キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
うたの家でのお泊まり会が終わって数日後の夜。黒霧家では夢乃が影人へと詰め寄っていた。
「お兄ちゃん、良い加減観念して!こころ先輩と何かあったでしょ?」
「……だからしつこいんだよ。こころとは特に何も無かった。以上」
「嘘だ!数日前にこころ先輩とすれ違ったらすっごい幸せそうな顔してたし!私が声をかけても最初気が付かなかったし、あの真面目なこころ先輩がああなるのはお泊まり会で何かあった証拠だよ!」
影人は先程からずっと続く夢乃からの絡みにうんざりし始めていた。事の発端はこの日の放課後。夢乃が学校帰りに偶々下校中のこころと出くわしたのだが、声をかけたこころは何やら夢見心地な顔をしていたのだ。普段の彼女は真面目でしっかりとした雰囲気であるために夢乃からして見ればこれは何かがあったのだと断定せざるを得なかったのである。
「(もう夢乃からの追求を流すのも面倒だなぁ……。てか、これ事故とはいえこころの裸を見た事とか、あとこころに体をベタベタ触られた事。このどっちかでも口を滑らせてみろ。更に面倒な事になるに違いないぞ)」
影人は夢乃からの質問を何とかポーカーフェイスで捌いていたが、正直何も無いというにはあのお泊まり会ではイベントが多過ぎた。主にこころとの恋人関係関連の事だが。
「(というか、こころ……いつもは真面目そうにしてるのに何で誰もいない所でそんなにふやけた顔してるんだよ……)」
実際の所影人が学校で会う時は割といつも通りなのだが、周りに誰もいない個人でいる時は偶に影人との時間を思い出して顔が緩んだりしている。ただ、本当にごく偶になので今回は偶々タイミングが悪かったと言うべきなのだろうが。
「むーっ!こころ先輩と折角寝れるチャンスだったのに!この臆病お兄ちゃん!」
「誰が臆病なんだよ。……それよりも俺はてっきり夢乃としてはそういう行為を咎めると思ったんだが?」
「え?私としてはむしろ二人の仲が深まって良いって思ってるけど?……それに、お兄ちゃんは奥手すぎるんだからもっと積極的に行くべきだよ!」
夢乃はそんな風に言っているが、彼女のこの思考の原因はやはり幼い年齢による恋愛知識不足と普段から過激な事を言ってくるドリーム・アイのリスナー達のせいだろう。
「夢乃。色々ツッコミたいが、まずは一回恋愛の手順を自分で調べて来い。話はそれからしてやる」
「ええーっ!お兄ちゃんの意地悪!ケチ!良いじゃん!親しい人が同じ布団で寝るくらい何がおかしいの?」
「こころとは結婚してないし、まだ家族じゃねーんだよ!?数年前まで父さん母さんと寝てたからって親しい人なら一緒に寝るが当たり前みたいな言い方すんな!てか、それ以前に咲良さん達も周りにいるんだぞ?そんな事やったら軽蔑の視線を向けられるだろうが!」
「何でよ!お兄ちゃんとこころ先輩はもう立派な恋人なの!一緒の布団で寝ても誰も文句なんて言わないでしょ!」
「ダメだこりゃ……」
影人としてはどれだけ言い返しても夢乃はこの辺の恋愛知識が不足し過ぎて話にならないと判断するとお手上げ状態になってしまう。
……勿論影人はこころと一緒に寝たい気持ちはあった。だが、まだそれをやるには早すぎると思っているのである。もう少し段階を踏むべきだと慎重になっていた。尚、こころが自分から入ってきたあの件に関してはどちらかが意図的に誘ったのが原因では無いのでノーカウントである。
「……夢乃も彼氏を作ったらわかるだろ。例えば彼氏から一緒に寝るのを強要とかされたら夢乃だって怖いって思うだろ?」
「それは……そうだけど……」
夢乃は影人に語り負けしたからか、頬を膨らませる。ただし、影人としては夢乃に寄りつく変な男は容赦なく排除しにかかるつもりなので夢乃が彼氏を作ためには影人のお眼鏡にかなう必要があるのだが。
「でもお兄ちゃんは私に彼氏ができてもその彼氏が気に入らなかったら平気で排除とかしようとするでしょ?」
「何当たり前な事言ってるんだよ」
「私が誰とお付き合いするかは自由だと思うんだけどな〜」
「夢乃の意思は勿論尊重するつもり。だが、俺は夢乃に危害を加える奴だってわかった瞬間容赦しないってだけ」
影人の言葉に夢乃は複雑な顔つきになる。彼女としては守ってくれるのは嬉しいが、流石にそれはやり過ぎなのではと考えているのであった。ただ、世の中には怖い人間がいるのも確かだ。
影人はこの先夢乃が美人になるという確信があり、そうなった時に夢乃へと軽い気持ちで寄りつくような変な男から囁かれる甘い言葉とかを間に受けて身も心もボロボロにされるなんてあってはいけないと思っているのだ。
「……それって私を心配してくれてるからだよね?」
「それ以外の理由、いるか?」
「……ううん。心配してくれてありがと。私、早くお兄ちゃんのサポート無しでも大丈夫になってみせるから。……お兄ちゃんも良い加減自分のやりたい事をしてほしいな」
「ああ……」
夢乃の言葉を聞いて影人は素っ気なく返す。影人は自分のやりたい事を今問われてもちゃんと答えられる気持ちはしなかった。寧ろ、今の自分が輝けているのはこころ達といるおかげだと思っている。それ以外の場所で、自分一人でそんな風になれるのか。彼はまだ不安な気持ちでいっぱいなのだった。
数時間前、蒼風家。影人達のやり取りがある数時間前。ななの家ではななとその父親である蒼風
「はい。にんじん、切れたよ」
「ありがとう。いつも手伝ってくれて助かるよ」
今現在、ななの母親である蒼風睦美の姿はいない。睦美は世界的なピアニストであるために今はフランスに滞在している所なのだ。そのため、基本的にななの家庭は父子家庭に近い状態になっている。
「ううん。結構楽しいよ!」
するとそのタイミングでななのスマホが鳴り響くとそれは母親の睦美からである。
「あ、ママからだ!」
「そっか。じゃあ、折角だしななは電話していて良いよ。こっちは進めておくから」
「うん。ありがとう」
それからななは一度キッチンから離れると居間のソファーに腰掛ける。そこにはななもやっているピアノが置いてあり、やはりこの辺りは世界的に有名なピアニストの家と言った所か。
「でね、影人君やうたちゃん、こころちゃんにレイ君とお泊まり会をしてね。夜ご飯は皆でカレー作ったんだよ!」
そんな風に明るく近況を話すなな。すると嬉しそうな様子のななを見た睦美は微笑んでいた。
『ふふっ。なな楽しそうね』
「うん!あ、でもピアノの練習もちゃんとやってるよ!」
『そう。……でもね』
それからななは睦美からある言葉を伝えられるとその言葉が脳裏を駆け巡って止まなかった。
「久しぶりに話してどうだった?」
「ママ、元気そうだった。それでね……」
それからななは睦美から言われた事を父親の一に話すと彼は手を顎に当ててからある事を返す。
「……それはなな自身で考えてやってみる事だよ」
「うん。わかった……。じゃあ、色々やってみるね」
それからななは明日、早速言われた事を実践しようと考えるとまずはこの夜の空いた時間を使ってある物を書こうと考えるとその作業をやり始めるのであった。
場面は変わって、翌日の朝。再び影人の方に戻ると彼は今、うたやこころと一緒に歩いていた。……と言うよりは影人とこころの二人でいた所にうたが合流した形である。
「そういえば、うた先輩ってここ最近偶に私達と登校タイミング合いますよね?前までタイミング全然合わなかったのに……」
「それはね、皆とお喋りするのが楽しくて!」
「そうなんですね!そう言って貰えて嬉しいです!」
「まぁ、早起きするようになったのなら良いんじゃね?寝坊して遅刻しかけるとかホームルーム前ギリギリとかに登校するよりは全然マシだろうし」
影人としては前々からうたが遅刻する割とギリギリ登校である事はあまりよくない事ではないのかと疑問を抱いており、それがある程度改善したのならそれはうたにとっては成長になると考えていた。
「あ、そういえば咲良さん。来週は数学の小ネストだけど準備できてる?」
「……ギクッ」
その瞬間、うたがそう言って固まったのを影人は聞き逃さなかった。そんなうたを見て溜め息を吐く影人。
「その感じだと全然オッケーじゃなさそうだな」
「うぅ……」
「うた先輩、数学苦手なんですか?」
「超苦手だよ〜……」
うたは憂鬱そうな顔つきになっており、この辺りは苦手と感じる人もそれなりにいるために影人は特にそれ以上追求はしなかった。
「だったら今から対策しておかないとな」
「うん……。あ、そうだ!ななちゃん得意だったら教えてもら……」
「そうだな。今日は勉強会に……あれ?」
影人とうたが話しながら話すために二人が揃ってこころのいる内側に振り向くとその視界にある光景が映って後ろを向く。こころもそれが気になったのか続いて振り向いた。
「ほっ、ほっ、ほっ……」
そこにいたのは道の上に引かれてある歩行者用の白線の上だけをバランスを取るようにしながら歩いていた。
「なな、何やってるプリ?」
「うーんっと、白線の上だけを歩いている……のかな?」
「小さい頃やりましたけど……」
「蒼風さんがこういうズレた行為をやるのは珍しいな」
影人達はなながいきなり白線の上だけを歩くという小学生とかがやりそうな遊びをやるのを見て話をしているとそのタイミングでななは三人へと追いつく。
「ふぅ。ごめんね、お待たせ」
「……ななちゃん?」
「うたちゃん。いつもの元気さはどこ言ったの?顔、固まってるよ!」
「「「……へ?」」」
その瞬間、三人は凍りつく。それは自分から白線の上を歩くという謎行動を取ったにも関わらず、うたが思考停止して固まったのを見てその事を咎めたのだ。
「え?え?ななちゃん?」
「こころちゃんも挨拶抜けてるよ!影人君はいつも私と話す時はそんな風にならないでしょーが!」
すると今度はこころへとツッコミ……と言うよりは指摘を入れ、更には完全に想定外な行動をされてこちらも困惑している影人へとまた指摘を入れた。
「なな先輩どうしたんですか?」
「おいおい、まさかと思うけど蒼風さんも頭のネジ狂ったのか?」
影人達がななを心配する中で彼女自身は特に問題無いと考えているのか、逆にキョトンとした顔つきをする。
「ん?私はどうもしてないよ?それよりもこころちゃん、手を繋ご!」
「え?いきなり何でですか?」
「ほら、親しい仲だしさ。手を繋いだら幸せな気分になるんでしょ?」
いきなりそんな風に言われて困惑するこころ。影人は流石に今のななは異常状態だと感じ取ると色々と言いたいのを我慢してひとまず先程話していた本題を話す事にした。
「ま、まぁ。手を繋ぐ繋がない議論やらは一旦置いておくとして。蒼風さんって数学得意?もしそれなら明日辺りに勉強会でも……」
するとななは影人からの言葉を聞いて頭にキュピーンと電気が走るように何かを思いつく。その瞬間、ななはいきなり鞄からマイクを取り出した。
「♪YO!チェケラ!」
「え?」
「マイク?」
「てかそれどこから出てきた?」
三人が呆気に取られる中でななはノリノリでマイクを構えながらある事を始めた。それは……。
「公式覚えてAnswer Get!難題も解決 Mind Set!関数グラフ描いてみせる!座標・軸上・未来を見せる!せる せる せる せる せる……」
「……何だこの時間」
影人が若干引きつつその行為を見る中、うたとこころは影人も巻き込みながら小声で話し始めた。
「なな先輩、どうしちゃったんですか?こんな不思議な人でしたっけ?」
「ななちゃんが不思議……。はっ!わかった!これはアレだね!ずばり、ななちゃんの七不思議だ!」
「……七不思議と言うには色々と意味が違う気がするが……。取り敢えずこれは後でレイも交えつつ話すしか無さそうだな」
その間に出していたマイクを通学用鞄にしまうとキョトンとした顔つきになるなな。完全に場の空気がななに支配されたものの、ひとまず影人は自分だけでは手に負えないと判断。レイも入れて話をするべく、学校へと登校する事になるのであった。
また次回もお楽しみに。