キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
はなみちタウンにやってきたメロロンを連れた影人は彼女が“ねえたま”と慕うプリルンの元に連れて行くために街中を移動中だった。そんな中、影人はかなり疲れた様子である。その理由が……。
「ねえたま〜!どこメロ〜!」
「メロロン、静かにしてくれ……すみません、何でも無いです!!」
メロロンはとにかくプリルンに会いたくて仕方がない状態だ。そのため、影人が街中を歩いていようがお構い無しに声を上げてプリルンを呼びまくる。終いには今にも飛び出そうと暴れてしまうため、影人は抑えるので精一杯な状態になっているのだ。
「ごめんなさい、何でもありません」
加えて影人はメロロンにやりたい放題されても、彼女を強く抑えるのを躊躇っていた。メロロンは繊細で一途な子だと、先程の会話で何となく感じ取っている。そのため、あまり強く抑えてしまうと事態が余計に悪化すると考えた影人はそこまで強くメロロンに物を言えなかったのだ。
「メロロン、お願いだからせめてあと二十分で良いからぬいぐるみのフリをしてくれ……。そうしたら会えるから」
「本当メロ?それだけ我慢したらねえたまに会えるメロ?」
時間を設けてその間だけでも大人しくしてもらうという形でどうにかしてメロロンの暴走を止めた影人。うた達からも合流場所を通達されたために影人はなるべく早めにそこに行こうと移動をする。
何も無ければ時間にして十五分もかからない場所だ。しかも向こうからかかる時間は約十分前後。そうなると到着するタイミングぐらいには向こうは既にそこで待っているはず。メロロンも抱えている不安が次にいつ爆発してもおかしくないのでもう時間との勝負だ。
「あと少しだからな、もうちょっと我慢しててくれ」
うた達との合流場所まであと五分もかからないと言った場所まで来たその時。メロロンの視界にある物が映ってしまった。そして、それは紛れも無いプリルンである。
「メロ!!ねえたま!」
「へ?」
「会いたかったメロー!」
影人は一瞬、メロロンが上げた声で脚が止まると同時に腕が緩んでしまう。メロロンはすかさず影人の腕から飛び出すと視線の先に映るプリルンへと真っしぐらに突撃する。
「メロロン、待て!それは……」
その直後。メロロンは何かに激突するとそのまま顔を押し付ける形となってしまう。
「メロッ!?」
「はぁ……まさかCM出演がこんな所で悪影響を出すとは……」
どうやらメロロンが突撃してしまったのは前にプリキュアがキュアアイドルやキュアウインクだけだった時に受けたPretty_HolicのCMのポスターである。その際にプリルンもマスコットとしてアイドルの手に抱えられたので映ってしまっていたのだ。
「ち、違ったのメロ」
そんな中、動いている空飛ぶウサギがいれば人だかりもできてしまうので影人はひとまずメロロンを回収すると彼女へと言い聞かせた。
「お願いだから急に飛び出さないでくれ……。会えて嬉しいのはわかるけど、こういう事もあるから……」
「メロ……わかったのメロ」
メロロンの声色は明らかに落ち込んでいる。プリルンだと思って突撃したのがポスターであり、そのせいで未だにプリルンと会えない現状が寂しいのだ。
同時刻。うたとレイの二人は呼んでおいたなな、こころと合流。四人で移動している。尚、プリルンはうたの肩にちょこんと乗っかっている状態だ。
「まさか、カゲ先輩が新しくやってきた妖精とお友達になるなんて」
「私も話を聞いてビックリしたよ」
「早くメロロンに会いたいプリ!」
「もう少しだからね〜」
ななやこころはまさか影人がメロロンと出会ってすぐにお話しができる関係になったのを聞いて、数ヶ月前の影人からはあり得ないくらいに明るくなったのが嬉しく感じていた。
「アイツ、挫折が無かったらもっと自分に自信を持ったコミュ力お化けになってたのかもな」
レイは影人が過去にあった挫折のせいで今のような状態になっているのを惜しいとさえ思っている。ただ、挫折をした上でこの街に引っ越したからこそ今の影人がいるわけで。
「影人がいてくれなかったらきっと今頃街中で大騒ぎだっただろうな」
実際問題、影人が面倒を見ている現状でもプリルンへの気持ちが強すぎるメロロンはただひたすらにプリルンの元に行こうと暴走しているのだ。影人がいなければ人前でもっと飛び回った挙げ句、色々と厄介な事態になったに違い無いだろう。
そんな中、プリルンが視線の先に何かを見つけたのかいきなり声を上げる。
「プリ!?アレは……」
プリルンの視線の先にあったのはピンクと黒の色合いがツイストしたような物である。
「メロロン!見つけたプリー!」
「えっ、プリルン!?」
どうやら、その色合いからメロロンがいたとプリルンは判断。彼女に会うために一目散に飛び出していく。
しかし、現実はそう都合よく行くものではない。プリルンはメロロンと思った物に飛びつこうとした瞬間。いきなり彼女も何かに激突すると顔を押し付けてしまう。
「プリ!?」
そこにあったのはお菓子のマシュマロスティックであった。メロロンの耳は黒とピンクのために勘違いしてもおかしくは無いが……流石にスティックと妖精では形が違いすぎる。
「これは……ちょっと違うような……」
「メロロンってこんな感じな細長い子なのでしょうか」
「いや、多分違うからな?」
そんなやり取りがある中、プリルンはメロロンだと勘違いしたマシュマロスティックが気になったのか未だに張り付きっぱなしだった。
「そういえば、プリルンは何でそのまま……」
「食べたいプリ……」
「え?」
「うた、これを食べてみたいプリ!これを食べたらきっとメロロンに会えるプリ!」
「なんかどこかで見たパターンだよね!?」
そんな風にうた達にマシュマロスティックをねだるプリルン。ひとまず小腹が空く時間だという事もあって全員でそのスティックを食べる事にした。本当にメロロンとの合流はどうしたのやらと言った所である。
それはさておき。影人とメロロンの方ではメロロンが疲れたのか項垂れていた。
「ねえたま……。どこメロ?」
「もう着くからな。あと少しの辛抱で……」
すると影人とメロロンは集合場所の付近に来ると、メロロンの視線の先に購入したマシュマロスティックを食べるうた達が見える。勿論プリルンも一緒だ。
「メロ!?今度こそねえたま!」
そして、メロロンが声を上げた事で影人も影人でうた達の存在を認識。メロロンへと声をかけようとした。
「お、やっといた。メロロン、お待たせ。プリルンの近くに……」
「ねえたま!ねえたまーっ!」
メロロンは今度こそ本物のプリルンを見つけたために声を上げると影人が直接連れて行くよりも先に彼の腕を飛び出してしまう。
「えっ!?メロロン、待て!」
影人の制止も虚しく、メロロンは一気にプリルンの元へと飛んで駆け寄って行く。その直後だった。いきなり影人の視界からメロロンが消えてしまう。
「……あれ?」
影人が何故かいきなりいなくなったメロロンに困惑すると影人が周りを見渡す。そんな中、彼の上からメロロンの声が聞こえてきた。
「カァーッ!」
「メローッ!?」
影人が見たのはまさかのカラスに背中の鞄を咥えられてしまったメロロンである。どうやら、先程メロロンが突撃した瞬間。タイミング悪く来てしまったカラスがメロロンを連れ去ってしまったのである。
「おいおい、嘘だろ!?」
影人はうた達との約束を気にするが、当のメロロン無しで行っても無意味なために彼女を連れ去ったカラスを走って追いかけていく。
「ちょっ!泥棒カラス!お前、止まれって!」」
「カァーッ!」
そんな事を言っても人間の言葉がわからないカラスが止まるわけがない。カラスはメロロンの鞄を咥えたまま飛び去ってしまおうとする。
「メロ、このまま捕まるなんて……嫌なのメロ!メロロロロッ!」
その直後、メロロンは咄嗟の切り札とばかりにその場で高速回転。長い耳をカラスの目に当たるように繰り出すとカラスはいきなり目へと攻撃されたせいで堪らずメロロンを離してしまう。
「メローッ!!?」
ただ、空中にいるカラスからいきなり解放されたために落下するメロロン。影人はそんな彼女を慌てて下から抱き止めようと構えた。
「……あ、そういえばメロロン飛べるのメロ!」
「ズコーッ!?」
影人は構えた分だけ損をしたと言わんばかりに滑ってしまうとメロロンも疲れてしまった様子なので近くの公園に移動してからうた達に連絡する事にした。
「今、咲良さん達に再度連絡したから。今度は咲良さん達から来てくれるって」
しかし、メロロンの顔は浮かない。先程のタイミングでプリルンは目の前にいたのだ。それなのに鳥からの攻撃というイレギュラーがあったとはいえ、プリルンとの再会をお預けにされたのである。落ち込んでしまうのも無理は無いだろう。
「ねえたま……どこメロ……」
影人はそんな風に今にも泣きそうなメロロンを見て頭をまた優しく撫でる。
「大丈夫。きっと会えるから」
「どうしてそう言い切れるメロ」
「メロロンの事を大事に想ってくれる人がいるのなら……最後にその人は迎えに来てくれるって事」
「……わからないメロ」
メロロンは影人の言葉の意味がわからずに困惑する。それからメロロンは脳裏にある事が浮かんだ。それはキラキランドがダークイーネに支配される前の事。桜の木の下で本を読むメロロンへとプリルンは声をかけた。
〜回想〜
「メロロン!何してるプリ?」
「……本読んでるメロ」
メロロンの素っ気ない返しにプリルンは純粋な心で彼女の手を取ると影になっている桜の木の下から外に連れ出した。
「な、何メロ?」
「こっちの方が温かいプリ!」
プリルンとしてはメロロンに温かい場所に行ってほしかっただけであった。ただ、メロロンはプリルンのその行動の意味がわからずに本を読むのを邪魔されたと思って不機嫌になる。
「別に良いのメロ。……放っておいてほしいメロ」
「プリ!メロロンのリボンが取れそうプリ!」
メロロンはプリルンを拒絶しようとするが、プリルンはそんな事よりもと言わんばかりにメロロンの耳に付いているリボンが緩んでいるのに気がつく。
「メロ?」
「結んであげるプリ!」
プリルンはメロロンがどれだけ拒絶しても温かい光をメロロンの心に差し続けた。それは、一人だったメロロンにとっては救いの光だったのである。
〜現在〜
メロロンはプリルンに会いたいと言わんばかりに右耳を触る中、そこに一人の少女が泣きながら歩いてくるのが見えた。
「ひぐっ……ぐすっ……どこ……」
どうやら迷子になっているらしい。そんな中、影人はメロロンを自分の座っていた場所に置くと少女の前にしゃがむ。
「どうしたの?」
「ううっ……お母さんと逸れちゃって」
影人はそれを聞いてどうするべきか悩む。逸れている子なら自分も探してあげるべきなのだろう。しかし、今の自分はうた達を待っている身。そうなれば、ここを下手に動くことはできない。そんな中でメロロンは少女が困っているのを見て放っておかなかったのか、声を上げる。
「大丈夫メロ。メロロンが側にいるのメロ」
「……あれ?」
勿論、勝手に動くメロロンを見た影人は顔を凍り付かせてしまう。メロロンには影人からあまり動くなと言ってある。それなのに、未だに勝手な動きを見せるメロロンに影人は顔を強張らせてしまった。
「ウサギさんが喋ってる!?」
「ウサギさん?メロロンはメロロンメロ!」
とこのようにプリルンが最初、うた達と出会った時にした名乗りのように名乗るとメロロンは少女に寄り添いたいという気持ちが強かったのか。少女へと更に話しかける。
「……メロロンも大切な人を探してるのメロ」
「そうなの?」
「……この想いは時空を越えて、あの人の元に飛んでいく。二人は引き寄せられ、また微笑み交わしあう」
そんな風にメロロンがいつものポエムを口ずさむ中、少女は意味がまるでわからずに首を傾げる。
「……なぁに?それ」
「メロロンの気持ちメロ」
「簡単に言ったら、君がお母さん大好き〜って言うみたいに、メロロンにも大好きな人がいるから会いたいな〜って事だよ」
少女は影人からの補足を得てやっとメロロンの言葉の意図に納得。それと同時に彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「ありす〜!」
「お母さんー!」
それからありすと呼ばれていた少女は無事に母親と合流。そんな二人を見たメロロンは目を見開いていた。
「本当に会えたメロ」
「ああ。だから言っただろ?大事に想ってくれる人がいるなら最後にその人は迎えに来てくれるって事」
メロロンは影人の言葉の意味をようやく理解。影人の方へと顔を向けていた。
「メロ。……影人の言ってたことの意味って」
「うん。こう言う事。ま、思っていたよりも早く解決して良かったよ……」
影人は親子が再会を果たして話している中、一度メロロンから目を離してしまう。
「あの!ありすの面倒を見ていただき、ありがとうございます!」
「いえ、当然の事をしただけで……」
「メロロンも一緒にいてくれたから平気だったよ!」
ありすがメロロンの事を言い出すと影人も彼女を見るためにその方を向く……が、メロロンの姿はそこには無かった。
「……ん?なんかデジャヴを感じるけど……まさか!?」
影人がまた上の方を向くとそこにらまたメロロンを捕まえたカラスが遥か上空を飛んでいるのが見えていた。
「メロ〜ッ!」
「お前、懲りてなかったのかよ!!」
それから影人は大慌てでメロロンを連れ去ってしまったカラスを走って追いかける。果たして、影人に安寧の時は来るのだろうか……。
また次回もお楽しみに。