キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
握手会の会場から喫茶グリッターへと移動した影人達四人。するとそこには先に到着していた夢乃がカウンター席に座っており、隣にははもりもいた。
「ただいま」
「「「お邪魔します」」」
四人が同時にそう言うとそのタイミングで夢乃とはもりは振り向くと最初にはもりが声を上げる。
「お帰り!お姉ちゃん。あのね、さっき夢乃ちゃんが来てくれて」
「こんにちは、うた先輩」
ペコリと頭を下げる夢乃。それにうたも反射的に返事を返す。プリキュアの用事でここにいるとはいえ、それを何も知らないはもりに悟らせるわけにはいかないと夢乃が気を利かせたのだ。
「あ、ななちゃんもいるんだ!ねぇねぇ!はもりとピアノして!」
「ごめんね……今日はちょっと別の用事なんだ。ピアノはまた今度ね」
「えーっ……はもり、ななちゃんともピアノしたいのに……」
「はもり、今日はダメなの。大事な用事があるんだから」
それからうたにも言われてはもりは仕方ないとばかりに少し不機嫌になりつつも今日はどうしても無理だと悟って諦めた。
「ごめんね、夢乃ちゃん。うちのはもりが」
「いえ……」
夢乃はそう返すが、やはりその返しはいつもよりどこか余所余所しい。どうしても先程の件が、アイドルプリキュアの事が気になるのだろう。
それから影人達は誰にもこの話を聞かれたらダメという事でうたの部屋にまで入る事になった。ここなら誰かが無断で突入しない限り、外に話が漏れることは無い。
「じゃあ、早速だけど……一応もう一度自己紹介。面と向かって真面目な話をするから」
「うん。……黒霧夢乃です。兄がいつもお世話になってます」
そう言って夢乃は影人に促されるままに三人へと挨拶する。夢乃の事は三人共知っているが、前に買い物の際に改まって話をしたこころ以外の二人とはそこまで大事な話をしていないので、礼儀として挨拶をしたのだ。
「私、咲良うた!」
「蒼風ななです。夢乃ちゃんの事は沢山聞いてるよ」
こころは夢乃ともう既に何度も話をしてるのでこの辺りは大丈夫と判断されたのか、早速本題に入った。
「……夢乃、単刀直入に聞くけど……。もうわかってるよな?」
「うん。……お兄ちゃんがキュアソウル、うた先輩がキュアアイドル、なな先輩がキュアウインク。そしてこころ先輩がキュアキュンキュン……こんな感じですよね」
予想通り、夢乃には全部気づかれてしまった。もしかするとこのメンバーが話し合いの中にいるという情報から気づいたのかもしれないが、夢乃はそれ以前に確証を持っていたようにも見える。
「……夢乃、俺達はアイドルプリキュアとしてあの怪物と戦ってる。……今まで黙ってて済まなかった」
そう言って影人は夢乃へと頭を下げた。影人が夢乃へと頭を下げる場面は珍しい。それだけ夢乃へと黙っていた事に罪悪感を感じていたのだろう。
「……正直、まだ信じられない気持ちでいっぱいです。お兄ちゃん、私やお父さん達に黙ってあんな事をしていたなんて……」
ただ、夢乃は困惑こそしても怒ってはいなさそうだった。普通ならあんな危険な怪物と戦ってるという事が何も知らない家族に知られたら全力で止められそうなものだ。何しろ、一歩間違えたら命に関わるような事をしているのと同義だから。
「私達からもごめんね。色々と飲み込めない所はあるかもしれないけど、あれがアイドルプリキュアの本当の姿なの」
「……え?」
それから四人はアイドルプリキュアについて、わかっている事の全てを夢乃へと打ち明けた。それを聞き終えて夢乃は少しだけ考えると納得したような顔つきとなる。
「……だからライブシーンがあれだけしか最初無かったんですね。それに、アイドルにしては歌番組とかへの出演やグッズ展開も無かったんだ」
夢乃も薄々アイドルプリキュアが特殊な存在だと気づいてはいた。普通のアイドルと比べて明らかに異質だからだ。出どころは本当にポッと出てきた一分足らずのライブシーン。有名になってからのメディア出演の異常なまでの少なさ。そしてグッズ販売が無いという点。
本来の仕事が怪物との戦闘だという事。それらが夢乃の中にある全ての疑問を解決してくれた。
「夢乃、許してくれと言うつもりは無い。俺達は夢乃の事を騙してきたんだからな。だが、これだけは勘違いしないでほしい。夢乃に何も言わなかったのは……」
「……私の安全の事……でしょ?そのくらい、あの怪物の事をちゃんと見たらわかるよ。……むしろ、私は隠してて正解だと思う」
夢乃が見たマックランダーのような怪物の事実を不容易に広めれば、街は大混乱に陥ってしまう。色々と活動する上で不自由も起きると考えられた。
「そっか」
「……お兄ちゃんは、うた先輩達は……。まだアイドルプリキュアを続けるんですか?」
「うん。私達にはキラキランドを救う使命があるから。中途半端で投げ出したりなんてできないよ」
「私もです。夢乃ちゃんは嫌かもしれませんが、今から止めるのは……プリルン達にも悪いので」
「プリルン?それって……」
「プリルンは、プリルンプリ!」
「……へ?」
夢乃はプリルンが喋り出したのを見て固まる。一応プリルンに関しては前に出されていたPretty_HolicのCMにマスコットキャラとして出ていたので知っている。だが、夢乃は初めてプリルンが喋って動く所を見るのだ。こうなるのは無理はない。
「え、えっと……」
「プリルンは、プリルンプリ!」
プリルンが先程から喋りながら動く所を見て夢乃は少しの間、固まっていたがそれは彼女の中にとある感情があったからだ。そして、それはすぐに決壊する。
「夢乃ちゃん。プリルンはね、実はキラキランドっていう世界の妖精で……だから別の世界から……」
「か……か……可愛い〜!?」
そのまま夢乃はプリルンを抱きしめると頬擦りをし始めた。プリルンは驚きつつも妙に頬擦りをやられ慣れたように対応する。
「プリ……夢乃、ナイススリスリプリ〜」
「プリルンも意外と動揺が無いな」
「影人君、これって……」
「夢乃はCMにマスコットとして出ていた時からプリルンの事を凄い気に入ってたんだよ」
その気に入りようはCMの公開日当日に影人へとプリルンのぬいぐるみをねだったくらいなのだ。その時影人は一応調べる動作をした上でぬいぐるみの発売は今の所無いと返したが、夢乃は密かにプリルンのぬいぐるみを欲しがった。
「夢乃、その辺にしておけ。プリルンが困ってるだろ」
「あっ……ごめんね。プリルン」
「プリ、夢乃はプリルンの事を大好きプリ?」
「うん!」
夢乃の意外な好きな物がわかった所で話をもう一度真面目な方向へと戻す。夢乃への改めての説明が入ると夢乃は全ての情報を揃えた上で再度判断する事になる。
「キラキランド……私が知らない妖精の世界。それを救うためのアイドルプリキュア……うん、わかった。私はお兄ちゃん達を応援する」
その言葉を聞いて四人は目を見開く。夢乃の事だから影人やこころがアイドルプリキュアをする事に対して最悪反対もあり得たと考えていたのだ。
「良いんですか?夢乃ちゃん」
「はい。……むしろ、私は二回も助けられた身です。反対なんてできませんよ」
「……二回?」
「お兄ちゃんでしょ?ライブの夢を見せてくれて私を助けてくれたの」
夢乃が言っているのはキュアソウルが初めて変身したあの日、マックランダー化していた自分を助けてくれたという事である。
「それに、あれだけ暗かったお兄ちゃんが今みたいになったのはうた先輩達のおかげですし。……私が感謝する事はあっても、反対する理由なんてありません」
「そっか……」
影人はホッとした一方で夢乃には少し複雑な判断をさせてしまったと悔やんでいた。口ではこう言っても、内心では色々と迷いはあっただろう。兄を戦わせる事の抵抗感だったあるかもしれない。それを全て総合した上で彼女は影人達のアイドルプリキュアを認めてくれた。公認してくれたのだ。
「夢乃ちゃん、ありがとうね」
「私達、もっと頑張るから!」
うたやななが夢乃に感謝の気持ちを返す中、こころは一人申し訳なさそうな顔つきで夢乃へと話しかける。
「……あの」
「こころ先輩?」
「……先程、夢乃ちゃんが瓦礫の落下に巻き込まれかけてしまったでしょう?……あの時にああなってしまったのは、私の不容易な行動のせいなんです。本当にすみませんでした!」
こころは夢乃の方に深々と頭を下げる。そんな彼女を見た夢乃は慌ててこころへと気にしないでほしいと伝える事になった。
「頭を上げてください。先程言いました通り、私は先輩方に感謝はしても活動に何かを言うつもりは……」
「それでも……私は、無償で許されるのは……」
こころはそれだけ内心で思い詰めている様子だった。この感じだと何かをしないと彼女自身の気持ちが納得しなさそうである。すると夢乃は少し考えると影人へと一言口を開いた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「何だ?ゆめ……」
「約束、破っちゃってごめん」
「え?」
影人は夢乃の言った言葉に困惑して反応ができない状態になってしまう。その直後、夢乃は影人が止める間も無くスイッチを切り替えたように纏う雰囲気を変えた。それは……彼女がネット上であの顔を見せる時だけにする物だ。
「ドリーム・アイの夢にようこそ。こんにちは、咲良うたちゃん、蒼風ななちゃん、紫雨こころちゃん」
それを聞いた瞬間、三人は目を見開くとうたやこころは何が起きてるのかわからなかった。唯一ななだけは事前にその事を聞いていたのでわかっていたが、画面越しでは無い生で聞いた事は一度も無かったために彼女も固まってしまったのだ。
「ゆ、夢乃ちゃん?今のって……」
「ん〜?私のもう一つの顔だよ。ふふっ、驚いちゃった?」
「夢乃ちゃん?本当に夢乃ちゃんなんですか?」
うたはドリーム・アイについてよく知っていたためにやっぱり夢乃の普段のイメージと合わないその声色に一瞬だけただの声真似を想像したが、夢乃の顔にドリーム・アイの配信画面のアバターが重なって仕方なかったのだ。
「カゲ先輩、これってどういう事ですか!?夢乃ちゃんって、一体何者なんですか!?」
「……やってくれたな、夢乃……。はぁ……。夢乃はここ一年ちょっとの間、不定期だけどVtuber……ドリーム・アイとして活動してるんだ。俺がサポートした上でだけど」
こころはVtuberに関してはまだあまり知識が無さそうなのを見て影人は一応それについてもこころへと説明。その間にうたとななは改めて夢乃と話しをして、本当に彼女がドリーム・アイだと認知する。
「まさかドリーム・アイの本人がこんなに近くにいたなんて……」
「でもどうして?私達にこれを明かすメリットが無い気がするけど」
うたとななが順番に話す中、夢乃はドリーム・アイのモードからいつも通りの話し方に戻すとある提案をした。
「……皆さんにお願いがあります。私と……アカペラアレンジで歌ってみたをやってほしいんです!」
「「「……アカペラ?」」」
影人はそれを聞いて頭を抱えてしまった。完全に夢乃にしてやられた形である。
「あのな、夢乃。前に話しただろ?まだドリーム・アイはアイドルプリキュアとの釣り合いが……」
「……じゃあいつまで待ってれば良いの?一ヶ月?半年?一年?私が追いつく頃にはアイドルプリキュアは世間の中で埋もれてるかもしれない。……きっと、戦いが終わったら話題にもならなくなっちゃう。だから……私は今したい。……その気持ちの何が悪いの?」
影人はそれを聞いて苦い顔をする。アイドルプリキュアとのコラボ。やる事は悪く無いが、それは色々リスクが発生する。
今までアイドルプリキュアがコラボをしてきたのはそれなりに世間に名の通ったものだ。Pretty_Holicに、CDの関連会社……。この辺はチェーン店とかも展開している認知度が高い物。だからこの二つとのコラボは問題無い。ただし、ドリーム・アイはこの二つに並ぶかと言われたらそれはNOだ。
確実に世間からの認知度は下がるし、何故急にこんな無名な配信者とコラボするのかという話になってくる。そうなると変な事を言い出す輩が出るだろう。下手したらここにいる全員がネット上の悪質な人々から言葉のリンチを喰らうかもしれない。
「夢乃、正直俺はオススメできない。色々とリスクがありすぎる。下手したら日常生活に支障が出るぞ」
「影人君。私は夢乃ちゃんの力になりたい」
「蒼風さん……」
ななは影人が悩む中で夢乃の意見を尊重する言葉を言う。それに続くようにうたやこころも声を上げた。
「私も!夢乃ちゃんと一緒に歌ってみたい!そうしたらもっと皆がキラッキランランになると思う!」
「私からもお願いします。……夢乃ちゃんのために、どうにか力になりたいです!」
「……皆さん」
影人は三人からもお願いされる中、やはり決心はつかない様子だ。どうにも、今の現状のままでコラボの話にまで持っていくのは考えたく無いという事だ。
「……せめて、ドリーム・アイ側にもう少し。世間的にコラボして納得する理由がほしい。本当は俺も夢乃の頼みを一蹴したくは無いんだ。……今の事務所に所属していないフリーな状態で不定期配信。かつ、ここまで積極活動ができなかった理由を補填して……コラボしても問題無いような肩書きが無いと」
『……話は聞かせてもらった』
「……え?」
その瞬間、影人がスマホを出すと何故か通話画面に切り替わっていた。先程まで電源を切っていたはずなのに何故かこうなってる事に困惑する影人。
『悪いな、女王様にお願いして通話機能を強制起動してもらった』
「管理者としての職権乱用すんなよ……レイ。てか、よく女王様が許可したな?」
『まぁな。俺もアイドルプリキュアの関係者の一員だ。お前らの話に少し混ざるくらいは良いだろ』
「はいはい。で、お前が出たって事は……」
『ああ。影人が言った条件を満たす手はある。……ただ、色々と手続き踏まないといけない上に俺の父さんや事務所スタッフが納得の上でになるけどな』
「……お前、まさか」
『ああ。夢乃ちゃんを……ドリーム・アイをうちの事務所所属の配信者にする』
つまり、今はフリーの配信者である夢乃ことドリーム・アイをレイの実家の事務所であるサウンドプロダクションに所属した上でそこが主導になった上でコラボをやる。これならドリーム・アイ側の足りない部分の価値をある程度補えるという事だ。
『ただ、所属って言ってもタダでっていうのは無理だ。ちゃんと試験とかは受験しないといけないし、そこで結果を残せないと問答無用で落とされる。うちもそこのラインは譲れないからな』
後は夢乃のやる気と能力次第。そういう話になるだろう。そのため、夢乃はやる気十分な顔つきで返した。
「……私、受けます。少しでも可能性があるなら……賭けてみたい!」
『そうか。……詳しい事はまた影人や親御さん経由で話す。取り敢えず、やる気はあるって事で今日は受け取っておく』
「ありがとうございます……レイ先輩」
それから通話が切れると影人は夢乃に向き合うとまずは彼女へとちゃんと話す事にした。
「……一応言っておくけど、事務所契約するって事はこれまで通りにはやれないぞ?事務所の意向もちゃんと受け取らないといけない。今よりも夢乃への縛りとかもかなり増えるし、キツくなる。それでもやれるのか?」
「やる。……私、そのくらい頑張りたい」
「……わかった。それと、咲良さん達はもし夢乃がこの試験を突破できたらになるけど……構わない?」
「うん!」
「私達、待ってるね!」
「夢乃ちゃんとアカペラができるの……楽しみですから!」
影人はその場の全員が前向きに考えていると判断すると夢乃の気持ちを素直に受け入れる事にした。
「夢乃、所属までの道は大変だと思う。……俺もできる限りのことを頑張るから」
「うん!」
こうして、夢乃へのアイドルプリキュアの正体バレの話、そして夢乃からバラしてしまったドリーム・アイとのコラボの話が決着。前までと比べて色々と変わってしまったが、それでも現状はお互いにその事実を周知の上でそれぞれの活動する事になるのだった。
尚、お互いの活動に関しての口外は禁止というのは変わらずである。これはお互いのためという事で割とすぐに纏まった。
また次回もお楽しみに。