キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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天城の事情 夢乃のマネージャー

影人達の前にエプロン姿で現れたのはグリッターの新しいバイトとして雇われた天城切音であった。

 

「天城さん!?まさか、新しいバイトさんって」

 

「ええ。私の事ですよ。それと夢乃ちゃん、影人君を呼んでくれてありがとね」

 

「うん、知り合いからのお願いだしこのくらい大丈夫ですよ」

 

その瞬間、影人は凍りつくと夢乃へと詰め寄って問いかけた。勿論理由は何故初対面の天城の言う事を素直に聞いてしまったかについてだ。

 

「夢乃、知らない人に頼まれてもあまり応えたらダメだろうが!何でそんな素直に引き受けたんだよ」

 

「えー?一応ここのお店のグリッターで働くって話だし、お兄ちゃんの知り合いって聞いたから」

 

「だーかーら、もし知り合いを語る犯罪者とかだったらどうするんだよ」

 

影人は夢乃の軽率な行為を咎めていた。今回は本当に知り合いの天城だったから良かったものの、もしこれが不審者だったら影人が来た瞬間に連れ去ったり、逆に夢乃を人質にしたかもしれない。そのため、次からはこのようなお願いに軽率に応えたらダメだと言い聞かせた。

 

「ごめんなさい、お兄ちゃん……」

 

「やれやれ……それで、天城さんはどうしてここでのバイトを?元々普通の会社員として働いていたんじゃ……」

 

「あはは……。実はね、前の会社で同僚と口論で大喧嘩しちゃって……。周りは皆、敵対した同僚の味方をしたから居づらくなって……」

 

それで辞表を出して辞めたらしい。彼女も色々と苦労したのだと察すると影人は彼女がここで働く事を認識する。

 

「なるほど……」

 

「それと、うたさん」

 

「え?は、はい!」

 

「未熟な私ですが、これから頑張りますのでよろしくお願いします」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

天城はうたへと改めての挨拶をするとうたは緊張からか、少しぎこちないような答えを返した。どうやらうたは彼女の美しさに見惚れてしまってるらしい。同じ女として彼女の背中が大きく見えるのだ。

 

そんな中だった。咲良家の飼い犬であるきゅーたろうがうたの元へとやって来る。

 

「ワン!」

 

「あ、きゅーちゃん」

 

「可愛い……あの、この犬は?」

 

「えっと、うちで飼ってるきゅーたろうこときゅーちゃんです」

 

そんな中、天城はしゃがむとこれから咲良家にはバイトでお世話になるという事できゅーたろうにも挨拶をしっかりとした。

 

「よろしくね、きゅーちゃん」

 

するときゅーたろうは何故か天城を見て多少警戒しているような様子である。そんなきゅーたろうを見てうたはそんな事はしてはいけないと声をかけた。

 

「うーっ……」

 

「きゅーちゃん、ダメでしょ。天城さんはこれからバイトで何回も来るんだから。あっ、うちのきゅーちゃんがすみません。普段はこんなにも警戒心は示さないんですけど……」

 

「いえ、大丈夫ですよ。これから仲良くなれば良いので」

 

天城がそう返すと頭をペコリと下げる。取り敢えず今日は採用のための手続きだけだったので、彼女はひとまずグリッターを後にする事になった。そんな中、グリッターから出た天城は笑みを浮かべる。

 

「……これでアイドルプリキュアの懐に入り込めますわね。さて、アイドルプリキュアの力の源を調べさせてもらいましょう」

 

天城は今回のバイトへの志望は完全にアイドルプリキュアの日常への潜入目的だった。彼女としてはこの潜入であれだけの脅威を誇るアイドルプリキュアの力がどのようにしてできているのか。気になったのである。

 

「ふふっ……ついでに影人君についても色々調べられますわ。向こうがただのバイトだと認識してしている間、貰えるだけ情報を貰いますわよ」

 

天城がグリッターから遠ざかりながら色々と思考する中、影人と夢乃は帰る時間もあるので家に帰るべく出ようとする。

 

「さて、夢乃。俺達もそろそろ帰るぞ」

 

「あっ、うん。音さん、お邪魔しました」

 

「はーい。夢乃ちゃん、今日も来てくれてありがとう。明日からもはもりをよろしくね」

 

「はい!」

 

それから影人達が家への帰路を歩く中、夢乃がある事を思い出したように声を上げる。

 

「あっ!そういえば……アレ、今日じゃん!」

 

「……アレ?」

 

「私の専属マネージャーさんが家に来る日」

 

「……は?」

 

影人は夢乃の衝撃報告を聞いて顔が凍りつく。そのような大事な出来事が控えていたのに何故それをこのタイミングまで言わなかったのか。

 

「夢乃、それって何時に来てもらうんだ?」

 

「えっと……あと三十分後ぐらい……」

 

その瞬間、影人と夢乃は家までダッシュする羽目に遭った。影人に至っては試合でかなり走って疲れているのに問答無用である。影人と夢乃は家に戻ると急いで着替えてマネージャーを迎えるための支度をした。それが終わる頃、割とすぐに玄関のチャイムが鳴らされる事になる。

 

「はーい」

 

それから夢乃が出ると家の前にいたマネージャーと共に家に入った。影人が夢乃のマネージャーを出迎えるとそこにいたのはスーツ姿で黒い髪。眼鏡をかけ、鋭い目線をした女性である。髪はポニーテールであり、目つきが鋭い影響か、硬派な印象を与えた。

 

「初めまして、黒霧影人と申します。妹の夢乃がお世話になってます」

 

「……私は夢乃さんのマネージャーをやっています。姫野咲と申します」

 

そう言って姫野は淡々とした話し方で自己紹介をすると名刺を取り出して自分の身分を証明した。

 

「名刺をありがとうございます……」

 

「姫野さん、アレは話さなくて良いんですか?」

 

「……そうですね。影人さんになら話しても大丈夫ですか。……私はキラキランドの妖精、ヒメーノです。ただ、こちらの世界ではこの姿でやってます」

 

姫野が右手で眼鏡をクイッと上げる。そんな中、影人は再度彼女がこのタイミングで何故来たのかを問う事に。

 

「あの、姫野さん」

 

「はい、何でしょう?」

 

「本日はどのようなご用件で?」

 

「……今日はまだご家族への挨拶とコラボの件のお話も兼ねています」

 

影人は納得の顔つきとなるものの、両親がいないこのタイミングで来た彼女に何かの意図があるのか気になった。

 

「家族への挨拶……。父と母が戻るまでまだ時間がかかります。そこまではコラボの件をお話ししましょう。プリキュアの事は父や母には話せない事なので」

 

姫野は影人の意見に賛同なのか小さく頷くと鋭い視線を向ける。影人は彼女は生粋の仕事人だと感じ取った。それと同時に今まで夢乃を甘やかしてきた分、それなりに彼女へと厳しく接してくれると考える。

 

それから姫野は楽譜の譜面を出すとそれを影人の前に置く。どうやら既に譜面は完成済みらしい。

 

「夢乃さんがやりたいと言われているコラボで使う譜面です。やりたい曲はアイドルという曲だそうで」

 

「アイドル……あの芸能界の中を描くアニメの主題歌ですか?」

 

「はい。この選曲は私も賛同できましたので上に掛け合って色々と許可は貰いました。既に原曲のアーティストや著作権等に関しても問題はありません」

 

影人は彼女のその言葉にやはりプロは違うと思い知る。夢乃がサウンドプロダクションに採用されてからそこまで時間は経ってないはずだ。それなのにここまでのペースで準備が進んでいるのは彼女の手腕のお陰だろう。

 

「わかりました」

 

「そちらのマネージャーであるタナカーン……いえ、田中さんの方には既に話は通してあります。アイドルプリキュアの皆さんがこの曲でも問題無いのでしたら早速そちらでパートを決めてもらいたいです」

 

「……レッスンの予定日とかはどのくらいを想定していますか?」

 

「……どんなに早くても三ヶ月はいるでしょうね。アイドルプリキュアは本来、芸能活動をするためのアイドルではありませんし、彼女達はあくまで普通の学生なので。むしろ、私の中では半年ぐらいはいると思ってます」

 

その言葉を聞いて手厳しい評価であると感じ取る。しかし、影人はそれだけ彼女が真剣にこの話に向き合ってくれている証拠だと考えて話を続けた。

 

「……確かにそのくらいは最低でもかかるかもですね。それで、姫野さんは……俺達の事をどう見てますか?」

 

「どう……ですか?」

 

「アイドルプリキュアが出てからニ〜三ヶ月。姫野さん視点で俺達はどう映ってますか?」

 

「……私からして見たらプロとしてはまだまだ二流が良い所ですね。正直、一線級には遠く及びません。夢乃さんにも同じ事は話しています」

 

その言葉を聞いて影人がチラリと夢乃を見るとそこまで彼女はショックを受けていなさそうだった。どうやら、彼女自身もそういう自覚はあるらしい。

 

「この感じだと夢乃も姫野さんの評価には納得済みみたいですね」

 

「ええ。……むしろ、私はあなたの手腕でドリーム・アイはあそこまで大きくなる事ができたと。そう断定しています。裏を返せば……ドリーム・アイ自身は才能ありきとは言ってもそのファンの半数近くはあなたのやり方が良かったから得られた物。ドリーム・アイ自身の実力はまだまだ伸び代があると思ってます」

 

姫野は淡々と話すためにあまり感情を表に出さないようなイメージだった。しかし、夢乃は彼女の厳しい姿勢も受け入れてやっている。……こういう厳しいマネージャーが相手だと夢乃の心が折れる危険があったが、ちゃんと乗り越えてくれて影人は安心していた。

 

「……話をアカペラに戻しましょう。パートは六パートで一人当たり一パート分……で良いですね?」

 

「多少のパートの入れ替わりはありますが概ね問題はありません。……ただ、私が推薦するにメインパートを歌える器の人は今のアイドルプリキュアであるなら……キュアアイドルだけと認識しています。次点でキュアウインクですね」

 

どうやら姫野の評価では歌唱力でメインを張れるアイドルプリキュアであるならアイドルが妥当らしい。話にも上がらないキュンキュンに関しては歌唱力においては他二人よりも出遅れていると認識している。

 

「それと、レイさんですが今回は参加できません」

 

「ッ!?レイ先輩は……参加できないんですか?」

 

「夢乃……」

 

「ええ。……社長からレイさんの時間はこれ以上変には削れないとの意向です」

 

レイには社長からの束縛がある。そう考えると仕方ない所ではあるが……こうなると大きな問題が発生する。

 

「それは、俺達は五人で歌えって事ですか?」

 

そう。今のアイドルプリキュアは四人。ドリーム・アイこと夢乃を入れても五人にしかならない。そう考えると六人で分けた曲は完成しない。

 

「私は……プリルンとメロロンを入れる事を推奨します」

 

「プリルンとメロロンですか?」

 

「ええ。あの二人。特にプリルンの方は、練習をしっかりやれるのであればメインをやっても良いくらいです」

 

随分とプリルンの歌を買い被ったマネージャーである。どうやら姫野はプリルンの能力を認めているらしい。

 

「……多分彼女はNGは出さないと思います。ただ……彼女の性格的に厳しくする現場はあまり向かないかと」

 

「それは承知の上です。ただ、プリルンとメロロンの参加は社長も望んでいます」

 

どうやら社長の方はあくまでプリルン、メロロンを使う気だ。姫野もそれに賛同している。こうなると断るのは難しいかもしれない。

 

「……わかりました。後日彼女達に聞いておきます。プリルンは恐らくOKしますが、メロロンに関してはもしかすると嫌がるかもです」

 

「わかっています。ただ、あなたとならメロロンは喜んでやると思いますよ」

 

どうやら姫野は田中辺りと情報交換する際に色々と仕入れているのか、メロロンが自分に懐いていると知っているらしい。それも含めて今回起用しようと考えているのだろう。

 

「……やっぱり、姫野さんは仕事ができる人間ですね」

 

「……いえ、むしろ私にはこれしか取り柄が無いので」

 

姫野は淡々と言うが、その声色は明らかに曇っていた。その反応を見るに、彼女も自分の良さを見つけるまで相当に苦労してきたのかもしれない。

 

「わかりました。明日にでも他のメンバーに話を聞いてみます。連絡は夢乃越しでも大丈夫ですか?」

 

「……いえ、あなたと直接の方が今後の事がありますので。アドレス交換をお願いします」

 

姫野は影人と連絡を取れるようにしたいとアドレスを交換する。すると影人はふと思ったのか、質問をした。

 

「そういえば、先程プリルン、メロロンを使うと言いましたが……彼女達を入れるとメンバーが七人になりますよ?」

 

「その場合は1stのコーラスを二人にしてそこの厚みを増やします。メロロンがダメなら六パートを一人ずつになりますね」

 

「夢乃の希望は?」

 

「……私は1stにする」

 

「それは夢乃の意思?姫野さんに言われて無理矢理じゃないよね?」

 

「うん。……私は多分、アカペラではリードをずっとやれるだけの実力は無い。だから音域的にも1stが一番しっくり来る」

 

「わかった。姫野さんもそれで大丈夫ですか?」

 

「ええ。私もそれは賛成です。夢乃さんには1st、次点で2nd。どうしてもリードがいないならリードにするつもりだったので」

 

影人はそれらを総合して納得するとそのタイミングで玄関が開く音がすると両親が帰ってきた。

 

「……コラボの話はひとまずここまでですね。また諸々の話は追々詰めていきましょう。それと最後に。キュアアイドルのパートですが……リードをやらない場合、彼女は3rd(・・・)が適正だと思ってます」

 

「3rd……コーラスの中でも低音ですよ?それ。アイドルの歌の音域は低くても2ndでは?」

 

「わかってます。ですが……彼女を最も活かすなら、そして彼女達の音域を加味するとチームバランス的にも私はそこが良いと思ってますので。では、ご両親を交えた話をしましょう」

 

それから姫野は影人の両親である魁斗や理沙と対面すると再度名刺を出した上で自己紹介。改めてマネージャーとして夢乃を預かる身としての覚悟を示す。

 

「夢乃の事をよろしくお願いします」

 

「ええ、勿論です。……夢乃さんは正しく育てれば大器になると思いますので。責任を持ってマネジメントさせていただきます」

 

「それと、お願いですが夢乃はまだ幼いので折れる時があるかもしれません。その時は……」

 

「はい。影人さんから引き継いだ通り、精神面のフォローもしっかりとさせていただきますので」

 

それから姫野は話し合いが終わったという事で事務所へと戻っていく事になる。そんな彼女を見送ってから影人は自分の部屋で夢乃と話をした。

 

「夢乃、あの人の事……姫野さんは信用できそう?」

 

「……うん。お兄ちゃんよりも厳しさは何倍もあるけど……。私の事を思っての指導って事はちゃんと伝わってくる。ただ……」

 

「ただ?」

 

「お兄ちゃんも感じたと思うけど、姫野さん……少し無理してる気がするの」

 

夢乃も自分同様に姫野が何か複雑な思いをを抱えて仕事に没頭していると感じ取っていたのだ。そのため、彼女は影人へとこの話をしたのである。

 

「夢乃も……か。どちらにしても詮索はするなよ?姫野さんにとって、あまり良い気分じゃない事かもだし」

 

「……うん」

 

こうして球技大会に始まり、二つの恋の決着。天城がグリッターでのバイトに入る事や黒霧家に夢乃のマネージャーが初訪問するというかなり濃い内容だった一日は終わりを告げるのであった。




今回初登場の新キャラである姫野咲/ヒメーノのCVですが、今回は珍しく既に決めてあります。彼女のCVは以下の通りです。

姫野咲/ヒメーノ……CV:坂本真綾さん

このようになりますのでよろしくお願いします。また、次回からアニメ14話になる前に今回のアカペラに関連したオリジナル回を挟みます。それではまた次回もお楽しみに。
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