キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人達はななが変な行動を取るようになって困惑したものの、ひとまずレイも交えて情報整理をするために学校に到着。
「へぇ。蒼風さんがそんな事をね」
「ああ。何だかいつもと様子がおかしいんだよ」
今現在、影人とレイは一対一で会話している状態だ。うたとななはいつも話す女子の友達組である東中達と話している所である。
「でも意外だな。蒼風さんってラップとか好きな人なのか?」
「いや。……正直ラップが好きという事を聞くどころか彼女のラップ自体が初耳だよ」
レイもクラスや学年の人達から情報を集める中でもななのラップなんてデータが無かった。
「……うーん。俺は逆に何かを探している風にも見えるな」
「探す?」
影人は僅かに考えるとその結論はレイが思い描いている予測へと辿り着く。それができるのは影人もレイと同じくらいには頭が切れるという事だろう。
「あれか?何かやりたい事を探してるとかそういうのか?」
「俺はそう見てるけど」
「でもそれで白線の上だけを歩いたり、俺達へと鋭い指摘とかするか?」
「そこは俺にもわからないな」
確かにラップという行為だけを切り取ればななもラップを何かの影響でやり始めたいという構文が成立する。ただ、彼女の場合はそれ以外の奇行もあるのだ。一概に断定し切ることができない。
「俺は彼女のやりたい風にやらせてみるのが一番だと思うけどな」
「その理由は?」
「……蒼風さんって今までずっとピアノばかりやってきたんだろ?」
「まぁそうだな。だからこそあそこまでの実力者になったと思う」
「裏を返せばそれ以外を知らないんじゃないのかな」
「……!」
影人はレイの言葉に目を見開く。確かに言われてみればそうだ。ななは自分達がプリキュア関連の出来事で深く関わるようになるまで自分から積極的に他人と関わるような人では無かった。むしろ、一人で静かに過ごす事の方が多かったはず。
「なるほど。他者との関わりが増えたから、世界が広がった分、ピアノ以外にも何かやりたい事を見つけようとしている……。レイの予想はそんな感じか」
「とは言っても俺も断定は無理だ。ここから先は本人に直接聞かないとだけど……。ま、今は蒼風さんの好きなように動かさせてあげるのはどうだ?影人ならそのフォローもできるだろ」
「何言ってんだ。レイもフォローはやるんだよ」
「………」
レイはその言葉を聞いて僅かに動きが止まる。すると彼は何かを思ったのか、言葉も詰まったのだ。
「レイ?」
「……いや、何でもない。少し羨ましいって思っただけ」
「……いつものお前らしくないな」
「わかってる……」
レイは影人に接する声色が多少暗くなっているのを感じ取り、影人はそんなレイが多少気になってしまう。ただ、彼にも事情があると深く踏み込むべきでは無いと判断した。
「わかった。あまり難しく考えるなよ。悩みがあるなら俺達も聞くから。いつでも話してくれ」
「ああ」
「それと、明日咲良さんの家で数学の勉強会をやるから時間ができたら連絡してくれ」
「りょーかい」
それから影人とレイの会話は終了。そのまま授業の時間に入っていく事になる。影人は今の会話の中でレイもレイで複雑な環境下に置かれているのだと察した。
「(レイも気になるが今は蒼風さんの方かな。……どういう行動を取るか今は読めないから、少しでも対応できるように備えておくか)」
それからこの日の学校は進んでいく。尚、この中でのななの不思議な行動はななが少し変な行動を取ってから唖然とする影人達への鋭いツッコミのような指摘として継続され続けた。恐らく、うた達なりに言うならこれが七不思議の一つ目。タイトルを付けるなら“ななの不思議な一人漫才”と言った所か。
ただし、殆どの場合相手を唖然な状態にさせるため漫才とは言い難いだろうが一人でボケとツッコミをやってるような状態のため便宜上はこのように表記する事とした。
「(うた達の言う七不思議を本気で信じるならこの一人漫才と謎のラップ。他にあと五つか。出るかどうかは知らないけど見守ってやるか)」
それから日を跨ぎ、翌日の昼。この日は土曜日となるために影人は勉強道具を持って喫茶グリッターへとやってきていた。
「お邪魔します」
「あ、影人君!」
「ワン!」
影人が中に入るとそこには咲良家の飼い犬こときゅーたろうがうたの目の前でお座りしており、うたがその正面でしゃがんだ状態でいた。プリルンはきゅーたろうの近くでフワフワと浮いており、グリッターのカウンターの方を見るとバイトをしている田中が皿を拭いている。
「……これはどういう状況?」
「え?きゅーちゃんとの挨拶だよ!はい、お手!」
「ワン!」
「よ〜し、お利口さん!」
うたはきゅーたろうへとお手をさせると言うことを聞いてくれたきゅーたろうを優しく撫でる。
「プリルンもお手をするプリ!」
そんな風にプリルンも小さな手を出すときゅーたろうはプリルンへとお手を返す……のでは無く、プリルンの顔をペロリと舐める。しかも、それは一回では留まらずに何度も何度も繰り返した。
「プ〜リ!」
「仲良しだね!」
「ナイスペロペロプリ!」
「きゅーたろう的にはプリルンは妖精だから宙に浮いてお話しできる人形みたいに思われてるのかな」
プリルンがポシェットから出したピンクのハンカチで舐められてベタベタになった体を拭く中、きゅーたろうは影人の方を向くと彼の近くに寄ってくると尻尾を振っていた。
「あれ?」
「あ、きゅーちゃん。もしかして影人君にも懐いてきたの?」
「ワン!」
影人はアイドルプリキュアとして活動するプリキュア達をサポートし始めたあの日からそれなりに咲良家を訪れている。そのため、きゅーたろうも影人の事を個別で認識できるようになった所だろう。
「影人君もお手をやってみる?」
「いや、別にそこまでは……」
「ワン」
するときゅーたろうはやって欲しそうに尻尾を振りながら舌を出して影人へと寄りつく。
「……仕方ないなぁ。きゅーたろう。お手」
「ワン!」
「良い子だね。きゅーたろ……のわっ!?」
その瞬間、影人はきゅーたろうに飛びつかれると顔面を舐められ始める。それにくすぐったいのか影人が困惑。するとそこにこころが入ってきた。
「こんにちは……ってカゲ先輩!?何でこうなってるんですか?」
「こんな状態で悪いな。実は色々あってだな」
それから影人はきゅーたろうに離れてもらってから顔を拭き、こころに事情を説明。
「なるほど、きゅーたろうに舐められるぐらいに親しい人認定されたんですね」
「そんな所。って、そういえばこころは何でここに?」
「今日の勉強会。私も参加させてもらおうと思いまして」
その言葉を聞いて影人やうたは首を傾げる。こころ達一年生は小テストが無いので無理に勉強会に参加する必要は無いのだ。
「確か、今日の勉強会に参加されるのはうたさん、ななさん、影人さんの三人だけという話でしたよね?」
「えぇ、まぁ。確かに私達一年生は数学の小テスト無いですけど……。どーしても気になってしまって!なな先輩の七不思議!」
どうやらこころは意地でもななの七不思議を知りたい様子であった。この辺りはアイドルプリキュアのファンとして気になって仕方ないと言った所だろうか。ちなみにレイは時間帯的にどうしても別の用事があって合わないらしいので今回は不参加である。
「今日は勉強会だし、きっといつものななちゃんだよ」
うたが苦笑いでこころへと答える中、影人は嫌な予感を脳裏に浮かべていた。もしレイの仮説が正しいのであれば、暫くななのあの状態は続くと読んでいる。それこそ、こういう真面目な日も普通に奇行を取りそうな気がしているのだ。そしてそれは的中する事に。
「お邪魔しますなな!」
するとグリッターの扉が開くと髪をツインテールに纏めたななが勉強道具を肩にかけた鞄の中に入れてやってきたのである。
「おお!ツインテール!可愛い!」
「お揃いですね、嬉しいです!」
「(イメチェンか。意外と普通……あれ?だったら何でさっき違和感を感じた?)」
影人としてはあれだけ奇行に走っていたななの事なのでまた何かぶっ飛んだ事をしてくると思っていたのだが、意外と普通な彼女に多少困惑する。
「おお、イメージチェンジですか」
「そうなな!」
「「……なな?」」
「気分を変えてみたなな!」
ななの話し方を聞いて影人は“ダメだこりゃ”とばかりに頭へと手を置く。先程から違和感を感じると思っていたら案の定奇行に走ったと呆れてしまったのだ。するとうたとこころは影人を巻き込むとコソコソと話し始める。
「なな……」
「なな?」
「取り敢えず、様子見するぞ」
「……何かおかしいなな?」
ななにそう言われてうたやこころがビクリと慌てる中、影人は割と冷静な顔つきだった。この辺はレイと話をしたおかげである程度の耐性ができているという事だろう。
「やっぱりおかしいなな!」
「なな、なな!……早速出ましたよ。なな先輩の七不思議。これで一つ、二つ、三つ目です!題して!語尾に“なな”を付けるツインテガール!」
「おお!何だか記事の見出しみたい!」
うたやこころが七不思議の件で盛り上がる中、影人としてはこの状況を見守ると決めた以上はそこまで深く踏み込む事は避けようと考えていた。
「(これは本格的に色々試してるのかな?ただ、どっちかと言えば咲良さんの記事の見出しという言葉の方がイメージに反していて気になるが)」
影人のイメージとしてはそこまで言うほどうたが新聞とかの文ばかりの記事系統の物を見るイメージではないのでななの奇行よりもうたの言葉が気になっている状態だ。
「なな〜!ツインテが似合ってるプリ〜!」
そんな風にプリルンがななへと駆け寄る中、ななが呼ばれて振り向くとその瞬間。ななのツインテールの片側の髪が振り向く衝撃でプリルンへと命中。そのまま彼女は吹き飛ばされてしまう。
「ふがっ!?プリ〜!!」
「あっ!プリルン!?ごめんプリルン、大丈夫!?」
ななに吹き飛ばされたプリルンは落下すると慌ててななが駆け寄ると抱き上げる。
「プリ……ナイスファイト……プリ!」
「プリルーン!?」
プリルンがコテンとグッタリする中、ななはプリルンの名を声を上げて呼ぶ。その様子は彼女の腕の中で亡くなってしまった友達の名を叫ぶようなありふれたシーンのような状態になってしまう。
「……何だこの状況は」
流石にある程度の奇行は受け止めるつもりだった影人でも今回の事は許容範囲外だったようだ。それから一同が二階に上がるとそこでプリルンが復活するのを待ちながら勉強の準備を進めてい事になる。
また次回もお楽しみに。