キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
翌日の朝。影人はまたいつものように登校しているとこちらもまた登校中であるこころと出会う。
「あ、カゲ君。おはようございます!」
「ああ。おはようこころ」
「……カゲ君?どうしたんですか?何だか眠そうで」
影人は多少睡眠不足なのか、昨日に増して眠たそうな雰囲気を出していた。とは言っても、まだダウンしてしまうような重症では無いが。
「悪いな。ちょっと昨日の夜、色々あって眠りが浅かっただけだ」.
「……ここ最近のカゲ君、疲れてるようですし……あまり無理しないでくださいね」
「ああ。善処する」
そんな中、二人は登校のために通学路を歩いているとそこにななとレイが二人で歩いてきた。
「あ、なな先輩にレイ先輩!おはようございます!」
「おはようこころちゃん、影人君」
「おはよ。……レイ?昨日のアレ、どういう事?」
影人はレイに出会うなり真っ先にそれを問いかける。そもそもの話だが、ドリーム・アイが影人によって支えられているという事実を知る人間は少ない。影人は絶対に他人への口外なんてしないし、その事実を知っているのはうた、なな、こころ、レイの四人だけ。となるとレイの父親こと音崎ハジメへの流出経路は息子であるレイのみになる。
「その件については悪かった。……俺も話したくは無かったんだが……社長が試験をやる上で夢乃ちゃんの情報を正確に欲しいと言われてな」
要するに、試験をやる上で必要な情報収集の際にレイが父親に嫌でも情報を話さざるを得なかったという事になるだろう。
「約束を破ったのは本当に済まない。罵っても構わない」
「……わかったよ。俺も社長の立場ならそういう情報はちゃんと集める。こっちこそ、疑って悪かった」
影人とレイは昨日の話の件についてお互いに納得すると話に置いて行かれたななとこころがキョトンとしていた。
「えっと、何の話をしていたの?」
「ちょっとした業務連絡だよ」
「夢乃への試験に関連して必要な事をやってただけ」
二人からの説明になな、こころの二人は一応納得。それからこんな暗い話は置いておいてと言わんばかりに話題を切り替えようとした時だった。そのタイミングで四人の方に向かってくる影。それはプリルンをお泊まり会で作ったポーチに入れ、鞄を肩にかけてやってきたうたであった。
「……あっ、おはよう。うたちゃん!」
「「ええっ!?」」
「……いっ!?」
そのうたの様子を見ると影人は眠気なんて吹っ飛ぶ程に驚く。そしてそれはななやこころも同じであった。レイだけは何とか声を上げなかったものの、うたの様子に絶句する。
「おはよ、おはよう……ござおはよう」
そこにいたのは口から魂が抜け出る寸前となってしまい、完全に中身の無い人形と成り果ててしまったうたであった。
「嫌な予感はしてたけど……流石にこれは」
「ああ。俺の想像の斜め上……いや、状況的に見たら斜め下だな」
「どうしたの!?」
「うた先輩、魂が抜けかかってます!せめてその出かけの魂だけでも戻してください!」
一同がうたの変わり果てた姿を見て彼女を心配する中、うたはその顔つきのまま事情を説明する。
「昨日の夜ね、私の夢って何だろうって考えてたら……」
「眠れなかったんですね?」
「違うプリ」
こころがうたが悩むあまり眠れなかった可能性を指摘するが、それは一緒に暮らしているプリルンが反論する。
「うたは夢の事を考えようとした瞬間、すぐに寝てたプリ」
「いや、そこでも寝るのは早いのかよ」
「だとしたらその夜の寝つきの良さを今の俺にも少し分けて欲しいかな」
このして見るとうたが寝不足になって目にくまを作ったりするのはかなりの異常が起きない限りあり得なさそうに見えてくる。
「寝るのはちゃんと出来たんですね」
「じゃあどうしてこんな風に?」
「えっとね、夢の中でも夢考えてて……夢が夢で。結局夢見つからなくて……」
「もう訳がわからないな」
「要するに夢の中でも夢探しをしたものの、結局見つからなかったって事ね」
「そんな感じー。それじゃあ、また夢探してくる」
それからうたは明後日の方向に歩き始めると近くにあった電柱に激突。しかし、そんなのもまるで関係無いとばかりに電柱へと顔を押し付けるとゾンビみたいに手を前に出して無気力に前へと進もうとし続けた。
「うたちゃん!?」
「ダメだこりゃ」
「うた先輩、止まってください!電柱にめり込んでますって!」
「……さてと。これはどうにかしないとだな」
それから影人達に半ば誘導される形で学校への登校を終えると授業へと入る。ただ、うたの調子は戻らないままなので授業中もずっとその状態のままだった。
「起立!礼!」
「「「「「「さようなら!」」」」」」
時間は経過して夕方。影人達は帰りのホームルームの挨拶を終えるとそれぞれが下校や部活動のための動きを開始。そんな中、影人はまた前日同様に机に突っ伏していた。
「やっと終わったぁ……」
「あはは、ずっとうたちゃんのフォローしてたもんね……」
この日、影人はあまりにも見てられない状態のうたを可能な限りフォローしてきた。例えば授業中に教師に当てられたうたが立ち上がると気の抜けた対応をして指摘を受けた時は何とか彼が理由を捩じ込んで誤魔化し、移動教室では目を離したら変な方向へと進むためにななが手を引く中で周りへの弁明に奔走。
とにかくうたへのフォローに走り続けたせいで一人、ノックダウン状態になっていたのだ。
「というか、レイも少しは手伝ってくれよ」
「えー?折角影人の面白い所見れてるのにわざわざそれを放棄するのはなぁ」
「レイはこんな時でも通常運転すぎるだろ……」
影人はレイが通常運転である事に半ば呆れるとそのタイミングでこころが教室の外にやってきたのが見え、一同は場所を変えることにした。尚、この時もうたはなながしっかりと手を引いて誘導した模様。
「というわけで。うた先輩の……」
「「夢を探そうプロジェクト!」」
「イェーイ、ドンドンパフパフ!」
「お前らノリノリだな……」
説明しよう!彼女達が立ち上げた夢を探そうプロジェクトとは、自分の夢を見つけられずに悩みに悩んだ挙句、寝ている時の夢にまで夢探しが出てきてしまっているうたを救うための物だ。
このプロジェクトの目標は、夢が決まらないうたの夢を探し出してそれを自分の目指すべき夢だと自覚させる事である!
「なんかナレーションまで便乗してるんだが……」.
「私の夢、見つかったんですかー?」
「それは自分で見つける物だよ!うたちゃん」
「私達がやるのはそのお手伝いです!」
影人がいつも通り、変なノリに呆れた所でななとこころがうたと話す。そして、それを見た影人は具体案を聞いた。
「それで、具体的にはどうするんだ?」
「私達がこれからうた先輩に幾つもの職業を提示しますので、うた先輩がその中で夢や目標にできそうな物を探すんです」
「なるほどな。じゃあ早速やるか」
「はい。ではうた先輩。まずは心を無にしてください」
「心をムニムニ……」
こころに心を無にするように言われたうただが、意味を誤解したのか膝の上に座っていたプリルンを手でムニムニし始めてしまう。
「ムニムニしてるプリィイ……」
「うたちゃん、しっかり!」
「ムニムニじゃなくてゼロ!虚無の無。心を無にして少しでもキュンキュンしたら……それがうた先輩の夢です!」
こころが再度うたへと説明する中、彼女は未だにポカーンとしたままであり、影人はそんなうたを見て不安に感じてしまう。
「夢ぇ?」
「……大丈夫か?これ。もうこの時点で嫌な予感しかしないんだけど」
「ま、まぁきっと大丈夫です!それでは行きますよ!まずはこちら!」
こころはななに重なるように立っていたが、そこから横に退くと先程からななが持っていたスケッチブックを見せる。そこには可愛いパティシエの姿をした女の子の絵があった。
「パティシエ!」
「パティシエ?」
「蒼風さん、普通に絵上手いな」
「そうかな……」
レイがななの絵の上手さを褒めるとななが照れくさそうに微笑む。するとうたはパティシエの絵を見つめてから自分がパティシエになる妄想を浮かべる。
「パティシエって……キラッキランラァアアン!」
うたは立ち上がるとハイライトに黄色い星のような形の物が浮かび、狂気に染まったようなキラッキランランを叫ぶ。
「うおっ!?うた先輩……」
「夢はパティシエって事?」
「ポエーッ……」
ななとこころはいきなり反応があった事に驚く中、影人とレイは冷静な顔つきをしたまま二人へと話しかける。
「ちょっと咲良さんの反応、おかしくなかったか?」
「キラッキランランの言い方のニュアンスも変だった感じに見えるけど」
「むむ……。でしたら他にも試してみましょう!」
「そうだね!次はこちら、看護師!」
ななはページを捲るとそこには看護師の絵がある。うたはそれを見ると先程と同様の思考をしてから同じ反応を示す。
「キラッキランラァアアン!」
「うわあっ!?えっと、じゃあこちらは?」
「パン屋さん!」
「キラッキランラァアアン!」
「保育士!」
「キラッキランラァアアン!」
「トリマー!」
「キラッキランラァアアン!」
そこから先はある意味地獄とも呼べるリピート作業の繰り返しだった。うたは次々に出てくる職業を見ては同じように“キラッキランラァアアン!”と普段よりも狂気じみた叫びをするのみで、まるで思考という物が正常機能していないようだった。
もっとも、今のうたの思考が正常機能するとは到底思えないが……。そして一通り終わる頃には日は沈みかけ、夕焼けの空となっていた。
「取り敢えず言わせろ……お前、もっと真面目にやれよ!?」
「まぁまぁ、咲良さんは今思考が丸々抜け落ちてる状態なんだ。この状態で正常な判断なんてできないだろ」
ここまで無駄な時間に付き合わされた影人はここまでのストレスもあってか声を上げる事になり、レイはそれを宥めた。
「全部キラッキランラン」
「うた先輩、夢見つかり過ぎです」
「そうじゃなくて見つかってないからこうなってるんだけどなー?」
そんな風に周りで話がある中、うた自身は頭から蒸気が出ている状態である。それは頭が回ってない時に無理矢理情報を投げられて発生するオーバーヒートを避けるための蒸気にも見えた。
「どんなお仕事も……キラッキランラン」
「うたちゃんがヘロヘロに……」
「むむむ、次行きましょう!」
「いや、この辺にしておけって。今の咲良さんには何を言っても無理だから」
影人はこれ以上この不毛な時間を増やしたく無いと言わんばかりであった。むしろ今はうたに無理に夢を見つけさせるのではなく、一度休ませて心を回復させるべきだと思っているくらいである。
「あ、そういえばアイドルとかはどうなんだ?咲良さん、アイドルプリキュアだしプリキュアの名前もアイドルだし。リアルアイドルも目指せるんじゃないのか?」
レイがうたへと問いかけると先程までボーッとしていたのが一時的にハッと我に帰ったのか、瞳にハイライトが戻る。
「アイドル?」
「プリ?」
「アイドルは…….キュアアイドルは夢?……アイドルは夢じゃないよ。だって私、キュアアイドルだよ。夢って未来の話でしょ?」
うたは先程までの魂の抜けっぷりはどこへやらと言わんばかりにまともな答えを返すと立ち直る。
「言われてみれば……夢はこれから叶える物ですし」
「確かに」
それからうたは立ち上がると完全に立ち直った様子で自分へと目指すべき夢を示そうと頑張ってくれた四人へのお礼を言う。
「ななちゃん、こころ。それに影人君にレイ君。ありがとう。一人でちゃんと考えてみるよ!」
それから一同は解散。そんな中で影人、なな、こころの三人が小川の流れる橋の上で話していた。レイは例の如くこれ以上は一緒にいられないと先に行ってしまったのだ。
「うたちゃんの夢、見つかると良いね!」
「はい!私はキュアアイドルと出会って、心キュンキュンして。毎日が楽しくなりましたし!」
「俺も咲良さんからは色々助けられたしな。まぁ、今回はあれだけ振り回しておいて唐突に戻りすぎだけど」
「あはは……。私はうたちゃんから勇気を貰った。今度は私たちが何かできたら良いね!」
「はい!」
それから時間は進んで薄暗くなっていく。そんな中、ななも別れて影人とこころは二人きりとなるとこころが口を開いた。
「カゲ君も夢を見つけたらどうですか?」
「……俺にそんな物は要らない。あったって邪魔なだけだから」
「カゲ君……。私はそんな事無いと思いますけどね」
影人の目から希望のニ文字が薄れていくのを見たこころは影人の手を繋いで安心させようとする。
「大丈夫ですよ。私達が付いてますから」
「ああ。ありがとう。……こころにはそろそろ話さないといけないかな」
「え?」
「俺の過去に何があったのか」
その言葉を聞き、こころは思わず影人の方を向く。影人はそれからこころと共に近くの公園のベンチに座ると彼はこころへと向き合う事になるのであった。
また次回もお楽しみに。