キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
チョッキリ団での動向から少し経過し、アイドルプリキュアの握手会開始まで僅かと言ったタイミングとなる。この時点で会場周りは長蛇の列で人々がアイドルプリキュアの登場を今か今かと待ち侘びている状態だった。
「わぁ……。こころちゃんや影人君も来られたら良かったのになぁ……」
影人達の学校のアイドル研究会の部員達も纏って握手会に来ており、夢乃達も別の場所だが列に並んでいる。
「もう待ちきれないよ……」
「もう少しだからね」
「それにしても凄い人だな」
アイドルプリキュアがネットで話題になってからまだ二ヶ月半程度。そこまで時間は経っていないはずなのにもう“はなみちタウン”ではすっかりその話題で持ちきりになっていた。そんな中、列に並ぶ影の中には以前影人が街中で出会った女性……天城切音の姿もある。
「アイドルプリキュア……生で初めて会うけど、とっても楽しみ〜」
手には推しと思われるキュアソウルのファンサうちわを持っていた。彼女も仕事の合間の癒しとしてアイドルプリキュアを推すようになったらしい。
「……むむむ、なんと……キラキラが溢れてるのですぞ!しかし今は……握手会まで我慢ですぞ」
このタイミングでカッティーが到着すると溢れ出る人々のキラキラに目を見開く。ここまで目の前にキラキラがあれば誰でもターゲットにしたい人を狙い放題なのだが、ここでマックランダーを呼んでしまえば握手会が台無しになってしまうとわかっているので一度自分の番が来るまで我慢する事にした。
そして、その様子を通りすがった一人の男性……レジェンドアイドルの響カイトも見つける事になる。
「お?握手会?……へぇ」
そんな中、握手会会場のすぐ近くに設営されたアイドルプリキュアの控え室のテントの中には影人達が揃っている状態だった。
「握手会開始まであと5分だぞ」
「はーい!」
「レイ君、ありがとうね」
「すみません。タイムキーパーとプリルンの事をお願いしてしまって」
今回、レイはこの会場のスタッフとして極力前に出ない裏方を担当している。というのも、影人が家族に説明したのはレイの所のお手伝い。そのため彼が見つかってしまうと影人も芋づる式にアイドルプリキュアの関係者だとバレてしまうからだ。
「大丈夫。皆が握手会に集中できるようにサポートするのも俺の仕事の範疇だからな」
「皆、頑張るプリ!」
プリルンもレイに抱えられた状態でエールを送る。そして、時間が迫ったという事で四人はブローチを構えるとプリキュアへと変身する事に。
「「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」」」
四人が同時に言うとブローチの両側のスイッチを押し込む。これにより四人は姿をプリキュアへと変えていった。そして変身が完了すると自分達を待ってくれているファン達の前に姿を現す。
「「「「こんにちは〜!」」」」
四人が手を振りながら出ていくとファン達は歓声を上げる。その様子を本当のイベントみたいに写真や動画を撮る人もいるくらいだ。そのキラキラに当てられてカッティーは眩しさを感じるものの、自分が握手してもらうために無理に自重せざるを得ず。
「むむ、我慢、我慢ですぞ」
「じゃあ、皆。早速自己紹介から行くねー!」
一応アイドルプリキュアの中でのチームリーダーとして事前に決めておいたキュアアイドルが宣言すると共に名乗りを始める。
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「キミと昂る、ハートの情熱。高鳴る魂、キュアソウル!」
四人が名乗り終わると円陣は組まずにその場にいたままだが、全員でグループ名をファンに向けて名乗ると同時にポーズを決めた。
「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」
四人での公衆に向けての初名乗りにその場は大興奮の嵐に包まれていく。これもソウルこと影人が敢えて変身直後に名乗りをやってしまうのでは無く、折角イベントの中でファンの前にアイドルプリキュアとして出るのだからここの名乗りはファンの前でしようと提案していたのだ。
『お待たせ致しました。只今より、アイドルプリキュアの握手会を始めます』
田中が司会者と言わんばかりにマイクを手にしてリードする中で握手会は開始される。レイは帽子も含めてスタッフの姿に変装した上でステージからそれなりに目立ちにくい場所に立つとプリルンは彼の腕の中に収まりつつも、手にはいつもの小型カメラを構えていた。
「プリルン、大人しく見てられるか?」
「プリ。でも、ちゃんと皆がキラキラしてる所の撮影はするプリ!」
「それにしても……皆喜んでるな」
ちなみにこういう時の列の誘導だが、レイの実家の事務所であるサウンドプロダクションから人手を貰っている。その多くはキラキランドからこちらの世界へと働くためにやってきている妖精が変化した人間達だ。
「プリ……妖精の皆も頑張ってるプリ」
「そういえば、プリルンもあの中の何人かとは知り合いなんだよな?」
「そうプリ!皆元気そうで何よりだったプリ!」
レイがそう呟く中で先頭の人から早速握手のための列が進み始める。今回は右側から左へと抜けていく形の構造のため、名乗りの時のポジションの問題でキュンキュンから順番と言った所だ。
「キュアキュンキュン、握手してください!」
「あっ、はい!」
キュンキュンは未だに緊張した様子なのか、返事が少し固めであった。ただ、ファンの女の子はそこまで気にしてない様子でむしろ握手ができた事を喜んでいた。
「キュンキュン、可愛い!ありがとう!」
「え、ああ……えと」
キュンキュンは何か言葉をかけようとするが、上手く纏まらずに混乱する。その間に女の子はお礼を言って次に行ってしまった。
「うぅ……」
そんな中、キュンキュンがチラッとソウルの方を向くと次は彼がファンの対応をしていた。
「今日は来てくれてありがと。これからも応援、よろしくね!」
ソウルは普段の真面目か言葉遣いからファンの子向けの優しい声質に変わっており、親しみやすいキュアソウルという位置付けを作り出していた。
「(ソウル、まさかのファン向けのためのキャラ作りですか!?そういえば、ライブの曲の時の声って爽やかさもあって……もしかしてこれも見越してたりしてませんよね!?)」
ソウルとしては普段通りの話し方や雰囲気だとお堅い雰囲気をファンに見せてしまうと判断。ライブ曲の時の声質を意識した爽やかな話し方をする事でファンの心を掴んで行った。
「きゃーっ!生ソウルカッコいい!こちらこそです!」
女の子はその後、アイドルやウインクの方に行く中、キュンキュンの方も次の人がやってきていた。その人は大人の男の人で雰囲気から好きなアイドルを推すオタクのような感じである。
「きゅ、キュアキュンキュンのダンス……カッコイイっす!」
「あ……え、えっと……その、ごっつぁんです」
キュンキュンはこういう時の返し方がわからずに思わず力士のような奇天烈な返しをしてしまった。そんな中、アイドルの方に行った最初の子はアイドルからのいつもの言葉を聞いて興奮していた。
「キラッキランラン!」
「わぁああっ!キュアアイドルの歌を聴くと元気が出るの!」
「嬉しい!キラッキ……」
「「ランラン!」」
「ありがとうございます!」
二人がハイタッチして同じ気持ちを分かち合う中、キュンキュンの気持ちが曇り始める。するとキュンキュンの元に次の人が来た。
「キュアキュンキュン!」
「は、はい……えっ……み、みことせんぱ……」
キュンキュンは次にやってきたのがまさかの東中であったために混乱すると彼女の名前を言ってしまいそうになる。ただ、彼女は自分の名前が呼ばれるよりもキュンキュンと会えた興奮でグイグイと顔を近づけた。
「うーん、会えて嬉しい!」
「あ、ありがとうございます……」
それから短いながらもキュンキュンと東中の時間は終わって次の人に移っていく。
キュンキュンが今度は一番奥にいるウインクの方を向くと彼女は自分と握手した最初の子と握手をしており、ウインクはそれに対応していた。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、今日は来てくれてありがとう」
それと同時にウインクが彼女へとウインクしながら笑顔を向けるとハートを撃ち抜かれたように目がハートマークへと変化。
「どっはぁ……トキメキアラート発令中……」
完全にウインクにメロメロになった女の子を心配するウインク。そんな彼女を見て自分以外の三人は皆上手く接しているとキュンキュンは感じるとまた自分だけ上手くやれてないと握手会の途中で思い詰めてしまう。
「大丈夫ですか?」
「やっぱり、皆さん……凄い」
それから握手会はつつがなく進んでいく。キュンキュンはその間もなかなか上手く対応ができずに内心悩みつつも、ファンの前でそんな顔はすまいと乗り切っていた。
尚、東中を見たアイドルが口を滑らせて一瞬疑われるかに思われたが、向こうも会えた嬉しさに興奮していたおかげで問題になる事は無かったというアクシデントに近い事も起きている。
「ぬう……こんなにキラキラして、良いと思ってるのですかな……」
カッティーは握手会が始まった影響で更に強くなったキラキラを前に眉をピクピクと動かすが、何とか握手会に参加するためと踏み留まる。
そんな中、夢乃やその両親の番があと少しに迫ったそのタイミングにて。握手会に対応していたソウルは目を見開く事になる。そこにいたのは前に出会った天城切音だったからだ。
「キュアソウル、会いたかったです!」
「こんにちは。今日は来てくれてありがと」
それでもソウルは正体を知られてはならないとの事で普通に対応する。そんな中だった。
「キュアソウルの声や歌を聞いていると、毎日の疲れが吹き飛ぶんです!……その、迷惑じゃないのでしたらサイン貰っても良いですか?」
天城は持参してきたサイン用の色紙とペンを差し出す。ソウルはアイドルスマイルを浮かべるとそれに丁寧に対応した。
「はい!これで大丈夫ですか?」
「ありがとうございます!大切にしますね!」
ソウルがサインを書いて天城へと返すと彼女は満面の笑みを浮かべると自分の存在が天城の顔に笑顔を生んだことにソウルは温かい気持ちになる。
この頃になるとカッティーはもう今にもキラキラをチョッキンしようとしていたが、それでもあと少しの辛抱だと。自分が握手し終わったら幾らでも余韻に浸る人々を狙えると耐えていた。
ただ、間の悪い事にその直後に上空に一人の影が姿を現す。それはスラッシューが抜け駆けしていると聞いて焦って自ら出てきたチョッキリーヌだった。
「握手会ならキラキラを狙い放題。カッティーがやってる所をダメ押しを……って、何!?何故まだチョッキンしてないんだい!?」
チョッキリーヌとしては既にカッティーがアイドルプリキュア相手に不意打ちでマックランダーをけしかけたと踏んでいて疑わなかったのだが、何故かまだカッティーがマックランダーを呼んでない事実に混乱していたのだ。
「ッ……ならスラッシューは……」
それからチョッキリーヌはスラッシューの姿を探すとある一点に彼女の姿を確認。そんな中、彼女はいつの間にかアイドルプリキュアとの握手会を済ませたのか気持ち良さそうに顔が緩んでいた。
「ッ……。スラッシューめ、握手会が終わった後か……彼女の事だ、絶対何か仕込んだでしょうし……こうなったら私自らやるよ!」
チョッキリーヌはカッティーがここで尻を叩いたとしても使い物にならないと判断。自らマックランダーを呼び出す事に決めた。そしてそのターゲットにしたのは。
「ママ!もうすぐだ!」
「早く握手したい!」
「そうね、楽しみだね。キュアキュンキュンやキュアソウルになんて言うか決めた?」
それは先程ソウルやキュンキュンが出会った親子三人であり、チョッキリーヌはこれ幸いとばかりにそれをターゲットとした。
「アレが使えそうだな。……なら、やるよ!」
それからチョッキリーヌはカッティーやザックリーがやるように綱引きのポーズをする。
「お前のキラキラ……オーエス!」
「「「うわぁああっ!」」」
その瞬間キラキラを抜かれたせいで三人が叫び声を上げ、胸からリボンが飛び出すとチョッキリーヌは容赦無くそれを切り裂く。
「チョキッとね!」
これにより、三人は一つのエネルギーボールに閉じ込められるとチョッキリーヌはその手に水晶を持つ。
「さぁ、来な!マックランダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にするんだよ!」
チョッキリーヌがこれによりマックランダーを召喚その姿はCDケースを模しており、頭のリーゼントの下には半分だけ中から出てきたCDも見えた。何にせよ、これにより折角の握手会はメチャクチャになってしまう。
「マックランダー!」
「チョッキリ団!?」
「また出たプリ!」
「くっ……一番来てほしくないタイミングかよ!」
その直後、いきなりソウル達の足元に熱線による斬撃波が命中すると四人は驚いてその方を向く。
「この攻撃は……」
「ふふっ。まさかチョッキリーヌ自ら来るとは、余程焦っていると見えますわね」
「スラッシュー……」
「それでは私も……行きますわ」
スラッシューは変身前のローブを着込んだ姿だったが、ローブを脱ぎ捨てると同時にその手にベルのような物を出して変身する。
「クラクラ……ドレスチェンジ!」
炎のエフェクトと共にその姿はドレスを着たバトルフォームのスラッシューである。
「誰もお前を待ってなんかねーんだよ」
ソウルが悪態を吐く間にも人々は大混乱の中、レイや田中、その他の妖精達が人間となったスタッフが避難させる。
「皆さん、こちらに避難してください!」
「皆、チョッキリ団を止めるよ!」
こうしてアイドルプリキュアと握手会の会場を襲撃したチョッキリ団による戦いが始まるのだった。
また次回もお楽しみに。