キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人はいきなりハートの木に果実のように生った桃。そこから生まれて来た謎の妖精と正面から向き合って思わず声を上げてしまった。
「えええっ!?」
「め、メロ!?」
どうやら向こうも出てきた瞬間には自分の前にいた影人に驚いたのか、声を上げている。
「い、い、いきなり桜の木に桃が出てきて、そこから妖精……どっかで聞いた流れだけど……いや。アレは確か川から流れてきたって言ってたよな。実際に二度目も川から流れてきたし」
「メロ……」
そんな中、目の前にいる妖精は自分を見て逃げる事無くこちらを見ていた。そのため、影人はひとまず声をかける。
「あ、あの……」
「何メロ?メロロンは人探しで忙しいのメロ。一刻も早くねえたまに会いたいのメロ」
「メロロン……それが君の名前か」
「そうメロ」
「初めまして。俺は黒霧影人」
メロロンと自分の事を名乗った妖精。体は薄いピンク色。目元には紫色のハート模様が存在し、首元と尻尾には濃いピンク色のふさふさした毛も生えていた。また、お腹にはプリルン同様に音符マークが付いている。ただし、彼女とは違って二つの音符が繋がって模様だったが。
瞳は濃い青紫で、下側にはマゼンタの星形のハイライト。黒とピンク色のツートンカラーの耳が特徴的で、両耳の下側をリボンで結んでいる。おでこのあたりの毛は二つに分かれていた。背中には小さな紫のリュックを背負っている。
名乗ったわけではないが、名前を聞けたので影人の方もメロロンへと自分の名前を名乗る事に。そんな中、メロロンは素っ気ない様子で影人にはあまり興味が無いと言わんばかりだった。
「あまりあなたと話すつもりは無いのメロ。メロロンはねえたまに会いたくてこっちに来たのメロ」
「………」
影人はそんなメロロンの話を聞いて無言になる。どうやらこちらが話をしたくても向こうは下手したら取り合ってくれなさそうなのだ。影人が前に聞いた話だとキラキランドはチョッキリ団の襲撃を受けて真っ暗闇に染まり、尚且つ妖精達は殆ど壊滅的被害を受けたという。だが、目の前にいるメロロンはその荒廃しきったキラキランドから来ている。
という事はその辺りの事情にも詳しいはずなのだ。それに、影人は無性に目の前にいるメロロンにどこか親近感を抱いているのである。
「……なぁ、メロロン」
「メロ?」
「そのねえたま?って言うくらいメロロンが慕ってるお姉さんの所に連れて行こうか?多分、それに該当しそうな妖精さんは何人か知ってるし」
「メロ!?ねえたまの所に連れて行ってくれるのメロ!?」
「あ、ああ。……その、ねえたまっていうのが誰か教えてくれるなら……」
影人は目の前にいるメロロンを放っておけなかった。それに恐らくだが、メロロンをこのまま放置したら勝手に“ねえたま”というメロロンにとって大切な仲間の妖精を探してその辺を飛び回るだろう。
そうなれば前に初めてこの街に来たプリルンと同じ。悪目立ちするのは目に見えている。少しでもメロロンが自分で浮かんで移動する事によるリスクは抑えておくべきだと影人は感じたのだ。
「ねえたまはねえたまなのメロ」
「……オッケー。ひとまずここでずっと立ち話するのも何だから一度場所は変えようか。……肩に掴まっててくれ。多分、勝手に抱かれるのは嫌だろ?」
影人はメロロンへとそう言うとメロロンは影人の気遣いに甘えてフワリと浮かんで影人の肩へと掴まる。
「良し。じゃあ、歩きながらそのねえたまに該当する妖精を特定しようか」
それから影人は自分が知っているサウンドプロダクションにバイトに行っているお姉さんっぽい感じの妖精の名前を一人ずつ上げていく。
「……は違う?」
「違うメロ。本当にねえたまを知ってるのメロ?」
「マジか……。全員ハズレかぁ」
だが、影人の質問も虚しく。影人がメロロンにとってのねえたまの妖精候補を挙げても全て違うと言い切られてしまった。
「……なぁ、そのねえたまっていうのはメロロンにとってはどんな子なんだ?」
「別れた二つの命……。夢に見たあなたの面影。……運命の糸は動き出し、二つはまた一つになる。メロロンはねえたまに早く会いたいのメロ……」
「なるほど。要するに今すぐ会いたいくらいには大切な子って事ね」
影人はそんな風にメロロンの呟くポエムを聞くと少し考え込む。先程もそのようなポエムがあったため、彼女はそれを呟く癖みたいなのがあるのだと察した。
また、影人はメロロンのそんな心情を通訳してから彼女を気遣うように声をかける。
「……大丈夫。メロロンにとって大切なお姉さんは俺が見つけるから」
そう手慣れた様子で優しく声をかける影人。この辺りは幼い頃に泣きそうになった夢乃を笑顔にするためにやってきた事が生きている形だ。
「メロ……」
「一応確認だけど、メロロンは他の何よりも“ねえたま”の事が大切だって事だよな?」
「メロ。ねえたまはメロロンにとって眩い光メロ。……って、何でメロロン、考えてる事を全部あなたに話してるのメロ」
「今更かよ……」
影人はメロロンがそんな風に言ったためにツッコミを入れる。ただ正直な所、悪い気持ちはしてなかった。ここまでの様子を見てメロロンは恐らく、他人とそこまで関わるのが得意では無い。それなのに初対面かつ信用できるかわからないはずの自分とちゃんと話そうとしてくれている。
そのため、自分は少なくとも敵とは思われてないという事に安堵を覚えたのだ。
二人が移動していく中、それと入れ違うタイミングでハートの木の元を訪れたスーツ姿の田中。彼はハートの木を見上げると未だに花が咲いているハートの木が気になっていた。
「……花がまだ咲き続けている。この木に限って、何故?……アイドルプリキュアが生まれた事と何か関係が……」
田中がそんな風に思考する中、近くから犬の鳴き声が聞こえてきた。田中がその方向を向くとそこには女性に連れられた白い犬が何かを見て鳴いているのだ。
「わんわん!」
「ほら、行くわよ」
「くぅん……」
犬は残念そうに鳴くと飼い主の女性に連れられてどこかへと行ってしまう。そんな中で田中は犬が鳴いていた場所へと近づいていく。
「……ん?これは……。ひとまずレイさんに連絡を!」
田中は慌てた様子でレイに連絡を飛ばすととある場所で集まる事を約束。そして自身は見つけた物を拾って急いで集合場所へと向かった。
それから少し時間が経過。喫茶グリッターではうたがきゅーたろうへとご飯を出していた。
「きゅーちゃん!ご飯だよ〜!」
きゅーたろうはうたから差し出されたご飯を食べ始める中、うたはそんなきゅーたろうをプリルンと共に見ている。その直後、グリッターの戸が開け放たれると田中がやってきた。どうやら、彼がレイとの集合場所にしたのはここらしい。
「お二人共、大変です!」
「田中さん……どうしたの?」
「これを!」
田中が持ってきたのは先程メロロンが誕生した際に木に実っていた桃であった。うたはその桃に見覚えがあるのか、声を上げる。
「あっ!?それ、前に見た事あるやつ!」
「プリルンが乗ってきた物と同じ物プリ!」
うたもプリルンと初めて出会った際にこの桃は見ているので、懐かしささえも感じていた。そこにレイも来る。
「田中さん、アレが出てきたのは本当ですか?」
「レイ君まで……」
うたはレイも来たのを見て今回の件は只事では無いのだと察する事になる。
「これが新しく来たのってレイ君が飛んでくるくらいの事なんだね」
「ああ。何しろ、キラキランドの中にダークイーネ襲来以降でプリルン以外の妖精の生き残りがいた証拠にもなるからな」
「なるほど……」
うたがレイの説明に納得する中、田中はまずこの桃についての説明を開始する事になる。
「これはM・O・M・O、通称……
「桃……」
「やっぱり毎回思うが、ネーミングがそのまま過ぎるな」
「この桃は、キラキランドの住人がこちらの世界に来るために使用する物」
どうやらキラキランドの常識では桃は食べる果物というより、こちらへの移動用のカプセル的な印象が強いらしい。
「……って、それと何の関係があるんですか?」
うたのボケを聞いてレイも田中も滑りかけてしまう。どうやら先程からうたもその肩に乗っているプリルンも事の重大さに気がついていないらしい。先程のレイからの説明への納得もどこへやらと言った感じだ。
「これが落ちているという事はつまりですね。……キラキランドから何者かがやってきたという事です!」
田中にそう言われた直後。二人の思考は一瞬硬直すると事の重大さをようやく認識。思わず叫んでしまうのだった。
「ええーっ!?」
「プリ〜!?」
それから一度落ち着いたうた達。きゅーたろうはいつの間にかご飯を食べ終わったのか、桃が気になる様子で匂いを嗅いでいた。
「あれって……ハートの木の近くで見つけたんですよね?何でそんな所に……」
ちなみに今は田中はグリッターでのバイトモードなのか、洗った皿を拭いている所である。
「はなみちタウンのシンボルであるハートの木。……実はキラキランドと繋がっているんですよ」
「……へ?」
衝撃の事実を聞いたうたは凍りつく。まさか街のシンボルマークが異世界と繋がっているなんて思いもよらない事であるからだ。
「俺も向こうには行ってないから話でしか聞いた事は無いんだけどな?キラキランドの方にはなみちタウンに繋がるゲートがあって。そこを潜ると時空の狭間に繋がってからハートの木に桃が実るんだとよ」
「どういう仕組み!?」
うたはその話を聞いて理解不能といった顔つきとなる。これに関しては影人がこれを聞いたら全く同じ反応をするだろう。そのくらい非現実的な話なのである。
「まぁ、その辺の仕組みは深く考えるだけ疲れる物だから、あまり気にすんな」
「レイ君も何でシレッと受け入れてるの!?」
レイも最初は本気で考えたものの、考える内にそういうものだという諦めにも近い思考となったのだ。
「……しかし、誰がやってきたと言うのか」
「はい。キラキランドの住人はダークイーネによって全員水晶に閉じ込められていて。その日以降、安全確保の観点からキラキランドへの移動を禁止しているのでうちのバイトさんじゃ無いと思いますし」
一応、レイの実家にバイトとして雇われている妖精達はキラキランドが真っ暗闇と化して以降はずっと帰っていない。帰っていないのなら向こうには動ける妖精なんて誰一人いないはずなのである。
「プリ……」
「田中さんは何か女王様に聞いたりしてますか?」
「いえ……。私からは連絡できないんですよ。桃も偶々見つけただけで」
「じゃあレイ君は?確か連絡用のアプリを使えるんでしょ?」
レイはそれを聞くと申し訳なさそうな顔つきでうたの期待に応えられない旨を伝えた。
「悪いな……。アレはあくまで女王様からしか通信を送れない。勿論、こっちから呼びかけ自体はできるけどアプリを起動する権限があるのは女王様側だけ。女王様がこの話を聞いても何も反応しないって事は何か訳アリって感じだろうな」
どちらにせよ、ここからでは打つ手無しという事になってしまう。うたは悩んでしまう。
「うーん……偶々見つけた桃。それの中身も聞けなくて……一体どうすれば……」
そんな中だった。プリルンはうたの話す偶々という反応に何かを思い出したのか、声を上げる。
「偶々プリ……」
するとプリルンの脳裏に一人の妖精が浮かぶ。そしてそれは今現在、影人と一緒にいるメロロンの姿であった。
「プリーッ!?きっと、メロロンプリ!」
「メロロン?」
「プリ!」
「メロロン……初耳ですね」
どうやら田中さえもメロロンの存在は知らないらしい。田中が知らないとあればレイも全くわからない。バイトの妖精達に聞けばわかるかもだが、生憎今ここには誰一人いないのだ。
「そのメロロンはどうしてるか知ってるのか?」
「プリ!ダークイーネからプリルンとメロロンは二人で逃げてきたんだプリ!」
同時刻。影人は一度休憩がてら、メロロンに諸々の事情を聞く事になった。どうやら、彼女はねえたまと一緒にダークイーネから逃げてきたらしく。そして自分がここに来る数ヶ月前にキラキランドで女王様ことピカリーネからねえたまと言える存在がはなみちタウンにアイドルプリキュアを探す使命を得る中で、一人向こうの世界に取り残されたらしいのだ。
「……なるほど。メロロンはたった一人で姉と慕える存在無しで真っ暗闇のキラキランドにいたのか」
どうやら、当時のキラキランドに残された力では妖精一人を送るのが限界だったらしい。そのため、メロロンは一人孤独にキラキランドの扉の前で数ヶ月も足踏みをさせられる結果となってしまう。
「……ねえたまはアイドルプリキュアを絶対に見つけてくるって言ってたメロ。でも、ねえたま無しじゃ……メロロンは……」
メロロンの目に涙が浮かぶ中、影人は彼女を優しく撫でるとメロロンは影人へと素っ気なく話しかける。
「何でメロロンの事をそんな風にするのメロ」
「……別に。俺にもよくわからない。ただ、メロロンからは少し前の俺に重なるところがあるような気がしたからかな」
「……メロ。誰かに照らされる二つの闇……惹かれ合うそれはまるで周りとの違いに苦しみ孤独を支え合うかのよう……。って、やっぱりメロロン、おかしいのメロ!何で初対面のあなたとの事が頭に浮かんでしまうのメロ!!」
その瞬間、キョトンとしたのような影人の顔。ただ、影人はそんなメロロンのポエムを笑う事無く受け入れた。
「ありがとうな。メロロンからしたら俺なんて赤の他人だし、怖い所もあると思う。多分、数ヶ月前の俺ならメロロンの事を見てももっと素っ気なく接していた。それは俺がメロロンと同じように大好きな何かに暗い自分を照らしてもらえたから……かな」
影人の言葉にメロロンはあまり良い気分じゃ無いのか、フワフワと浮かんでさっさと行こうとする。
「メロ。メロロンは早く先に行ったねえたまと会うのメロ。ここでジッとなんてしてられないのメロ!」
メロロンはキラキランドで一人、扉の前でひたすらに願い続けた。“ねえたまの元に行きたい”と。その想いが通じたのか、時間こそ消費したもののどうにかこちらの世界に渡る事ができたのである。
「そうだな。俺も何でかわからないけど、メロロンの事はこのまま放置できない。……あと、そのねえたまって子とのエピソードを聞いて何と無くその相手が誰か分かった気がする」
「本当メロ!?」
「そのねえたまって、プリルンの事だろ?」
メロロンはそれを聞いた瞬間、ブンブンと頭を縦に振る。どうやら正解らしい。
「わかった。だったら尚更案内は楽だ。ひとまず、声とかだけでも聞くか?」
「メロ!?どうやるのメロ!?」
それから影人はスマホを開くとうたへとビデオにした上で電話をかける。するとグリッターにいるうたはそれに気がついてビデオでの電話に出た。
「もしもし、咲良さん?」
『影人君。急にどうしたの?ビデオ通話なんて珍しいね』
「まぁ、色々あったんだ。なぁ、プリルンってそこにいるか?」
『プリ!ちゃんといるプリよ!』
「わかった。お前に会いたい子が……」
「ねえたま!?ねえたまーっ!」
「ぐはあっ!?」
『影人君!?』
その瞬間だった。影人へと横から物凄いスピードでメロロンがタックルすると彼を押し除けて奪い取ったスマホ画面を凝視する。
「メロ!ねえたま!会いたかったメローッ!!」
『メロロン、本当に来てたプリ!』
「痛ててっ……メロロン、声聞こえた瞬間にいきなりタックルとか扱い酷いな……。取り敢えずそういう事だから今からそっちに行く。場所は……」
『プリ!メロロンを迎えに行くプリー!』
「……へ?」
その瞬間、プリルンが勝手にメロロンを迎えに行くためにグリッターから飛び出してしまったらしい。うたは慌てて影人へと返事を返しつつプリルンを追う事になる。
『ちょっ、プリルン!?ひとまず場所はまた後で言うから!あとななちゃん達も呼んでおくね!メロロンの事を紹介しないとだし!』
「待て、咲良さん!話を……」
影人はそう言うものの、電話は無慈悲にも切れてしまう。そして、メロロンの精神の不安度はさらに上がったように見えた。
「ねえたま、早く会うのメロ……影人!早くメロロンをねえたまの所に連れて行くのメロ!」
「わかった、わかったから落ち着け!焦ったら会えるタイミングが遅くなるぞ!」
影人はジタバタするメロロンを何とか止めるとどうにか彼女を宥めてプリルンといるうた達と合流するべく、二人は行動を開始する事になる。
また次回もお楽しみに。