キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
その日の夜。チョッキリ団のアジトではカッティーがバーのカウンター席に座りつつ何かを見ていた。そこにあったのはリリースされたアイドルプリキュアのCDである。
「ふふっ。買ってしまったのですぞ。これで、フルの曲を聴き放題なのですぞ」
カッティーがそんな風に上機嫌な中、そこにザックリーが歩いてくるとその目線はCDの方へと向けられた。
「……なっ!?カッティー!?お前、そのCD買ったのか!?」
「のわあっ!?おっと!」
カッティーは同僚にバレて慌てて服の内ポケットに隠すが、割ともう遅い。ザックリーが詰め寄ると言及する。
「はっ!何考えてんだお前!しかも聞いた話だとお前、コイツらと戦うどころかボーッとしてから何もせずに戻ってきたらしいな!」
「し、仕方ないのですぞ!相手は四人いるのですぞ!自分、しっかりとした作戦を練ってから……」
カッティーは流石に戦わずに帰ったのは体裁が悪いと思ったのか、慌ててもっともらしい理由を付けて乗り切ろうとする。そんな二人の喧嘩を見かねたのか、チョッキリーヌが声を上げた。
「お黙り!」
「「は、はい!」」
「はぁ……。前回、せっかく私が出たのにスラッシューのせいでほぼ空気にさせられて。正直ムカついてるのよ。……カッティー、ザックリー。相手が四人と自分達よりも多人数が相手になるのがそんなに気になるのなら……今日は全員で行こうじゃないか」
チョッキリーヌはここまで敵であるアイドルプリキュアに対して少人数で挑んでいたのに対し、ここにきて全員での出撃を提案。するとそこにスラッシューも話しかける。
「ふふっ。面白い話をしてるわね。何なら私も混ぜてほしいですわ」
「「す、スラッシュー様……」」
「何だい?スラッシュー。言っておくけど、今回はアンタのの出る幕は……」
「へぇ。良いのかしら?そんな事言って」
スラッシューの挑発的な言葉にチョッキリーヌは眉を潜めると鋭い目を向けた。
「……どういう事だい?」
「相手は四人って言ったでしょう?私も入れればこっちも四人……数の上で互角になるのに何でそんな風に言うのかしら?まさかと思うけど、負けた時の口実作りではありませんかね?」
その瞬間、チョッキリーヌはまた苛立ったような顔になる。正直、それはそうだろう。もし三人で挑んで負けたとなればここまでの流れ的に三人だから四人相手に勝てなかった。こっちは一人少ないから負けても仕方ない。そんな風に言い訳しそうな気がしてならなかったのだ。
「でも、アンタは他人と組むのは嫌じゃないのかい?」
「別に。……今回は構わないわよ。特別にあなた達三人に協力してあげますわ」
「……仕方ないね。ここは協力する事にするよ。アンタ達も良いね?」
「「イェス、ボス!」」
これにより、チョッキリーヌ、カッティー、ザックリー、スラッシューの四人による今回限りの共同戦線が張られることになるのだった。
翌日の放課後。うたがいつも通りきゅーたろうの散歩をしているとプリルンはきゅーたろうの上にちょこんと座っており、彼女にしては珍しく大人しくしている。するとそこに影人が通りかかった。
「あっ、影人君!」
「咲良さん……」
「こんな所でどうしたの?」
「別に……。ちょっと外を歩きたい気分だっただけ」
影人がそう言う中、うたは影人の様子が少し変な事に気がつく。影人は今日の学校でもそんな素振りを見せなかったために気になった。
「……影人君、何でそんなにソワソワしてるの?」
「ッ、何でもない」
「影人君。こころの前でもそうやって隠すつもりなの?」
影人はそれを聞いて一瞬動きがピタリと止まる。こころはきっとこんな自分を見たら心配するだろうし、何でもないと言えば絶対に嘘だと見抜いて自分に嘘を吐いたことを詰め寄ってくるかもしれない。そう思った影人は観念して話す事に。
「……じゃあ話すけど……咲良さん。俺は夢をまた追いかけられるのかな」
「え……?」
「昨日こころに話したんだけど、俺は昔のある出来事が原因で自分に夢を追いかけるのは無理だ無理だって気持ちばかり浮かんでる。……でも、その度に胸の奥が締め付けられるって言えば良いのかな」
影人は昨日、こころに話した事で気持ちに多少の変化が出ていた。それは、自分は夢を追いかけてはいけない。自分にそれを叶える力が無いという、やる前からそもそも諦めるという行為をしている自分の姿に疑問を抱いているのだ。
「俺は……自分で輝けなくて。他人の光に混ざって輝く事しかできない。でも、それを言い訳にしているような気がして……」
影人は脳内がバグっているかのような感覚に陥っており、どこか調子が狂っているようだった。
「ぷっ……ふふっ……」
「なっ!?何で笑うんだよ」
「影人君、それじゃあもう答え出てるじゃん」
うたは影人が一人で変な挙動状態になっているのが少しおかしくて噴き出すと笑ってしまう。影人が慌てる中、彼女は影人へと答えを返した。
「影人君は自分の夢さえ見つけられればちゃんと目指せるよ」
「だが……今までずっと夢なんて見ないって思ってたから、その……何も浮かばなくて」
「じゃあ私と一緒だね!……影人君、ちゃんと話を聞いてくれたこころに感謝しなくっちゃ」
影人は昨日までずっと自分なんかが夢を見つけても無駄だと思っていた。それは過去の出来事を引き摺る事によるトラウマであり、影人を縛る鎖だ。
しかし、こころへと過去の話をしてから影人は急に気持ちが軽くなったような気がすると考え方にも変化が現れていたのである。それには恐らく、こころが別れ際にしてくれたキスや彼女の言葉も一つの心理的な要因になってるだろう。
「……ああ。こころには……感謝してもしきれない」
「プリ、影人。嬉しそうプリ!」
それから二人が歩きつつ夢について話す事に。どうやらうたは未だに自分の夢を見つけられていない様子だった。
「私の夢……どこにあるんだろう」
「プリ〜」
するとそんな中、二人の正面から歩いてくる一人の男性がいた。それを見た二人は目を見開く。
「あっ……カイトさん!」
「お久しぶりです」
二人の挨拶にカイトも気がつくと三人で話をするために海が一望できる展望台のような場所に三人は並んで座った。きゅーたろうは大人しく座っており、プリルンはうたの上にぬいぐるみとして膝の上にいる。
「……という事があって、夢が何なのか。ずっと考えているんですけど、わからなくて」
「そっか。……ま、それも自然だと思うけど」
「えっ、そうなんですか?」
「……誰だって自分の本当の気持ちを知るのは難しい。自然にわかる時が来るのを待つのも良いんじゃないか?」
影人はその言葉を聞いて納得の気持ちを浮かべていた。確かに、今の現状ですぐに決めないとダメ……という訳ではない。むしろ、うたは校内放送のためのメール応募の事もあって多少焦っているくらいだった。焦っては結局良い結果になり得ない。となると多少時間をかけてでもちゃんと見つける方が良いだろう。
「それならいつか……。友達のななちゃんやこころ、レイ君。そして影人君も手伝ってくれてるんです!このお仕事とかどう?って!色々一緒に考えてくれて……皆といると……とても楽しくて!」
「ふふっ。良い友達だね」
「はい!凄く大好き!一緒にいると毎日がキラッキランラン〜!」
うたは上機嫌にそう言うとカイトはそんなうたへとある事を話す。それは、うたにとって答えへと近づける一つの鍵になった。
「それってさ……。そこにあるかもよ?君の夢」
「え?」
「夢は一人で追うものとは限らない」
その直後、近くの木の柵の上に止まっていたカモメ達が五羽揃って飛び立っていく。
「そっか……そうだよね……!」
うたは立ち上がるときゅーたろうは自分の飼い主が移動する気になったと思ったのか、空気を読んで起き上がる。影人はそんな主人と犬の連携に唖然とした。
「カイトさん、ありがとうございました!」
「って、えっ!?もう行くのかよ!?」
そのまま影人を置き去りにしてさっさと行ってしまったうた。影人は以前も状況が違うとはいえ、似たような事になっていたためにデジャヴを感じてしまう始末だ。
「咲良さん、こう見ると嵐のようだな」
「……影人君も同じように感じてる?」
「はい。俺は、今の現状が大好きです」
それを聞いて影人は考える間も無くカイトへとその答えを即答した。そして、それができるという事は彼も友達との時間が大切な気持ちが強いという事だろう。
「そっか」
「……カイトさんは最初からアイドルを目指そうとしてたんですか?」
「……秘密だよ」
その言葉を聞いて影人はカイトからの返答に彼も彼でここまで来るまでに色々苦労はしてきたのだろうと察するとそれ以上は深く詮索しない事にした。
「そうですか。……わざわざ忙しいのにすみません」
「その感じだと、夢への迷いが友達のおかげで消えたって感じかな」
「はい。……本当にこの街に来て、大切な友達達に会えて良かったです」
それは嘘偽りの無い影人の本心であり、この街に引っ越してきてうた達と会えた事が幸せに感じている証拠であった。
翌日の朝。学校に登校する影人。その隣にはいつも通りこころがいた。こころは影人と手を繋いでおり、幸せそうな顔をしている状態だ。
「こころ、歩く速度。大丈夫そう?」
「うん。むしろ、私に合わせてもらってありがとうございます。……カゲ君。過去の事を話してくれてから気持ちが軽くなりました?」
「……ああ。ずっと溜め込んでいた胸のつかえが降りたような感じ。こころこそ、前よりも積極度上がった?」
「えっ……えっと……」
こころは頬を赤くするとアホ毛が動揺を表しているのかぴょこぴょこと動く。
「こころって頑張ると決めた事にはストイックで侍みたいな真面目さがあるけどさ。こうして見たら普通の可愛らしい女の子なんだなって、いつも思える」
「ッ、か、カゲ君だって。昔と違ってあんなに暗い人になっちゃったのかなって思ってたら……その、カッコ良さは変わってないって。そんなの反則です」
二人はそれから笑い合うと正面からななやレイも合流。四人で話しているとそのタイミングでうたもやってくる。
「あっ、うた先輩!夢探しプロジェクトの第二弾。準備万端です!」
「今度はこのお仕事辞典を見ながら考えよ?」
影人達はうたの夢探しプロジェクトに関する次の案を持ってきており、今度はななが手にしている辞典を見ながら探そうと言った所だ。
「このお仕事辞典には何と400種類のお仕事が載ってまして。これだけあればこれだけあれば、うた先輩にとってキラッキランランな夢がきっと見つかるはずです!」
「ゆっくりで良いから、じっくり探そうな」
「俺達も咲良さんの夢探し、精一杯手伝うから」
そんな四人を見たうたは自分のために色々と動いてくれる皆からの温かさが嬉しいのか、微笑みを見せると走っていく。
「ありがとうね!こころ、ななちゃん。影人君にレイ君!あのね、私……わかったかも!」
うたがそう話す中でそれとほぼ同時刻、別の場所ではチョッキリ団のメンバー四人が姿を現す。
「さて。さっさとやるよ」
そんな中、四人の視線の先にはうた達の学校の放送部のメンバー四人が登校中と言った所である。
「ふっ……。丁度良い。あの四人のキラキラをチョッキンするよ!」
「「イェス、ボス!」」
「……なら、私もやろうかしら」
四人はターゲットを放送部の面々に定めると早速いつもの召喚の儀式を始めた。
「お主のキラキラ」
「「オーエス!」」
「「「「うわぁああっ!」」」」
四人はキラキラを奪い取るとすかさず水晶と素体の人間を合わせることでマックランダーを呼び出す。
「カッティーン!」
「はい、ザックリ行くぜ!」
「チョキッとね!」
「切り捨てスラッシュ!」
「さぁ来な!」
「マックランダー!」
「世界中をクラクラの真っ暗闇にしなさい!」
これにより、四人はマックランダーを召喚。ただ、出てきた四体のマックランダーの内、三体……チョッキリーヌ、カッティー、ザックリーの個体は体の部分はスピーカーで手にはマイクを武装したマックランダーである。スラッシューの個体は一体だけ姿が違い、三本のコードの差し込み口と三つのダイヤル式音量調節装置を体に付けたミキサー式タイプのマックランダーであった。
「「「「マックランダー!」」」」
それを受けて近くにいた人々は逃げ惑う中、その影響は登校中のうた達の元にも行くわけで。
「うた先輩、夢が見つかったんですか?」
「うん!私の夢は……」
「ブルっと来たプリ!?」
うたが見つけた自分の夢を話そうとするとその瞬間、プリルンはいきなり現れたマックランダーに体を震わせた。
「えっ!?」
「また面倒なタイミングで来てくれたなぁ……」
ひとまず五人はマックランダーのいる方向へと走る。プリルンはレイが直接抱える形で預かる事になった。
「ええっ!?」
「マジかよ……」
「マックランダーが四体も……」
「って、多すぎですよ!」
「た、た、た、大変プリ!?」
だが、これを見て逃げるという選択肢は五人には無い。うたを筆頭にプリキュアの四人はブローチを取り出す。
「行こう。私達四人ならきっと助けられるから!」
そして、四人は光に包まれると同時にブローチにリボンを装填し、その姿をプリキュアへと変えていく。
「「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」」」
四人が同時に言うとブローチの両側のスイッチを押し込む。これにより四人は姿をプリキュアへと変えていった。
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「キミと昂る、ハートの情熱。高鳴る魂、キュアソウル!」
「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」
四人が変身を完了して降り立つと目の前にいる四体のマックランダーと対峙する事になるのであった。
また次回もお楽しみに。