キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
こころの機嫌直しの放課後デートをした翌日の朝。影人が目を覚ますと起き上がってカーテンを開ける。それから彼はいつもの準備をすると夢乃が出てきた。
「あ、お兄ちゃんおはよ」
「おはよう。夢乃」
「ドリーム・アイの活動とかそれに伴うレッスンとかの予定。ちゃんと決まってきてる。……事務所の人に感謝だね」
「ああ……」
影人はそう無難に返すものの、多少の不安があった。今の所は大丈夫そうだが、これからどんどん活動範囲が広がるに連れて夢乃に沢山の事が詰め込まれてキャパがオーバーしてしまわないかという点である。
「(ダメだな……。夢乃の事を事務所が付けたマネージャーさんに任せるって言っても……俺は直接は一度も会ってない。夢乃は信用してるみたいだけど。ほんと、夢乃に甘い接し方をしてしまう自分が嫌になる)」
あれだけサポート役から降りて夢乃へ厳しく接すると決めたのに自分は未だに夢乃への心配ばかりをしている。もっと妹を信じてやれればという自分への情けなさも浮かんできていた。
「あ、そういえばお兄ちゃん。……この前の私のお願い、実現してもらえるって!」
「お願い……あー。アイドルプリキュアのメンバーとアカペラをやるって話か?」
「うん!一応、メンバーは六人想定にしてあるんだ!」
「六人?でも、アイドルプリキュアは四人だけだぞ?お前含めても五人。一人足りないだろ」
「え?レイ先輩は?」
その言葉を聞いて影人は凍りつく。こういう時に事務所側の人員であるレイを勝手にメンバーに入れても良いのか。その辺りの疑問が湧いて仕方ないのだ。
「レイか……レイはちょっと待ってくれ。今日、本人に確認を取ってくる。アイツも色々忙しい身なんだ。それに、勝手にレイを出して良いのかという話もあるし」
「そっか……じゃあ、聞くのはお願いね。あと、パートはリードボーカルに1st、2nd、3rdのコーラス。ベースとボイスパーカッションの六人にするって話だから」
「……待て。ボイパ?……あれ、初心者がやるにはかなりムズイぞ?」
「え?そうなの?」
影人としてはベースまでは想定していたが、流石にボイスパーカッションがやれるメンバーとなると流石に無理な気がしてきていた。しかもマネージャーさん曰く、ベースは最悪無しでも良いがボイスパーカッションを抜きにするのは厳しいそうである。
「夢乃、多分アカペラ動画は完成までにそれなりにかかると思っててくれ。というか、夢乃もやるつもりならそれなりに練習しないとだから覚悟しろよ」
「う、うん……」
ひとまず影人は学校に登校する時間もあるためにアイドルプリキュアとのコラボでのアカペラの話は置いておき、学校へと行く事になった。それから学校への登校中。影人はうた、なな、こころ、レイのいつものメンバーと合流。勿論うたのバッグに付いている妖精が入る用のポシェットにはプリルンとメロロンも入っている。
「そういえば、今日もなかなか朝起きられなくてさ」
「いや、普通は起きれるように努力するものだけどな?」
登校する中で話題は今朝も今朝とてなかなか起きる方ができなかったうたの話となる。
「あれ?じゃあどうやってうた先輩は起きれたんですか?」
「ふっふーん。それはね……」
それから場面はうたの起床時の話を説明するために少し遡り、朝の咲良家の話となる。
〜回想〜
うたの部屋にていつも通り鼻提灯を出しながら爆睡するうた。その隣では気持ち良さそうに寝るプリルン。ただ、大好きなプリルンをうたに取られた気がしてならないメロロンは怒った様子で声を上げる。
「ねえたまの隣はメロロンのメロ!メラメラメロ!」
メロロンはうたとプリルンの間に割り込むと寝ているうたを退けようとして必死に押す。ただ、寝ている時のうたは何をされても大丈夫と言わんばかりに不動であった。そのため、メロロンの声が影響したのか先に隣で寝ていたプリルンが目を覚ます。
「プリ……メロロン、おはようプリ」
その直後、うたが起きるために設定していた目覚ましが鳴り始める。メロロンはいきなり鳴り出した目覚ましに驚くわけで。
「メロッ!?」
メロロンは跳び上がるとプリルンが落下してくる彼女を受け止める。そんな中でうたは目覚ましを聞いて起きるために手を伸ばす。
「んんん……起きなきゃ」
それから二回程ボタンを押せずに探ってから三度目で押すと一度欠伸をする……が、その直後にまた鼻提灯を出して寝てしまった。
「……また寝たメロ」
メロロンはそんなうたを見て呆れてしまう。その隣でプリルンは何かを出そうとしていた。プリルンにとってはうたがこうやって二度寝をするのを見るのは初めてじゃない。そのため対処法もちゃんとわかっていたのだ。
「こういう時は、プリ!」
するとプリルンは三本のペンライト……キラキライトを出すとその発光をピンクに変化させる。そして、その中の一本をメロロンに渡した。
「一緒に応援するプリ!」
「応援メロ?」
「うた〜!頑張れプリ!メロロンもやるプリ!」
「メロ〜?」
プリルンはそのままノリノリで応援をする中、メロロンは応援の何が良いのかが全く分からずに困惑する。
「うた〜!頑張れプリ!うた〜!頑張れプリ!」
「メロ〜」
メロロンもプリルンからの頼み事は断れないのか、半ば棒読み状態だったが、キラキライトを振る。すると寝ていたうたは起き上がると鼻提灯が少し大きくなってからパァンと弾け、ようやく起床する事になった。
〜現在〜
「って事があってね」
「……なぁ、レイ。やっぱり咲良さんは朝に弱すぎだよな?」
「うーん。聞いた話だと咲良さんはあまり夜更かししないはずだけど……」
ただ、このように自分一人では寝坊してしまうくらい朝に弱いうた。今日も妖精のプリルン、メロロンの応援が無ければ危うくまた寝坊して遅刻を回避するために必死に走る羽目に遭っただろう。いつまでもこんな生活ではうたの将来が心配に思えてきた。
そんな事はさておき、うたを起こすために使ったキラキライト。アイドルプリキュアが世に出回って以降、すっかり需要が増えたのかアイドルプリキュアのファンの証としてそれを購入する人はすっかり増えたらしい。
「プリルンとメロロンの応援のお陰で起きられた!二人共ありがとう!」
「応援大好きプリ!」
「メロ、そういえばねえたまが持ってるそのライト……結局何なのメロ?」
「これはね、キラキライトって言うんだよ」
「応援には欠かせないグッズなんです!」
メロロンの問いにななとこころが答えるとレイは視線の先にある人物を見つける。それはクラスメイトの新橋わかばであった。
「あれは、新橋さんか?」
「あ、本当だ!わかばー!」
そんな風に声をかけるうただが、彼女の大声でも届いてないのか彼女はコッソリと正面玄関の脇にある茂みにコッソリと隠れながら遠くから何かを見ようとしている。
「……あれ?わかば、どうしたんだろ」
「……なるほど、どうやらアレが原因らしい」
影人がそう言った直後。いきなり玄関の方に集まった多数の女子からの黄色い声が上がった。
「「「「「「きゃーっ!」」」」」」
「ん?あれは……」
女子達の視線の先にいたのは一人の背の高い青年だった。彼の周囲を女子達は取り囲むようにしており、彼を見る女子達の目はハートマークである。
「バレー部のエースで校内一モテモテで有名な翔太先輩だね」
「噂では聞いてたが、凄い人気度合いだな」
「私のクラスでも何人もの人達を魅了してますし……そのカッコ良さは学校内随一って事ですね。あ、勿論私はカゲ先輩以外の人を好きになるつもりはありませんが」
「そのくらいは言わなくても大丈夫。俺はこころの事を信じてるからな」
影人とこころがお互いの気持ちを認識した所で話を戻すと、どうやら彼は校内の女子という女子を魅了していた。この様子だとファンクラブがあってもおかしくないだろう。こころのクラスメイトも何割かは入学からあっという間に彼の魅力に魅了されたらしい。
「俺達男子からしたら嫉妬の的になりそうな物なのに……それでも虐めとか無い辺り、憎めないんだろうなぁ」
「レイ、お前」
「いや。今のは俺達以外の男子の心の代弁だよ。あくまで俺は何とも思ってないし、それは影人も……だろ?」
影人もレイからの問いに頷く。この辺りはもう既に恋人がいる余裕なのかもしれない。そんな中で新橋の様子を一同が見ると彼女も遠巻きに新橋を見ながら顔がほんのり赤くなっているのが見えた。
「わかばちゃんが何だか可愛くなってる!?」
「間違いありません!特別な心キュンキュンになってます!」
「特別な……心キュンキュン?」
「ああ。これは間違いなく惚れてるな」
レイからそう聞いてななやこころは興奮したような顔つきをする。そんな中でただ一人、うたはポカンとした顔つきのままであった。
「恋……?」
その瞬間、影人はズルリと滑った。影人の脳裏に浮かんだのは以前、レジェンドアイドルの響カイトに直接褒められた時に見せたうたの惚れたような顔つき。
「咲良さん、カイトさん相手にあの顔をしておいて恋がわからないって……」
影人が呆れたような顔つきをする中、五人の前に歩いてくる影があった。そして、その影はレイを敵視するような目で見ると声を上げる。
「音崎レイ!」
その声を聞いて五人がその影の方を向くとそこには茶髪の髪をスポーツ刈りにした男の子である。
「えっと……確か、C組の浅野君?」
「……誰?」
「そういえば、影人は初めて話すのか。コイツは2年C組の浅野そうた。男子バスケ部のエース」
影人は始業式の少し前に引っ越してきたばかりのために、クラス外の彼とはまともに話すのは初めてだ。そのため、そこをレイが補足する事に。
浅野は紹介にもあった通り二年で男子バスケ部のエースである。大会では必ずと言って良いほどに活躍する彼だが、意外と人気面はそこまで芳しく無い。バレー部の翔太に埋もれているから……と言うのもあるが、主な理由は別にある。
「ふん。音崎レイ……あの時一方的に勝ち逃げしたお前を俺は許すつもりはない。俺と蒼風さんを賭けて勝負しろ!」
その瞬間、その場が凍りつくと同時にななもいきなり浅野に指名されて驚きを隠せなかった。
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
「浅野、何を勘違いしたのかは知らないが俺は蒼風さんとはただの友達だぞ?」
「黙れ!昨日あれだけ放課後に仲良く帰っていたいたじゃないか!俺との対決を放棄した挙げ句蒼風さんを自分の側に置くとは……。球技大会、お前との因縁にバスケ部のエースとして決着を着けてやる!」
そんな風に難癖を付けてくる浅野に困惑する一同。彼がモテない理由はこれなのだが、本人は無自覚らしい。そんな中でこころが恐る恐る声を上げる。
「あの、浅野先輩がレイ先輩に因縁があるのはわかりました。ただ、それがどうしてなな先輩に繋がるんですか?」
「それは……俺が蒼風さんに恋してるからだ!」
その直後、一同は再び唖然とする。ななに至ってはいきなりの公開告白に頭が真っ白になっていた。
「ええーっ!?浅野君、ななちゃんの事が好きだったの!?」
「ああ。ここで宣言しよう」
「どれだけド直球の告白だよ……てか、そんな風にしたら蒼風さんが困ってるだろう?」
「……蒼風さんに迷惑をかけたのは謝る。だが、俺は音崎レイ。お前に出し抜かれて勝ち逃げされた挙げ句、好きになった女まで攫われるのは我慢ならない!だから、勝負を持ちかけてるんだ」
影人はそんな風に言ってくる彼に正直面倒くささが前に出まくっていた。ななの事が好きなのであれば何もこんな公衆の面前で告白するなんてしなくても放課後普通に呼び出して告白すれば良いだろうと思ってしまう。これではななが可哀想だ。
「えっと……」
「蒼風さんの返事は対決の後に聞く!レイ、この対決……受けるよな?まさかと思うが、二年前まで天才小学生としてバスケ界隈で名を馳せたお前が俺を相手に怖気付いて逃げるなんて事。しないよな?」
「……だとよ。レイ、どうするんだ?」
影人はまさか彼がここまで面倒な奴だとは思っていなかった。ななもななで今にもお断りしたそうな雰囲気になっており、浅野に止められて困惑してしまっていた。そんな中で、レイは歯軋りするような苛立つ姿を見せる。
「……わかった、受けてやる」
「そうこないとな。そういうわけで球技大会では首を洗って待っておけ!」
そう言って言うだけ言ってさっさと去っていく浅野。そんな中で、レイの心はいつも以上に荒れたような様子であった。どうやら、色々と事情があるらしい。この対決のせいで球技大会は大荒れの様相を呈する。影人はそんな風に考えるのであった。
また次回もお楽しみに。