キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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バズったアイドルプリキュア 女王の登場

キュアアイドルが誕生した翌日の朝。影人は目が覚めるとベッドから起き上がる。

 

「ふわぁああ……」

 

影人がベッドから降りると立って拳を握り締める。握り締めた拳には力が込もっており、体力はすっかり回復していた。昨日、あの後家に帰ると力尽きて部屋で倒れてしまい、その音で夢乃に心配されてしまったのだ。

 

「ったく。夢乃達にプリキュアの事がバレるわけにはいかなかったからな……。ひとまず一安心」

 

影人は夢乃や両親に対して、プリキュア関連の事に巻き込みたくないという理由で昨日どれだけ心配されてもちょっと疲れが溜まってただけと言って隠し通した。

 

「……でも、俺はこれからどうするべきなんだ……。仮にプリキュアの協力者になるとしても……俺には本当にキュアアイドルのバックアップなんてできるのか?」

 

影人はうたと違ってプリキュアにはなれない。正直、昨日現れた怪物。マックランダーとの戦闘になってしまえばまず間違いなく自分程度の力では勝ち目は無い。

 

「……かと言って咲良さんに任せっきりというのもな」

 

影人はうたに全て任せるのが不安ではあった。何しろ、彼女の事について昨日おとといの二日間。一緒に過ごしてみて感じたのが、彼女はとにかく褒められると増長しがちという事。要するに、何かと調子に乗りやすいのだ。

 

「咲良さんは力を手に入れたばかり。多分今はかなり調子に乗ってると思う。……もし油断して咲良さんがやられたら……俺は彼女のフォローをちゃんとできるのか……?」

 

影人自身には何の力も無い。プリキュアになれない以上、仮にマックランダーにやられて傷ついた彼女を回復させるためにマックランダーを相手に戦ったとして。多少時間を稼ぐ事はできても結局自分の体力をすぐに枯らされてまたボコボコにされるのがオチだと予想していたのだ。

 

それに、前回は相手が油断していた可能性が高い。何しろそれまでは自分達に対抗できる戦士なんていなかったのだから。だが、うたがプリキュアになった事で敵は次に来る時にはそもそもの前提条件を変えるだろう。キュアアイドルへの対策もしてくるかもしれない。

 

「俺の力で……真っ暗闇に染まった人を照らせるのか……?」

 

影人には自分の力だけで誰かを照らせるだけのキラキラを出せる自信が無かった。

 

「ダメだ。弱気になってどうする……。咲良さんが窮地に陥ったら……俺が上手く繋がないと……」

 

もしうたがやられて、彼女が復帰するまで時間を稼げなかったら今度こそ間違いなくゲームオーバー。影人はそんな重い責任に今にも押し潰されてしまいそうだった。すると部屋の扉がノックされる。

 

「お兄ちゃん。今大丈夫?」

 

「……夢乃か。入っても大丈夫だけど、どうしたんだ?」

 

影人は一旦プリキュアの事は考えないようにすると顔つきを家族に接するための状態に戻してから夢乃へと入るのを許可した。程なくして扉が開くと夢乃が部屋へと入ってくる。そんな夢乃の顔つきはとても興奮した物だった。

 

「詳しい説明は後でするから、まずはこれ見てよ!」

 

そう言って夢乃が差し出したスマホの画面に映っていたのはプリキュアへと変身した後に名乗るうたことキュアアイドルの姿だった。

 

『君と歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!』

 

「……あれ?」

 

影人はその映像を見て一瞬思考が停止。何しろ目の前には誰一人にすら見られていないはずのキュアアイドルの姿があったのだ。その後、続け様にキュアアイドルのライブ映像が流れ始める。

 

「なぁ、夢乃。これどういう事?」

 

「え?お兄ちゃん知らないの?大元はつい昨日の夜にネットにアップロードされていた僅か1分程度のショート動画レベルの短さなんだけどね。ネット界隈で大バズりしたらしくて。それがそのまま速報としてニュースにも取り沙汰されたみたいで。ほら」

 

夢乃が見せた画面にはニュース速報の記事の中にデカデカと“突如として現れた謎のアイドル、キュアアイドルの正体は!?”というのが上位に食い込んでいた。

 

「……マジか」

 

「あれ?お兄ちゃん思ったより驚かないね」

 

「いや、リアクションを抑えたんだよ。俺としてもこんなニュース初めてだし。投稿されてから半日足らずでこのバズり方は異常が過ぎるだろ」

 

「ねー。見た感じだけど、このキュアアイドル。お兄ちゃんとそんなに年齢変わらないよね。まさか兄と同年代にこんな可愛い女の子がいるなんて……私、この人の可愛さに憧れちゃうなぁ」

 

「いや、今の夢乃の姿も声も十分可愛いだろ。というか、ネット界隈での人気ならそんなに負けてないじゃん」

 

そんな風に返す影人に夢乃は頬を膨らませてから影人へと詰め寄っていくと文句を口にした。

 

「あのねぇ、私への可愛さの人気は私の素の容姿じゃなくてあくまでネット上にいるための仮の姿だからね?あと、私がここまで人気になるまでには一年以上は頑張ったんだよ?」

 

「………」

 

ここまでの流れで気づいた方もいるだろう。実は夢乃にはネット上に限定されるが、もう一つの顔がある。ちなみにそのもう一つの顔は割と世間でも人気で。夢乃の年齢よりも歳上である中学生〜二十代後半に辺りの若者を中心にした数多くの人をネット上で魅了しているのだが、今はまだ詳細は伏せておこう。

 

「やっぱり妬いちゃうな。私も必死に頑張ってきたのに、その努力の全部をたった一夜で踏み越えられちゃったから。……きっとそのキュアアイドル?って人は凄い人なんだろうなぁ」

 

「(あー、悪いな……夢乃。その凄い人は割と身近にいるし、何ならもうすぐお前も会えるから……)」

 

一昨日の影人のリサーチを聞いた夢乃や両親は喫茶グリッターがとても良い店だとわかったので今度時間ができた時に家族全員で訪れようという事が既に決定している。そのため、夢乃とキュアアイドルことうたが会うのはほぼ確定事項なのであった。

 

「(ま、事実プリキュア抜きにしても咲良さんは凄い人だからなぁ……)」

 

「そういえばさ、昔いたよね。お兄ちゃんに憧れてた子!」

 

「今それを言うか?夢乃」

 

影人はそれを聞いて顔を顰める。正直、昔の事に関しては夢乃だとしてもあまり触れられたくない事であった。

 

「今も元気にしてるのかなぁ」

 

「そんな事言うけど、俺以外誰も会った事無いだろ」

 

影人はそんな風に夢乃へとぶっきらぼうに返す。正直、影人はダンスとかの過去のトラウマを下手に抉られたく無いのである。

 

「いくら夢乃でもあんまりそれを掘り返すなら怒るぞ?」

 

「ごめんごめん……。これ以上は言わないよ……でもさ、もう良い加減乗り越えた方が……多分そのお兄ちゃんを慕ってる子が見たら幻滅されちゃうよ」

 

「……どうせもう会わねぇつーの。それに、こんな俺なんか尊敬しない方が良い……。さっさと幻滅してもらった方が楽だ」

 

そんな風に半ば投げやりな影人を見て夢乃は一度溜め息を吐くと影人へと一応業務連絡とばかりに声をかける。

 

「そうだ。お兄ちゃん。こっち来てから少しは落ち着いてきたし、今日の夜、アレ(・・)再開するから。やってる時は静かにしててよ」

 

「……言われなくても静かにはする」

 

夢乃は影人へと“ありがとう”の意味を込めた笑顔を向けるとそのまま部屋から出て行く。そんな彼女を見届けてから影人はふとある事を思い出す。

 

「とは言ったものの……元気にしてるのかな。そういや最近、お前と雰囲気がそっくりな子によく話しかけられた後にそのまま絡まれるんだよな。……お前はまだ大好きなダンスを続けてるのかな……ココ」

 

影人の脳裏に浮かんだのは自分よりも年下であどけない笑顔を向ける紫髪に紫の瞳をした可愛らしい少女の姿だった。

 

影人が物思いに耽っていると突如として影人のスマホがバイブレーションを始めると同時に奇妙な音声が聞こえてきた。

 

“女王です!女王です!”

 

「……んん?」

 

影人が慌ててスマホを開くとそこには自分では入れた覚えの無い奇妙なアプリが入っていた。そのタイトルには“キラキラ通信”と書いてある。そして、そこに通知のマークが出てきていた。

 

「……俺、こんなアプリ入れてたっけな?」

 

影人が疑問符を浮かべる中、正直アプリを開くべきか迷った。ここ最近ネットでは怪しいアプリやサイトなんて幾らでもある。ましてや、自分はこのアプリを入れた覚えすらない。となると彼も警戒せざるを得ないだろう。

 

「取り敢えず、無視するのが正解だろうが……」

 

影人はひとまずスマホがウイルスに侵されるリスクを考えてすぐにアプリを消そうとしたが、設定アプリの中にその“キラキラ通信”という物は存在しない。

 

「おいおい、消す事すら無理なのかよ」

 

影人がそんな事を言ってるとまた先程と同様に“女王です!女王です!”のバイブレーションが鳴ると強制的に画面が移行。影人が触ってないにも関わらず、“キラキラ通信”のアプリが強制的に開いた。

 

「ッ!?嘘だろ!?」

 

影人は驚きのあまり、スマホを手放すとから慌てて距離を取る。すると画面から投影されるような形でプリルンと姿がよく似た妖精の幻影が現れた。その姿は水色の瞳に青い星のハイライト。胸には黄色いハートマークにピンクの音符のマーク。頭にはアラビアンとかの女王を連想させるような被り物をしており、それは足元にまで来るぐらい長めのものだった。

 

「えっと……誰?」

 

影人が困惑する中、スマホの画面を使って幻影として出てきた妖精は影人の方を向くと自らの名前を名乗った。

 

『初めまして。私はキラキランドの女王。ピカリーネ!です!』

 

名前を言う瞬間、周囲へと凄まじい光を放出。その眩しさに影人は思わず目を瞑るが、その光は割とすぐに消えた。

 

「……初めまして。黒霧影人です……。あの、どうして俺のスマホに入り込んでいるんですか?」

 

『実は、昨日影人がうたやプリルンと別れる前。プリルンのポーチの中に入っていた他のアイドルハートブローチの中にある力を少しだけ抽出してあなたのスマホにインストールさせました』

 

「インストールって……随分とこちらの世界の近代的な言葉をご存知なんですね……」

 

影人が困惑したように言う中、早速ピカリーネは影人へと事情の説明を始めた。

 

『影人。プリルンから聞いたと思いますが、改めて説明します。プリルンがいたキラキランドでは元々皆が幸せに暮らしていました。しかしある日。ダークイーネと名乗る恐ろしい者が現れ……輝きの源。ビッグキラキラリボンをチョッキン。キラキランドは真っ暗闇になり、私達は閉じ込められてしまいました』

 

「……色々と訳の分からない言葉が出てきましたが、要するにキラキランドは今真っ暗闇の中って事ですね?」

 

『はい。ですが、私達には言い伝えがあります。このキラキランドが真っ暗闇に包まれし時。アイドルハートブローチを手にした救世主。アイドルプリキュアが光で闇を照らす。それこそが、キュアアイドルに変身したうたなのです』

 

そんな風に一通りのこれまでの経緯の説明を終えたピカリーネ。ただ、影人には疑問があった。

 

「えっと、事情は大体わかりました。ただ、俺はプリキュアでも何でもないただの一般人ですよ?……咲良さん達へと話すなら兎も角、どうしてこんな事を俺にも言ったんですか?」

 

『うた達にはもうこの話はしました。……そして、私はずっとアイドルハートブローチを通じて見ていましたよ。プリキュアになれないあなたが闇に一生懸命に立ち向かう姿を』

 

どうやらピカリーネは影人についてはプリキュアでは無いが、闇に立ち向かうだけの勇気と覚悟が十分にある。そう判断した上でこの件に関わる事を許したらしい。

 

『プリキュアはキラキランドの希望。ですが、決して万能ではありません。あなたにはプリキュアを支える存在になってもらいたいんです』

 

「……俺の力を買ってくれるのは嬉しいですけど……正直今の俺にはプリキュアに覚醒できるとはとても……」

 

『確かに、失礼を承知で私からもハッキリと伝えますが、今のあなたにはプリキュアとして認められるだけの光はありません。ですが、方向性が違うだけであなたにはプリキュアに匹敵するだけの力を持っている。私にはそう見えています』

 

ピカリーネからの言葉に影人はピンと来ないのか、やはり自信の無さそうな顔つきのままだ。

 

「あの、ピカリーネ様が買ってる俺の力って……」

 

『その力にはいずれ気づけますよ』

 

「……わかりました。それで、キラキランドを救うために必要な事って何でしょうか」

 

『そうですね。……まずはダークイーネや手下のチョッキリ団からこの世界を守ってください。そして、マックランダーを浄化した際に手に入るキラルンリボンを集めるんです』

 

ピカリーネの言葉に影人は頷くと彼女は影人へとプリキュアに関わる上でのある注意点について話した。

 

『それと影人。あなたはもう既に自分で正しく判断してくれていますが、プリキュアの事や自分が関係者である事は絶対に他言しないでください。ダークイーネは恐ろしい存在ですから』

 

要するにプリキュアの関係者だと下手に周りに知られてしまうとその人達もダークイーネ達の攻撃のターゲットになりかねないという事だ。自分の周りにいる大切な人達を不用意に巻き込みたくなければプリキュアの事は秘密にするしか無い。

 

「……わかりました。俺だって自分の大切な人達をこんな危険が伴う事に巻き込みたくはありません」

 

『よろしい』

 

「そういえば、気になったのですが」

 

『何でしょうか?』

 

「今日、起きたら何故かプリキュアの動画がネットにアップされてたんですけど何かご存知ですか?」

 

『ああ、それでしたらプリルンが昨日の夜。うたが寝た後に勝手にやってしまって。言い伝えに従ってプリルンは頭モッサモサの刑に処しました』

 

その言葉を聞いて影人は納得がいく。確かにプリルンならやりかねないと思ったからである。それと同時に頭をモッサモサにした程度じゃ刑罰として軽すぎるのではと。そう思う影人であった。

 

それから影人はキラキラ通信というアプリはピカリーネや他のプリキュア、プリルンとの連絡手段として使えるという事で怪しいアプリでは無いとちゃんと説明を受けるとピカリーネとの初めての会話を終える。

 

「ふぅ……これから大変な事になりそうだな……」

 

それから時間が経ってその日の夜。影人は夢乃がある事をする関係で静かにする必要が出てきたため、翌日から始まる新学期に備えて敢えてこの日は早く寝る事にした。

 

「……明日から新学期……か」

 

影人は寝る前に窓を開けて外の夜景や月、星々を眺めながら一人呟いていた。

 

「……どうせこっちの学校も前とそう大して変わらないんだろうな……。あ、でももし咲良さんが同じ学校とかでクラスも同じなら……絶対絡んでくるだろうな」

 

影人は脳裏にその光景が目に見えてハッキリとわかる事に溜め息を一度吐く。

 

「それに、前に紫雨さんも同じ学校って言ってたから下手したら新入生として入学する紫雨さんも度々学校で絡んでくるのか……」

 

影人の中ではこころと話す時間は悪く無いと思うようになっていた。現に今日も日中にこころと話をした。ただ、彼女は影人の抱えている悩みを気にしている様子だったが。

 

「……紫雨さんは多分心配してくれてるんだろうけど……。でも、こればかりは俺も譲れない。紫雨さんを危険な目に遭わせるぐらいなら……いっそ」

 

影人は泣かれるのを覚悟でこころに嫌われる言葉を言おうかと迷うが首を横にブンブンと振って考えを改めた。

 

「ダメだ……。紫雨さんの纏う空気がココとそっくりすぎて変に心もメラメラして情が湧いてしまう……。紫雨さんは絶対に傷つけられない」

 

影人は少しの間どうするべきか悩んだが、ひとまず明日は明日の風が吹くと思考を放棄。学校の準備は済ませているので窓を閉めてからベッドに入るとすぐに眠りにつく事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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