キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人がメロロンの事で悪戦苦闘する中。チョッキリ団アジトにて、チョッキリーヌは一人頭を抱えて青い顔をしていた。
「不味い……不味いよ……」
「どうかされましたかな?」
カッティーが恐る恐る聞く中、チョッキリーヌは立ち上がると苛立ったように詰め寄る。
「アンタ達!抜け抜けと……抜け抜けと!」
チョッキリーヌがかなり高圧的な態度で詰め寄ると彼女はある点についての指摘をする。
「前回、私達全員で力を合わせてもあのザマだ。気に入らないスラッシューの力込みでもだよ!こんな事……ダークイーネ様に知られたらどうなるやら……」
「別に……普通に怒られるんじゃないのかしら?」
するとチョッキリーヌの後ろから聞こえてくるスラッシューの声。チョッキリーヌは振り向いて彼女を見ると食ってかかるように声を荒げる。
「何を呑気に話しているんだい!大体、あの時はアンタがキュアソウルを止めるのを失敗したせいで負けたでしょう!」
「……言葉を返すようだけど、それを言うなら何であなた達は一対一の状況になった時点で即仕留めなかったの?」
スラッシューの真剣な言葉にチョッキリーヌは言葉に詰まってしまう。確かに状況的に見ればスラッシューのマックランダーを倒されたのが逆転の一歩目だが、その少し前。例えばバフでの強化中のマックランダーなら一人だけのアイドルプリキュアを十分倒せたはずなのである。
「私がキュアソウルに怯まされてマックランダーをやられたのは誰が見ても間違いないわ。そこは認めましょう。でも、その手前。アイドルプリキュアを三人バラバラにしたのに時間稼ぎをされて合流を許した挙げ句、そのまま纏めてやられたのはあなた達の方。そこの責任はあなた達にあるのじゃないかしら?」
スラッシューの鋭い指摘にチョッキリーヌは言い返すことができなかった。要するに前回のあの大敗は全員の責任だと認めるべきとスラッシューは話したのである。
「ぐ……だとしたら尚更不味いよ。ダークイーネ様に知られる前に次の手を……」
『苦戦しているようだな』
「ヒッ……」
その瞬間、前も聞いたその場を威圧するような声を聞いて全員に緊張感が走る。すると、四人の影が伸びるとダークイーネの影が姿を現した。
『妾は全てを見通している』
「ダークイーネ様……」
チョッキリーヌはすっかり怯えており、カッティーやザックリーも自分の直属の上司が怯えているのを見て同じく戦慄していた。ただ一人。スラッシューだけは平然としている。
『恐れるな。……妾の力を与えてやろう』
ダークイーネがその体から赤黒く、禍々しいエネルギーを放出するとそれがアジトの中にある宝箱のような箱へと飛んでいく。そして、それが開くとマックランダーを呼び出す際に使っている水晶へと取り込まれていった。
「これは……」
『アイドルプリキュアが進化したとあればこちらもそれに対抗する。ただそれだけの事』
水晶は青紫に近い色から赤紫の色へと変化。更に形も大きくなっており、一目見ただけでパワーアップがわかりやすくなっていた。
『これでアイドルプリキュアとまともに戦えるようになっただろう?速やかに世界を真っ暗闇にするのだ』
ダークイーネの言葉にチョッキリーヌはパワーアップした水晶を見て自身が戻ってきたのか、笑みを浮かべるのだった。
そんな中で未だに落ち着いた顔を変えないスラッシューへとダークイーネは話しかける。
『スラッシュー。随分と余裕そうだな。あの三人とは違って』
「ええ。……焦っても状況の打開には繋がりませんし、アイドルプリキュアは侮れない力を付けてきていますわ。準備も進んでいますし、無茶は禁物ですわよ」
『そうか。だが、幾らお前だとしても妾の気がいつまでも持つとは思っておるまい?』
「勿論ですわ」
『ならば良い。せいぜい、妾のために世界を真っ暗闇に染めるのだ』
「承知していますわ」
スラッシューは終始落ち着いた対応をする中、ダークイーネは姿を消す。そして、そんな中で彼女の手にはマックランダーを呼び出す水晶が変化した物とは別で丸く、黒い水晶を手に持っていた。
「……握手会の時に打っておいた仕込みも少しずつ実ってきている。早くこの力と共に戦いたい物ね」
スラッシューは手にした水晶の中に黒い影の姿で人が体育座りのような状態なのを見て彼女は笑みを浮かべる事になる。
その頃、場面は変わって公園の中。影人はメロロンを連れ去ったカラスを下から走って追いかけていた。
「め、メローッ!離してメローッ!」
「何でただ咲良さん達と合流するだけだったはずなのにこんな事になってるのかな!?」
今現在、メロロンはカラスに背中のリュックを咥えられる形で連れて行かれている。最悪の場合、メロロンにリュックを手放させればメロロンだけはどうにかはなるだろう。だが、彼はメロロンにリュックを手放させては絶対にダメだと……そんな予感がしていた。
「(最悪変身できれば助けには行ける……。でも……)」
「メロロンー!」
先程、メロロンによって助けられた少女。ありすも一緒に追ってきているので変身もできなかった。アイドルプリキュアの認知度の高さを考えればありすも知っている可能性が出るからである。何なら彼女の母親も来ているので変身したら確実にバレるだろう。
「メロ!メロ!メロ!」
メロロンはどうにか脱出するために体を振ることで逃げようとする。しかし、カラスも今度は同じ手を喰らうまいとメロロンの耳が目の射程圏内に入らないように先っぽの方で掴んでいる。このままでは耳による目への急所攻撃はできない。
「メロ……。メロロンはねえたまに……絶対、会うのメロー!」
メロロンは一か八か、体を前後に振るとブランコが大きく振れるようにして前に一気に飛び出る。こうなるとカラスは先端で咥えていて挟む力が小さかった事もあってメロロンは無事に脱出できた……が。
「やった、やったのメロ!」
「良し、このままこっちに飛んで……」
だが、メロロンは脱出成功の余韻に浸ったせいで空中に浮かぶという行為ができなかった。
「メロ!?メローッ!」
「へ!?」
そのまま逢えなくメロロンは落下すると真下に偶々あった高い木の中へと落下。ただ、メロロンはそのまま地上にまで落ちることは無かった。メロロンは落下の感覚が無いと思って目を開くと何故自分の体は何かによってその場に留まっていた。
ふと見上げるとそこには自分の背負っていたリュックが細めの木の枝に引っかかっており、結局宙ぶらりん状態になってしまっていた。
「メローッ!!」
「メロロン……どうしよう」
影人達三人はどうにかメロロンが落ちてしまった木の下に到着するものの、その木はかなり高さがあった。そのため、下から見上げても鬱蒼とした枝や葉が見えるだけでメロロンの姿は全く見えない。
「………仕方ない」
影人は持っていた荷物や貴重品を全て出すと誰かに盗られなさそうな茂みへと隠す。それから袖を捲って服が極力傷つかないようにした上で準備体操を始めた。
「お兄ちゃん、どうするの?」
「……大丈夫。ここは俺に任せて。メロロンの事は絶対助けるから」
影人はそう言ってサムズアップしてから木をよじ登り始めた。勿論多少の足場らしい所はあるが、それ以外には体を安定して預けられる所なんて無い。加えて、木はそれなりに太いので難易度はかなり高そうだった。
「お兄ちゃん、頑張って!」
影人は自分の体の筋力や予測力を活かしてどうにかメロロンを助けるべく上へ上へと登っていくとようやく枝のある場所に到達。そこから少しだけ休むとその姿はあっという間に鬱蒼と生えた枝の中へと消えていった。
その頃、公園の入り口付近。影人に頼まれてやってきたうた達四人とプリルン。彼女達は影人からメロロンが一度いなくなってしまったために再び合流できたことを受けて、公園にまで来てほしいという連絡を受けての行動だった。
「カゲ先輩もメロロンも見つかりませんね……」
「公園で待ってるって言ってたのに……」
「また何かあったのかな」
「メロロン、心配プリ……」
「影人が近くにいるから大丈夫なはずだけど……」
そんな中だった。四人の近くから聞こえてくるメロロンを呼ぶ声。それを聞いた四人はその場所へと移動。そこにはありすとその母親が下から見上げる形で木の下にいたのだ。
「おーい!メロロンー!」
「すみません!」
「メロロンの事、知ってるの?」
ありすの声に釣られてうた達は木の下へと移動。そしてうたはありすへとメロロンについて問いかけた。
「うん。メロロンがカラスに捕まって……木のてっぺんに行っちゃったの。それに、お兄ちゃんがメロロンを助けに行くって……」
その言葉を聞いた瞬間、四人の顔が一度凍りついてしまう。それから苦笑いした。尚、ありすの母親は後から来たために未だに状況が深く理解できていない様子だった。
「一体、何の事なのか……」
「なるほど……カゲ先輩、この木を登るなんて無茶しすぎですよ」
「うん。でも、影人君ならやりそうな気がする……」
そんな中、ありすは母親に言われてもうこれ以上はこの場に居られなさそうだった。
「ありす、そろそろ行かないと……」
「でも……お兄ちゃんもメロロンも……」
「大丈夫!メロロンの事は私達に任せて!」
それからうた達はメロロンの事を任せるように言うとありすは納得。それからありすとその母親は去って行った。残されたうた達は木を下から見上げる。
だがやはり、枝が鬱蒼としているせいで上の方は見えていない様子だった。加えて影人が登っている影響か、多少木も揺れている様子である。
「とは言ったけど……」
「この高さじゃ普通に登るのは無理だね」
「私でも多分難しそうです」
この四人の中では一番運動神経の良さそうなこころやレイでも木を登るのは困難だ。加えて影人が既に途中までは登っているのでこれ以上人が木に登るのはリスクが高すぎるだろう。
「でも、約束した以上は絶対に助けないと!だから安心して、プリルン!」
そう言ってうたが肩を見るものの、そこにはいつの間にやらプリルンの姿は無かった。彼女が慌てた様子で周りを見渡すと上からその声は聞こえてくる。
「プリ〜!メロロン、今助けるプリ!」
うた達四人が上を見上げるとそこには一人飛べるプリルンが木の中へと突っ込んでいくのが見えた。
「「「プリルン!?」」」
「えっ!?プリルン待て!」
レイも策を考える中でプリルンが行ってしまった事に慌てるが、もうこうなったら彼女を止めるなんてできない。
「メロロンはとっても、寂しがり屋さんプリ!なのに……知らない所で独りぼっちでいるプリ!」
プリルンは上に上にどうにか進もうとするも、どうやらプリルン達妖精にも飛行の高度限界があるのかどんどん上へと行く速度は落ちていく。
「プリ!プリ!プリ……プリー!」
そして、遂にそれ以上行けなくなると力が抜けて落下。下からその声を聞いていた四人は思わず声を上げる。
「「「「あっ!」」」」
そんな中、落下するプリルンの手を掴む影が見えた。そこにはやっとの思いで上の方に登ってきた影人がいたのである。
「たくっ。普段は迷惑かけまくるくせにこういう時の動きは早いんだな。誰の影響を受けたのやら!」
「影人!?」
「メロロンを助けるんだろ!落ちないようにしっかり掴まっておけ!」
影人はメロロンを視界の邪魔にならないように頭の上に乗せるとそこからも影人は枝を上手く足場にして更に上へと移動。そして、ようやくメロロンの姿を確認する。
「いた!」
「プリ!だから、そんなメロロンの側に……プリルンがいたいプリー!」
そして、そんな中でメロロンは諦めの気持ちになってきているのか元気が無さそうだった。
「メロ、ねえたま……助けて、ねえたま」
するとメロロンの視界に影人とその頭の上に乗ったプリルンがいる。そして、その二人を見たメロロンは驚いたように目を見開いた。
「メロ!?ね、ねえたま!?」
「メロロン、久しぶりプリ!」
「良かったな。メロロン。ねえたまに……プリルンに会えてさ」
「で、でもねえたまだけじゃなくて……影人もどうしてメロ……」
メロロンがよくよく見ると影人は服が多少木のせいで傷ついていたり、体にも枝とかのせいで付いた傷とかもあった。隣のプリルンも傷こそあったものの、体が小さいために枝の干渉が最小限のために影人と比べたら軽微な物である。
「別に。メロロンがさっきからずっとプリルンと会いたくて不安になってるのは見てたからな。それに、カラスに捕まっても諦めずに一人で頑張ってた姿。……俺はちゃんと見てたから。そんなの見たら、助ける以外の選択肢なんて無いからな」
そんな風に聞いたメロロンは嬉しさのあまり、目に涙が浮かぶとリュックが引っかかってる影響で動きづらいはずなのにプリルンやその下にいる影人にも抱きつこうとする。
「ねえたま……会いたかったメロ!会いたかったメロ!会いたかったメローッ!影人も……助けてくれてありがとうなのメロ!ありがとうなのメロ〜!」
そのまま泣き出してしまうメロロン。そんな中でメロロンがあまりにもグイグイと体を寄せるものだから影人の頭から離れて少しだけ浮いている。プリルンは押し込まれ始め、しかも影人の顔にも近づきつつあった。
「プリルンも……プリ、メロロン。そんなに押したら危ないプリ!」
「あの、プリルン。何だかプリルンが押し戻されてるように見えてるけど気のせいかな!?落ちて来ないよね?今の俺には対応できな……」
その瞬間、メロロンをその場に繋ぎ止めていたリュックがプリルンへの抱きつきによって前に前にとズレていくとそのまま枝から外れてしまう。
「「「……え?」」」
そのままプリルンとメロロンが顔面に思い切り激突し、めり込まれた影人はバランスを崩して腕や脚がしがみついていた木から離れてしまう。
「あっ……ヤバっ……」
「プリーッ!」
「メローッ!」
「何で俺までこうなるんだよーっ!」
三人は纏めて成す術なく落下を開始。プリルンとメロロンは抱き合う中、影人は背中から急な勢いで落下していく。影人は咄嗟にプリキュアへと短縮変身をしようとするが、そこでブローチもリボンも無い事に気がつく。
「しまったぁ!今変身できないんだった!」
それは木登りのために身につけていた物を全部木の下にある茂みに隠してしまったからこそ起きた悲劇だった。プリルンとメロロンが落下する中、影人はそんな二人の下側を重量の関係で先に落ちていく。勿論下から見上げるうた達もそれに気がつくわけで。
「嘘、影人君も一緒に落ちてきた!?」
「無理無理無理!プリルンとメロロンだけならともかく!」
「カゲ先輩もなんて無理ですって!」
下にいるのは影人より非力な女子三人と幾ら影人並の身体能力があってもこの高さを落ちてきたら絶対に受け止められないレイだけだ。
「ッ、せめて二人だけでも!」
影人がプリルンとメロロンを引き寄せると庇うように自分へと引き寄せる。そのまま地面に激突する……そんな時だった。メロロンのリュックの中にあるハートの鍵とハートの錠前のアイテムが僅かに光ると影人の心に共鳴。影人の体が少しだけ光るとその落下速度が落ちると一瞬だけ地上から10センチ程上で停止。
「……え?」
急な停止に影人の思考が纏まらない中、そのままフッと光が消えると影人はドサリと音を立てて地面に激突。
「痛でっ!?」
影人は地面に放り出されたものの、あの高さの木のてっぺん近くから落ちるのと、地上から10センチ上から落とされるのであれば後者の方が圧倒的にダメージは抑えられる。そのため、影人は落下によるダメージをほぼ受けずに済んだ。
「カゲ先輩!?大丈夫ですか?」
「ああ……何とかな」
「プリルンとメロロンも無事だし、良かったよ」
「これでやっと合流できたね」
そんな風にうた達女子三人が喜ぶ中、レイは今の現象に疑問を抱いていた。それは何故彼がいきなり地上から少し上で止まったのかについてである。普通に考えて、そんな事は奇跡でも起きないと不可能だ。
「影人……本当にお前にはいつも驚かされるよ」
そして、当の影人も未だに放心状態だった。少なくとも、あそこから落ちた時点で大怪我は確定だと思っていたのだ。それなのに自分はこうして無事に降りれている。
「……何だか、薄らと光った二人の光に助けられたような……いや、気のせいか」
影人はひとまずこの謎現象を考えるのは後回しにし、二人の無事に安堵の気持ちを思うのであった。
また次回もお楽しみに。