キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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大会に向けた練習 影人が変えた物

チーム決めの日から少し時間が経った日の放課後。影人達は球技大会に向けた練習をしていた。一応、全てのクラスの公平性を保つために練習日の日程は予め全て決められている。この日は2年A組が練習可能な日だ。

 

「へい!」

 

「影人!」

 

影人は早川からボールを貰うとそのままレイアップシュートを決める。体育館が使えない日も高村が持ち込んだ外用ボールを使ってパスの練習はしてきた。特に最初の方は脚の速い早川や逆に運動が苦手でそこまで動きが速くない藤堂の二人に合わせるのに苦労したが、今は問題なく合わせられている。

 

「ナイシュ、影人」

 

「ああ。どうにかそれなりに安定して入るようにはなったな」

 

ポジションはそれぞれレイがPG(ポイントガード)、藤堂がSG(シューティングガード)、影人がSF(スモールフォワード)、早川がPF(パワーフォワード)、高村がC(センター)という形を取っている。

 

レイは本来SGなのだが、バスケのプレイが素人の藤堂ではボール運びの役割は難しいので彼が入れ替わる形を取っている。

 

「そういえば、音崎君。何で影人君がSFなのか気になってて。早川君の方がスピードはあるし、体格的にはほぼ互角だから機動力のある早川君がSFをやった方が良い気がするけど」

 

「それも考えたんだけど……アイツを活かすならこっちが良いって思ったんだ。それに……多分、あの作戦をやるなら早川にはPFの動きを集中してやった方が良い」

 

影人達は浅野達の2年C組に加えて単純な身体能力で上だと仮定できる上級生達にも勝てるようにするために作戦を練っている。勿論、だからって下級生が相手になった時に勝てなかったのでは意味が無いので念入りにだ。

 

「なるほど。正直な所聞きたいけど、音崎君から見て浅野君達に勝てると思う?」

 

「……これでも単純な実力で言えば多分五分だと思う。……向こうは必ず浅野を軸に攻めてくるだろうけど、こっちに浅野を止められるだけの防御力を求めても厳しい所があるからな。……ただ」

 

レイはチラリと練習をしている影人の方を向くと彼を見ながら更に話をする。

 

「俺はアイツなら何かしら起こしてくれるって信じてる。それに、アイツもアイツで色々やってるみたいだからな」

 

「そうだね。僕もそれに付き合わされてる形だし」

 

そんな中、影人は早川が走るスピードに合わせてバスケのディフェンスの練習を進めていた。スピードのある早川をトップスピードでドリブルしてくる浅野の速度に見立てているのだ。

 

「影人!そろそろ休憩してくれ。お前が無理し過ぎるとこっちも不安になるからな」

 

「ああ。済まないな、早川。手伝ってもらって」

 

「俺が役に立てるのなら何でもするよ。ただ、影人はやる事がかなりガチだな」

 

「当たり前だろ。……球技大会に本気で臨もうとしているレイがいるんだ。余計に試合で恥かかせるわけにはいかないだろうよ」

 

それから影人が移動する中で影人の視線の先を見るとそこでは女子のバレーに出る面々が練習を進めている。今やっているのはバレー部である新橋が打った強めのボールを他の五人がレシーブやトスする練習だ。

 

「行くよ!」

 

「う、うわっ!?」

 

「はい!……あっ!」

 

新橋から放たれたボールをうたは何とかレシーブするものの、それをトスしようとしたななは上手く真上に上げられずに失敗。ボールが体育館の入り口の方向へと転がってしまう。

 

「私が拾うね!」

 

新橋はそのボールを取りに行くと先にそのボールを拾う影があった。新橋はそれを見て目を見開く。

 

「あっ!翔太先輩……」

 

新橋は翔太を相手に顔つきがほんのり赤くなっていた。すると彼は転がってきたボールを拾うと新橋へと返す。

 

「行くぞ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「頑張れよー!」

 

その後、翔太は新橋へとエールを送ると彼はその場を去っていく。尚、一部始終を見ていた女子から黄色い声援が上がったが。

 

「………」

 

「わかば、やっぱ翔太先輩に恋してる?」

 

「へ、へえっ!?」

 

新橋は思わず手にしていたボールを落としてしまうくらいに唖然とするとそれを坂上がキャッチする形でフォローすると新橋へと東中が声をかける。

 

「カッコ良いもんね!」

 

「うん……実は、ずっと前から好きなの」

 

「「やっぱり!」」

 

新橋からのカミングアウトにうたとななは予想が的中したと言わんばかりに声を上げるものの、新橋からの言葉にはまだ続きがあった。

 

「でもね、私……先輩達が話すのを聞いちゃったんだけど。翔太先輩、もうすぐ転校しちゃうんだって」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

新橋から告げられたのは翔太がもうすぐこの学校からいなくなってしまうという事実だ。彼にも家庭の事情やら色々あるのだろう。それよりも重要なのは彼が転校してしまえば今空いている心の距離だけに留まらず、物理的にも距離ができてしまうという事だ。

 

「先輩が転校しちゃう前に、私の気持ちを伝えたいって思うんだけど」

 

「「「「「ふぁああっ!」」」」」

 

「でも、先輩ってモテモテだし。もしフラれちゃったらって考えると……怖くて。勇気が出ないんだ」

 

新橋は怖さからか、両腕が震えているとそれをなながそっと握る。そして、彼女はある提案をした。

 

「何か、勇気の出るおまじないみたいなのがあると良いよね!」

 

「あっ、そうだよね!」

 

「それなら、“球技大会で優勝!”とか?」

 

「どう?わかば?」

 

ななの言葉を皮切りにうたが告白のための勇気を出すため、目指すべき目標を提案する。

 

「もし優勝できたら、翔太先輩に告白する!」

 

「応援するよ!」

 

「ガチヤバ!優勝するしか無い!」

 

「そうだ。皆、聞いてほしい事があるの」

 

新橋の話が一区切りするとななはチームメイトの五人へとあることを言い出した。それは前の浅野の裏の努力の事である。

 

「浅野君がそんな事を」

 

「うん。私達、きっと浅野君の事をしっかりと見れてなかったんだと思う。……だからさ。せめて浅野君への認識を改めない?」

 

「ななちゃんがそう言うなら、私達も信じるよ!」

 

「その感じだと脅迫されたって事じゃ無さそうだしね」

 

「もう、だからそういう所をこれから止めるのに……」

 

それからその場で小さな笑いが起きた。その後、改めてうたが頑張るための音頭を取る。

 

「よーし、それじゃあ……優勝するぞー!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

五人が揃って声を上げるとそんな様子を反対側から見ていた影人は何となく向こうも団結力が上がってる事を察した。

 

「さて、そろそろ俺も頑張るかな」

 

するとそこに藤堂がやってくると彼が影人へと声をかけてきた。その声色は普段やり込まない運動をして疲れたようなものである。

 

「はぁ、はぁ、悪いけど、俺は少し休む」

 

「ああ。無茶はするなよ。……藤堂にはお願いした事があるしな」

 

「勿論……首尾は上々だね。でも、俺にもちゃんと役割を用意してくれるなんて」

 

藤堂には影人へと感謝の気持ちがあった。普段ならこういう時に運動能力不足で足手纏いになる事が多い藤堂。それでも影人は彼にとある役割を頼む事で彼を活かそうとした。

 

「俺達は五人でワンチームだろ?そのくらい当然だ。……それに、藤堂の頭脳は俺達も頼りにできるくらい凄いって知ってるんだ。頼んだぞ」

 

「ふっ……頼まれたよ」

 

影人は転入当初、藤堂とのコミュニケーションが上手くいって無かった。影人がそもそも他人への辺りが強かったために、藤堂からも多少煙たい存在に見られたからである。

 

だが、今はこうして腹の内を割って話せるくらいには仲が進展していた。それは影人が夢の挫折から完全に立ち直り、こころ達に照らされたお陰で彼の本来持っていたコミュニケーション能力が100%フルに発揮できるようになったのが大きい。

 

「もうすぐ終わりの時間だね。良し!今日の練習はここまでだよ!」

 

高村からの言葉に五人は練習を終えると帰り支度を開始。そんな中で高村は藤堂へとブルーレイのディスクを何枚か渡し、彼の方から同じくブルーレイのディスクを受け取る。

 

「はい、今回の分だよ」

 

「ありがとう」

 

「どう?傾向は掴めそう?」

 

「俺を誰だと思ってるんだ。しっかりと掴めてきているさ。ただ、それを彼が実行できるかはわからないけど」

 

「そっか。でも、今はもう藤堂も信じてる……だろ?」

 

そこに早川も来ると彼は信じてる旨を話す。……本来なら高村と早川の二人はともかく、藤堂の三人がこうして上手く纏まるというのは難しかった。そもそも運動部の二人と勉強一本で実力を出す藤堂では反りが合わない危険もあったのである。それを上手く纏めたのは精神的に問題のあるレイでは無く、逆に余裕ができた影人なのだ。

 

「ホント、転入当時の頃が嘘みたいだよな。アイツ自身も、俺達のこの関係も」

 

影人はバラバラだった彼等を上手く繋いだのだ。しかも、精神的な不安を抱えていたレイへのフォローをした上でである。

 

「何が輝けない……だよ。今のアイツは十分輝いてるっつーの!」

 

こういう表には見えにくい影のような役割を果たせるのは影人の能力の一つと言えるのかもしれない。

 

そんな中、影人はレイと二人で歩いていた。するとレイが影人へと話しかける事に。

 

「なぁ、影人」

 

「……何だ?」

 

「……覚悟、決まったわ。この球技大会で……全て終わらせる覚悟」

 

「そうだな。ちゃんとその目になってる」

 

そんな風に影人が返す中でレイは更に影人へと話しかけるとある言葉を口にする。

 

「影人……俺が未練を断つために……力を貸してくれ」

 

「当たり前だ。相棒」

 

そう言って出したのは右手の拳だった。それをレイは左手の拳で応える。二つの拳はコツンと軽く当たり、誓い合う。それは二人が改めて一枚岩となって協力する事であった。

 

それからまた数日。チョッキリ団のアジトにて。そこでは珍しくチョッキリーヌが手にしていたダーツを投げていた。

 

「チョキッとね!」

 

チョッキリーヌが見事にダーツを真ん中に命中させる中、彼女は苛立ちを露わにしていた。それは、ダークイーネが折角くれた力を無駄にしたザックリーに対してである。

 

「折角ダークイーネ様が力を与えてくださったって言うのに!ザックリー、アンタ全然ダメだったじゃないか!」

 

「いや、チョッキリーヌ様。あの、途中まではザックリ上手く行って……」

 

ザックリーがそう言った瞬間、何者かがザックリーの持っていた水晶を取り上げるようにしてある事を言う。

 

「ふーん。その割にはパワーアップしたキュアソウルに簡単に制圧されてたでしょう?」

 

「そうそう……って、スラッシュー様!?何でそれを……」

 

「私が何も見ていないと思ってました?そういう所を見ている人は見ているのですよ」

 

ザックリーはまさかスラッシューに前回の戦闘を見られているとは思っていなかったために慌てる。

 

「さて、今日はどうしようかしらね」

 

「スラッシュー、アンタ真面目にやりなさいよ」

 

「私はいつだって真面目ですわ。……あなた方が勘違いなされてるだけでしょう?」

 

「ぐ……」

 

スラッシューが言うことは間違ってない。スラッシューはあまり他人に行動の内こそ明かさないが、やる時は必要な調整はやっても本気で物事に取り組んでいる。

 

「で、今度は何が目的なんだい?」

 

「……キュアソウルのあの力に底があるのかを見極めているのですわ」

 

「あの力……そういえば前回の彼からはクラヤミンダーを一人で圧倒できるような力を感じなかったのだけど……その感じだとクラヤミンダーを一人で凌駕できる程度には強くなった。そういう事なのかい?」

 

「ええ」

 

チョッキリーヌは彼の成長速度の異常さに首を傾げる。事実、他の三人はチョッキリ団総出撃の時から合体技を使えるようになった以外はそこまで変わってない。

 

「……だとしたら今回は自分が行くのですぞ」

 

するとそこにやってきたのはカッティーであった。彼の目はやる気に満ちており、今すぐにでも出撃したそうな物である。

 

「へぇ。カッティー、珍しくやる気ですわね」

 

「当然ですぞ。……進化したアイドルプリキュアの力、しっかりとカッティーしてご覧に入れましょう」

 

「頼もしい限りですこと」

 

スラッシューはカッティーへと水晶を手渡すとカッティーはやる気十分と言うところで出撃していく。そんな彼を見送ってからスラッシューは彼女も外に出ようとする。

 

「スラッシュー、またコソコソと。何をしに行くんだい?」

 

「別に。ちょっとしたバイト……ですわ」

 

「……はぁ。また人間に紛れて潜入して何になるんだい?」

 

「え?スラッシュー様ってあの姿で行くんじゃ無いんすか?」

 

「ザックリー、また引き摺られたいのかしら?変装してるに決まってるでしょう?ま、これ以上はあまり詮索しない事ですわよ」

 

そう言って彼女は歩いてバーから出ていくとその姿が一瞬闇の炎に染まってからとある人間の姿へと変わる。

 

黒がかかった紺色でセミディの長さに切った髪。それはウェーブがかかっており、瞳は紫よりの黒。彼女の胸囲は普通より一回り大きめである。彼女の姿美しい若い女性であったが、それは影人もよく見知った物であった。

 

「さて、“天城切音”として人間の生活圏での活動……始めましょうかしら」

 

スラッシューはかつて影人と何度か接触していた女性……天城切音その人であった。そして、それが意味する事。影人のすぐ近くに火の付いた巨大な爆弾が起きっぱなしになっているのも同じであった。

 

「ふふっ……あなたの事が大好きよ。影人君、何度か直接会うようになって正解だったわ。あの子の力の本質を理解し、溶け合えるだけの技量があるのは私だけ……。その才能は無駄になんてさせないのですわ」

 

そう言ってスラッシューは小声で呟きながら歩いていく事になる。こうして、球技大会当日の朝を迎えるのであった。




また次回もお楽しみに。
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