キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ななの奇行に起因する七不思議が六つ揃い、次の一つでいよいよ完成と言った所にまで辿り着く。影人、うた、こころの三人とプリルンはななを尾行。四人は海や砂浜を一望できる海岸線近くの茂みからその様子を伺う。
「ななちゃん、レイ君と良い感じかな?」
「人目に付かない場所でどんな進展をするのか、注目ですよ!」
「二人共、すっかり恋愛脳だなぁ」
四人の視線の先にはななとレイの二人が砂浜にある座れるぐらいの高さで横長に存在するコンクリートのベンチに隣り合わせの状態で腰掛けていた。
「蒼風さん。……蒼風さんのご両親って優しいか?」
「うん。お母さんとはあまり会えないけど。凄く優しいよ」
ななの言葉を聞いてレイは空を見上げる。その目にはどこか彼女への羨ましさも感じていた。
「レイ君のご両親は……厳しいの?」
ななはそうやってレイへと聞き返す。ななは自分へと向けられた最初の質問で何となくレイが話したいことがわかった気がした。そのためこの質問を返す。
「……そうだな。俺の父さんはサウンドプロダクションっていう事務所の社長だ。俺はそこの一人息子だから……両親にはかなりキツめに縛られてる」
レイの実家は割と有名な事務所を経営している。レイは一人息子であるため、両親はレイに今から色んな事を仕込んでいるのだ。そして、それは彼の学校生活にも反映されている。例えば、多くの人から情報を集めるのは情報収集能力。更に言えば他人と上手く接するコミュニケーション能力を鍛えるためだ。
また、彼が時折りいない時があるがそれは彼自身が家業を継ぐための経営の勉強を受けているからであった。
「そっか。……レイ君はそれで良いの?」
「良いも悪いも、俺にはハナからその選択肢しか無い。……一度それ以外の夢を目指したことがあったんだけどな」
レイがボソッとそう話すとななはそんなレイを心配するような目を向ける。
「レイ君、それって夢を諦めさせられたって事?」
「別に。未練なんてねぇよ。むしろ、諦める理由ができて良かったと思えてる」
その言葉は明らかに震えていた。この様子を見るに、レイが過去にやっていた事はそれなりに上手く行っていたという事になる。ただ、彼の口ぶりだと無理矢理辞めさせられたというべきだろう。
するとななはレイが悔しそうに拳を握りしめているのを見てそっと手を重ねる。
「……あまり無茶しないでね。こんなレイ君を見たら影人君もきっと心配するよ」
「こんな時に影人の名前って……」
「私から見たらレイ君が一番自分から接しようとしてるのは影人君に見えるから」
レイはななの指摘を受けて心の中で彼女の言葉を受け止めていた。確かにレイが今一番自分から接しようとしているのは間違いなく影人だろう。それまでは会社を継ぐために他人から情報を集める際もそこまで深く相手に踏み込むことはしなかった。
「あはは、それは言えてるな。アイツは何だろ。最初に見た時は他人とは話したく無いみたいな負のオーラ出してたのに、いざスイッチが入ったら凄く芯の強い奴で。……だからかな。俺がアイツに惹かれたのは」
レイとしては影人に対しても羨ましい気持ちを持っているのだろう。自分と同程度に頭の回転が早い彼を見て、自分は親からの縛りを壊せなかったのに彼は自由に生きている点がレイにとって眩しく見えてるのかもしれない。
「ま、結局何が言いたいかというとうちは親が色々厳しいからさ。蒼風さんは何も縛られてなんか無い。ピアノだって蒼風さんが好きでやる事ができてるんだからさ。その……蒼風さんはやりたい事を自由にやりなよって事。……折角世界が広がったんだからさ」
その言葉を聞いたななは目を見開く。それは今の自分に当てはまるような言葉であったからである。
「うん。ありがと、レイ君。それとさ。多分影人君も同じ事を言うと思うけど、もしどうしても一人で抱えられなくなったら遠慮なく相談してね」
ななもななで今のレイの状態はどうしても不安に見えてしまうのだ。レイはそれに苦笑いして頷く。
「……じゃあ、私。ちょっとここでのやる事、始めるね」
「ああ。……蒼風さんのやりたい事、沢山やりなよ」
ななは立ち上がると何やら落ちていた長めの木の棒を手にすると砂浜に何かを描き始める。
そして、そんな二人の様子を見た影人達はコソコソと隠れて話をしていた。
「あの二人、暫く話してたけど結局何を話してたんだろ」
「告白した……って感じでは無さそうですよね」
「お前ら、そろそろ止めておくべきだろ。踏み込んだらダメな事だってあるしさ」
「えぇー!折角ここまで来たのに!」
「それに、七不思議があと一個で完成するんですよ?そうしたら……あ」
するとこころがいきなり七不思議の話題をしていたら口籠もる。そんな中、うたはそんなこころが気になって目を向けた。
「……どうしたの?こころ」
「いえ、確か七不思議って完成させちゃいけないって事を聞いた気がして……」
「えっ?」
こころの言葉を聞いてうたは凍りつく。その上に乗ってるプリルンは割といつも通りの目をしてるが、うたは不安そうだ。
「俺もそれは初耳だな。こころ、完成させたら何が起きる?」
「はい、全ての不思議を知ったらこわ〜い事が起きるって噂です」
「噂かよ……」
「へっ……怖い事?」
その瞬間、突如として茂みの中からカラスが飛び出して飛んでいく。そうなればその場にいた一同は驚くわけで。
「「「うわっ!?」」」
「プリ!?」
「……びっくりした」
「こんな所に都合良くカラスがいるなんてな。ちょっと不安だが……」
「あっ!なな先輩が!」
うたが安堵の声を上げた直後、こころはななとレイの方を見るとレイは座ったままでななは長めの木の棒で地面に何かを描く様子が映った。その様子が気になった四人は茂みから出ると詳しく見るためにある程度近くへと移動する。
「……何してるんだろ?」
「あっ、あれはまさか……」
「何かを描いてるっぽいが……」
「間違いありません。あれは題して……“浜辺の魔法陣”です!」
「魔法陣!?……って、何?」
その瞬間、影人は滑ってしまう。やはりというか案の定というか。こういう時にうたは単純な知識量が少ないという事だろう。
「魔法陣というのは魔法で何かを召喚……つまり、その場所に出したりするために書く物だな。漫画とかでは大掛かりな魔法を使う時とかにも描いたりする」
「そうですね。でも、今回の場合は何か恐ろしい物を呼び出すために使うんじゃないですか?」
「えっ?」
「こころ、余計な事言うなって!?咲良さんの前でそんな事言ったら動揺するに決まってるだろ!」
影人は敢えてうたにわかりやすく。尚且つ彼女が聞いてもそこまで驚かないような言葉を選んで言ったのにこころにそう言われては全部台無しである。
「まさかのななちゃんが恐ろしい物を召喚!?た、大変だ……」
「アホか。そもそも魔法なんて蒼風さんが使うはずないし、そもそも実際に使える魔法陣の描き方みたいな物があるわけじゃないんだからさ。冷静になれって」
「でもでも、もし本当に発動しちゃったら……」
影人は脳内でうたに対する面倒くささが発動してしまうと困惑顔になってしまう。もうこうなるとうたは止められない。更にこころも描いているのが魔法陣だと決めつけてるせいで彼女もすっかりその気になってしまっている。
「本当に誰か何とかしてくれよこの暴走車達……」
影人がどうしようもできない状態に天を仰ぐ中、砂浜の別の場所では先程までななとレイが座っていたようなベンチ的な場所にいるこの街のイメージキャラクター、はなみぃちゃんが座っていた。
そんなはなみぃちゃんが見ているのは先程ななから貰った感謝状である。はなみぃちゃんは無言だったものの、嬉しかったのかハートマークが時折り出ている状態で見るからに嬉しさが滲み出ていた。
「おー、目障りなキラキラ……見つけたぜ」
そのタイミングで毎度空気が読めないチョッキリ団のメンバーことザックリーが登場。するとザックリーがいつものようにキラキラを放っているターゲット。今回は真下にいるはなみぃちゃんを狙う。
「お前のキラキラ、オーエス!」
ザックリーによってはなみぃちゃんからキラキラが抜かれると叫び声こそ無かったものの、しっかりと中からリボンが出てくる。
「はい、ザックリ行くぜ!来い!マックランダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしやがれ!」
これによってマックランダーが召喚される。それは風船のような姿をしていた。
「マックランダー!」
「ええっ!?」
「マックランダー!?」
「もう、疲れてる時に出てきてくれて!」
それを見た影人達はなな達を尾行とか言ってられずに出てくるとななとレイの元に移動する。
「ななちゃん!」
「レイ先輩!」
「うたちゃん、こころちゃん、影人君、何で!?」
「レイ、お前はプリルンを連れて下がっててくれ」
「……その方が良さそうだな」
レイがそう言うと浮かんでいるプリルンを掴んでこの場から距離を取る。そんな中、うたが慌てた様子で声を上げた。
「っていうか、ななちゃんが本当に凄いの呼んじゃってるし!?」
「違いますよ先輩!あれはマックランダーですって!」
「え……あ、ホントだ」
「咲良さんはこんな時にまで何をボケてるんだよ」
影人が呆れたような声を上げる中、うたはマックランダーが相手なら遠慮は要らないとばかりに気を取り直す。
「そうとわかれば……皆で行くよ!」
「「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」」」
四人が同時に言うとブローチの両側のスイッチを押し込む。これにより四人は姿をプリキュアへと変えていった。
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「キミと昂る、ハートの情熱。高鳴る魂、キュアソウル!」
そして、今回は四人で円陣を組むと三人の時と同じようにチームの名乗りを行う事になる。
「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」
これにより、四人が初めて最初から集まった状態で戦闘が開始される事に。そんな様子を見ても問題無いとばかりにザックリーは攻撃を指示する。
「行け!マックランダー!」
マックランダーが拳を繰り出すとそれを四人は跳んで回避。ただ、着地する頃にはマックランダーは四人の背後に回り込んでいる。
「ッ、コイツ……デカい図体の割に意外と早いな」
そんな中、プリルンは目をパチパチさせると内部にはなみぃちゃんが捕まっている事を確認する。
「はなみぃちゃんが閉じ込められてるプリ!?」
「「「ええっ!?」」」
「はなみぃちゃんが?」
「あれ?でもはなみぃちゃんってただのキャラクターですよね。創作キャラがマックランダーにされるなんてあるんですか?」
キュンキュンが言うのも尤もだろう。今までマックランダーの素体にされてきたのは全て人間である。そのため、キャラクターであるはなみぃちゃんをマックランダー化できたと言う事実に驚きなのだ。
「……キュンキュン、それは……大人の都合という奴だ」
その言葉を聞いてアイドル達三人は同時に首を傾げる中、レイは苦笑いする。実際問題、マックランダーの素体となったはなみぃちゃんはマックランダーに変えられる中身を持っているという事だろう。
「おい、解説!何勝手に子供の夢を壊そうとしてるんだ!これはただのアニメ通りの話の都合!良いな!」
ソウルはそうやってメタ発言を修正する中、ザックリーはそんな茶番なんて知るかと言わんばかりに更に攻めるように指示していく。
「何ゴチャゴチャ言ってんだ!行け!マックランダー!」
「マックゥウウウ……ランダー!」
その瞬間、マックランダーは風船の空気穴から空気を噴出して飛び上がるとそのままプリキュア達へと突撃してくる。
「「「「ッ!」」」」
四人は再度跳び上がるとアイドル、ウインク、キュンキュンが早速パンチとキックを正面と左右からの三方向同時攻撃を仕掛ける。
「「「はぁああっ!」」」
「マックランダー!」
その瞬間、マックランダーは先程噴出した空気をいきなり逆に取り込むと一気に膨らむ。その空気による弾力によって三人を思いっきり弾き飛ばしてしまう。
「「「きゃあっ!?」」」
「嘘、効いて無い!?」
「へっへー、ザックリ行っちまえ!」
「プリキュア!頑張るプリー!」
マックランダーへのダメージが無いことに驚くアイドル。そんな彼女を応援するプリルンと調子付くザックリーと言った形になっていた。
「マックランダー!」
するとマックランダーは手で円を作ると紫の風船のエネルギー弾を飛ばす。それはアイドルに向かって一直線に飛んでいった。
「うわっ!?」
「ったく!」
アイドルが反応できずに直撃しかけるとそこにソウルがその手にソウルメガホンを出してダイヤルを青に合わせる。
「ウインクの力、ソウルアブゾーブ!」
その瞬間、ソウルの前に出てきたエネルギーフィールドが紫の風船のエネルギーを吸収して無力化する。
「ありがと、ソウル!」
「ああ」
「マックランダー!」
するとマックランダーは空中に浮くとそのままソウルへと突進してくる彼はそれを見てマックランダーの拳を受け止めるとそのまま遠心力を利用してマックランダーを自分ごとハンマー投げのように回ってグルグルと回転させる。
「マックラン!?」
「うおらあっ!」
ソウルはそのままマックランダーを地面へと激突させるように投げる。しかし、マックランダーは空気を吸収してまた大きくなるとボヨンボヨンと地面でバウンド。ダメージがほぼゼロの状態で再度空気を噴射して空中に飛び上がる。
「チッ……物理ダメージはほぼ無しか。まるで○フィみたいだな。まぁ、風船もゴムだけどさ」
「マックララララ!」
すかさずマックランダーは高速回転しながら紫のエネルギー弾を弾幕として周囲に降り注がさせる。これにはソウル達も堪らずに逃げ回るしか無い。
「あははははっ!良いぞ、マックランダー!」
「どうしよ……」
「ボールみたいに弾んで技が効きませんね」
プリキュア四人は集まると敵の厄介さに一度作戦会議を挟む事にした。そんな中でウインクがある提案をする。
「ボール、弾む……皆、考えがあるの!」
それからウインクが考えを話すと三人は頷く。そこに追加でソウルもある提案をした。
「……なるほど。だったらこれも合わせて使おう。これで相手を無力化できる」
「オッケー!」
「行きましょう!」
「へーん。何したってザックリ言って終わりなんだよ!」
そして、四人は話し合った作戦通りに行動を開始する事になる。果たして、マックランダーに対抗する今回の作戦とは……。
また次回もお楽しみに。