キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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昼休みのラジオ それぞれの夢

握手会及び、夢乃の事務所への勧誘から時間は経って今は学校の昼休み。あれから影人と夢乃は両親に事務所への所属の話をきちんと二人の前で時間を作って話した。

 

最初の方こそ反対の意見もあったが、夢乃が必死に説得したのもあって一応納得はさせることには成功。親方面の問題はある程度取り除かれる事になる。

 

「……はぁ」

 

「影人君。今日は異常なくらいに疲れたような感じがしてるけど、どうしたの?」

 

「なぁに……。夢乃の説得に付き合ったり色々と準備を進めてるからな。普段より疲労感が溜まってるだけ」

 

ななに心配された影人は彼女へと事情を説明。ただ、完全に体調を崩してダウンするレベルでは無いのでまだ深刻では無さそうだ。

 

「俺の方の準備も少しずつだけど進んでいる。……影人も、無理だけはすんなよ?お前の可愛い彼女さんが不安になるからな」

 

「うっせ。普段から色々無茶してるお前には一番言われたくねぇんだよ」

 

影人はここ最近、レイの事を心配する気持ちがそれなりに増幅されていた。自分の事でも家へのしがらみが強くて自由な時間を取られがちなレイが、夢乃の方の処理もやるとなると負担があまりにもかかり過ぎるのではないのかと。

 

「まぁ、俺の方は妖精の手伝いさんもいるし。多少はマシだよ」

 

「おーい!影人君、ななちゃん、レイ君!一緒にご飯食べよ!」

 

そのタイミングでうたも来た。教室の外にはこころも弁当を持って待機済みであり、五人はいつも通りの場所で昼ご飯を食べるべく移動を開始した。

 

「今日のお弁当〜♪めいっぱい〜♪タコさんあげるね〜♪ゼッタイ♪」

 

「ゼッタイ!」

 

「タコ〜♪」

 

「プリ!」

 

うたがご機嫌で歌う中、プリルンがコーレスの合いの手を入れる。そんな様子を微笑ましく見るななだが、影人は僅かに苦い顔をした。

 

「……プリルン、もう隠れるつもりゼロだろ」

 

「まぁ、バレてないからセーフセーフ」

 

「どこが!?」

 

プリルンはうたの肩に全力で乗っかっており、合いの手もそれなりの声で返している。偶々周りはプリルンを気にしていないから良いが、いつ気付かれてもおかしく無いだろう。

 

「ドキドキが止まらない〜♪」

 

「プリ……プリィ!」

 

そして、そんな事お構い無しに歌い続けるうたの前に一人の女の子が来るとプリルンは慌ててうたの背中に張り付く形で引っ込んだ。

 

「あ、みおちゃん!」

 

はなみち中学校の放送部である新野みおであった。ちなみに影人達とは同じクラスである。そんな新野はうたに声をかけられて彼女の前で止まった。

 

「これからお昼の放送?」

 

「うん!」

 

「同じクラスで放送部のみおちゃん!」

 

うたが唯一、ここにいるメンバーの中で彼女を知らないこころへと新野の事を紹介する。

 

「アイドルプリキュア研究会のこころちゃんだよね?……楽しみにしてて!……アレ!」

 

そんな風に新野は意味深な言葉を言うとこころの方は何か心当たりがあるのか、嬉しそうに喜ぶと彼女へと返事を返す。

 

「え……は、はい!」

 

「あー、そういえば今日はアレの日だったか。良かったな、こころ」

 

「うん!」

 

影人の方もこころ経由で話を聞いてたのか、こころへと優しく話すと彼女は更に嬉しそうにする。そんな二人を微笑ましい顔で見る新野。そして、うたやななはどういう意味かわからずに首を傾げた。

 

「「……アレって?」」

 

「……なるほど、こころが喜ぶ理由が大体わかったな」

 

レイも何かを察したのかそう言ってから答えはこの後わかると言わんばかりにまずはいつもの場所へと移動する事に。

 

「そろそろかな」

 

「ねえ、さっきこころが言ってたアレって?」

 

「ふふっ。これの事です!」

 

それと同時に校舎の外壁に付いているスピーカーから校内放送及び、音楽が流れ始める。それはキュアアイドルの曲である“笑顔のユニゾン”であった。

 

『トークの花咲くはなみちラジオ!今週募集したメールのテーマは、イチオシの歌です!』

 

どうやらこころが新野から言われていたのはこのラジオによる校内放送の話であったらしい。こころはこの数日前にメール募集に応募しており、それが放送部の中で採用された形だ。

 

「こころ、本当にアイドルプリキュアが好きなんだな」

 

「勿論です。幾ら私自身がアイドルプリキュアになったとしても、自分が一人のファンである事に変わりはありませんから」

 

こころとしてはこれもある意味では周りへの布教活動の一環として取ることができるだろう。

 

「わぁ……」

 

「キュアアイドルの歌プリ」

 

昼休みには毎週、放送部による“はなみちラジオ”がある。その際に一週間ごとにテーマが決められ、そのお題に沿ったメールが寄せられていく。その中から、放送部の方で実際に起用するメールを選ぶのだ。

 

そしてそのメールは見事、選ばれたという事で今回お昼の放送で流れている形である。

 

『“私のイチオシは、今話題のアイドルプリキュアの歌です!是非皆さんも聴いてみてください!”というメールを頂きました。一年C組の紫雨こころさん。ありがとうございます!』

 

「なるほどね。こころちゃんが送ったメールが採用されたんだね」

 

「はい!メールを実際に読んでもらえて心キュンキュンしてます!」

 

そんな風にこころが嬉しさでいっぱいになる中でうたもうたでそんなこころの行動に好感を持ったのか、彼女も声を上げる。

 

「へぇ……。良いなぁ!校内放送でメールを読んでもらえるなんて……キラッキランラン〜!」

 

「そういや、こころ。彼氏の影人の歌じゃなくて良かったのか?」

 

「あはは……それも考えましたが、ちょっと恥ずかしかったので選曲は放送部の方にお任せしました」

 

その証拠に紹介された文には“アイドルプリキュア”というチーム名での紹介であり、その中だとアイドルプリキュアと言えば一番長く活動しているキュアアイドルの“笑顔のユニゾン”のイメージが一番根強い。そんな事情もあって、今回はキュアアイドルの曲が流れたのだ。

 

「だってよ、影人さん」

 

「別に。こころのリクエストを決めるのはこころだ。俺が勝手にいちいち口出しするような事でも無いだろ」

 

レイの揶揄うような言い方に影人は冷静に対処する。この流れもいつも通りだ。すると新野はコーナーの最後にある事を通達した。

 

『それでは、次回のメールテーマを発表します』

 

「良し来た!私もメールを送るぞ!」

 

それは次回の校内放送におけるメールのテーマの話である。うたはやる気満々でその続きを聞こうとした。

 

『ズバリ!あなたの夢って何ですか?』

 

「え……夢?」

 

うたがそのテーマに思わず言葉が詰まってしまう。そして、それと同時に影人も一瞬反応する。やはり彼も夢の話になると過去の事を思い出して色々と思ってしまうらしい。それから影人達は弁当を広げると昼ご飯を食べ始める。

 

「はい、プリルン!」

 

「あーむっ!はむはむ……プリ〜!」

 

プリルンはうたからの弁当を貰ってその美味しさのあまり、幸せ満開と言った所だ。そんなプリルンの横でうたは先程出てきた夢の話を話題として振る。

 

「私の夢って何だろう……」

 

「……さっきの放送での話か」

 

「うん。ななちゃんは何か思いつく?」

 

「私?うーん……やっぱりピアニストかな」

 

「うんうん!ななちゃんのピアノ、キラッキランランだよね!」

 

「まぁ、順当な答えだな」

 

ななは母親がピアニストという事もあってその影響も強く受け、自身もコンクールで賞を取れるくらいの実力はある。ピアニストを目指すという答えも真っ当な物だった。

 

「こころの夢は何プリ?」

 

「えっ……。私は……ダンサーとか?」

 

「うんうん!超キラッキランラン!」

 

こころの方はダンスを毎朝トレーニングしているというのもあって、周りからも評価を得ている。前にダンス部の寸田から直接勧誘もあった事もあって今、一番彼女が夢として浮かべやすいのはそれだろう。

 

「レイ君は……」

 

「あっ、うたちゃん。その話題は……」

 

「あー。折角夢の話で盛り上がってる所悪いな。……俺に目指す夢なんて無いよ。うちの事務所の方に行く事になってるし。ほぼ決定事項だから」

 

レイに質問しようとしたうたを止めようとしたななだが、レイは苦笑いするとうたへと返事を返す。その際の言葉を聞いて一同は気まずい空気になってしまった。レイの前で一番してはいけない話をしたのではないかと思ってしまったのである。

 

「……俺は気にしてないし、そんな暗くならなくても大丈夫。俺も俺でちゃんとケジメは付いてるしな」

 

レイはその場の空気を戻すためにそう言うとひとまず気を取り直してこころがうたへと質問する。

 

「じゃ、じゃあ改めて。うた先輩はどうなんですか?」

 

「うーん……。さっきからずっと考えてるんだけど……わかんない!」

 

「「え……」」

 

そんな風に開き直って間抜けな顔をするうた。彼女の返しに唖然とする二人。影人は完全に思考が停止したような彼女の顔に溜め息を吐く。

 

「咲良さんはある意味平常運転だな」

 

「あ、そういえば影人君の方は聞いてなかったけど……」

 

「……別に。俺は夢なんて持ってない。……やりたい事だって見つかってないし」

 

影人はそんな感じで久々に見せた割とガチの素っ気ない態度である。そんな彼にうたが問いかけた。

 

「夢乃ちゃんのサポートとかしてきたんだし、マネージャーとかはどう?」

 

「……別に。アレはマネージャー志望でやってるわけじゃない。あくまで色々と迷惑をかけた夢乃への恩返しとしてやってるだけ」

 

「「「恩返し……?」」」

 

「プリ?」

 

「ああ。ま、これ以上この話を話してやるつもりは無い。ただ、俺には夢や目標を目指せる資格なんてハナから無いんだよ。どうせ……俺なんか……」

 

影人はそんな風に自信なさそうな声色になってしまう。彼も彼で夢に関しては色々とあった身なのだ。むしろ、そのせいで最初はあんな風になっていたのである。やさぐれるのも仕方ないのだろう。

 

「カゲ先輩。私はカゲ先輩が輝く姿。沢山見てます。……きっと良い夢が見つかるって信じてますから」

 

「……悪いなこころ、今回ばかりは無理かもしれない」

 

こころは影人を励ますものの、彼自身の気持ちの問題のためになかなか芳しい返事とは言えなかった。それ以降は一旦ご飯を挟んでからゆっくり話すという事でまずは昼ご飯の弁当を食べる事になる。ただ、その後でも結果影人の顔は浮かないままだったが。

 

それからご飯を食べて余った残りの昼休みの時間や学校にいる時間を使い、うたは色々と夢について考えるものの、上手く答えは出なかった。影人の方も未だに気持ちを持ち直せていないのか、どこか先程まで以上に疲れた様子でいる事に。

 

「さてと……帰るか」

 

「影人君!一緒に帰ろう」

 

「ああ。わかった」

 

そのまま放課後になってしまうとななに誘われて影人達は一緒に家への帰路につくのであった。




また次回もお楽しみに。
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