キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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二つの告白の結果 新たなアルバイト

新橋が告白のためにいなくなった後。影人、こころ、レイの三人は外にいた。ちなみにうた達は新橋の告白の結果を聞くために別の場所にいる。

 

「わかば先輩の告白、成功すると良いですね」

 

「そうだな」

 

するとそんな時だった。レイの前に一人の影が現れる。それは影人達にあと一歩の所で惜しくも負けた浅野であった。

 

「浅野……」

 

「……レイ、少しだけ話があるんだ。付き合ってくれるか?」

 

浅野の声色は前にレイに挑戦状を叩きつけたあの時とは打って変わってしおらしい物である。それを受けてレイは彼が真剣な話をするのだと実感した。

 

「わかった。……影人、こころ。悪いけど……」

 

「ああ、こころ。向こうで二人で話そう」

 

「わかりました。レイ先輩、失礼しますね」

 

それから二人はレイと浅野の二人の大切な話の邪魔はできないと去っていく。その場に残された二人。少しだけ静寂が流れるとまず口を開いたのは浅野だった。

 

「……レイ、まずはその……色々と済まなかったな」

 

「それはどういう意味での事?」

 

「……影人から全部聞いたよ。お前が自分の意思でバスケを辞めたんじゃ無いって事。俺はずっとお前が勝ち逃げしたって勘違いしてた事……本当にごめん!」

 

浅野はレイに頭を下げて謝った。レイはそれを聞いて彼も自分の父親がやった事に対しての被害者だと認識する。

 

「いや、影人から聞いたならわかると思うけど俺が辞めたのは俺の意思じゃ無い。だからあまり気にするなよ。正直、理解してもらえないって思ってたからな」

 

それを聞いて浅野は言い返せなかった。少し前の心の整理が付く前の自分だったらきっとそれを聞いても心の無い事を言ってレイを傷つけた自覚があったからである。

 

「……俺は小学生の頃、お前にずっと嫉妬してた。バスケで強くて、皆から天才だー天才だーって言われてるお前に……バスケで勝ちたかった」

 

浅野は幼い頃、レイ相手にどれだけやっても勝てなかった。だからこそ、レイがいきなりバスケ界から消えた後もずっとレイに対して執着し続けて来たのだ。陰での努力も全てレイに一対一で真正面から勝つための物だったのである。

 

「……お前がいなくなってから、俺は寂しかった。一つの目標を失って、どうしようも無くて。レイはきっと俺が問い詰めても親父さんのせいで辞めさせられた件は黙ってるつもりだったんだろ?」

 

「そうだな。さっきも言った通り、お前相手に普通に言っても納得してもらえなかっただろうし……喧嘩して目立つのは避けたかったからちゃんと話す事は無いと思う」

 

「そっか」

 

浅野の目にはもうレイへの強い執着の気持ちは無くなっていた。それは今回の試合を通してレイは変わった事を感じ取れたからだ。もう自分が超えるべき目標その物だったあの頃のレイがすっかり消えてしまったと……今回の試合で浅野が認識してしまったからだろう。

 

「レイ、今日はありがとう。俺の事を叩きのめしてくれて」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「……今回の告白の件も含めてだけどさ。蒼風さんにその気が無いことは薄々わかってた。だから、俺が勝っても彼女にその気が無いなら手を引くつもりだったんだ。でも、あの時あの場所で断られるのが怖くて……俺は無理にでも話を通した。蒼風さんには悪い事をしてしまったと思ってる」

 

「そうかよ……。でも、それを言うなら相手が違うんじゃ無いのか?蒼風さんに直接言えよ」

 

「……彼女にはこの話はもう伝えてある。俺が勝って答えを聞きに行ってもアッサリと断って良いって。多分、彼女の気持ちは変わらない。だから、負けたのはある意味都合が良かったのかもな」

 

そんな中、レイは浅野を真剣な目つきで見据えると浅野が今言った言葉の真意について確認する。

 

「……一応聞いておくけど、わざと負けたわけじゃないよな?」

 

「なわけあるかよ。俺だって全力でやったから今こうしてスッキリしてるんだよ」

 

それからまた少しそよ風が吹くとそれが二人の男の体を駆け抜ける。するとレイは声を上げた。

 

「……浅野はさ、俺という目標を失ってこれからどうするんだよ。バスケ引退だなんてアホみたいな事言わないよな?」

 

「まさか。……むしろ、今の俺にはレイがいた頃には無かった夢がある。……全国制覇っていうさ」

 

ここまで触れて来なかったが、浅野はレイとの戦いを制した先に日本の中でのトップを目指すために頑張るつもりであった。レイへの完全勝利はそのための第一歩でしか無いという事である。

 

「随分と大きな夢を見てるな、浅野は……。正直、羨ましい」

 

「レイ……。もしさ、レイが嫌じゃ無かったらだけど……友達になっても良いか?」

 

浅野の言葉を聞いてレイは目を見開いてから僅かに吹き出す。そして、浅野の前に立つと笑顔を向けた。

 

「何当たり前な事言ってるんだよ。俺達はもうとっくにバスケが繋げてくれた友達……だろ?」

 

それから二人は再度握手すると完全に二人の中にできていたわだかまりが解消される事になる。そんな中、二人の元に別の影がやってきた。するとレイはその影が見える位置にいたためか、浅野へと小さく声をかける。

 

「浅野、彼女との話……向こうはこのまま有耶無耶で終わらせるつもりは無いみたいだ。だからちゃんと決着付けて来い」

 

「え?」

 

それから浅野が振り返るとそこにはななが真剣な顔つきでいた。……浅野としては負けた自分では彼女に顔向けできないどころか、気まずくなるだけと考えて敢えて会おうとしてなかったのである。しかし、ななは浅野へと話しかけた。浅野視点では終わっていても、彼女視点で見たらまだ何も終わってないからである。

 

「……浅野君」

 

「蒼風さん……」

 

そんな中、レイは二人きりにするために気を利かせてその場から立ち去っていく。それからななは浅野を真剣な目で見ると話しかけた。

 

「この前の返事、試合に負けたからって返したらいけないなんてルールは無かったし……勇気の出るおまじないもしてきたからちゃんと話すね」

 

なながそう言うと浅野の方も覚悟ができたのか、彼女の気持ちをちゃんと受け止めようと決意する。

 

「……わかった。話してくれ」

 

「結論からまず言うね。……私は浅野君とのお付き合いはできないです……ごめんなさい」

 

「そっか。……理由を聞いても良い?」

 

「私、放課後に浅野君が練習してるあの時まで……浅野君の事をもっと冷たくお断りするつもりだった。でも、あれだけ頑張ってる浅野君を見て……今日の試合でも真剣にレイ君に勝つためにぶつかってて。……私は浅野君の事を何も知らなかったの」

 

ななはそれからお付き合いできない理由を丁寧に話していく。浅野は振られてしまったショックもあったが、ななが自分にちゃんと向き合ってくれた事への嬉しさもあった。

 

「……多分浅野君は私達が思ってる以上に真面目で、努力家なんだって。だからきっと私とお付き合いしても大切にしてくれる。そう思う事はできた。……それでも、私には浅野君の事はどうしても友達の領域を出ないと思ってしまって。沢山悩んで考えたけど……そういう結論になりました」

 

「……ありがと。蒼風さん、有耶無耶にせずにちゃんと話してくれて」

 

「うん……。私の方こそ、好きになってくれてありがと。それじゃあね」

 

その言葉を最後にななは浅野から去っていく。浅野は悔しさでいつの間にか涙が流れていた。しかし、それでも今度は変な執着心が湧いてこなかったのは……なながこの場できちんと話をしてくれたからだろう。

 

「……そうだよな。俺にはわかるよ。蒼風さんが今一番興味がある男は……お前だろ?レイ……」

 

こうして浅野の恋とレイへと向けていた執着の気持ちはこの日、終わりを告げた。でもそれは浅野にとって悪い終わり方では無い。むしろ、断られる方向で考えた場合、最善に近い断られ方であったのだ。

 

「あいつにも……影人にも感謝しないとな」

 

浅野はそう言って少し前に喫茶グリッターに来ていた自分にちゃんとレイの事情を話してくれた影人にも感謝の気持ちでいっぱいになっていた。

 

その頃、影人はうた達と合流。自分のクラスに戻っていく。こころも自分のクラスに戻るのだが、彼女は彼女で影人がうた達と合流するまでの間、影人に甘えるだけ甘えていた。

 

それはさておき、影人はうた達と合流すると新橋の恋の顛末について一応結果だけ聞く事にした。

 

「そっか……新橋さん、ダメだったのか」

 

「うん。……あ、でもなんかもう次の恋見つけちゃったというか……」

 

「……はい?待て待て、ん?どういう事?」

 

どうやらうた曰く、告白を終えて戻って来た新橋は翔太先輩に振られてショックな気持ちがあったらしい。そんな中で“次の恋なんて見つけられない”という新橋。そこに声をかけたのがクラスメイトの藤野である。

 

「……なるほど、つまり球技大会での事を褒められた新橋さんはアッサリ藤野に恋をしたと……っておい!?何でだよ!色々と彼女を応援しようと思っていたこっちの気持ちを返せよ!!」

 

影人が声を上げる中、その隣でうたは振られた後の変わり身があまりにも早い新橋を見て荒ぶった影人を宥める事に。

 

「まぁまぁ、わかばだって悪気があったわけじゃ……」

 

「だとしてもあと数日くらいは失恋で落ち込んでいる新橋さんを咲良さん達が慰めるパターンだろどう見ても!普通はそんな簡単に切り替えなんてできないからな?多分俺もこころに今別れる宣言されたら一週間は最低でも寝込むからな?」

 

「あはは……」

 

うたは影人へと苦笑いする中、影人はこれ以上1人で言っていても仕方ないと考えたのか一旦落ち着く事になる。

 

「悪い、色々と取り乱した。済まないな」

 

するとそのタイミングでうたのスマホにメールが入った。それを見るとうたの母親の咲良音からである。

 

「あ、お母さんからだ……って、え?」

 

「どうした?」

 

「……なんか、うちでまた新しくバイトさん雇うみたい。その人が挨拶したいって言ってるから今日は早めに帰って来てって言ってる」

 

「ふーん。ま、あのお店もご飯時は大変だし、田中さん以外にも外部からの働き手が増えるならそれに越した事は無いでしょ」

 

すると影人のスマホの方にも連絡が入る。それは妹の夢乃からだ。こちらははもりと遊ぶためにグリッターにいるから一緒に帰るために迎えに来て欲しいとの事である。

 

「……はぁ。夢乃、そのくらい一人で帰れるだろ」

 

影人は一度溜め息を吐くと一応了解の意思を返した。後でゴネられるのも面倒と感じたのであろう。何だかんだ言っておいて迎えに行く辺り、影人が夢乃に甘い証拠になるのだが。

 

それから少しして、影人達は荷物を取りに戻ると影人とうたは二人でグリッターに向かう事になった。影人は夢乃を迎えに行くためで、うたは新しいバイトの人と会うためにだ。

 

「ただいま〜」

 

「お邪魔します」

 

二人がグリッターの戸を潜るとそこには先程まではもりと遊んでいたと思われる夢乃がカウンター席で待っていた。

 

「あ、お兄ちゃんお迎えありがと」

 

「お前な、年齢的にお迎えが必要ってわけじゃないんだから一人で帰れよ」

 

「あはは、ごめんね。でも、お兄ちゃんにこっちに来てほしかった理由はまた別にあるんだ」

 

夢乃からの言葉を聞いて影人は首を傾げる。どうやら、夢乃が来て欲しいと言った本当の理由は自分のお迎えでは無いらしい。

 

「おい、夢乃。それってどういう事だよ」

 

「んー?多分その人ならもうすぐ来ると思うけど……」

 

影人と夢乃が話す中でうたの方も両親に新しいバイトの人の件について問いかけていた。

 

「お帰り、うた」

 

「お父さん、お母さん。新しいバイトさんってどんな人なの?」

 

「今奥から出てくるから」

 

するとグリッターのキッチンに繋がるのれんの奥から一人のエプロン姿の女性が出て来た。そして、その姿を見た瞬間、うたは目を見開く。その女性はうたから見てとても美しいと感じられた。

 

身長は影人よりも高く、セミディの長さと思われる紺色の髪は仕事のために後ろで短めなポニーテールとして結んでいた。瞳は紫よりの黒で、うた達よりも発育した胸部やその美しい顔つきは女子のうたでさえ一瞬見惚れてしまう。

 

「あなたは……何でここに……」

 

その直後、影人は女性を見て驚きの声を上げた。そこにいたのは前に影人が出会ってそれ以降も握手会等で度々会っていた女性、天城切音であった。

 

「今日からこのお店のバイトとしてお世話になります。天城切音です。よろしくお願いします」

 

そう言って彼女が頭を下げるとニコリと人懐っこい笑顔で影人達の方を見る事になる。




また次回もお楽しみに。
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