キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
メロロンがこちらの世界に来てうたの家に住み着くようになってから数日後の昼休み。
「影人。メロロンの分のお弁当が欲しいのメロ」
「じゃあ、はいこれ。だし巻き玉子をあげる」
影人はそう言ってメロロンへとだし巻き玉子を食べさせる。メロロンはその美味しさに幸せそうになっていた。
「美味しいのメロ!影人、ありがとなのメロ」
「あーっ、カゲ先輩!私にはあーんしてくれないのにメロロンだけ!」
影人はこころにそう言われて彼女に悪いと感じたのかこころにもだし巻き玉子を差し出す。
「ごめん、こころ。じゃあ……はい、あーん」
「はむっ……美味しいです、カゲ先輩!」
そんな風に影人がこころとメロロンへと食べさせた後、彼はふと我に帰ると思いっきりツッコミの声を上げた。
「って、何でこうなってるんだよ!?」
今現在、影人は昼休みという事でいつものメンバーであるうた、なな、こころ、レイの四人と中庭の植え込みの辺りで座って弁当を食べている。これはいつも通りだ。だが、いつも通りの食事にはなっていなかった。何しろ、今は前までと違ってメロロンがいる。
「そりゃあ、恋人がいるのにメロロンに先に“はい、あーん”なんてしたら嫉妬されるのは当然だろ?というか、こころがメロロンへのその行為を許している事に感謝しなきゃ」
「いや、だから何で俺がメロロンに俺の弁当を食べさせてるのかを聞きたいんだが!?」
「そうプリ。うたの弁当じゃダメなのプリ?」
「ねえたまからの指摘でもこれは譲れないのメロ。メロロンは影人の弁当が食べたいのメロ」
どうやらメロロンは普段はうたの家でご飯を食べているせいなのか、影人の家の弁当を食べたいらしい。影人は弁当を自分で手作りしてるから尚更だそうだ。
「ジーッ……カゲ先輩。私よりもメロロンの方が良いんですか?」
「いや、誤解だって!その……先にあーんしなかったのは悪かった。すまない」
「……わかりました。カゲ先輩の事なのでわざとやったとは思いませんし、今回は不問にします」
お陰で影人はこころからの視線が痛い状態になってしまっている。こうなるくらいならメロロンが自分でも取れるように爪楊枝か何かを持って来れば良かったと後悔している始末だ。
「あはは、メロロンが来てからこころちゃんもちょっとピリピリしちゃってるね」
「ま、仕方ないだろ。幾ら心を開かせるためとはいえあれだけメロロンの事を親密な関係にしちゃったんだからさ」
「メロ、影人はあくまでねえたまの次なのメロ。そこは勘違いしないでほしいのメロ」
そう言って今度はプリルンへとくっ付くメロロン。メロロンとしては影人は人間の中で初めての友達と呼べる存在。彼女の中の立ち位置的にはやはりプリルンの次に友達として好きらしいのだ。
「メロロン、私の弁当もどう?タコさんウインナーとかも美味しいよ」
「メロ……」
「メロロン、うたのタコさんウインナーは美味しいプリ!」
「……出来るならカニさんウインナーが良いのメロ……」
そう言いつつも、食べてはみたいのかプリルンから“あーん”される形で食べるとメロロンは思わず感嘆の声を上げた。
「メロ……美味しいのメロ……メロ!?」
メロロンはそこまで言ったところで先程までの自分の態度と矛盾すると感じたのか、また塩対応の顔つきになる。
「そういえばカゲ先輩、レイ先輩。その……夢乃ちゃんの方は上手く行ったんですか?」
それから影人はレイの方を向く。レイは小さく目配せすると言っても良いという合図が降りる。どうやらもう既に面接等の試験は済ませて結果待ちという所であった。
「合格だよ。一応来月から正式所属になる」
それを聞いて一同に安堵の顔が浮かぶ。合格までの間、影人はかなりの時間を夢乃のサポートに回していたので疲労が溜まっている様子だった。それが報われた形だ。勿論、合格した夢乃もである。
「……今度、正式所属に伴って専属のマネージャーがつく事になった」
「えっ……じゃあ、影人君は……」
「ああ。俺はそのタイミングを持って夢乃へのサポートの殆どを終える。本人はかなり嫌がったけどな……」
「そんな……夢乃ちゃんだって影人君がいたからここまで来れたのに」
ななの言葉に影人は首を横に振る。正式所属になった以上は事務所のマネージャーでは無い部外者である影人は夢乃の、ドリーム・アイの活動に勝手に口出しできなくなってしまう。それに、前にもあった通り夢乃の自立のためには影人が側にずっといるのは悪手でしか無い。そうなるとここが潮時だろう。
「夢乃はこれから一人でやる事を覚えないとダメだ。……いつまでも俺を頼りっぱなしじゃ困るし。勿論、出来ることはやるよ。ただ、いつまでも俺に甘えるようなら……いつか俺がいなくなった時にその分だけ夢乃が苦労する事になる」
影人は夢乃のサポートをその道のプロに託したのだ。今の自分のサポートではあくまでただの趣味の延長線上にしかならない。そうわかっているからこその選択だった。
「それで、影人はこれからどうするんだ?」
「……まだ探し中」
「そうかよ」
それから時間が経過して昼休みが終わっていく。そして、学校の終わった放課後の時間。影人はメロロンの件でこころを怒らせてしまったと感じたのか、その責任を取るために放課後に二人きりでお出かけする事になった。
その際にこころは影人と幸せな時間を過ごしたために先程の件を完全に帳消し。機嫌を直す事になるが、今からするのはその裏で起きた事だ。
「あれ?うたちゃん。今日は一緒に帰らないの?」
「あっ、ごめんね。ななちゃん。実は、今日は朝からちょっときゅーちゃんの調子が悪くて……。でもお父さん達は忙しいから動物病院に連れて行ってほしいって頼まれちゃってて」
どうやらうたは咲良家で飼っている飼い犬のきゅーたろうが体調不良という事で両親の代わりに病院に連れていく事になったのだ。ちなみに、妹のはもりも一緒である。
「そうなんだね」
「ごめんね、ななちゃん。また明日!」
「うん、また明日」
そんなわけで今日は久しぶりに一人で帰る事になったなな。彼女は帰り支度を終えると靴を履き替えるべく下駄箱に向かう。
「……そういえばうたちゃん達とばかり帰るようになったから、一人で帰るのはちょっと寂しいかも」
なながそう思うようになれたのはあの時ピアノコンクールで失敗した事を相談した時から沢山の友達に囲まれるようになったからだろう。それから一人で静かに帰ろうとしたその時。レイが校舎の影に向かうのが見えた。
「レイ君?校門はそっちじゃ……」
ななは気になったためか、コッソリ着いていくとレイはスマホを耳に当てている状態だった。
「……はぁ!?流石にそれはやり過ぎだろ!まずは夢乃ちゃんのやれる範囲から!それは絶対だからな?」
そんな中、ななは珍しく声を荒げるレイを見て驚いていた。それから少ししてレイが落ち着くと電話を切る。
「ったく……あの馬鹿親父……あ」
レイが電話を切るとななが気不味そうな顔で自分を見ているのを認識。レイは申し訳無さそうな顔つきになる。
「蒼風さん……その、悪い、怒鳴ってる所見せて」
「ううん。大丈夫。……もしかして、お父さんと?」
「……いや、父さんと直接じゃない。大体の場合、父さんは忙しいからその代理で秘書の人から通達される」
それからレイとななは二人で下校しつつ先程の話をする事になった。一応うたやプリルン達と違って口が固いななになら話しても問題無い内容だとレイが判断したからだ。
「えっ、夢乃ちゃんにそんなにレッスンを受けさせるつもりだったの?」
「ああ……」
どうやら今回は夢乃が今後ドリーム・アイの活動をする上で今までのやり方では足りない部分を補填するためのレッスンを受けさせるらしい。
ただ、内容があまりにも詰め込み過ぎだったためにレイが夢乃の事を考え無さすぎだと怒ったのである。
「あの子は普通の小六と比べたら影人からの指導で大人びているけど、それでもまだ義務教育を抜けてないんだ。……普通に学校の勉強だってあるのに……そこに大量に詰め込んだらパンクするだろ……」
ここまで影人は夢乃に無理だけは絶対にさせないように考えながらプランを組んでいた。それなのに、レイの父親である音崎ハジメは少しでも早くプロの内容をできるようにするべく急ぎ足の手を取ったのである。
「そっか」
「最終的に本人と話し合って上手く折り合わせて決めるって方向にはなったけど……。初っ端からこんなので大丈夫かと思っちゃうな」
レイの父親。音崎ハジメは自分の事務所をここまで大きくした立役者。そんな彼は夢乃の実力を高く評価していた。だからこそ、こうして少しでも早く即戦力になってもらうために多少無理にでも詰めようとしているのである。
「……ねえ、レイ君はお父さんの事……どう思ってるの?」
ななは正直、レイにこの質問をするのは怖かった。七不思議の時に二人で話した時も両親に良い感情を抱いてなさそうだった事からも親子間の仲も冷え切っているだろう。そのため、勇気を出して聞いたのである。
「……一言で言うなら目的のためなら何でもする人」
「え?」
「父さんは自分の事務所を、サウンドプロダクションを日本一の芸能関係の事務所にしたいって思ってるらしい。そのために優秀な人材を見つけてはスカウトしてる。勿論、一般的な黒い部分のある怪しい底辺事務所とは違う。ちゃんと正規の仕事は取れるし、周りもそれはちゃんと評価してる」
レイはそんな風に実力を持っていて、尚且つ正規のやり方でここまで大きくした父親の力を認めていた。……ある一点を除いては。
「……父さんは、あまり他人の気持ちがわからないんだ」
「……え?」
「というよりは他人からどう思われてるかを考慮してない時があると言えば良いのかな。勿論毎回じゃ無いんだけどな?」
今回の夢乃の件もそうだが、それをする事で夢乃関連の人達からどう思われるかというのを考慮できていなかった。そういう時は大体周りの人が止めて軌道修正する事が殆どのために大きな問題にはならずに済んでいる。
「……昔はその軌道修正もできなかったんだけどな」
そんな風にレイの目が冷たい物に変わる。……そんな彼を見てななは恐らくそれがレイが目指していた夢を諦めさせられた時の事だったのだろう。
「まぁ、今はちゃんと話したらそういう意見を変えてくれる。それでも周りはヒヤヒヤものだけどな」
レイが愛想笑いをしながらそうしんみり話す中でななはそんなレイの手を取る。
「蒼風さん?」
「……レイ君は、お父さんを恨んでる?」
「正直、良い気持ちはしてないな」
「そっか……。前にも言ったけど辛かったら、話してくれて良いからね」
そんな風にななはレイに寄り添おうとする。ななとしては親と上手くやれていないレイが心配なのだろう。
「ああ……。その時は遠慮なく話させてもらうわ」
それから二人はこの話題を終わりにして色々と雑談をしながら帰っていく。そんな中で二人が仲良く帰るのを遠目に見る一つの影がいた。
「あれはななさんと……レ……イだと!?」
どうやらその影はレイを知っている様子であった。そして、彼はレイへと嫉妬の目を向ける。
「あの野郎。勝ち逃げした上にななさんとあんなに近づいて……許さない、許さないぞ」
そんな風に影は一人、レイを呪うような声を上げていた。そして、彼は誓うことになる。
「音崎レイ……今度の球技大会であの時勝ち逃げしたお前を叩きのめしてやる。その後でななさんに、ななさんに俺は……」
そんな風に影はななへの気持ちを募らせると同時に打倒レイを掲げるのであった。波乱に満ちた球技大会の日は少しずつ忍び寄っていく事になる。
また次回もお楽しみに。