キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アイドルプリキュアのCDが作られる事が決定し、キラキランドの出張所内でレコーディングが行われる事が通達されて数日後。レコーディングの日はやってきた。
「レコーディングだ〜!私、楽しみ過ぎていっぱい練習してきちゃった!」
今現在、出張所のレコーディングスタジオにはうた、なな、プリルンがおり、その近くにはレコーディングをするための監督として田中も揃っている。
「ま、咲良さんならきっとウキウキで練習してたんだろうね」
「勿論だよ!」
「私もちゃんと音を表現できるように練習したの」
うたは自分の部屋で思いっきり自身の持ち歌を何度も練習し、ななの方もピアノの練習に合わせる形で持ち歌を練習してきたのだ。
尚、うたの方は歌っている所を家族に思いっきり見られたのだがそれでも特に指摘はされずに支障は無かった模様。
ななもピアノのトレーニングに合わせたので父親からは流行りの曲をピアノで弾く形でやっている程度の認識だった。
「それにしても、レイ君もちゃんと来れるタイミングで良かった。折角の録音なんだしレイ君もいてほしかったから」
「そう言ってくれると嬉しいかな」
どうやら、今日はレコーディングの時間帯に丁度良くレイもフリータイムが被ったので彼もここにいてレコーディングの様子を一緒に見る事になった。
「……ねぇ、ななちゃん」
「何?」
「やっぱりこの前の浜辺で話してからレイ君と仲良くなった?」
「うーん。前と比べて少し話しやすくなったかな」
そんな風にななは言うが、うたからしてみればあの日以降二人の仲は多少進展しているように見えたためにやはり気になるのだろう。
「さて、あとは影人とこころだけど」
するとレコーディングスタジオの扉が開くとそこに待ち望んでいた影人とこころの二人が揃ってやってきた。
「ごめんなさい!はぁ……はぁ……」
「こころ!待ってたプリ!」
「こころ、焦り過ぎ。一応時間には間に合ってるから」
プリルンがこころの到着を喜ぶ中、こころは申し訳なさそうな顔つきをしている。その隣には影人もちゃんといた。
「でも、私が昨日眠れなかったせいで……」
「まぁ、確かに大事な日だからギリギリは良く無いかもだけどまだこれは友達の中での話だからそこまで気にすんなって」
「ですが、私の事を待っていたせいでカゲ先輩が遅刻しそうになってしまって……」
どうやらこの日はまだ出張所までの道に不慣れなこころを影人が迎えに行く形で紫雨家に影人が行ったのだが、こころは言及された通り夜に眠れなかったせいで寝坊したのか影人を待たせてしまった。責任感の強いこころはそこがどうしても申し訳ないのである。
「こころちゃん、気にしなくても大丈夫。丁度時間ピッタリ」
「遅れてないから大丈夫!」
「何にせよこれでメンバーは揃ったな」
「お、今日はレイも来れたのか」
「おかげさまでね」
影人達のやり取りもそこそこに全員が集合したという事で早速田中が仕切る形でレコーディングを開始する事に。
「では、始めましょうか。まずは皆さん、変身してください」
「……あれ?変身するんですか?別にこのままでも……」
「えー!?折角だし変身しようよ!その方がキラッキランランな歌が歌えるからさ!」
「何だよその基準は」
影人が普通にレコーディングするだけであるならプリキュアで無くとも影人達自身の素の姿でも十分に可能だと考えたために疑問を抱く。そんな彼にレイが返事した。
「影人、一応これには理由があってだな?」
「皆さんは普段はあまり気にせず歌っていると思いますがアイドルプリキュアになってから歌う際、実は皆さんの出す声の声質による特定を防ぐ特殊な音波が混ざって放出されるんです」
田中がレイに続く形でアイドルプリキュアに変身してレコーディングをする事の意味を伝え始める。
簡潔に理由を説明すると声による個人の特定を防ぐためだ。素のまま歌ってしまうと声質による特定が起きるリスクが跳ね上がるが、アイドルプリキュアになった状態で歌う事で外部からの声での人物の特定を防ぐための能力が働くらしい。
「早い話がこれは身バレ防止のための措置ってわけだな」
「なるほど。確かに録音してCD出したは良いが、身バレなんてしようものならとんでもない事になるからな。その辺りは慎重になるべきか」
影人もその理由に納得すると四人は早速ブローチを出してアイドルプリキュアの姿へと変身。まずは最初にウインクから録音する事になる。
ウインクは頭に音楽を流すためのヘッドホンを装着すると目の前にある録音用のためのマイクの前に立つ。
「ウインクは何でヘッドホンを付けてるプリ?」
「一応今回は浄化相手に対して歌うわけじゃないからな。浄化技としてなら音楽がちゃんと展開した領域から自動でバックで流れてくれるけど、今は技以外の場面での歌だから自前で音楽は流さないといけない」
「でもヘッドホンから流すためのフルの音源なんてあるの?」
よくよく考えてみればアイドルプリキュアの浄化技で使われてるのはせいぜい一番のサビの部分だけ。それ以外の音源なんてどこにも無いはずなのだ。
「それは大人の都合ってやつだろ」
「……肝心な所を誤魔化したな?レイ」
「そこまで深く聞いちゃうのは野暮ってやつだよ」
レイ達曰く秘密事項との事だった。そんなメタ発言は置いておくとして、ソウルはウインクの前に準備された設備が本当にガチの設備に目を見開いていた。何しろマイクはちゃんとポップガードが存在し、アニメのアフレコとかそれこそ歌のレコーディングで本当に使われるような一方向にだけ集音機能が付いた精密な物だからである。
「マジか。改めて見るとこれ、ガチのマイクじゃん」
「そうなんですか?」
「ああ。アニメとかで声優がアフレコする時に四本くらい隣にズラーって並んでるんだけど、あのマイクに付いてる丸いの。ポップガードって言うんだけどあれを通すと息とかで発生するノイズがマイクに入るのを止めてくれるんだ」
「ソウル、詳しい……」
「やっぱりソウルは凄いです!」
アイドル達がソウルの言葉に感心する中、それとほぼ同じくらいのタイミングでウインクの準備の方も完了。録音ができるとの事だった。
「準備は良いですか?」
「はい!」
ウインクが返事を返すと彼女のヘッドホンに音楽が流れる。そして、それは機材のある部屋の方にも聞こえていた。
♪まばたきの五線譜♪
「きらめきへ踏み出そう〜♪受け取った勇気つないで♪まばたきの数だけ〜♪五線譜に焼きつけていく♪今日の優しい音♪ずっと忘れないよ〜♪出会えたキミへと奏でたい♪いつまでも鳴り止まないメロディー〜♪」
「「わぁ……」」
「綺麗な声」
「流石です」
「まさに透き通ったような歌声だな」
「上手プリ〜!」
一応ここでのレコーディングはサビだけの超短縮版とフルバージョンの二パターンをやったのだが、尺の都合で歌の場面はサビのみの表記とする。
「本当、メタ設定だけはこういう時もちゃんとするんだな……」
「超キラッキランラン〜!」
「心キュンキュンしてます!」
そんなうちにトップバッターであるウインクのレコーディングは終了。すると次のために田中が声をかける。
「お疲れ様でした。では次はキュアアイドルのレコーディングにしましょうか」
田中はアイドルを指名するとアイドルは待ってましたとばかりに楽しそうにレコーディング室に入っていく。
「よーし、歌うぞ歌うぞ〜!」
そんな中、機材のあるブースではキュンキュンが手を胸に当てて多少呼吸が緊張で荒くなりつつあるのをソウルは横目で見た。
「キュンキュン?」
「あ、はい!?ソウル……何でしょうか?」
「大丈夫か?」
「い、いえ!平気です!心配しないでください!」
キュンキュンからの返事はやはり緊張感からか固くなっており、ソウルはレコーディングの関係でこれ以上やり取りを返せなかったものの彼女への心配を覚えた。
するとレコーディング室の方ではアイドルがどこかへと行こうとするのが確認でき、レイが声をかける。
「アイドル?何してるんだ」
「えっとね……あ、あった!私、こっちで歌います!」
「「……へ?」」
その瞬間、ソウルとレイが凍りつくと目を見開く。それと同時に本当にポップガード付きのマイクを退かし始めたのを見てソウルは流石にツッコミを入れた。
「待て待て待て!アイドル、嘘だろ!?それでやったら雑音が入るって言ったよな?折角のレコーディングで機材あるんだからそれ使えよ!!」
「えーっ!?別に良いじゃん!私、こっちの方がやりやすいから」
「ダメだこの子……」
「自由な人だ……」
ソウルは説得しても無駄だと感じ取ると同時に田中もそう呟く事になる。そのため、気を取り直してレコーディングをする事になった。
「では始めます」
♪笑顔のユニゾン♪
「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ♪」
「「「「ゼッタイ!」」」」
「アイドル♪」
「「「「アイドル!」」」」
「ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪」
アイドルがいつも歌うノリで楽しそうに歌う中、彼女の歌の中にあるコーレスをウインク、キュンキュン、ソウル、レイは四人でノリノリでやる。ソウルも何だかんだ言いながらこういう時のノリもできるようになったのだ。
「凄い……流石キュアアイドルです」
そして、キュンキュンはそんなアイドルの眩しさにまた改めて魅了されるとそんなこんなでアイドルの方もレコーディングが終わる事になる。一応危惧していた雑音は大丈夫だったようで出せる物にはなったらしい。
「お疲れ様でした。次はキュアキュンキュン、お願いします」
「ふぇ、は、はい!」
三番目にキュンキュンがやる事になると彼女がブースへと行く……のだが、彼女は完全にレコーディングに緊張した様子であった。そして、ヘッドホンを装着すると田中へと声をかける。
「じゅ、準備オッケーです!」
それから音楽がかかるものの、その瞬間彼女が緊張でより一層ガチガチに固まってしまう。そんな彼女の心境なんて待たないと言わんばかりにイントロのコールに入る。
「はい!」
「はい!」
そしてアイドル、ウインクがそれをノリノリで言ってすぐにキュンキュンの歌い出し……なのだが。
「♪ねえキミぼっ、あっ、かわい……あっ、かこき……あっ、あっ……すみません!」
キュンキュンは緊張で噛みまくって見事にNGとなってしまう。そのためもう一度やり直すとの事で田中は冷静に告げる。
「もう一度行きましょうか」
それから再度音楽が再生されるとキュンキュンは緊張で上手くできなかった情けなさから申し訳なさそうにする。そして今度こそ成功させようとするが、まだ肩に力が入りっぱなしだった。それで上手く行くはずもなく……。
「すみません……
『ハイ!ハイ!』
「♪ねえキミぼっ、かーごぎっ、かっこげっ、かんじぇ……あぁ~、ごべんなしゃい……」
ものの見事に歌うのを失敗したキュンキュンはあまりのボロボロさにいたたまれず、キュンキュンは溶け出してしまう。これには機材ブースのアイドル、ウインク、レイは苦笑いし、ソウルは頭に手を当てていた。
「……少し休憩にしましょう。先にキュアソウルのレコーディングからします」
「はぃい……」
キュンキュンは溶けてしまった影響でゲル化。ライトパープル色のスライムというべき状態になってしまった。尚、目と簡易な口、更にトレードマークである水色のアホ毛はちゃんと残った模様。それからキュンキュンがスライム化した体でトボトボと進むと交代で入ってきたソウルの足元に来る。
「キュンキュン?」
「ッ……すみません、ソウル。私……こんな自分で情けないです。ソウルの彼女として頑張ってきたつもりだったのに」
するとソウルはそんなキュンキュンの頭?に当たる部分を優しく撫でると声をかけた。
「肩の力が入り過ぎ。それじゃあいつも通りは出せないぞ。取り敢えずまずは気持ちを切り替えて体を元の状態に戻す所からだ。俺はキュンキュンを信じてるぞ」
「はい……」
それからキュンキュンが部屋から出ていくとソウルはヘッドホンを装着。一度深呼吸をすると目の前に過去の嫌な光景を浮かべた。そこにあったのは自分がどれだけ頑張っても他人は自分を“この程度か、期待外れ”という蔑んだ目で見てくるだけだった。
「(俺はもうあの時の自分とは違う。……相変わらず一人で輝くのは無理だけど、俺はもう……一人じゃ無い)」
「では行きます」
ソウルの準備が終わった所で田中が曲を再生。イントロが流れてくる。そして彼は自然に歌い始めた。
♪魂の鎖を解き放て♪
「己の力〜♪(my soul!)そんな物はな〜♪(my soul!)鎖を壊し、強くなるためにある♪!君の笑顔を〜♪守るためにな〜♪俺の歌を響かせるから〜♪心燃やせよ魂〜♪」
ソウルがそんな風に完璧に歌い切ると元の状態に戻ったキュンキュンは心がザワザワと騒ぎ始めてしまう。彼氏の彼がちゃんとやれてるのに自分の未熟さが彼との距離感を示しているようで嫌だったのだ。
「(ソウルは……やっぱり私には勿体無い彼氏です。あんなに遠くでキラキラ輝いていて、私には高嶺過ぎますよ……。次こそちゃんとしなくちゃ……このままじゃ、ソウルをガッカリさせてしまう。そんなの絶対に……)」
キュンキュンはもうこれ以上の失敗なんて許されないと考えてしまうとまた体に力が入り始める。人間、否定的な命令を受け付けるようにはできてない。
ただでさえキュンキュンはプレッシャーでガチガチな状態なのに“失敗したらダメ”という思考は彼女の体を更に強張らせる原因になる。
「それではキュアキュンキュン、改めてよろしくお願いします」
「は、ひゃい!」
キュンキュンは答えを返すが先程よりも明らかに緊張し、ぎこちない返しにこのままではまた失敗する。そんな彼女の手をウインクが握るとアイドルと二人で声をかけた。
「キュンキュン、リラックスだよ」
「折角なんだから楽しまなくちゃ!」
「ですが、私はこれ以上失敗するわけには……」
「失敗を恐れてたらまた失敗しちゃうよ?」
キュンキュンはそう言われて何も言い返せない。するとレイがキュンキュンへと話しかける。
「キュンキュンは誰に歌を聴かせたい?」
「ソウルや夢乃ちゃん、あと私の事を応援してくれる家族の皆とか……」
「じゃあ、そんなガチガチな姿を見せたら皆不安になるだろ?まずは肩の力を抜いてリラックス。それからアイドル達の言う通り楽しめ。そうすれば自然と上手く行く」
レイの言葉が終わるとウインクはキュンキュンの手を握って上手く行くおまじないであるウインクをした。
「これは私からのおまじないだよ」
「キュンキュン、スマイルスマイル!」
「はい!ありがとうございます!」
そんな二人からのエールも受け取るとブースに入る。そこにはヘッドホンを外したソウルがそれをキュンキュンへと差し出した。どうやら部屋の中でキュンキュンが来るのを待っていたようである。
「気持ちは落ち着いたか?」
「はい。心配をおかけしてしまいました」
「もう大丈夫そうだな……。キュンキュン、初めてのレコーディングはこれが最初で最後。これからもレコーディングはあるかもしれないけど、“初めて”って付くのは今回だけだ。……心メラメラするキュンキュンの歌、聴かせてくれ」
「……はい!」
それからキュンキュンはソウルからヘッドホンを受け取ると彼とハイタッチ。そして、音楽が聴こえてくるとキュンキュンは歌う事になる。
♪ココロレボリューション♪
「ねえ、キミも!かわいーな♪(キュンキュン!) かっこいーな ♪キュンキュン!)完全同意にアガるテンションコーレスプリーズ ♪(イェイ!)とびきりキュンキュン響かせて〜踊ろっ♪(Let's dance!)もう1回♪(キュンキュン!)アンコール♪(キュンキュン!)完全ダイスキハイなステップがナンバーワン!もっと夢中になれるね〜♪こころビート〜yes!キュンキュン♪」
キュンキュンは三度目の正直で最後まで問題無く歌い終わるとその顔は晴れ渡っており、しっかりと歌い切る事ができたのであった。
「先輩達のおかげで歌えました!ありがとうございました!」
「超……キラッキランランだったよ!」
「プリ!」
こころはそれから影人の方を向くと彼にも自分のレコーディングについて聞く事に。
「カゲ先輩……私、ちゃんと歌えてました?」
「ああ。良い歌だったよ」
こころはそう返されてホッとするとそのタイミングで田中が話をするために咳払いする。
「良いレコーディングができました。後はCDにしてお店に置くだけです」
「うううっ……早く欲しいプリ〜!」
こうして、レコーディングは終了して影人達はCDが完成する事を待つ事になるのであった。
また次回もお楽しみに。