 

二人は変身を終えると三人での名乗りの時と同じように手を重ねてからそれを上に上げてからポーズを取る。

 

「ふたりは!」

 

「「キミとアイドルプリキュア♪!」」

 

ソウルが前から見て左側、キュンキュンが右側でポーズを取っており、その構えはいつものそれとは違い、どこかで見たと言えるぐらいには既視感のある物だった。

 

「……おい?待て!流石にこれはダメだろ!」

 

「別に大丈夫じゃないんですか?制作会社一緒ですし」

 

「いやどこが!?俺達まだ新米だっての!大先輩のそれを真似して良いわけ無いだろうがよ!」

 

ソウルが思いっきりツッコミを入れるが、そのソウル本人も名乗り自体はノリノリでやったので人の事は言えない。

 

「名乗りも決まりましたし、行きますよー!」

 

「ああもう!結局変身は簡易版だし、何でこうなるかな!」

 

二人のプリキュアはそれから逃げ去るマックランダーを追跡するために走り出す事になるのであった。

 

同時刻。咲良家で目を覚ましたななは目を擦りながら外を見るとマックランダーが出た事を示す暗い空が見えた。

 

「ッ!?うたちゃん起きて!」

 

「ふがっ!?」

 

ななは何とか鼻提灯を出しながら寝ていたうたを起こすとうたはななから事情を聞く。

 

「じゃあレイ君も……」

 

「ううん。レイ君は寝かせておこう」

 

「え?」

 

「……昨日の事があった後だし……巻き込むのも申し訳ないよ」

 

ななの言葉にうたは納得。それから二人は布団を畳むなど最低限の準備を済ませて空が暗くなった方角へと出かけるのであった。




また次回もお楽しみに。
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