キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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前回、球技大会のルール説明をしましたが少しだけ手を加えました。具体的にはバスケとドッジボールの試合時間を10分に延長してあります。よろしくお願いします。


本音でぶつかる想い 変わり行く気持ち

放課後の喫茶グリッターにて。そこではいつものメンバーである影人、うた、なな、こころ、レイの五人がテーブルを囲んでいた。そんな中でうたがある事を聞く。

 

「……恋の感覚って何だろう」

 

「………はい?」

 

影人は全員が揃い、改まった状態でいきなり恋についての話を始めたうたに疑問符を浮かべる。

 

「影人君やこころは見ての通り付き合ってるから恋をしてるってわかるけど、ななちゃんやレイ君はした事ある?」

 

「無い!」

 

「無いな」

 

「やっぱり色々と不憫だなぁ、浅野も」

 

影人もここまでバッサリとななに切られてしまっている浅野のことを逆に不憫に思い始めるが、特に浅野へのそれ以上の思い入れは無いので彼も追加での言及はしなかった。

 

「うたちゃんはあるの?」

 

「した事は無い!」

 

「……」

 

影人はうたがカイトへと向けたあの目はやはり恋では無いのかと呆れる中でうたはゴソゴソとある物を取り出す。

 

「でも、私にはこれがある!」

 

「これって少女漫画ですか?」

 

そこにあったのは可愛らしい女の子が表紙に描かれた少女漫画である。これは前に小宮絵真が出した“ふたつの世界ときらりハート”という恋愛ものの漫画だ。

 

「絵真さんのだよ!」

 

うたが本を開いてページを捲るとそこにはイケメンの先輩に恋をした主人公の甘い純愛の物語が描かれている。

 

「これが恋だよ!」

 

「「「きゃーっ!」」」

 

少女漫画を見始めたうた達女子組がその話題で盛り上がる中、プリルンは興味が無いのかうたのように鼻提灯を出しながら寝てしまっていた。メロロンもメロロンでこんな漫画のどこが良いのかわからずに呆れたような顔つきとなる。

 

「メロ……他人の恋を見てはしゃぐなんてメロロンにはわからないのメロ。メロロンにはねえたまや影人がいてくれればそれで良いのメロ」

 

「ま、年頃の女の子はこういう少女漫画が好きだって事。メロロンだってキラキランドにある本は普通に好きだし、プリルンの事は大好きだろ?」

 

「それは……影人の言う通りなのメロ」

 

影人のフォローにメロロンは言いくるめられる形で納得。やはりメロロンは正しい意見で尚且つ大好きな影人の言う事にだったらちゃんと納得してくれる様子だった。

 

そんな風にうた達三人がはしゃぎ、影人はメロロンを相手する中で一人壁にもたれつつ座っているレイの顔つきは浮かないままである。そのタイミングで下から上がってきた田中が声をかけた。

 

「うたさん。お店が混んできたのでお手伝いお願いします!」

 

「あ、はーい!」

 

どうやら、グリッターへの客入りが増えたのでうたへの応援を頼んだのだ。今は夕方の時間帯で学校帰りの学生や会社が定時の人達は帰り際にお店に寄ったりするため、日によっては休みの食事時並みに混む。そのためうたが降りていく。

 

ななとこころはうたへと断りを入れてから彼女の漫画を二人で読んでいた。

 

「ハーブティー、お待たせしました!」

 

「サンキュー」

 

「ッ!?カイトさん」

 

うたが手伝いとして接客を始めてから少しして、うたは偶々店にいたカイトに接客をする事になった。

 

「恋……だって?さっき、なんか盛り上がってたからさ」

 

「あはは。聞こえちゃいました〜?」

 

どうやら先程うた達がはしゃいでいるのがカイトにまで聞こえてしまったらしい。そのため、うたは照れくさそうにする。

 

「あ、カイトさんは恋した事ありますか?……って、ああ!私何聞いちゃってんの!?すみません、今の無しで!」

 

うたはつい勢いでカイトへと彼の恋について聞いてしまう。その後、自分が何を言っているのかを自覚すると慌て始めた。

 

「ふふっ……内緒」

 

カイトがそう言って微笑みを浮かべるとうたはあまりの眩しさに手にしたお盆が光を反射するくらいに彼を凝視できなくなってしまう。

 

「はぅあ!?出た、レジェンドアイドルスマイル!」

 

うたは彼から発せられる眩しさがどれだけ強いのかを再確認する事になった。そんな中、影人はグリッターの二階からその様子を見ている。

 

「……はぁ。アレでカイトさんに恋して無いって嘘だろ?無自覚にも程がある」

 

影人は呆れたような目線を向ける中、メロロンは影人の肩に乗るとポエムを口にした。

 

「……眩い光。二つの光は惹かれ合い、輝きを増す。闇はその光を受けなければ輝けない。まるで、ねえたまとメロロンのような関係メロ」

 

「……そうかもな。俺の持ってる光は所詮誰かの借り物。でも、その継ぎ接ぎな光でも照らせる場所はきっとある。俺にできたんだからメロロンにだってできるさ」

 

そう言って影人はメロロンを優しく撫でる。メロロンはその感触が心地良いのか、振り払おうとしなかった。

 

「……あれ?アイツは……」

 

そんな中で影人はある人物をグリッターに見つける。それから彼は下に降りるとその人物に声をかけた。

 

「○○、どうしてここに来た?」

 

それから影人は少しだけ彼と会話を交わすと少しだけ二階を気にしてから彼へとある提案をした。

 

「……少し面を貸してくれ。話がある」

 

「ああ。わかった」

 

それから時間が経つと影人は話を終えて戻ってくる。更に少しして、時間の問題で親を心配させるわけにはいかないという事で家へと各自帰る事になり、その帰り道での事。影人は一人、レイへと話しかけることになる。

 

「レイ、大丈夫か?」

 

影人が見たレイの顔つきは明らかに曇っていた。普段なら冷静なはずの彼が妙に落ち着いていないのである。

 

「別に……気にすんな」

 

「……だったら言わせてもらうが、レイ。浅野に何か言いたいことがあるのか?」

 

「は?」

 

そんな風に影人がレイへと突っかかるとレイは明らかに不機嫌そうな返しをした。

 

「……あの時から妙に不自然だと思ってたけど、レイ。お前は浅野に対して怒ってるんじゃ無いんだよな?」

 

「……だったら?何が言いたいんだよ」

 

「蒼風さんが浅野に告白されたあの時。レイは怒っていたように見えた。だから蒼風さんに迷惑をかける浅野に対して怒ってるって俺は思ってたけど……怒ってる本当の理由はもう夢を追いかけられない事を思い知らされたって事だろ」

 

「煩せぇよ。もう未練は無いって言っただろ」

 

「嘘付け……今のお前からは未練しか感じられないんだよ」

 

その瞬間、レイは影人へと掴み掛かるとその目には本気で怒る彼の顔があった。

 

「当たり前だろ!何で……何で俺の夢を……一番応援するべき家族に踏み潰されないといけないんだ!!」

 

それは初めてレイが自分を相手に感情的になった瞬間だった。前にこころがアイドルプリキュアに関わってしまって自分の気持ちがグチャグチャになった時、レイは確かに怒りはしたがあくまでそれは自分を止めるための計算が入った物だった。

 

だが、今回は違う。明らかに自分でコントロールできないやり場の無い怒りをぶつけている様子だったのだ。

 

「お前は良いよな……夢を応援してくれる家族に巡り会えて……俺の親父は、あくまで自分の事しか考えてない!こうなるくらいなら……自分に天才的な才能なんて無い方が良かった……。それだったらもっと簡単に捨てられたはずなのに」

 

レイは自分の才能に嫌気が差していた。何でもそつなくこなせるレイにはバスケの才能があった……いや、あってしまったのだ。キッカケは偶々付けたスポーツ中継の番組であり、彼はそれを見てバスケに憧れて始めた。

 

「……最初は両親も自分の子供が楽しくバスケをするのを見るのが喜びだった。だから何も言ってこなかった」

 

だが、彼はバスケをやるうちに周りの子と比べて比較にならないスピードで上手くなっていく。それこそ、辞める少し前。小六の段階で彼は中学生のレギュラーチームに混ざってもそれなりに戦えるぐらいの力は持っていたのだ。

 

「……だが、俺が他人よりも早く上手くなったのを見て親父は危機感を持ったんだろうな」

 

レイの父親、ハジメは最初からレイにプロになるまでバスケをやらせるつもりは無かった。レイがバスケを楽しんでいる頃、彼は事務所を大きく成長させる事に成功。

 

「親父は自分の夢を叶えるために事務所を大きくして、それを俺に継がせようとしたんだ。自分の代だけじゃ、どれだけ頑張ってもサウンドプロダクションは一番の事務所になれないってわかってたんだろうな」

 

つまり、ハジメは自分の夢を無理矢理嫌がる息子に押し付けたのだ。しかも、その夢を押し付けるタイミングも完璧だった。レイが中学に上がって能力が認められて全国に出るなんて話になったら余計辞めさせにくくなっただろうし、かと言って小学生の中学年。レイがバスケをやり始めてそんなに時間が経って無い段階でバスケを取り上げたら彼は精神が更に幼いせいで余計に感情的になっただろう。

 

だから中学への進学というキリの良いタイミングでハジメはレイからバスケを取り上げて辞めさせた。

 

「……俺は、お前とは違う。自分は他人よりもバスケができるってわかってて。まだまだ夢に向かって踏み出せるって信じてた。信じてたのに……アイツは全部を奪ったんだよ!」

 

影人はレイに押し込まれるとそのまま近くの植え込みの木に押さえつけられる形となる。

 

「……そうかよ」

 

「俺は……もう夢なんて見られない。お前らと違って……夢なんて考えるだけ無駄なんだよ!」

 

レイからの怒りの声を間近で受けた影人。それから彼は一度無言になるとゆっくりと口を開く。

 

「……だったら、お前が持ってる夢への未練に……決着を着けろよ」

 

「は?」

 

「……俺は夢が叶わない辛さを自分で味わってわかった。そういう未練に決着を着けられるのは自分だけなんだ。正直、俺が何言って慰めてもお前にとっては綺麗事になる。だって、お前と違って俺達には次のチャンスがあるんだから」

 

その言葉を聞いてレイは影人の顔面を殴ろうと思わず拳を振りかぶる。そして、彼は影人を殴ろうとして直前で止まった。どれだけ影人に八つ当たりしても何も現状は変わらないと……わかっているからだ。

 

「レイ。俺がお前にしてやれる事は無いんだよ。……他人が何を言ってもお前にとって耳障りな言葉にしかならないんだから。だから、お前が自分で納得する終わり方をしないとダメなんだ。自分が見た夢を諦めるって……そういう事だろ」

 

「納得って、それができてないからこうなって……」

 

「それでも見た夢が叶わないならそれから目覚めるしか無いんだよ!」

 

影人にそう言われてレイはようやく影人から手を離す。レイも自分でわかっていた。自分がどれだけ喚いても、この現状は何も変わらない。

 

「いつまでも叶わない夢を見ながら寝てんなよ、レイ。夢が叶わないなら選択肢は二つ。一つはそれでも諦めずに努力する。二つ……夢を諦めて心を起こす事だ。覚めない夢なんて無いんだよ。夢に向かって努力してる人達は、最後にはそれを現実にするという形で夢から覚めている。でもレイにはその選択肢が取れないんだ。……だったら未練を無くして現実世界に起きるしか無いだろ」

 

影人から見たら今のレイは無理矢理親に夢を捨てさせられたせいで夢を諦めきれずに半分寝ている状態だ。そこから完全に覚醒するにはまずはレイが夢を捨てるしか無い。しかも、彼自身が納得する形で。

 

「レイ、お前にならできる……夢をまだ叶えられる立場の俺達が何を言ってもお前には響かないかもしれない。でも、俺は一度折られた夢への道を諦めて……こころ達に支えられてまた次の目標を探すために起きられた。俺よりも優秀なお前ならできるって……俺は信じてるぞ」

 

影人はポンと肩に手を置くとレイを置いて家へと歩いていく。その影を見送りながらレイは拳を握り締める。

 

「……あの野郎、無茶な事言ってくれやがる……。でも、アイツだって本気で俺を心配してくれるようになったんだよな」

 

最初出会った時の影人は誰が見ても他人に関われるような精神状態じゃ無かった。アレだけ他人を拒絶していた影人は、自分にこうして向き合ってくれたのだ。

 

「……馬鹿は俺だ。何、二年間も叶わない夢に未練持って夢見心地で寝てるんだよ……。良い加減起きて立ち上がるべきなのは俺の方だろ」

 

レイは頬を二度叩くと深呼吸して荒れた心を落ち着かせていく。そして彼は影人に言われた通り、まずはもう叶わない夢を完全に断ち切るため……本気で球技大会に臨む事にした。そこで全てを出し切る事で、彼は夢に完全に決別する道を選ぶ事になる。

 

同時刻。ななも一人で家への帰り道を歩く中、自然公園の方から何かの音が聞こえた。

 

「これって……ボールが弾む音?」

 

それからななは一人公園の方に向かうとそこには一人ドリブルの練習に打ち込む浅野の姿があった。

 

「えっ……」

 

その動きは素人のななが見ても洗練されており、浅野の上手さが伝わってくる。すると彼がミスをしてボールを転がしてしまったのか、ボールがななの方に転がってきた。

 

「あ、すみませ……え?蒼風……さん」

 

「……はい」

 

ななはボールを拾うと浅野へと手渡す。そんな中、二人の間に気不味い空気が流れる。浅野はあの場で告白したものの、ななに手応えが無いことは薄々感じていたらしい。

 

「……蒼風さん。本当にごめんなさい」

 

「えっ!?」

 

浅野はななへといきなり頭を下げた。それを見てななは驚きの声を上げる。

 

「……蒼風さんにその気が無いのは告白前から何となくわかってたんだ。蒼風さん、毎日がピアノ、ピアノで忙しくて……他の事を見る余裕が無かっただろ」

 

「うん……」

 

ななの目は申し訳なさそうな物になっていた。そして、浅野は彼女へとある事を言い出す。

 

「……球技大会の日。もし俺が勝って答えを聞く事になったら、遠慮なくフってくれ。……俺はそれで蒼風さんへの気持ちを諦めるって約束する」

 

浅野の目は真剣そのものだった。そしてそれでこれはおふざけでも何でも無い。彼の真意なのだとななも理解する。

 

「……蒼風さん、最近毎日が楽しいんだろ?偶にすれ違ったりして見てるとわかるよ。だから、俺の事なんて気にしなくて良い。その楽しい日々を幸せに生きてくれてるだけで……俺は十分だから……って、こんな事話すなんて気持ち悪いよな。ごめん、足を止めさせて」

 

その言葉を最後に浅野は自主練へと戻っていく。ななはそんな彼を見ながら彼が真面目に努力をする所を見ていた。

 

「(浅野君……あんな顔をする人だったんだ)」

 

ななが今まで見ていた浅野は自分の気持ちに真っ直ぐ過ぎて周りが見えてない子。だから自分の友達からもあまり良い印象を持たれなかったイメージだった。だが、ななが見た浅野の顔はそんな彼とは程遠かったのだ。

 

「(あんな真面目な顔をして努力してる浅野君、初めて見たかも)」

 

また、偶に体育館や外での練習をチラッと見るタイミングもあったなな。その時の彼からはここまで真面目な印象を受けてなかった。

 

「(こうして見ると私を含めて皆は浅野君の事をちゃんと全部は見れてなかったのかも)」

 

ななはもし仮に浅野が試合に勝っても告白の返事はアッサリと切るつもりだった。だが、そんな軽率な判断をしてしまった自分に後悔する。

 

「(もうちょっと、浅野君への返事はちゃんと考えよう。……強い情熱のぶつけ先を失った未練のせいで拗れちゃった人、私は何人も知ってるから)」

 

浅野のあの姿を見たななにも心境の変化が訪れていた。そのまま日は沈み、暮れていく事になる。

 

〜おまけ〜

 

少女漫画を読んで主人公と彼氏の青年の恋愛物語に当てられたこころは帰ってからも内心興奮していた。

 

「……カゲ先輩、ああいう事を私から言われたらもっと喜ぶのかな」

 

それは影人への今後の接し方を考える上での思考に移っており、彼女が影人へと向ける気持ちの真剣さが垣間見えている。

 

「今度またデートに誘ったら……そうです!カゲ先輩がデートをする中で喜びそうな事を書き出してそれを少しずつやっていきましょう」

 

それからこころはノートを開くと影人とやりたい事を色々と書き出していく。彼女も彼女で恋愛面において気持ちの変化が起きまくっているのだった。尚、こころの場合は他の面々と比べて煩悩の感情が強めだったのはご愛嬌である。




また次回もお楽しみに。
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