キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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昼休みの雑談会

ホームルームが終わった直後の休み時間。影人は今現在、訳の分からない状態になっていた。

 

「……何でこうなってるんだよ」

 

「影人君、凄いね!音崎君相手にあんな堂々と……」

 

「音崎を納得させるって俺達には無理だよ」

 

「影人君の好きな事って何?」

 

「お話ししよー!」

 

影人はクラスの面々に四方を囲まれると一斉に質問攻めにされていた。影人本人はまるで訳の分からない様子である。

 

「……俺は別に自分がやりたいって思った方を推薦しただけなんだが……」

 

そんな風に半ば呆れ顔の影人。そんな中、噂のレイが影人を囲んで質問攻めしてくるクラスメイト達を宥めるように声をかけた。

 

「はいはい。あんまり一度には話しかけ過ぎるなよ。黒霧君も困ってるだろうしな」

 

レイの言葉にクラスメイトはそれもそうかと一度離れると影人はようやく解放されて机に突っ伏す形となる。そんな彼はかなり疲れた様子だった。

 

「……あのさ、音崎……レイ君だっけ?」

 

「レイで良い。俺もその方が話しやすいからな」

 

「別に俺はそれを望んで無いんだけど……」

 

影人が僅かに面倒くさそうな顔になるとレイはそんな影人に優しく接してくる。

 

「さっきの意見、俺も感心した。……影人君って最初見た時凄い暗い顔で大丈夫かと心配したけど、思ってたよりも明るそうな奴で安心したよ」

 

「は?……何でだよ。俺は別に自分で考えた事をわかりやすく伝えただけだし」

 

「それは誰にもできる事じゃない。ましてや影人にとってはここはまだ来たばかりで慣れてない場所。そこでちゃんと自分の意見を周りが納得するように伝えるなんて早々できないからさ」

 

「……あ、そう。……というか今しれっと俺の事気軽に呼び捨てにしたな?」

 

影人がレイを睨む中、レイは悪戯に成功したような顔つきでニッと笑うと影人へとまた話しかける。

 

「改めて、俺は音崎レイ。これからよろしく。影人!」

 

「……黒霧影人……。よろしく、れ、レイ……」

 

影人は少し口籠もりながらもちゃんとレイを呼び捨てにして呼んだ。何だかんだで影人もレイを呼び捨てにして大丈夫だと判断したのである。

 

「ふふっ。てっきりもう少し呼び捨てまでには時間がかかると思ったけど……影人、今のお前は凄い輝いてるよ」

 

「……はぁ?俺なんて別に普通に接してるだけだし。あと、俺に輝きなんて物はねーよ。……そんな物、とっくに無くしたんだし」

 

そんな風にレイに対して素っ気ない態度を取る影人。しかし、レイは影人と友達になる気満々であった。

 

「っと、そろそろ授業だし。他の人も話をしたいだろうからまた折を見てね。じゃ」

 

そう言ってレイは自分の席に戻っていく。そんな彼の姿が影人には眩しく見えた。彼もまたうたのようなプリキュアになれるような光とは別だが自分の輝きを持ってる側の人間だと認知できた。

 

「……ッ。アイツ、俺なんかよりもよっぽど輝いてる側の人間なのに……何で俺なんかと話したいんだよ……訳わかんねぇ」

 

そして、それから数時間の授業。更に一年の入学式が終わった後の始業式を終えて昼休みとなった。

 

どうやらここでもこの学校は特殊らしい。普通午前と午後で分けられる入学式と始業式が午前で固まってる影響か、そのまま昼過ぎまで学校があるらしい。

 

「……影人君!一緒にお弁当食べよ!」

 

うたが後ろに女友達を三人ぐらい引き連れて影人へと話しかけてきた。影人は見事に女子ばかりの編成にギョッとする。

 

「ッ……何で俺を入れようとするんだよ」

 

「えー?私の友達達が話をしたいって言ったから。良かったね!影人君!」

 

影人は断ったらまたうたが煩く影人に絡もうとして面倒な事態になると考えて仕方なく受ける事にした。

 

「……わかった。でも、あんまり踏み込んだ質問とかは止めろよ?」

 

影人の言葉にうた達は彼が了承してくれたのが嬉しかったのか、微笑んでいる。

 

それから早速影人はうたや彼女の友達三人。更に先程ピアノの伴奏を弾く事を立候補した蒼風ななの六人で机を合わせて食べる事に。

 

「(……視線が痛い)」

 

ただ、やっぱり影人は周りの男子からの嫉妬の目線に晒された。何しろ、転入一日目でもう周りから見たら完全なハーレム状態になっているのだ。嫉妬されないわけが無い。

 

「じゃあ早速皆の自己紹介からね!」

 

うたの言葉と共にうた以外の女子四人が自己紹介をしていく。先程うたと一緒にいた赤い髪のボブヘアに眼鏡をしたのが東中みこと。茶髪に水色のリボンでポニーテールに纏めたのが新橋わかば。深緑の髪でロングヘアなのが坂上るか。そして、最後にななも自己紹介をする事に。

 

「蒼風ななです。影人君、よろしくね」

 

「よろしく。……そういえば、蒼風さんはさっきピアノの伴奏を立候補してたけどピアノ得意なの?」

 

「ふっふーん!聞いて驚かないでよね!ななちゃんは去年、ピアノのコンクールで優勝したんだよ!」

 

そんな風に新橋が自慢げにななの事を語ると影人が驚くよりも大きな声でうたが驚きの声を上げた。

 

「ええ!?凄ーい!」

 

「……俺のリアクションを取るな。ついでに言えば、知らなかったのかよ」

 

「それにお母さんはプロのピアニスト!」

 

「今はフランスで演奏旅行中だよ」

 

そんな風に新橋は鼻息を鳴らすほどに誇らしげに言うとななが補足するように母は今、海外にいると伝える。

 

「へぇ……。クラス違ったから全然知らなかった!これからよろしくね!」

 

「こちらこそよろしく」

 

うたはななとも早速仲良くなった様子で嬉しそうに話す中、影人はななも人並み外れた輝きを持っているのだと理解。そんな彼女がうたと同じように自分とは遠く離れた存在だと感じてしまう。

 

「そういえばさ今年ももうすぐコンクールだよね!」

 

「そうなんだ!頑張ってね!」

 

「うん!」

 

ななの話で盛り上がっていたその場だが、いきなり坂上の言葉で話題は転換される事に。

 

「あ!ねぇねぇ見た?キュアアイドル!」

 

そしてその話題に入った瞬間、うたの耳がピクピクと動くのが影人には見えてしまう。影人はとうとうこの話題が出てしまったと頭を悩ませた。

 

「ネットでバズってたよね!」

 

「素敵だった!」

 

「あらあら……」

 

うたは自分……と言うよりキュアアイドルへと向けられる褒め言葉がとても嬉しくて少しずつ照れ始める。

 

「私、何度も見ちゃった〜」

 

「うんうん!まぁ、みことはね〜」

 

「………」

 

「歌も良いし!」

 

「可愛いし!」

 

「もう〜!皆褒めすぎだから〜!」

 

そんな風にうたは調子に乗ると鼻っ柱がドンドン伸びて増長していく。勿論、友達達が褒めているのはうたでは無くキュアアイドルなわけで。

 

「「「「何でうた(ちゃん)が照れてるの?」」」」

 

「……はっ!?……べ、別に。何でも無いよ」

 

影人はそんな風に慌てて訂正したうたを見ると彼女がどれだけ調子に乗っているのかを感じて半分呆れてしまう。

 

「こんなのが妖精の世界の救世主って……不安だ……」

 

影人が調子に乗りやすいうたが増長する事に不安を抱く中、チラリと先程話しかけてきたレイの方を向くと彼もまた男友達と話しながら弁当を食べている所だった。

 

「あのさ、音崎レイってこの学校だとどういう印象なんだ?」

 

影人は流石にこの学校でのレイの立場が気になったのか、うた達に聞く事に。

 

「えっとね、とにかく何でもできるって印象かな」

 

「成績もトップクラスだし、運動もできるし、ついでに頭の回転も早いからさっきみたいな意見を出す場面だと結構良い案を持ってきてくれるの」

 

「なるほど、典型的な優等生タイプ……」

 

影人がそう言うとその解釈は少し違うとばかりにななは首を横に振ると影人の認識を訂正した。

 

「ちょっと違うかな。音崎君はふざけるときとかは結構悪ノリするよ」

 

「どっちかと言ったら運動もできる策士タイプっていうのが正しいかも」

 

影人はそれを聞いて何となく納得する。確かにレイなら人を上手いように使って自分の思い通りの結果にまで持っていきそうな感じだからだ。

 

「だからそんな音崎君と真正面から案をぶつけ合って彼を納得させたのって結構凄い事だよ?」

 

「私、さっきの影人君はとってもキラッキランランしてるように見えた!」

 

「……よせよ。俺にそんな期待はしない方が良い。そんな物、人を惹きつけるような才能じゃない」

 

影人がそう言うと女子達は顔を見合わせる。影人のその発言に違和感を感じたのだ。

 

「え?でも私達からして見たらあの時の影人君は私達を十分惹きつけてたと……」

 

「ごめん。これ以上この話はしないでくれ。……折角の楽しい時間なのにこんな気持ちですまない……」

 

影人はまた心が乱れていた。何故周りはこんな自分を褒めるのか。自分なんてそう大した事はしてないのに。たかだか自分の意見を認めさせただけなのに。

 

「じゃあ、話題を変えるね。キュアアイドルも凄く推せるんだけどさ、このVチューバーもここ最近伸びてるよね!」

 

影人が嫌がったために東中は仕切り直しと言わんばかりに話を変えるとスマホの動画投稿アプリにあるとあるVチューバーのチャンネルを見せた。そこにあったのは薄紫の髪をロングヘアにして影人のオッドアイとは左右の目で逆になった色合いのオッドアイ。更に人を惹きつけるような四芒星の白く大きなハイライト。そして頭に付けた黄色い三日月の髪留めを付けた可愛らしいホログラムの少女があった。

 

「それって、確かここ半年から一年ぐらいで注目されているVチューバーのドリーム・アイさんだよね!」

 

「そうそう!事務所に所属してないフリーの人なんだけどさ。不定期に配信してくれていて。雑談とか歌ってみたとかを中心に今、頭角を表しているんだ!」

 

「私も知ってる!」

 

ななも知っているらしい。しかも、彼女は若干ドリーム・アイの話になると先程よりも声色が興奮したように上擦っていた。

 

「……」

 

「影人君?どうしたの?」

 

「いや、何でもない……何でもないんだ」

 

影人は何とか動揺を隠すようにそう言うと今日何度目かわからない頭を内心で悩ませる事態になっていた。

 

「ねー。トークは私達よりも年上っぽいし」

 

「歌も透き通ってて上手いよね!」

 

ドリーム・アイは大人びた話し方にリスナーへの神対応。歌ってみたで見せる透き通った歌。そして見た人間の誰もを惹き寄せる天性の瞳。彼女の前で若者達は一度見ればその魅力に惹き込まれ、あっという間に彼女の虜になってしまうと言われている。

 

「ここ最近更新が無かったけど、昨日復活配信してくれたんだよね!」

 

「え〜良いなぁ。私も知ってたら絶対リアタイしたのに……」

 

「ほら、アーカイブもあるからさ」

 

そんな風に彼女達の会話がドリーム・アイに移ると影人の脳はまた複雑な気持ちのせいで焼かれていく。

 

「影人君はどう思う?」

 

「え?えーっとな……」

 

影人は何とか答えようとするが、やっぱり上手く脳が回転しない。と言うのも、そのドリーム・アイというフリーのVチューバー。その正体は影人の妹、黒霧夢乃なのだ。ドリーム・アイという名前だって夢乃がVチューバーを始める際に彼女にせがまれた影人が付けた名前なのである。ドリームは彼女の名前の夢乃の夢という漢字から。アイに関しては彼女が現実でも周りの人から慕われやすい要因である彼女の瞳から来ている。

 

「俺もアイさんのトークとか好きだな……あはは……」

 

早くも自分がドリーム・アイの家族とバレると面倒になりそうな事案が発生してしまう。

 

「そういえば、影人君もアイさんと同じオッドアイだよね」

 

「あ、ホントだ!瞳の色は左右逆だけど、色も同じ!」

 

「偶々だろ。それに、Vチューバーなんだから瞳が現実とホログラムで違うなんてあり得るだろ?」

 

影人が上手くそうやって質問を捌くが彼は心臓に悪い状態にさせられて困り果てた。何しろ、夢乃の評価を落としたくないと思っている。もし夢乃がドリーム・アイだと知られれば彼女が大人では無いのみならず、自分よりも歳下だという事実のせいで夢乃が周りから様々な嫌味を言われると思ったのだ。

 

「特に質問に対する回答は落ち着いてるし、言葉に所々可愛らしさや若者のような雰囲気もある中でも話し方はとっても綺麗だし!」

 

「多分私達よりも年上の人なんだろうなぁ……」

 

「ホント、憧れちゃう〜!!」

 

「(……なんかすまん……。中身は俺達より思いっきり歳下なんだ。というか何なら小学生なんだよ……)」

 

ちなみに大人っぽい話し方についてはVチューバーを始める前に影人が夢乃に指導を入れて彼女の話し方を矯正したのだ。そうしないと年齢による話し方の違和感が出てしまうからである。最初こそ不自然だったが、影人が夢乃がやりたい事のために懸命に教えた結果。今では夢乃は完全に公私で使い分けができている。加えて声質も幼びた物から若干大人らしい落ち着いた物に変えているので夢乃がドリーム・アイの正体だとは誰も気が付かない。

 

「(これは絶対夢乃だってバレたらダメなやつ……プリキュアだけでも周りに隠すのキツいのに知られたらダメな秘密がもう一個増えたよ……)」

 

影人の心配は他所にドリーム・アイへの憧れの気持ちを話すうた達。影人は不安な状態でも何とか精神を保つ。それからうたやその友達達の相手をし続けるとこの日は一旦特に問題も無く昼休みが終わったので影人はまずは一安心するのであった。




また次回もお楽しみに。
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