キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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キュンキュンの後悔 ソウル達が差し伸べた手

ソウル達の前に現れたマックランダー。それを見てアイドルの言葉と同時に全員が構えるとまずはキュンキュンが飛び出す事に。

 

「ッ!?キュンキュン!!」

 

「みゆちゃん達を……助けなくちゃ!」

 

実は先程、マックランダーが生成される瞬間を一同は見ていた。どうやら素体となる人間からキラキラが引き抜かれるのは周りからも見えるらしい。そのため、キュンキュンは自分のファンだと言ってくれた彼女を助けたかった。

 

「キュンキュンのフォローをするぞ!」

 

ソウルは咄嗟に勝手に前に出てしまったキュンキュンを見て二人にフォローを呼びかける。そのタイミングでスラッシューが踏み込むとソウルの懐に飛び込んできた。

 

「はあっ!」

 

「ッ!?」

 

ソウルは次の瞬間に構えを取るとその場所にジャストタイミングで攻撃が命中。ソウルはそれを受け止めるが、自分の体を突き抜ける形で衝撃波が駆け抜ける。

 

「ソウル!?」

 

「俺の事は構うな!キュンキュンを任せるぞ!」

 

アイドルとウインクはソウルを心配するが、敢えてソウルは二人に自分を見ないようにしてもらう事で素早くマックランダーに対応してもらおうと考えた。

 

そのタイミングで先行して飛び出したキュンキュンに向けられてマックランダーは腕の発射口からCD型のエネルギー弾を放つ。

 

「マックランダー!」

 

「ッ!!」

 

キュンキュンは何とか跳び上がって回避するものの、マックランダーは執拗にキュンキュンを攻撃。

 

「危ないプリ!」

 

「キュンキュン、焦るな!」

 

レイもキュンキュンに冷静さを取り戻すように言うが、やはり一度こうなってしまうとキュンキュンの思考はどんどん焦りの割合を強めていく。

 

「ッ……みゆちゃん達を助けないと!キュンキュンレーザー!」

 

キュンキュンは焦ったせいか、ブローチをタッチすると髪留めから紫のレーザーを射出。レーザーの何発かはCD弾の迎撃で消えたものの、まだ何発かは残っており、その弾幕がマックランダーに目掛けて飛ぶ。だが、マックランダーの方は至って冷静である。

 

「マック……ランダー!」

 

するとマックランダーは頭部のリーゼントの下に半分だけ出ているCDのディスクを取り出すとそれを高速回転させながらエネルギーバリアを正面に展開。キュンキュンの放出したキュンキュンレーザーを全て弾き飛ばしてしまう。

 

「ッ、しまった!」

 

更にタイミングの悪い事に、跳ね返されたレーザーの中の一発が建物の上の方に命中すると爆発してそこから大きめな瓦礫が落下し始める。

 

その瞬間、キュンキュンの目に焦りの顔が更に濃くなった。その瓦礫が落下する真下にいるのは何と一人逃げ遅れてしまった夢乃である。

 

「お父さん……お母さん……」

 

あれだけ人が密集した状態で慌てて避難したのだ。親と逸れていてもおかしく無い。ただ夢乃は両親がいないと知るや、一旦自分は避難するべきとわかっているので逃げようとしている。だが、両親と逸れた事を認知するためにそれだけ避難が遅れたのだ。

 

「あっ……!」

 

「ダメーッ!!?」

 

キュンキュンが慌ててフォローしようとするものの、そのタイミングでマックランダーがCDを周囲に乱射。それに対処するせいでアイドルは勿論、ウインクもウインクバリアの展開が間に合わない。

 

「ッ!?」

 

「どこを見ている!」

 

「煩せぇよ……退け!!」

 

スラッシューがソウルへと拳を繰り出す中、ソウルはそれを冷静に掴んで勢いを利用してスラッシューの態勢だけ崩させるとすかさず自分は最短ルートで駆け出す。しかし、進路上にはもう直ぐ自分に着弾するCD弾もあった。

 

「ソウルソニック!」

 

ソウルはすかさずソウルメガホンによる技、“ソウルソニック”による音波での全方位攻撃で敵のCD弾を全て着弾前に爆発させて破壊。ソウルは全速力で夢乃を庇うために彼女の元に走り込む。

 

「危ない!夢乃!!」

 

「……え?」

 

その声を聞いた瞬間、夢乃の頭は真上を向いて真っ白になる。そこには自分の所に落下してくる大きめの瓦礫。それが命中したら確実に大怪我では済まない物だ。

 

「ヒッ……」

 

夢乃は少しでも痛みが和らぐように腕で防御しようとするものの、そんな物をしても腕ごと体を潰されてしまう。そこにソウルが間に合うと瓦礫を見据えた。

 

「(今から迎撃は間に合わない)だったら!」

 

ソウルは咄嗟にメガホンのダイヤルをピンクに合わせると技を使う。その光に包まれた瞬間に瓦礫はソウルと夢乃に直撃した。

 

「あ……あぁ……」

 

降り立ったキュンキュンはその目に絶望感を浮かべる。それは、自分が他人を助けようと焦ったばかりに余計な犠牲を増やしたと言う事実。更に、キュアソウルの、影人の妹に重傷を負わせたと言う自責の念に包まれそうになっていた。

 

「キュンキュン、あれ!」

 

するとウインクが声を上げるとキュンキュンは絶望顔のままその方を向く。そこには巨大な円形状のドームが生成されており、それが消滅していくと中にいたソウルは夢乃を押し倒して床ドンする形になってしまったが二人は全くの無傷だった。

 

「ソウル、大丈夫!?」

 

「ああ。……この子も平気だ」

 

さっきの一瞬でソウルはソウルソリッドを発動。物理的な壁としてドーム型の障壁を作り出した。ただソウルが咄嗟に夢乃を押し倒してドームの展開にかかる時間を短縮しなければ、確実にドームの展開が間に合わずに二人が怪我を負った確率は跳ね上がっただろう。

 

「……大丈夫?」

 

そんな中、ソウルは怪我をしたかもしれないと未だに押し倒されて床ドンされたままの夢乃へと手を差し出す。

 

「……は、はい」

 

その顔はほんのり赤くなっており、気恥ずかしさを感じている様子だった。

 

「そっか。無事で良かった」

 

ソウルはそう言って呆然とした夢乃の手が置かれたのを確認して彼女を優しく立たせる。ただ、ソウルとしては最悪な気持ちだった。夢乃を巻き込んだ。加えてマックランダーと戦う所も見られたため、確実に彼女の夢は壊してしまったのだと。

 

「ひとまず、危ないからここから逃げて。ご両親も心配してるだろうからさ」

 

そんな中、夢乃は目を見開く。その言葉を聞いて彼女の中で何かの確信が得られた気がしたようだった。

 

「あの!」

 

「何?」

 

「……何で私が両親と一緒に来てるって知ってたんですか?……もしかして、あなた達の正体って……」

 

察しの良い夢乃は気づいていた。いや、気づいてしまった。少なくとも、キュアソウルの変身者が誰なのかを。

 

彼女の言葉を聞いてその場の全員が目を見開く。するとソウルは自分の口に指を当てると彼女へと優しく返した。

 

「その話は後でゆっくり……ね」

 

「ッ……わかったよ。……頑張って」

 

夢乃はそう、いつも兄に接するような言葉遣いをしながら彼らを応援。それから彼女はトテトテと走ってその場から避難する。そんな中、キュンキュンは一人顔を青ざめさせていた。

 

「ソウル……私のせいで……」

 

当然だろう。自分が焦って不容易な攻撃をしたせいで夢乃は巻き込まれ、下手したら病院送りにされるような怪我を……いや、彼女は影人の前からいなくなるかもしれなかったのだ。

 

キュンキュンの心は締め付けられると呼吸も荒くなり始める。自分への自責の念で心が押し潰されてしまいそうになっていた。

 

「はぁ……。俺は別にキュンキュンを責めるつもりは無い」

 

その直後、ソウルはキュンキュンの頭を優しく撫でる。キュンキュンはそんなソウルに反論した。

 

「どうして責めないんですか?今回の件は全て私のせいですよ?夢乃ちゃんを巻き込んだのも、正体がバレてしまったのも」

 

「……いつかは何かしらの形でバレる話だ。それが少し前倒しされただけの事。俺はキュンキュンに、こころにアイドルプリキュアの事がバレた時に学んだ。どれだけ隠しても、俺達に深く関わってる以上は何かしらの要因でアッサリバレるなんて幾らでもある」

 

「バレた話は良いにしても、私のせいで……私のせいで夢乃ちゃんが……」

 

キュンキュンの声は震えていた。今にもソウルから絶交を言い渡されるのでは無いのか。止めるように言われたのに、自分の焦りが原因で夢乃が取り返しのつかない事態に巻き込まれたのでは無いのかと。

 

「アイドル、ウインク」

 

「「?」」

 

「夢乃が巻き込まれた責任、一緒に被ってくれるか?」

 

それを聞いて二人は顔を見合わせると二人は揃って頷く。そんなやり取りにキュンキュンは困惑した。

 

「夢乃が巻き込まれた責任があるのはキュンキュンだけじゃない。アレは俺やアイドル、ウインクが事前に周りに気を配ってたら防げた事態でもある。だから気にするな」

 

「そんな簡単に、私が許されて良いんですか?……レコーディングでも握手会でも、私……失敗続きで、今度はプリキュアとしても。私、全然皆さんに追いつけてなくて。悔しいです」

 

キュンキュンがそんな風に言っているとアイドルがそんなキュンキュンを慰める。

 

「そんな事無いよ!キュンキュン、とっくに追いついてるよ!何なら追い越してるって!脚速いし!」

 

「……えっ!?」

 

アイドルが自分達を追い越している理由として脚の速さを引き合いに出すとキュンキュンは困惑。そして、それはソウルも同じだった。

 

「え?速いでしょ?」

 

「はぁ……アイドルは相変わらずアイドルだよ」

 

「ソウルまで何で!?」

 

「そ、そんなので良いんですか!?」

 

「良いんです!」

 

アイドルに言い切られてキュンキュンは更に唖然とする。そこにウインクが手を差し伸べた。

 

「それに、今日の握手会はキュンキュンがいなかったらできなかった」

 

「キュンキュンに出会ってから私達、ずっとキラッキランランだよ!」

 

「お泊まり会とか、一緒だからできた事とかいっぱいある!」

 

「うんうん!」

 

更にアイドルにも手を差し伸べられてキュンキュンは目を見開く。ソウルは手を差し伸べるのは二人に任せるとキュンキュンと向き合った。

 

「俺はキュンキュンと一緒にいられる今が大切だ。だから責めないし、怒ることもしない。……まぁ、今回は反応が間に合ったからって言っても夢乃に怪我とかがあったわけじゃないしさ」

 

ソウルは知っているキュンキュンがここまでどれだけ頑張ってきたのかを。その積み重ねがあったからこそ、あのような事態になってもキュンキュンを信頼する気持ちは揺らがなかった。

 

加えて、あの事態はあくまで不慮の事故の範疇内。決してキュンキュンが自分の意思で傷つけようとしたわけでは無いのだ。

 

「それと、そんなに夢乃が傷つきかけた事が気になるのなら謝る相手が違う。……もうバレてるだろうし、夢乃に後で直接謝ってくれ」

 

キュンキュンはその言葉に一度深呼吸をする。ソウルは、皆は、自分を許してくれた。だったら自分がこの後、何をするべきか。キュンキュンは理解していた。

 

「……お願いです。マックランダーにされたみゆちゃんとこうた君、そのお母さんは私やソウルのファンだって言ってくれたんです」

 

「……じゃあ、絶対助けないとだね!」

 

「私達もいるよ!」

 

そう言われてキュンキュンは力強く頷くと二人から差し出された手を取る。

 

「はい!」

 

「随分と長々とお喋りしてるけど……そろそろ終わったかしら?」

 

するとそこにスラッシューが降り立つ。それから彼女が指を鳴らすと何故か熱線のロープのような物に囲まれたマックランダーが解放される。

 

「えっ!?何で……」

 

「別に、仲間の絆が深まるような良いお話を邪魔するのは忍びないもの。それに、そんな勝ち方をするのは私の主義に反するわ。万全にして全力のあなた達を倒す」

 

スラッシューはあくまで話し合いをしてるアイドルプリキュアを不意打ちで倒すのでは無く、正々堂々と持てる全力でぶつかって勝つ事を望んでいる。そのために彼女はチョッキリーヌに無断で話し合いの間、マックランダーを抑えておいたのだ。

 

勿論チョッキリーヌはスラッシューの態度に苛立ったが、今自分がマックランダーを暴れさせた所で目的の不意打ちはできない。それだけでバレてしまうからだ。

 

「さぁ、アイドルプリキュア。あなた達の全力……見せてみなさい。受けてあげるわよ」

 

「そうかよ。だったら後悔だけはするなよな?」

 

「ええ。その覚悟はある。だから私もそれに応えるわ」

 

「……皆、引き続きスラッシューは俺に任せてくれ」

 

「ッ……スラッシューは強いよ?」

 

アイドルはソウルへとそれを伝えると彼は頷く。それでも問題無いという事だろう。

 

「むしろ強いからこそ俺が一人でやる。俺の分まであの親子の事。任せるぞ」

 

ソウルに託されては、三人は受け取るしか無い。それはそれだけ自分達が信頼されてる事の裏返しだからだ。

 

「ふふっ。楽しみだわ。私が欲したあなたの力……見せて頂戴」

 

「言われずともだ!」

 

それからアイドルプリキュア達は仕切り直した上での第二ラウンドを開始する事になるのであった。

 

〜おまけ〜

 

尚、戦闘が始まって以降。完全にその場で放置される事になってしまったカッティーはというと。

 

「……か、完全にこの状況に乗り遅れたのですぞ」

 

ちなみにチョッキリーヌの襲撃直後ならカッティーはマックランダーを呼び出せたかもしれなかったが、そもそもの話。キラキラが出るのは人々が発する感情に起因する可能性が高い。

 

そうなると、一度マックランダーが出てしまえば周りにどれだけキラキラがあったとしてもそれらは一瞬にして恐怖の感情に置き換わるせいで消え去ってしまう。

 

これらを総合するに、マックランダーを戦況を見て逐次投入するという行為はそもそもの条件が厳しいという事だろう。

 

「チョッキリーヌ様もスラッシュー様も戦闘開始してしまった以上、自分にできるのは……無いですな。……くっ……せめて、せめて、握手だけでもしたかったのですぞ!無念!」

 

カッティーはこの無念を胸に抱きながら人知れず撤退する事になる。というよりも周りにキラキラを持った人々がいないので、何もする事ができない。そうなれば、気づかれないまま撤退した彼の判断は何も間違っては無いのだろう。ただ、何もしなかったせいで後でチョッキリーヌに色々と小言を言われるのは確定だろうが。




また次回もお楽しみに。
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